八幡と雪乃の未来は…

1 / 1
永遠

三年の夏休みから、比企谷八幡と雪ノ下雪乃は交際を始めた。

最初は、由比ヶ浜結衣とギクシャクしたが、戸塚彩加らの助けもあり、三人の関係は良好になっていた。

二人の交際は、比企谷家では両手をあげて喜び(特に小町は雪乃のことを『お義姉ちゃん』と呼び大喜び)、雪ノ下家でも、姉の陽乃さんの口添えもあり、順調であった。

そして、卒業式の日…。

 

奉仕部の部室に集まる三人。

 

結衣「やっはろー!遅くなって、ごめんね」

 

雪乃「大丈夫よ、私達も今来たところだから」

 

八幡「なんかあったのか?」

 

結衣「え、あ、うん。ちょっとね。あとでわかるから」

 

雪乃「ここに集まるのも最後だと思うと感慨深いわね」

 

雪乃「私が一人で奉仕部をやっていて…」

 

八幡「俺が平塚先生に強制入部させられて…」

 

結衣「私が入部して…」

 

雪乃「わかりあえたと思ったら、すれ違ったり…」

 

八幡「良かったんじゃねぇの」

 

結衣「そう…だね」

 

雪乃「貴方の言う『本物』は手に入れられたのかしら?」

 

八幡「うっ…、黒歴史を…。まぁ、あれだ。限りなく『本物』に近いと思ってる。お前らとはな」

 

結衣「ヒッキー…」

 

雪乃「そうね」

 

八幡「なぁ、由比ヶ浜。俺と友達になってくれないか?」

 

結衣「何言ってるのヒッキー!もう友達だよ!」

 

八幡「由比ヶ浜…。ありがとう…な」

 

結衣「えへへ」

 

八幡「なぁ、雪ノ下。俺と友だ…」

 

雪乃「ごめんなさい。それは無理」

 

八幡「予定調和かよ」

 

雪乃「貴方と私は友達ではないでしょ?」

 

結衣「あはは…。ラブラブだね」

 

雪乃「ごめんなさい、由比ヶ浜さん。そういうつもりでは…」

 

結衣「ううん。気にしないで」

 

部室の扉をノックする音が…

 

雪乃「どうぞ」

 

彩加「失礼します」

 

八幡「戸塚、どうした?」

 

結衣「彩ちゃん、丁度良かった」

 

雪乃「由比ヶ浜さん、どういうことかしら?」

 

彩加「僕から言うね」

 

結衣「うん。お願い…」

 

彩加「さっきね、由比ヶ浜さんに告白して、付き合うことになったんだ…」

 

結衣「えへへ」

 

八幡「戸塚…、由比ヶ浜…」

 

雪乃「おめでとう、戸塚君、由比ヶ浜さん」

 

八幡「おめでとう。いつの間に…」

 

結衣「ヒッキーとゆきのんが付き合い始めたころにね、いっぱい話を聞いてもらってたら…。だんたんど…」

 

彩加「結衣ちゃん、可愛かったから…」

 

結衣「もう、彩ちゃんたら」

 

八幡「ホントに今日から付き合い始めたの?」

 

雪乃「すでに、ラブラブね」

 

八幡「この後はどうするんだ?」

 

雪乃「そうね、私は実家に呼ばれてるから」

 

結衣「私は優美子達とパーティー」

 

八幡「さすが、リア充。戸塚は?」

 

彩加「僕はテニス部でファミレスに集まる予定」

 

八幡「そっか。じゃあ、明日改めて集まらないか?」

 

雪乃「そうね。由比ヶ浜さん、戸塚君、どうかしら?」

 

結衣「うん、いいね」

 

彩加「僕もお邪魔していいの?」

 

八幡「俺と戸塚の仲じゃないか」

 

結衣「ヒッキー、キモイ」

 

雪乃「八幡、貴方には調き…、教育が必要ね」

 

八幡「今、調教って言おうとしたよね?」

 

結衣「ゆきのん、ヒッキーこと名前呼びした」

 

雪乃「え、あ、違うの!こ、これは、いつものクセ…じゃなくて…」

 

八幡「雪乃、取り繕わなくていいよ。もう、いいだろ」

 

雪乃「ううう」

 

結衣「やっぱり、ヒッキーは優しいね」

 

彩加「そうだね」

 

八幡「じゃあ、3時ぐらいに雪乃の部屋でいいか?」

 

雪乃「そうね、いいんじゃないかしら」

 

結衣「じゃあ、お菓子買っていくね。彩ちゃん、一緒に買いに行こう」

 

彩加「そうだね」

 

八幡「とりあえず、また明日だな」

 

雪乃「そうね」

 

結衣「じゃあ、また明日ね」

 

その夜

雪ノ下家

 

雪ノ下父「雪乃、話がある」

 

雪乃「なんですか、お父さん」

 

雪ノ下父「単刀直入に言う。比企谷君と別れてくれ」

 

雪乃「え?」

 

雪ノ下父「そして、見合いをしてもらう」

 

雪乃「どういうことですか!」

 

雪ノ下父「表向きにはわからんが、うちの会社も厳しい状態でな。大手のゼネコンが融資してくれる条件で、お前を…」

 

雪乃「そ、そんな前時代的な話があるんですか!」

 

雪ノ下父「そこの御曹司がな、お前のことを大層気に入ってるみたいでな…。これを断れば、うちの会社は…」

 

雪乃「他に融資してくれるところはないんですか!」

 

雪ノ下父「あちこちに顔が利く相手でな、もう打つ手を塞がれている…。すまん、わかってくれ」

 

雪乃「…少し時間をください」

 

同時刻

比企谷家

 

八幡「なんだよ親父。改まって」

 

比企谷父「八幡、雪ノ下さんと別れなさい」

 

八幡「は?何言ってるんだ」

 

比企谷父「もう一度言う。雪ノ下さんと別れなさい」

 

八幡「冗談でも、言っていいことと悪いことがあるぞ」

 

比企谷父「本気だ」

 

八幡「尚更悪いよ」

 

比企谷父「こんなことは言いたくはない。雪ノ下さんと付き合い始めてから、お前は変わった。すごく生き生きしていた。それを別れろだなんて…」

 

八幡「なんか理由があるのか?」

 

比企谷父「今日、社長から直々に呼び出されてな。雪ノ下さんは見合いをするそうだ」

 

八幡「なんだって…」

 

比企谷父「それには、お前と交際してることが邪魔らしい。断ったんだがな、あんまり反抗するとクビするしかないと…。社長も融資の打ち切りを言われ苦渋の決断だつたらしい」

 

八幡「そんな…」

 

比企谷父「お前に始めて出来た恋人だ。出来れば守ってやりたい…。だがな、大学や小町の高校・大学の学費もある。家のローンだってある…。八幡、すまないが…」

 

八幡「少し考えさせてくれ…」

 

自室に戻り、深呼吸をす。雪乃に電話したいが冷静に話す自信がない。まずは状況確認をしたい…。先に電話したのは…

 

八幡「もしもし」

 

陽乃『比企谷君…』

 

八幡「雪ノ下さん、何故電話したかわかりますよね?」

 

陽乃『うん、わかるよ』

 

八幡「どういうことか、説明してください」

 

陽乃『簡潔にいうね。うちの会社ね、実は経営状態がよくなかったのよ。都内の大手ゼネコンが手助けしてくれる条件が雪乃ちゃんて訳…』

 

八幡「そんな…。三文小説みたいな話、どうにかならないんですか!」

 

陽乃『ごめんなさい、私の力では…』

 

八幡「わかりました」

 

八幡(雪乃は大丈夫なんだろうか…)

 

八幡「もしもし、雪乃」

 

雪乃『八幡…』

 

八幡「大丈夫か?」

 

雪乃『大丈夫じゃない…。どうしたらいいの』

 

八幡「すまん、わからない」

 

雪乃「私、八幡と離れたくない!」

 

八幡「俺だって離れたくない!…でも、どうしたら…」

 

雪乃『八幡、会いたいよ』

八幡「俺も雪乃に会いたい…。今日はもう遅い。明日、なるべく早くマンションに行くから、一緒に考えよう」

 

雪乃『待ってるわ』

 

翌日7時

 

八幡(ちょっと早かったか)

 

インターホンを押すと

 

雪乃『はい』

 

八幡「俺だ」

 

雪乃『今、開けるわ』

 

八幡(いつもなら『俺なんて名前の知り合いはいないわ』とか『俺俺詐欺かしら。女子高生の自宅に来るなんて斬新な手口ね』とか言われるんだが、余裕ないんだろうな)

 

部屋に入ると、目を真っ赤にした雪乃が胸に飛び込んでくる

 

雪乃「八幡!八幡!八幡!」

 

八幡「雪乃、不安だったな。俺はお前の側に居るからな」

 

雪乃「私も八幡も側に居たい…」

 

涙が止まらない雪乃を抱き締めていると、時間はあっという間に過ぎていき、インターホンが鳴る。

 

結衣『や、やっはろー!』

 

雪乃「今、開けるわ」

 

八幡「もう、そんな時間か」

 

雪乃「切り替えないと」

 

八幡「ほら、涙ふいて。綺麗な顔が台無しだ」

 

雪乃「急に何を言ってるの。気持ち悪い」

 

八幡「おい」

 

無理をして、いつもの調子を出そうとしているのがわかる。

 

玄関の扉を開けると、由比ヶ浜と戸塚の他に2人の影が…

 

結衣「やっはろー!ゆきのん、ヒッキー」

 

彩加「こんにちは」

 

陽乃「ひゃっはろー!雪乃ちゃん、比企谷君」

 

小町「雪乃さん、やっはろー!あと、ついでに、お兄ちゃん」

 

雪乃「姉さん、何しに来たの?」

 

八幡「小町、お兄ちゃんが居なくて寂しかったのか。今の八幡的にポイント高い」

 

小町「えぇ、お兄ちゃんは小町より雪乃さんの心配しないなんて、ポイント低いよ」

 

結衣「小町ちゃん、ヒッキーも無理してるんだよ」

 

小町「お兄ちゃん、雪乃さんのことになるとザコメンタルだからなぁ」

 

陽乃「何それ?お姉さんに教えて」

 

八幡「こ、小町…やめてくれ」

 

小町「ちょっと口喧嘩しただけで『雪乃に嫌われたかも、どうしよう』って、オロオロしてますよ」

 

雪乃「貴方ってひとは…」

 

陽乃「雪乃ちゃんだって、大差ないでしょ?」

 

雪乃「姉さん、やめてちょうだい」

 

陽乃「わざわざ電話してきて『八幡にヒドイこと言ってしまったわ。どうしたらいいの?』って」

 

結衣「似た者同士だね」

 

彩加「八幡と雪ノ下さんは、本当に仲がいいね」

 

みんな、雰囲気を察してか、明るく振る舞ってくれる。

 

リビングでお茶を飲み、お菓子を食べる…。どうしても、重苦し雰囲気になってしまう…。

 

なにも打開策が見出だせないまま、夜も更けてくる。

 

陽乃「雪乃ちゃん、明日は実家に行ってくるから。もう一回、頑張ってみる」

 

雪乃「姉さん、お願い…」

 

八幡「陽乃さん、俺からもお願いします」

 

小町「お願いします」

結衣「お願いします」

彩加「お願いします」

 

陽乃「どこまで、できるか…。でも、最後まで諦めないでね」

 

八幡「もちろんです」

 

雪乃「ええ、わかっているわ」

 

八幡「じゃあ、小町俺たちも帰…」

 

小町「何言ってるの、お兄ちゃん!バカ!ボケナス!八幡!」

 

八幡「だから、八幡は悪口じゃねぇよ」

 

結衣「そうだよ、ヒッキー!何帰ろうとしてるの!」

 

八幡「それはホラ、アレだから」

 

彩加「八幡、雪ノ下さんの側に居てあげて」

 

陽乃「私からもお願い」

 

八幡「いや、高校卒業したばっかりで、お泊まりとか…」

 

ツンツンと八幡のシャツの裾を引っ張る雪乃

 

雪乃「…八幡」

 

八幡「雪乃、側に居るから安心しろ」

 

小町「雪乃さんが言うとチョロいですね」

 

結衣「素直じゃないんだから」

 

陽乃「お熱いことで」

 

彩加「あはは」

 

八幡「陽乃さん、小町をお願いします」

 

みんなが帰り二人っきりの部屋。

ソファーで雪乃の肩を抱いている八幡。テレビはついているが、流している程度。

 

八幡(明日は冬型の気圧配置か…)

 

雪乃「ねぇ、八幡」

 

八幡「ん?どうした?」

 

雪乃「私たち、こんなにくっついていたことあったかしら」

 

八幡「ねぇな」

 

雪乃「私はね、ずっとこうしてみたかったの。でもね、恥ずかしくて…」

 

八幡「俺もだよ」

 

雪乃を少し強く抱きして

 

八幡「少し眠ろうか」

 

雪乃「そうね」

 

次に気がついたのは、翌日の朝

 

八幡「おはよう、雪乃」

 

雪乃「おはよう、八幡」

 

八幡「なぁ、雪乃」

 

雪乃「なにかしら?」

 

八幡「気晴らしに散歩しないか?」

 

雪乃「貴方にしては名案ね」

 

八幡「一言余計だ」

 

雪乃「ふふっ。行きましょう」

 

八幡「楽しそうだな」

 

雪乃「貴方と出かけるのは、いつも楽しいわ」

 

八幡「俺もだよ」

 

身支度をすませて外に出る。行くあてはないが、手を繋ぎ肩を寄せて

 

雪乃「ねぇ、八幡」

 

八幡「ん?帰るか?」

 

雪乃「すぐに帰ろうとする癖、やめてもらえるかしら」

 

八幡「冗談だよ。んで」

 

雪乃「まったく…。私、雪が見たいわ」

 

八幡「部屋に籠ってるより、その方がいいかもな。行くか」

 

電車を乗り継ぎ北へ北へ…。

どこかわからないが雪の見えている駅で下車するころには、あたりは薄暗くなりはじめていた。

 

雪乃「見て八幡!一面真っ白よ」

 

八幡「あんまりはしゃぐと転ぶぞ」

 

雪だまを投げたり、小さな雪だるまを作っていると、辺りは真っ暗に

 

八幡「さすがに疲れたな。駅に戻ろうぜ」

 

雪乃「そうね」

 

駅に戻ると、終電は終わっていた。

 

八幡「やっちまったな」

 

雪乃「そうね。でも、帰っても考え込むだけだから」

 

八幡「どこか宿を探すか」

 

雪乃「えぇ。でも、無さそうなのよね。民家も少ないし…」

 

八幡「ここ無人駅だから、軒先を借りるか」

 

雪乃「そうね、ベンチもあるし。それに、その…、貴方が居るわ」

 

八幡「お、おう」

 

ベンチに寄り添うように座る

 

八幡「寒くないか?」

 

雪乃「ちょっと寒いけど、大丈夫よ」

 

八幡「そうか」

 

八幡「なぁ、雪乃」

 

雪乃「なに?」

 

八幡「このまま遠くへ行きたいな」

 

雪乃「そうね。そして、貴方とずっと…。愛してるわ、八幡…」

 

八幡「雪乃?寝ちまったのか?」

 

八幡「ずっと電車に揺られて、あれだけ遊んだら疲れるよな」

 

八幡「俺も眠くなってきた…。俺も愛してるぞ、雪乃」

 

八幡「おやすみ…」

 

翌日

由比ヶ浜家

 

テレビ『…今日は冬型の気圧配置も緩み…』

 

結衣母「結衣、出かけるの?」

 

結衣「うん。ゆきのんもヒッキーも電話に出ないんだよね。心配だから行ってくる」

 

結衣母「気をつけてね」

 

結衣「いってきま~す」

 

テレビ『…次のニュースです。○○県○○群○○町の○○駅で男女二人が凍死しているのが発見されました。所持品から、千葉県在住の比企谷八幡さん(18)と雪ノ下雪乃さん(18)と見られ身元の確認を急いでいます。…』

 

 

 




切ない話に挑戦してみました


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。