三年の夏休み。受験勉強に追われる比企谷八幡…

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受験先の誕生日

三年の夏休み

8月7日朝

 

小町「お兄ちゃん、今夜も帰りは遅くなるの?」

 

八幡「あぁ。晩飯一人で寂しいか?」

 

小町「夏休みになって、ほぼ毎日だからね」

 

八幡「すまん」

 

小町「予備校行って、終わったら図書館でしょ。図書館が閉館になったら、ファミレスかマンガ喫茶。お家で勉強したらいいのに」

 

八幡「家だと誘惑が多いからな」

 

小町「でも、明日は早く帰って来てくれるよね?」

 

八幡「明日か…。明日も遅くなる」

 

小町「お兄ちゃんの誕生日だよ!お祝いしようよ」

 

八幡「小町、ありがとうな。小町の気持ちは嬉しいが、今は自分の誕生日よりも受験勉強なんだ」

 

小町「受験勉強頑張ってるのはポイント高いけど、誕生日すっぽかすのはポイント低いよ」

 

八幡「本当にすまん。受験が終わったら、埋め合わせするから」

 

小町「わかった」

 

八幡「おっ!時間だ!行ってきます」

 

小町「いってらっしゃい」

 

p

 

小町「もしもし、結衣さん。やっぱりダメでした」

 

結衣『そっかぁ』

 

小町「明日、もう一回聞いてみますね」

 

結衣『小町ちゃん、お願いね』

 

小町「お兄ちゃん、どうしちゃったんですかね」

 

結衣『そんなに成績悪くないと思うんだよね、数学以外は』

 

小町「雪乃さんは何か言ってましたか?」

 

結衣『ゆきのんは実家に戻ってるから、連絡とれないんだよ』

 

小町「明日、早く帰って来てくれることを期待しましょう」

 

 

翌8月8日

 

八幡「おはよう。朝飯あるか?」

 

小町「お兄ちゃん、おはよう。今日も遅くなるの?」

 

八幡「そうだな」

 

小町「結衣さんもお祝いしてくれるって言ってるよ」

 

八幡「そうか。由比ヶ浜にはメールで謝っておくよ」

 

小町「誕生日より大事なの?」

 

八幡「あぁ。俺にとっては。じゃあ、行ってきます」

 

同日21:00

比企谷家リビング

 

結衣「ヒッキー帰ってこないね」

 

小町「結衣さん、すいません。せっかく来てくれたのに」

 

結衣「小町ちゃんが悪いんじゃないよ。私が期待して来ただけだから」

 

小町「まったく、ゴミぃちゃんは…」

 

結衣「ゆきのんも来れたらって言ってたけど来ないし…」

 

小町「お兄ちゃんにはキツく言っておきますから」

 

結衣「あはは。お手柔らかにね。また来るね」

 

小町「はい。おやすみなさい」

 

同日23:00

比企谷家前

 

八幡(今日も疲れたなぁ)

 

雪乃「ずいぶん、遅い帰宅ね。いつから、そんな不良になったのかしら」

 

八幡「ビックリしたぁ。雪ノ下か。お前こそ、こんな時間に俺ん家の前で何やってんだ?」

 

雪乃「奉仕部の部員が深夜徘徊する不良になってるって聞いたから、確認に来たのよ」

 

八幡「なんだよ、深夜徘徊って。ファミレスで勉強してたんだよ」

 

雪乃「誕生日パーティーもやらないで勉強なんて、心配してるのよ」

 

八幡「それは、すまなか…」

 

雪乃「小町さんと由比ヶ浜さんが」

 

八幡「…。あっそ。じゃあな」

 

雪乃「待ちなさい」

 

八幡「なんだよ」

 

雪乃「こんな時間に女性をひとりで、帰らせるつもりなのかしら」

 

八幡「お前が勝手に来たんだろ」

 

雪乃「…小町さんに言うわよ」

 

八幡「なっ!」

 

雪乃「小町さん、なんて言うかしらね」

 

八幡「卑怯だぞ!」

 

雪乃「さぁ、どうするのかしら」

 

八幡「携帯握りながら、満面の笑みを浮かべないでくれ。わかったよ」

 

雪乃「最初から素直になりなさい」

 

八幡「自転車置いてくるから、待ってろ」

 

雪乃「比企谷君」

 

八幡「今度はなんだよ」

 

雪乃「あ、あの…、こんなお願いしていいのか…」

 

八幡「なんだよ、ハッキリしないな」

 

雪乃「こんな時間だから、人に見られることがないと思うから…」

 

八幡「だから、なんだよ(モジモジしながら言うなよ、可愛いなこの娘は)」

 

雪乃「じ、自転車の二人乗りをしてみたいの…」

 

八幡「…(か、可愛い過ぎる!)」

 

雪乃「ダメ…かしら…」

 

八幡「お、おう。いいぞ」

 

雪乃「ごめんなさい、こんなお願いして。一度してみたかったの」

 

八幡「気にするな。普段は小町しか乗せないんだが、特別だそ」

 

雪乃「と、特別…。小町さん以外は始めて…」

 

八幡「ほら、乗れよ」

 

雪乃「お、お邪魔するわ」

 

八幡「しっかりつかまってろよ」

 

雪乃「わかったわ」

 

八幡(可愛いな、こんちくしょう!)

 

高級マンション前

 

八幡「ほれ、着いたぞ。いつまで、しがみついてるんだ」

 

雪乃「あ、ありがとう…」

 

八幡「じゃあな」

 

雪乃「待ちなさい」

 

八幡「今度はなんだよ」

 

雪乃「お茶でも、飲んでいきなさい」

 

八幡「嫌だよ。こんな時間だし」

 

雪乃「いいから、来なさい」

 

八幡「面倒くせぇ」

 

雪乃「ここまで送ってもらってお礼もしないなんて、雪ノ下の名が廃るわ」

 

八幡「いつの時代だよ。いいか?お前は女、俺は男で、しかも思春期真っ盛りだ。OK?」

 

雪乃「それなら、大丈夫よ」

 

八幡「何故、そう言い切れる」

 

雪乃「貴方って、世間一般で言うところのヘタレでしょ?」

 

八幡「ぐっ!」

 

雪乃「それに、リスクリターンの計算も得意でしょ?小悪党さん」

 

八幡「あの、ほら、小町も心配するし…」

 

雪乃「小町さんには連絡済みよ。毎晩の遅い帰宅に関してお説教するって伝えたら、二つ返事で了承してくれたわ」

 

八幡「小町めぇ」

 

雪乃「あ、あと…」

 

八幡「ん?」

 

雪乃「今夜は帰さなくてもいいって…」

 

八幡(何言ってるの小町ちゃん。雪ノ下さん、耳まで真っ赤ですよ)

 

雪乃「いいから、早く来なさい」

 

八幡「へいへい、わかりましたよ」

 

雪乃の部屋

 

雪乃「そこに座って、待っていなさい。お茶を用意するから」

 

八幡「はいよ」

 

八幡(微妙に機嫌がい気がする…)

 

雪乃「どうぞ」

 

八幡「ありがとよ」

 

雪乃「今日はお茶請けがあるのたけど、食べる?」

 

八幡「ああ、せっかくだから頂くよ」

 

雪乃「どうぞ」

 

八幡「雪ノ下、これ…」

 

雪乃「貴方、今日は誕生日なのでしょ?」

 

八幡(直径10cmほどのホールケーキ。チョコプレートHappybirthdayの文字)

 

雪乃「な、なにか言ってちょうだい」

 

八幡「あ、お、うん。ありがとう…。その、なんて言っていいかわからんが、とにかく嬉しい」

 

雪乃「そ、そう…。国語三位のクセに語彙力が少ないのね」

 

八幡「うるせぇ。驚きで頭が追い付かないんだよ」

 

雪乃「まぁ、いいわ。切るわね」

 

八幡「おう」

 

雪乃「どうぞ」

 

八幡「いただきます」

 

八幡「旨い…」

 

雪乃「良かった」

 

八幡「これ手作りだよな」

 

雪乃「えぇ、そうよ」

 

八幡「すげぇ、旨いよ」

 

雪乃「貴方の為に作ったのよ」

 

八幡「嬉しいな。こんな誕生日始めてだ…」

 

雪乃「まったく、誕生日まで受験勉強なんて…」

 

八幡「うっ!す、すまん。小町と由比ヶ浜には、謝っておくよ」

 

雪乃「そうしなさい」

 

八幡「そ、それで…。雪ノ下も俺のことを心配してくれていたのか?俺ん家まで来て」

 

雪乃「いいえ。してないわ」

 

八幡「…そうか」

 

雪乃「貴方が、そこまで頑張っている理由をしっているから…」

 

八幡「え?」

 

雪乃「その、貴方の受験先を知っているから…」

 

八幡「なっ!」

 

雪乃「平塚先生の所へ行ったら、貴方の進路希望調査が置いてあって…」

 

八幡「み、見たのか…」

 

雪乃「…見えてしまったの」

 

八幡「あぁぁぁぁ!!」

 

雪乃「ど、どうしたの?」

 

八幡「帰る!帰って、布団かぶって脚をバタバタさせる!」

 

雪乃「落ち着きなさい!!」

 

八幡「…はい」

 

雪乃「…理由も聞いたわ」

 

八幡「こ、殺してください」

 

回想

職員室

 

雪乃(平塚先生は、いらっしゃらないのかしら)

 

雪乃(これは…。比企谷君の進路希望…)

 

雪乃(えっ?これって…。私と同じ大学…。何故?)

 

静「おぉ、雪ノ下。来たか」

 

雪乃「平塚先生、これは…」

 

静「比企谷の進路希望か。アイツのことだから、浪人しようとか考えてないか、取り調べをしたよ」

 

雪乃「それで、彼はなんて…」

 

静「ここではアレだ。進路指導室へ行こうか」

 

進路指導室

 

静「えぇと、比企谷の動機だかな」

 

雪乃「はい」

 

静「クククッ」

 

雪乃「笑ってないで、教えてください」

 

静「失敬。比企谷はな、雪ノ下、お前を見ていたいと言っていたぞ」

 

雪乃「え?」

 

静「あの比企谷がやる気になったのだから、私もそれ以上は聞かなかったがな」

 

回想終わり

 

八幡「口止めするの忘れた…」

 

雪乃「で、どういうことなのかしら?ストーキング谷君?」

 

八幡「すいません。志望校変えますので、許してください」

 

雪乃「ナチュラルに土下座しないでもらえるかしら。責めてる訳ではないの、理由が知りたいのよ。本当にストーキングなら通報するけど」

 

八幡「理由を話すので携帯をしまってください。お願いします」

 

雪乃「そう」

 

八幡「その…、雪ノ下を見ていたいって言ったのは本当だ。雪ノ下が真っ直ぐに進んで行く姿を見ていたくなったんだ」

 

雪乃「本当にそれだけなのかしら?」

 

八幡「いや、出来れば側に…。隣に居たいと思うし、その先もずっとずっと見てみたい。…そこに恋心がないと言ったら嘘になる」

 

雪乃「そう」

 

八幡「でも、隣に並ぶのは俺じゃない」

 

雪乃「…どうして?」

 

八幡「雪ノ下と俺じゃ釣り合わない。良家の息子で頭も人柄も良いヤツが隣に居るべきだ。それこそ葉山みたいな…。俺みたいな平民のひねくれたボッチは、見ているだけでいいんだ…。だから、誰にも言わなかったんだ…」

 

雪乃「比企谷君」

 

八幡「な、気持ち悪いだろ…」

 

雪乃「比企谷君」

 

八幡「こんな気持ちがバレちまったからには、志望校を変えるよ…」

 

雪乃「比企谷君!」

 

八幡「なんだよ、大きな声を出して」

 

雪乃「貴方は、それで本当にいいの?」

 

八幡「…いいんだ。悪かったな迷惑かけて」

 

雪乃「私はイヤよ」

 

八幡「は?通報しないと気がすまないがか?」

 

雪乃「違うわ」

 

八幡「じゃあ、なんだよ」

 

雪乃「わ、私も貴方に隣に居て欲しいから…」

 

八幡「え?」

 

雪乃「私が進む先に一緒に居て欲しいから」

 

八幡「それって…」

 

雪乃「貴方の志望校が同じだって知った時、どんなに嬉しかったか」

 

八幡「そ、そうか…」

 

雪乃「でも、ひねくれた考えで、私の隣から居なくなろうとする貴方は嫌い」

 

八幡「…」

 

雪乃「私は貴方に隣に居て欲しい。家柄とか関係ない…」

 

八幡「…」

 

雪乃「雪ノ下雪乃は、比企谷八幡、貴方が好きです」

 

八幡「雪ノ下、お前…」

 

雪乃「私にここまで言わせたのよ。貴方はどうなの?」

 

八幡「ははっ。悩んでたのが馬鹿みたいだな」

 

雪乃「そうね。馬鹿って気がつい…良かったわね」

 

八幡「うるせぇ。雪ノ下雪乃、俺はお前が好きだ」

 

雪乃「ふふっ。やっと素直になったわね」

 

八幡「悪かったな、ひねくれてて」

 

雪乃「またひねくれたこと言わって居なくならないように首輪が必要ね」

 

八幡「首輪って…」

 

雪乃「これよ…。開けてみて」

 

八幡「首輪にしては箱が小さいな…。これ、首輪じゃなくて指輪じゃねぇか」

 

雪乃「そうよ。これ見て」

 

八幡「え?ペアリング?」

 

雪乃「そうよ。二人で合格して、入学式の日に一緒に着けましょう。それまで、大事にとっておいて」

 

八幡「あ~、ちくしょう!何から何まで、やられっぱなしだな」

 

雪乃「ふふっ」

 

八幡「ありがとうな、雪ノ下。ますます、勉強に力入れないとな」

 

雪乃「そのことなんだけど…」

 

八幡「ん?」

 

雪乃「わ、私が勉強を見てあげるわ」

 

八幡「いやいや、雪ノ下の邪魔したら悪いだろ」

 

雪乃「教えるのも復習になるからいいのよ」

 

八幡「それでも悪いよ。だから、勉強は一人で…」

 

雪乃「そ、それに…」

 

八幡「それに?」

 

雪乃「貴方と一緒に居られるから…」

 

八幡「雪ノ下も少し素直になったな」

 

雪乃「…馬鹿、ボケナス、八幡」

 

八幡「八幡は悪口じゃないですよ」

 

雪乃「な、名前で呼んでみたくて…」

 

八幡「何、その可愛い理由」

 

雪乃「それで、どうするのかしら?」

 

八幡「あぁ、頼むよ。雪ノ下」

 

雪乃「…貴方は名前で呼んでくれないのね」

 

八幡「え?あ?お、おぅ、ゆ、ゆ、雪乃」

 

雪乃「嬉しい…」

 

八幡「しかし、ペアリングとはブッ飛んだプレゼントだったな。もし違ったら、どうするつもりだったんだ」

 

雪乃「自信があったもの。私、好意を向けられるのにはなれてるし、貴方の目がそうだったから」

 

八幡「さいですか」

 

8月9日1:00

 

八幡「それじゃあ帰る」

 

雪乃「由比ヶ浜さんと相談して、改めて誕生日パーティーをするわ」

 

八幡「ありがとよ」

 

雪乃「それと、少し過ぎてしまったけど、お誕生日おめでとう、八幡」

 

八幡「あ~、雪乃」

 

雪乃「何かしら?」

 

八幡「俺は世間一般で云うオタクの部類に入る」

 

雪乃「そうね」

 

八幡「オタクは深夜アニメの時間を言うときに、深夜1時をこういうた【25:00】」

 

雪乃「え?」

 

八幡「だから、俺からすると、今は8月8日の25時だ。ありがとう、雪乃」

 

雪乃「ふふっ。貴方のひねくれた考えも、捨てたもんじゃないわね」

 

八幡「だろ?」

 

 

訂正 8月8日25:00

 

終わり

 

 




八×紗の良作読んでたら、雪乃が不遇だったので、思わず…


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