一発ネタです。これで続編書くのは辛い、辛すぎるよ。

当作品は、らいとすたっふルール2015に基づいております。独自設定含みます。


そして主人公があの男なのに、戦闘描写がありません。


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第1話

 数多の英雄達も、名も無き兵士や民も、老若男女も、野望、願望、欲望、その多くを果たせず散っていく。もし地獄という物があるのなら、それはまさに現世ではないのか。

 あるいは修羅道というのが相応しいのだろうか。戦いだけが吹き荒れ、また次の戦いのために生き返り続ける。

 人の営みと嘆きは、いつの時代になっても変わる事が無い。

 

 

「ウオーッ!!」

 一人の男が、単身仕留めた巨大象の上で咆える。

 彼の名はオフレッサー、石器時代の勇者である

 

 時はまさに石器時代、かも知れない。力こそが正義、というか体力こそ命そのものの時代、に思えた。

 顔on the傷跡が生々しい巨漢、オフレッサーは巨大象を自ら引きずって村へと帰ってきた。

「ウオウオ、ウッオー!」

 木製の家屋から村人が飛び出してくる。大人二十人分の働きをこなす彼は、村の一番の働き手であった。魚とりも枯れ枝拾いも木の伐採。意外と手先も器用で、獣の皮細工や石器作りもお手の物だった。

 ガイエスブルク要塞で裏切り者の汚名を着せられた挙句、アンスバッハの冷静な手腕で処断された彼は、この未開の大地で目覚めた。といっても年の頃十二位の頃である。成人の儀式で恐怖に襲われ、獣に食われる寸前に覚醒した。自分が何者であるかを思い出した彼は、一転凶悪な執念で相手を撲殺し、見事成人として認められたのだ。

 以来、この世界は理想郷にも等しい場所だった。宇宙を駆け巡り領土を欲しいままにした頃とは勝手が違う。だが共に暮らす者達と存分に戦い、食らい、飲み、咆える。その生のままの生活が、男の荒んだ心を癒した。相手の心を伺い、常に危険を探知して心身をすり減らす貴族社会。上級大将という階級をひたすら嘲られ、油断すれば追い落とされる軍隊。結果、彼は金髪の天才に叛逆し、勝つために麻薬や興奮剤まで用いて奮戦したが、謀略に利用されて侮蔑を買ったまま最期を迎えた。ここには、そんなしがらみが無い。

 心が癒されると同時に、彼の家に思わぬ余裕が出て来た。

 

 銀河で生きていた頃、彼は孤独だった。家族はいたのだが。いずれも早期に死別していた。妻は貴族間の争いに巻き込まれ、その体内にいた子と共に事故に見せかけて謀殺。後に自ら容疑者の屋敷に乗り込み、内部の生ける者を全滅させてから、オフレッサーは周囲にあまり人を近付けなくなった。家中を狩猟の剥製や武具で飾り立て、来る者に威圧感を与えた。酒を呑む時もあえて氷を一緒に口の中で粉砕したり、食事では骨付きの肉も骨ごとバリバリかじってしまうなど粗野に振る舞った。顔の傷を敢えて完治させないのも、孤高の演出の一環であったのかも知れない。

 

 生まれ変わって余裕を持ってから、村のある女と仲良くなった。彼女もまた戦士であり、ウマが合った二人は年月を経て結ばれ、子供まで授かった。初めて手に小さな命を抱いた時、巨人は号泣した。

 今の彼は、“石器時代の勇者”である事に誇りを持つ様になっていた。自ら流した血の量で築いた栄光、転落、そして、再生。しがらみから解放された男が、生きる意味を見つけたのである。

 

 

 

 

 ‥‥時代は過ぎ、非情な流れが村を襲った。

 農耕技術の進歩により、狩猟民族である彼らの勢力は衰退した。オフレッサーは家族と共に狩人として生きる道を選んだが、時代は彼らを放ってはくれない。

 

 前世で彼を裏切り者認定したブラウンシュヴァイクが、王様となって彼の元へ訪れた。

「この前は悪かった、わしのとこで働かんか? 巨大クワを用意するぞははは」

 王になってもあまり相手の事を考えるタイプではなかった。オフレッサーを肉体労働タイプと分類は出来たのだが。生前の様に両腕を振りかざして飛び掛かろうとしたが、冷静な顔をした男に阻まれ、何処か思い出がフラッシュバックしたのでやめた。一応、どっさりとお土産に穀物をくれた。

 

 次に嫌な野生の予感がしていたら、金髪の小僧が赤毛の男と女たらしを連れてやってきた。

「貴様自身は好かん、正直今でも姉上の名誉にかけて畑の肥やしにしてやりたいが、今は人手が足りん」

「お前も人を牛かなにかと思っているのか‥‥」

「他に何がある。ただし性能のいい耕運機としてお前を評価はしているぞ」

 どうもこの人もあまり人付き合いが生前より進化していない。しかも良くない事が起きた。交渉を保留した後、去った彼らの後をオフレッサーの娘が追っていってしまった。

 成長した彼女は、幸い父親にはあまり似ていない健康的な美人になった。余計にろくでもない要素である。何せ、尾いていった陣営には、女たらし漁色底引き網漁船ロイエンタールがいる。オフレッサーですら彼の噂は知っていた。

「許さん、許さんぞぉぉぉぉ!!」

 宥める妻を振り払い、愛用の巨大斧を担いで走った。馬より速く。そして、ラインハルトの領地の辺りで落とし穴にハマった。周囲に隠れていた連中に土で埋められ、フグの民間療法の如く首から上だけの存在になりはてた(身体はまだ付いている)。

 異様に目の光る陰気な男が、コエタゴを担ぎながら言った。

「卿はこちらに来てからもまるで進歩が無いのだな」

「おのれ、いつこんな物を用意した!?」

「陛下は常に領地の周囲へ見張りを立てている。四足獣も出せない様な足音と速度で走れば、すぐに分かるというもの」

 石器時代の勇者を捕縛するなど、コエタゴを下ろす必要も無い程簡単。目を光らせながらオーベルシュタインは暗にそう述べている様に見えた。

 

 ラインハルト・フォン・ローエングラム“王”が自ら埋められた男の前に現れた。外に出すと危険だから、特殊な面会方式になったのである。

「娘の件については我が思考の範疇になかったのだが」

「早くあいつを解放しろ!! ロイエンタールの毒牙になんぞかけさせてたまるか!」

「‥‥そうか、それを心配してきたのか」

 ラインハルトは苦笑した。

「卿も人の親になって少しは変わったか。そういうものなのか?」

「貴様には分かるまい!」

「残念だが、余はそれを理解する前に息子と別離した」

 オフレッサーは言葉を失った。彼の死後の後の出来事故に、ローエングラム王朝の世継ぎの事は知らなかった。かつての彼なら、大口を開けて哄笑しただろう。

 今は、状況が違っていた。土から出された頭を無理矢理捻って、ばつの悪そうな顔をする。

「同情する必要は無い。余の後を継ぐ者はまず愛情よりも、覇気を以て自らの道を切り開くさだめ。銀河帝国ローエングラム王朝二代目皇帝ともなれば、それ位の重圧は常に責務として伴うものだ」

「‥‥なんとまぁ、皇帝を称するのにそこまで不幸を背負わされるとはな」

「人間の価値と生まれは同じではないぞ。富める者も貧しき者も研鑽を怠らず、大志を持つべき。余もそうして銀河を掴んだ。お前はどうだ?」

「お前は自在に艦船を操り、存分な称賛を浴び続けた。頼れる部下にも恵まれた事だろう。

しかしその若さで上り詰めたのには、やはり皇帝陛下の覚えがあったからではないか?」

 かつて、レンテンベルク要塞防衛戦でオフレッサーは、罵倒の言葉をラインハルトに浴びせた。姉弟で皇帝を誑かした、と。

 表現こそ柔らかくなったが今再び似た問いを放ったのは、王者としての器を示せ、という内心を込めたのである。ラインハルトの青い瞳に微かな怒気が走ったが、彼は大地にどっかと腰を下ろし、上段からオフレッサーを睨み返した。

「勘違いをするな。皇帝が余に厚意を示したのではない。無視出来ない程の功績を見せつけてやったのだ」

 如何なる戦場でも感じた事のない威圧感。眼前の若者の苛烈な内面に、オフレッサーは初めて触れた様な気がした。

「どうしてそこまでの野心を抱く」

「大切な物を奪われたからだ。ならば取り戻すまで。今の貴様なら‥‥分かるのではないか?」

 ラインハルトは土を払いながら立ち上がり、背中を翻した。

「明朝、返事を聞く。それまでじっくりと考えるがいい。言い忘れたが」

 先刻までの微かに見えたが、実は腹の底を駆け巡っていた憤怒を瞬時に吹き消し、金髪の王者、いや青年は肩越しに悪戯っぽい微笑を投げた。

「卿の娘は、武を磨きたいからと我が配下に志願してきたのだぞ」

「な、なんだと、じゃあ‥‥」

「ロイエンタールより、キルヒアイスの事を慕っているぞ。弓の師匠としてな」

 自分の勘違いと思慮足らずで恥を晒した、と知ったオフレッサーは、久々に粗野な罵倒を、山を越えても聞こえる程の大声で撒き散らした。

 

 

 後にこの出来事は、“石器将軍”と綽名される男と後の黄金獅子朝・初代王の奇妙な縁による出会いであった、と歴史家は記している。

 

 




 ※完全な思い付きの一発ネタです。オフレッサーを主役とした話をいつか書いてみたい、なんて思っていて、こういう感じの話になりました。元はファンタジー世界に転生して、もっと大立ち回りをする妄想だったんですが、話が大きくなり過ぎて、いつの間にかこんな話に。


 オリキャラの小ネタ
 オフレッサー娘:母親ともに名前は不明。幸いにも外見は似ていない。性格もあまり似ていない。ファンタジーでよく見かける「森とかで狩人とかをしている女の子」まんまの感じ(具体的に言うと少し日に灼けて、皮で作った衣装で露出高。武器は斧と弓)。

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