ドレミフラ祭の投稿作品です。

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ドレミィさんは夜型を直したい

ふー…今日もなかなかいい一日だったわね。

窓から朝日が射し込んでいる。すっかり日も()()()、現在午前6時。

いい加減眠いので自室のベッドにダイブし目を瞑る。意識が遠のき、ふわふわとした心地よい睡魔が私を襲…

……ん? 何だかやけに枕が高反発ね。

 

「突然ですが……レミリア・スカーレット、貴方の″夜型を矯正″します」

目を開けると枕元にサンタが立っていた。

 

「あのー…クリスマスは半年前だけど?」

「サンタではありません。あ、″夢魂"は返してね」

紫の枕を返却した後、サンタ帽を被った白黒ツリーは答えた。

「申し遅れました。私はドレミー・スイート、夢の世界の管理人です」

「ふーん、夢の国のサンタね」

寝る前のお話にしては微妙ね。子供に読み聞かせるのはやめときなさい。

気を取り直し、いつもの枕を取り出して睡眠準備。

こういうオカシナのは相手にしてはいけない。幸い無害そうだしさっさと寝よ…

その時、サンタが口を開いた。

 

「…そういえば少し前、貴方の夢にトイレが出てきましたね」

「あああぁぁ!?」

一気に眠気が覚めた。したり顔のサンタは続ける。

「随分満足げに用を足してらしたけど…寝覚めはどうだったのかしら」

なななぜそれを?!

「言ったでしょ? 夢の管理人だって」

ばばばバラさないで!信じるから!!

クローゼットの奥に秘密に封印したシーツと記憶が呼び起こされる。

訂正、こいつは有害だ。

「お嬢様、叫び声がしましたが何かありましたか?」

ドアの外から咲夜の声。すぐに駆け付ける有能さを褒めたい所だが、今は間が悪かった。

「咲夜さんにも手伝ってもらいましょう」

 

 

「…で、ドレミーさんとやら? なんで私が朝型にならないといけない訳?」

本来吸血鬼は夜に生きる者。

それに染みついた習慣を変えるのはつらい。

宴会はたいてい夕方からだし、人里への遠征(おかいもの)以外には滅多に昼間活動をしない。

 

「ずばり管理がしきれないのです。貴方の夢はやれ世界征服だー月侵略だー、と毎度規模が大きく幼稚(おこちゃま)すぎる上、昼間に夢を見られると私のオフの時間が無くなってしまう。朝型に矯正してもらえれば多少は負担が減ります」

私も寝不足なのよー…とドレミーはわざとらしく大欠伸をする。

「放っとけばいいじゃない、私の夢なんだから」

「いやいや、全ての生物の夢は深層で繋がってるんですよ? 勝手なことをされると傍迷惑なんです」

最近の下界では"働き方改革"なんてのも流行ってますし、と咲夜を見るドレミー。

う、紅魔館(うち)はそこまでブラックじゃないわ…よね?

 

「お嬢様は普段どんな夢を見てるんですか?」

と咲夜が尋ねた。

「そうね…れみりゃザウルスに変身して街で暴れた時は大変でしたね。汎用獏型決戦兵器『ドレキング』をぶつけてなんとかなったけど」

なにそのB級映画。

「ちょっと見てみたかったです」

私の夢は見せ物じゃないの!

「あとはトイレ…」

それは言わない約束でしょ!!

…でもぶっちゃけ私、夢は忘れちゃうタイプなのよね。ドレキングなんてさっぱり覚えがない。

「熟睡してますもんね、毎日12時間」

寝る子は育つ、()()な所が成長期の私にはマストなの。

「そういう咲夜はちゃんと寝てるの?」

そういや咲夜が寝てるところはあんまり見たことがない。

育つとこ育ってても睡眠は大事よ? と咲夜の胸を見る。

「一応寝てますよ。最近余暇の作り方を覚えたので」

よかった…それなら大丈夫そうね。

 

そろそろ本題に戻りましょう、とドレミーが軽く手を叩いた。

「昼夜逆転には2通りの方法があります。1つはたっぷり眠り続けて、朝になったら起きる。でも全く眠くないのに眠るのは難しいし、長時間の浅い眠りは夢の粗製乱造に繋がる。だからその逆であるもう1つの方法…」

「もう一つの方法?」

「徹夜…もとい()()していやでも夜眠るの」

 

 

 

 

――――Zzz……痛っ!

ウトウトしていたのか船を漕いで机におでこを強打した。

一瞬記憶が飛ぶも徐々に今の状況を思い出す。

そうだ…無理やり起き続けて夜型を直してる最中だっけ。

体を起こし、体感5倍の重力がかかった瞼をこすり上げて壁時計を見る。

えーっと……今は…午後6時くらい?

外を見ると日が暮れかけてるっぽいけど、視界にモヤがかかっていて…もーよく分かんにゃい。

 

徹昼を初めて最初のうちは「案外余裕じゃん」なんて思っていたけど、それは大間違いだった。

昼を過ぎた辺りから本格的に睡魔が襲来。

明るさMAXの部屋でコーヒーをがぶ飲みしたり、館を歩き回ったりしたが、眠気は覚めずただ疲労が溜まるだけ。

外出すれば多少は気分転換できたかもしれないけど……外は昼から生憎の雨。

「もう一踏ん張りですよお嬢様」

現在咲夜と館のメイド妖精を総動員して、体中のあらゆる急所をツネられているけど…もはや眠気しか感じない。

 

――――そろそろ……限界だ。

 

「お姉様ぁー何やってんの? すっごい眠そうだけど」

いよいよ限界だと思った矢先、あいつが来た。

「ドレミィさんは夜型を直したいんですよ」

言わなくていいのに事のあらましを喋る咲夜。

フランがにぱーと笑った。

「へぇー…それなら私にも協力させてよ♪」

いやな予感しかしない。姉の直感が寝ぼけた頭に危険信号を出す。

「眠気覚ましには……弾幕ごっこが最適なのさ!」

 

 

咲夜が空間操作で作った即席の巨大な大広間。その中央でフランはいっちにーさんすー、と大きく開脚して準備運動をしている。私は大きく欠伸をした。

「…眠気覚まし程度でいいからね? いい? 軽ーくよ?」

あまり認めたくはないけど…フランは強い。しかも、夢中になると我を忘れて、遊びのはずのごっこがイノチのやりとりに移行しかねない。……眠気以前に無事でいられるか不安なんだけど。

「OK、じゃいくよー♪ QED『495年の波紋』」

――ちょ、いきなりラストスペル?!

 

唐突に始まった弾幕ごっこ、無数の波状弾幕が全方向から迫る。

足がもつれるも咄嗟に避けて直撃は避けられた…が何発か羽にグレイズ。

「禁弾『スターボウブレイク』!」

間髪入れずに上空から次の弾幕を撃ちまくるフラン。姉が寝不足でも容赦がない。

…協力じゃなくて完全に自分が暴れたいだけよね? でも今のでちょっとは目が覚めた。

ひたすら回避しつつフランと距離を取る。

こちらも何発か撃ちこむが、向こうの弾の物量に相殺されてしまった。

どうしよう…攻め手を考えて目先への注意が鈍った瞬間、弾が胸元に潜り込んできた。

「…ッ!」

破裂した衝撃で床に叩きつけられる。痛い!

畳み掛けるように3way弾を連射される。

こちらも弾幕で相殺してガードするが、周囲の床が大きく崩壊。煙が立ち、視界が遮られる。

「…禁弾『カタディオプトリック』!」

視界が開けると、目の前に大玉が迫っていた。

「うわああああああ!!」

思わず目を瞑り、頭を押さえて屈み込む。

――やっぱり徹夜明けの体で弾幕ごっこは無茶だった。

体もこんなに重いし…

――――あれ?

か、軽い…体が軽い!

突然今までの眠気が嘘のように覚め、頭が冴え渡り、全身に力がみなぎる。

え、なんなの?これは徹夜テンションなの?

今ならフランにも勝てる気がする。

これは……最高に「ハイ!」ってやつだ!

 

バシュッゴオオオ!!

倒れた状態から飛翔して大玉を回避、フランとの距離を一気に詰める。

フランはスペルを中断し全方位弾幕を放出、さらに牽制弾を撃とうとこちらに手をかざす。

――しかし、ここで折れたら次はない。私は覚悟を決めた。

何発か体にカスりつつもフランにギリギリまで接近して急降下、弾幕の薄い真下に潜り込む。

思わぬ特攻に驚いたのか一瞬のラグの後、回避を試みるフラン。

――この隙を逃すものか。この一発に全力を込めて、素早くスペルを撃ち上げる。

「紅符『スカーレットシュート』ッ!!」

「…うぐっ!?」

やったあクリーンヒット!

弾幕は腹に直撃、くの字になったフランが真上にブッ飛ぶ。

はっきり見えない高さまで飛んでいき、しばらくすると大広間の天井にぶつかる音がして…ピチューンとはじけた。

終わった……

 

 

 

「……なーんちゃって♪まだ3人いるよ?」

――後ろッ!?

振り返ると3本のレバ剣が目の前で紅く発光している。

「アハハ!禁忌『レーヴァテイン』×3」

――――そして、私の意識はここで途切れた。

 

 

 

 

 

こうしてお嬢様達の弾幕ごっこ及び夜型矯正計画は無事終了した。

「あー楽しかった♪私ももう寝よっと」

フラン様は上機嫌にスキップしながら地下へと帰っていった。

私は広間を元の空間に戻した後、燃えつきたお嬢様を寝室に運び、ベッドに寝かせる。

「現在夜の9時…途中少し危なかったけど、妹さんのお陰でなんとか持ったわね」

これでひとまず矯正成功よ、とドレミーは安堵の笑みを浮かべている。

しかし、私には気になっていたことがあった。

「ドレミー様、一つ訊いてもいいですか?」

ここまでの話で感じた幾つかの違和感。それらを結びつけると、一つの結論が導かれる。

 

「――私ですよね。本当に睡眠時間を矯正したかったのは」

 

「…どういうことかしら?」

ドレミーが試すような目でこちらを見つめてくる。

「いくらお嬢様の夢が大規模とはいえ、所詮一個人の夢。夢世界全体の規模に比べれば大したことないのでは?」

それに、外の世界では国によって時差があることは幻想郷にいる私でも知っている。昼夜関係なく夢の管理は必要なはずだ。

…つまり、お嬢様の夜型矯正の目的にはならない。

「本当の目的はおそらく…」

心当たりはある。

 

「そう、貴方が最近始めた習慣――時止め中の睡眠を止めさせたかったの」

 

紅魔館の仕事は多い。メイド長である私の場合、昼は洗濯や買い出し、それとメイド指揮。夜はお嬢様の身の回りのお世話。

お嬢様のお世話を預かる幸せの前にはこれくらい苦ではない。

…が、流石に倒れそうな時だけは時を止めて眠っていた。

 

「どんな人妖も夢の中にもう一人の自分がいて、全ての生物が夢の深層で繋がっている…ってことは話したわよね?」

貴方の場合は少し厄介でね、と彼女は続ける。

「通常、現の生物は夢の生物と時間の流れを共有しているんだけど、停止した時の中で貴方が夢を見ると、時間停止をしていない夢の貴方との連結が不完全になるの。

 例えるなら0秒間の夢が∞に拡大されるような状態ね。すると、永遠に夢がループしたり、夢世界に複数の十六夜咲夜が生まれてしまう」

貴方は意図せず現から夢へ干渉していたの、と彼女は言う。

「そうして歪んだ私の夢は、深層で繋がった夢世界全体にも悪影響を及ぼす…ということでしょうか」

「その通り。そして、レミリアの夜型を直せば貴方は夜に睡眠が取れるという訳」

 

でも、私にはまだ疑問があった。

「なぜ直接私に掛け合わなかったんですか?」

「貴方は夢の世界の都合よりもレミリアに尽くす時間を優先するだろうし、レミリアに話せば貴方の過労(オーバーワーク)を心配されちゃうでしょ?」

だからこんな回りくどい方法をとったの、と彼女は言った。

「…お心遣い感謝します」

夢を覗けば分かるわよ、とドレミーは続ける。

「だって、貴方の夢の中には、いつもそのお嬢様が居るんですもの。それにね…」

その時、ベッドからお嬢様の寝言が聞こえた。

「……ぅうー…ぎゃおー……」

よほど楽しい夢を見ているのか、涎を垂らして眠っている。そういえば、お嬢様の寝顔を見たのは久々な気がした。

ふと、館がやけに静かなことに気付く。

窓の外を見ると、昼から降り続けていた雨が止んでいた。まるで時間が止まったかのように無風で、木の葉の揺れる音一つ聞こえない。夜空の星ですら瞬かずに眠っている。

奇しくもぐっすり眠るお嬢様に同期しているかのように、館全体が静まり返っていた。

「…なるほど。確かにこの″不夜城″には、今まで誰もが寝静まる夜はありませんでした」

彼女はにっこり微笑んだ。

 

「またいつでも遊びに来てください。お嬢様()暇してますから」

「ありがとう。貴方の睡眠時間を削らない程度にお邪魔するわ」

夢管理人は貴方もそろそろ寝る時間よ、と優しく笑うと、背後に現れた穴――おそらく夢世界へのトンネルだろう――に消えていく。

 

……ふと、思い出したかのように振り返った彼女は、したり(ドレ)顔でこう言った。

「――それじゃあ、″Have a nice(い い 夢 を) dream.″」


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