やはり俺が箱庭に行くのはまちがっているのか。   作:ザンザス

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決着と星に願いを

"契約書類(ギアスロール)" 文面

 

『ギフトゲーム名"FAIRYTALE in PERSEUS"

 

・プレイヤー一覧

逆廻 十六夜

久遠 飛鳥

春日部 耀

比企谷 八幡

アリス・ストレンジ

レン・ライト

・"ノーネーム"ゲームマスター ジン=ラッセル

・"ペルセウス"ゲームマスター ルイオス=ペルセウス

 

・クリア条件 ホスト側のゲームマスターを打倒

・敗北条件

プレイヤー側のゲームマスターによる降伏。

プレイヤー側のゲームマスターの失格。

プレイヤー側が上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

・舞台詳細・ルール

*ホスト側のゲームマスターは本拠・白亜の宮殿の最奥から出てはならない。

*ホスト側の参加者は最奥に入ってはいけない。

*プレイヤー達はホスト側の(ゲームマスターを除く)人間に姿を見られてはいけない。

*姿を見られたプレイヤー達は失格となり、ゲームマスターへの挑戦資格を失う。

*失格となったプレイヤーは挑戦資格を失うだけでゲームを続行する事は出来る。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、"ノーネーム"はギフトゲームに参加します。 "ペルセウス"印』

 

"契約書類"に承諾した直後、五人の視界は間を置かずに光へと呑まれた。

次元の歪みは門前へと追いやり、ギフトゲームの入口へと誘う。

門前に立った八幡達が不意に振り返る。白亜の宮殿の周辺は切り離され、未知の空域に浮かぶ宮殿に変貌していた。此処は最早、箱庭であって箱庭ではない場所なのだ。

 

「姿を見られれば失格、か。つまりペルセウスを暗殺しろってことか?」

 

白亜の宮殿を見上げ、胸を躍らせるような声音で十六夜が呟く。その呟きにジンが答える。

 

「それならルイオスも伝説に倣って睡眠中だという事になりますよ。流石にそこまで甘くはないと思いますが」

 

「YES。そのルイオスは最奥で待ち構えているはずデス。それにまずは宮殿の攻略が先でございます。伝説のペルセウスと違い、黒ウサギ達はハデスのギフトを持っておりません。不可視のギフトを持たない黒ウサギ達には綿密な作戦が必要です」

 

黒ウサギが人差し指を立てて説明する。今回のギフトゲームは、ギリシャ神話に出てくるペルセウスの伝説の一部倣ったものだ。

宮殿内の最奥まで"主催者"側に気づかれず到達せねば、戦うまでもなく失格となる。

"契約書類"に書かれたルールを確認しながら飛鳥が難しい顔で復唱する。

 

「見つかった者はゲームマスターへの挑戦資格を失ってします。同じく私達のゲームマスター–––––––ジン君が最奥にたどり着けずに失格の場合、プレイヤー側の敗北。なら大きく分けて三つの役割分担が必要になるわ」

 

飛鳥の隣で耀が頷く。本来ならこのギフトゲームは百人、少なくても十人単位でゲームに挑み、その一握りだけがゲームマスターに辿りつけるというもの。

そんなゲームを、実戦経験の少ない彼らはたった七人で挑まなければならない。役割分担は必須だった。

 

「うん。まず、ジン君と一緒にゲームマスターを倒す役割。次に索敵、見えない敵を感知して撃退する役割。最後に、失格覚悟で囮と露払いをする役割」

 

「春日部は鼻が利く。耳も眼もいい。不可視の敵は任せるぜ」

 

十六夜の提案に黒ウサギが続く。

 

「黒ウサギは審判としてしかゲームに参加することができません。ですからゲームマスターを倒す役割は、八幡さんか十六夜さんにお願いします」

 

「あら、じゃあ私達は囮と露払いの役かしら?」

 

「悪いが、アリスは俺が戦闘するのに必須でな、レンの場合は自由にしていいと思ってる」

 

「どうしてかしら?」

 

「俺やレンのギフトは攻守一体の万能型なんだよ。俺は影や贋物を作り戦闘の幅を広げる」

 

「私は、光の物質化や反射。他にも相手の位置が分かったり、属性(炎や水など)の付与も出来る」

 

「成る程……なら、二人は自由にしていい。囮になるもルイオスのところに行くのも良しだ」

 

「助かる」

 

「さて、それじゃあちゃっちゃと勝ってレティシア取り戻しますか」

 

「残念ですが、そう簡単に事が運ぶかどうか……。油断しているうちに倒さねば、非常に厳しい戦いになると思います」

 

七人の目が一斉に黒ウサギに向く。飛鳥がやや緊張した面持ちで問う。

 

「……あの外道、それほどまでに強いの?」

 

「いえ、ルイオスさんご自身の力はさほど。問題は彼が所持しているギフトなのです。もし黒ウサギの推測が外れていなければ、彼のギフトは––––––」

 

「「隷属させた元・魔王(様)」」

 

「そう、元・魔王の……え?」

 

八幡と十六夜の補足に黒ウサギは一瞬、言葉を失った。

しかし素知らぬ顔で十六夜は構わず続ける。

 

「もしペルセウスの神話どおりなら、ゴーゴンの生首がこの世界にあるはずがない。あれは戦神に献上されているはずだからな。それにかかわらず、奴らは石化のギフトを使っている、––––––星座として招かれたのが、箱庭の"ペルセウス"ならさしずめ、奴の首にぶら下がっているのは、アルゴルの悪魔ってところか?」

 

「……アルゴルの悪魔?」

 

十六夜の話が分からない飛鳥達は顔を見合わせ、小首を傾げる。

 

「ペルセウス座の固有名だ。食変光星の代表。アルゴルってのはアラビア語アル・グールって意味で悪魔を意味する。

んで、アルゴルはペルセウス神話に出てくるメデューサの首元にあたる。恒星としては最も明るく、神話では『悪魔の星』と呼ばれている」

 

黒ウサギは驚愕したまま固まっていた。

彼女だけが今の答えに帰結することの異常さに気がついていたからだ。

 

「八幡さん、十六夜さん……まさか、箱庭の星々の秘密に……?」

 

黒ウサギは信じられないもの見る目で首を振りながら問いかける。

 

「まあな。このまえ星を見上げた時に推測して、ルイオスを見た時にほぼ確信した。あとは手が空いた時にアルゴルの星を推測して、答えを固めたってところだ。まあ、機材は白夜叉が貸してくれたし、難なく調べることができたぜ」

 

「俺は違うな。元からあった知識と箱庭に来て初日に書庫でいろいろ調べたからな。まあ、これくらいなら元あった知識で十分考察できたな」

 

十六夜がフフンと自慢げに笑い。黒ウサギは含み笑いを滲ませて、八幡と十六夜の顔を覗き込んだ。

 

「八幡さんは何となくですが。もしかして十六夜さんってば、意外に知能派でございます?」

 

「何を今さら。俺は生粋の知能派だぞ」

 

「……さて、無駄話もそこまでだ。そろそろゲームを始めるぞ」

 

「そうだな」

 

「んじゃあ、逆廻」

 

「ん?」

 

「いっちょ、派手にスタート嚙ましてくれ」

 

「へっ、了解‼︎」

 

「え?ちょ、ちょっと!何する気!?」

 

「何って、そんなもん–––––––こうやってあげるに決まってんだろ(、、、、、、、、、、、、、、、、)ッ!」

 

轟音と共に、白亜の宮殿の門を蹴り破るのだった。

 

* * *

 

「さて、じゃあ俺は先に行くわ。アリス、タイプ『回転式拳銃』(リボルバー)

 

「分かった」

 

「影技《ドッペルゲンガー》、影技《影の潜伏者》」

 

銃になったアリスを握り、八幡は影を操り分身を作ったあとすぐさま柱の方に移動しその影に身を潜めた。

 

「じゃあ、私も」

 

レンは光を反射さ、自分の姿が見えない様にした。

 

「私もルイオスのところに行ってもいいんだけど、今回は姿を消しながら囮に着くね」

 

「了解だ。じゃ、お前らまた最奥で」

 

八幡はそう言いメンバーの前から気配を消した。

 

「八幡も行ったし、ペルセウスの人達も近づいて来たから各々自身の役割を果たそう」

 

「そうだな。っと、最後にいいか、ライト」

 

「ん?」

 

「比企谷のやつ、兜の複製出来るくせに何故やらなかった」

 

「八幡の複製には欠点があるの。それはその物が目の前に無いと複製が出来ないんだよ」

 

「成る程。かなり精密な作業なのか」

 

「うん」

 

「っと、ちょっとだが足音が聞こえて来たな」

 

「ジンと逆廻はそのまま進んで。私と耀が援護するから」

 

「うん」

 

「了解だ」

 

レンと耀の援護の元、十六夜とジンは宮殿の最奥へと進んで行った。

 

* * *

 

十六夜達と別れて一足先に最奥まで見つからずに辿り着いた八幡とアリスはルイオスの様子を見ていた。

 

「警戒心ゼロ、首にはゴーゴン……逆廻とジンが来れば完全勝利確定だな」

 

『そうだな。これなら正直、八幡が今出なくても十二分だな』

 

そんな他愛無い会話をしていると、安堵の声を漏らした黒ウサギの声が聞こえてきた。

 

「–––––––ふん。ホントに使えない奴ら。今回の件でまとめて粛清しないと」

 

翼の生えたロングブーツを履いて、ルイオスが空を飛んでいた。

 

「まあでも、これでもコミュニティが誰のおかげで存続できているか分かっただろうね。何はともあれようこそ白亜の宮殿・最上階へ、ゲームマスターとして相手しましょうあれ?この台詞言うの初めてかも?」

 

それは全て騎士達が優秀だったからだ。今回のように準備が伴わない、突然の決闘でなければ、十六夜達の目論見通りに事は進まなかっただろう。

 

「ま、不意を打っての決闘だからな。勘弁してやれよ」

 

「フン。名無し風情を僕の前に来させた時点で重罪さ」

 

ルイオスはギフトカードから炎の弓を出して構える。

 

「炎の弓?ペルセウスの武器で戦うつもりは無い、という事でしょうか?」

 

「飛べるのにどうして同じ土俵で戦わなきゃいけないのさ。それにメインで戦うのは僕じゃない。僕はゲームマスターだ。僕の敗北はそのまま"ペルセウス"の敗北になる。そこまでリスクを負う様な決闘じゃないだろう?僕の代わりに戦うのはコイツさ」

 

ルイオスは首のチョーカーについてる装飾を引き千切ると投げ捨て、獰猛な表情で叫んだ。

 

「目覚めろ。アルゴールの魔王!」

 

光が褐色に染まり、四人の視界を染めていく。白亜の宮殿に共鳴するかのような女の声が響き渡った。

 

「GYAAAAAAAAAAaaaaaaa!」

 

現れた女の発する声は中枢を狂わせるほどの不協和音で人の言葉とは程遠いものだ、女は拘束ベルトを引きちぎり、半身を反らし更なる絶叫をあげる。

 

「ra、GYAAAAAaaaaaa!!」

 

「な、なんて絶叫を」

 

「避けろ!黒ウサギ!!」

 

えっ、と硬直する黒ウサギ。頭上めがけ岩塊が山のように落下する、が岩が跡形もなく爆発する、よく見る矢が命中し岩を砕いていた。

 

「飛べない人間は不便だよね。落ちてくる雲も避けれないんだから。今頃君たちの仲間と部下どもは石になってるだろうさ。ま、無能にはいい体罰さ」

 

十六夜達が石になっていないのは、ルイオスの遊び心だろう、ようやっと訪れた初めての挑戦者。すぐに終わらせては勿体無い。吐く軽口より、内心の闘志は遥かに高まっているのだろう。

 

「目論見が外れたな。レティシアが戻れば魔王に対抗できると思ったんだろうが、肝心のレティシアは使えない。どうする、例の作戦止めるか?」

 

「……ですが、僕たちにはまだ十六夜さんがいます。貴方達が本当に魔王に勝てる人材だと言うのなら、この舞台で僕達にそれを証明してください」

 

「OK。よく見てな御チビ」

 

「じゃ、俺はルイオスの相手して良いか?」

 

八幡が入り口からゆっくり歩きながら銃をルイオスに向けて言う。

八幡が現れた事にルイオスが驚いていた。

 

「な!貴様、どうして石化していないんだ‼︎」

 

「俺はゲーム始まって数分後にはここにいたんだが?」

 

「な!?」

 

「ま、そんな事はどうでもいい。さっさと始めようや」

 

「名無し風情が、後悔するがいい!」

 

八幡はルイオスと、十六夜はアルゴールとの勝負が始まった。

十六夜は真正面からアルゴールとぶつかり合う。押し合いになったのは僅か一瞬。アルゴールは耐え切れず押し切られ、その場でねじ伏せられる。

 

「ハハ、どうした元・魔王様!今のは本物の悲鳴みたいだったぞ!」

 

獰猛な笑顔でねじ伏せ、さらに腹部を幾度も踏みつける。それだけで闘技場に亀裂を発生させ白亜の宮殿を砕く程の力だ。

八幡は宙を飛ぶルイオスに向かって銃を撃つ。英雄の子孫と言えど弓よりも速度の速い現代武器を用いられては弓を構える暇もなかった。

 

「おいおい、どうしたよ。ペルセウスのリーダーさん、これならまだお前の部下の方がいい仕事してたな。アリス、モード『ナイフ』」

 

『手抜くな』

 

「貴様ぁ‼︎」

 

ナイフになったアリスが言った事が聞こえたのかルイオスは怒りの形相で距離をつめ八幡にパルパーを振りかぶる。

 

「……こんなもんか」

 

少しガッカリした表情を見せながら八幡は目にも止まらぬ速さでルイオスにナイフで薄く切る。

 

「力があるクセに努力を怠るとこうなるのか」

 

「き……貴様、、本当に人間か!?いったいどんなギフトを持ってる!?」

 

「ギフトネーム・ "正体不明" ーーん、悪いなこれじゃわからないか」

 

「ただの死人だ」

 

「……もういい、アルゴール。宮殿の悪魔化を許可する!奴を殺せ!」

 

ルイオスの命令に従うようにアルゴールは絶叫する。すると黒いしみがアルゴールを中心に広がり、あたりからいろんな魔獣を生み出す。

 

「確か伝承じゃゴルゴーンにはそんな力あったな」

 

「そうだ!これが数々の魔獣を生み出したゴーゴンの特性!お前の相手は魔王とこの宮殿そのものだ!逃げ場はないものと知れ!」

 

「そうかい……ならこの宮殿ごと壊せばいい話だな?」

 

「「え?」」

 

ジンと黒ウサギは嫌な予感がした。十六夜は無造作に拳を振り下ろし宮殿に叩き込む。闘技場が崩壊し瓦礫は四階を巻き込んで三階まで落下する。黒ウサギとジンは息を呑む、翼を持つルイオスも同様だ、闘技場には常時防備結界がはられているそれこそ、山河を打ち砕く程の力がなければこの様なことは不可能なのだ。

 

「・・・馬鹿な、どういう事だ、奴の拳は山河を撃ち砕くほどの力があるのか!?」

 

「どうした?もうネタ切れか?」

 

「やっぱ規格外だわアイツ」

 

ルイオスは悔しそうな顔を浮かべるがすぐに真顔に戻った。

八幡は十六夜の異常さに苦笑いを浮かべていた。

 

「もういい、アルゴール。終わらせろ」

 

石化のギフトを解放した。星霊・アルゴールは謳う様に不協和音と共に、褐色の光を放つ。これこそアルゴールを魔王に至らしめる根幹。天地に至るまで全てを褐色の光で包み、灰色の世界へと変えていく星霊の力、褐色の光に包まれた十六夜は真正面から捉え、

 

「・・・ゲームマスターが狡い真似してんじゃねぇ!!!」

 

その光を踏み潰した、アルゴールの放つ光をガラス細工の様に砕いたのだ。

 

「せ、“星霊”のギフトを無効化―――いえ、破壊した!?」

 

「あり得ません! あれだけの身体能力を持ちながら、ギフトを破壊するなんて!?」

 

(成る程な。ギフトの鑑定の時にギフトカードがエラーを起こしたんじゃなくて、逆廻のギフトが破壊したのか)

 

 白夜叉が“ありえない”と結論付けた理由。その二つの恩恵は、相反するギフトのはずなのだ。先も説明したとおり、この神々の箱庭において、“恩恵”を無効化するものなどさして珍しくはない。だがそれは武具などの形で肉体と別に顕現しているものに限る。

 

「さぁ、続けようぜゲームマスター。次はどんな手を使うんだ?」

 

「もうこれ以上のものは出ないと思います。アルゴールが拘束具で繋がれてる時点で察するべきでした。ルイオス様はアルゴールを支配するにはまだ未熟すぎるのです」

 

ルイオスは悔しそうにした俯く。

八幡が思い出した様に呟く。

 

「あ、そうだ。もしこのまま負けた賭けで約束した三つの要望を叶えてもらうぞ」

 

「何が欲しいんだ?」

 

「いいのか?そんなこと聞いて。聞いたら多分、絶対に勝たなくちゃいけなくなるぞ?」

 

「何?」

 

「じゃあ言うぞ。一つ目、まぁこれが当初からの目的だがレティシアの返却。二つ目、ペルセウスの名を剥奪。三つ目、可能な限り我々"ノーネーム"にサウザンドアイズ発行の通貨を渡す、だ」

 

ルイオスは恐怖に顔を歪め怯える。

大方、"ノーネーム"になった自分たちを想像したんだろう。

 

「や、やめろ……!」

 

ここで負ければ旗印が奪われ、金もなくなる。そうなれば "ペルセウス" は決闘を断ることをできない。今の状況で戦うなど不可能だ。ルイオスは自身のコミュニティが崩壊の瀬戸際に立たされているのに気づく。

 

「そうか。嫌か。なら方法はひとつしかないよな?くだらねぇプライド捨てて、俺達に勝つしかねぇな」

 

『中々鬼畜な事を言うな、八は……』

 

自ら招いた組織の危機にルイオスは覚悟を決めて叫ぶ

 

「負けてたまるか!奴を倒すぞ アルゴオォォォォォル!!」

 

* * *

 

 

「「「じゃあこれからよろしく、メイドさん」」」

 

「「「え?」」」

 

“ペルセウス”とのギフトゲームが終わり、レティシアを助けて目を覚まして問題児達が言ったのはこの一言だ。

 

「え?じゃないわよ今回のゲームで活躍したの私たちだけじゃない?あなた達はくっ付いてきただけだもの」

 

「うん、私なんて力一杯殴られたし、石になったし」

 

「あ、それ私も」

 

「それなら、私もだよ」

 

「ま、舞台設定から何もなも全部やったのは俺だけどな」

 

「比企谷達はいらないって言うから、所有権は3:3:3で話は付いた」

 

「何を言っちゃってんでございますかこの人達!?」

 

最早ツッコミが追いつかず黒ウサギは混乱する、同様にジンも混乱する。

そんな中、当事者であるレティシアは冷静だった。

 

「んっ………ふ、む。そうだな。今回の件で、私は皆に恩義を感じている。コミュニティに帰れたことに、この上なく感動している。だが、親しき仲にも礼儀あり、コミュニティの同士にもそれを忘れてはならない。君達が家政婦をしろというのなら、喜んでやろうじゃないか」

 

「レ、レティシア様!?」

 

黒ウサギの焦りは今までにないくらいだ、尊敬していた先輩をメイドとして扱わなければならないことになるなんて。

 

「私、ずっと金髪の使用人に憧れていたのよ。私の家の使用人ったらみんな華も無い可愛げの無い人達ばかりだったんだもの。これからよろしく、レティシア」

 

「よろしく・・・・・・いや、主従なのだから『よろしくお願いします』の方がいいかな?」

 

「使い勝手がいいのを使えばいいよ」

 

「そ、そうか。……いや、そうですか? んん、そうでございますか?」

 

「黒ウサギの真似はやめとけ」

 

ヤハハと笑う十六夜。意外と和やかな四人を見て、黒ウサギは力無く肩を落としながらうなだれるのであった。

 

* * *

 

それから三日後の夜。

子供達を含めた“ノーネーム”総勢一二七人+一匹は水樹の貯水池付近に集まり、ささやかながら料理が並んだ長机を囲んでいた。

 

「だけどどうして屋外の歓迎会なのかしら?」

 

「うん。私も思った」

 

「黒ウサギなりに精一杯のサプライズってところじゃねえか?」

 

「そうだな」

 

「かなりお金使ったね」

 

「問題ないだろ。ペルセウスから出来るだけ巻き上げたんだから」

 

"ノーネーム"の財政がヤバいことはアリスやレン、黒ウサギから聞いていた八幡は昨日のギフトゲームを利用して財政難の問題解決をすると決めていた。

今日のサプライズでかなりの出費を出したと思われるが以前の完全な貧困状態からは回復した"ノーネーム"には然程痛手にはならなかった。

 

「それでは本日の大イベントが始まります!みなさん、箱庭の天幕に注目してください!」

 

黒ウサギに言われて天幕を見ると大量の流れ星が流れていた。

 

「この流星群を起こしたのは他でもありません。我々の新たな同士、異世界からの四人とアリス、レンお姉ちゃんがこの流星群の切っ掛けを作ったのです」

 

「「「「「「え?」」」」」」

 

「箱庭の世界は天動説のように、全てのルールが此処、箱庭の都市を中心に回っております。先日、同士が倒した“ペルセウス”のコミュニティは、敗北の為に“サウザンドアイズ”を追放されたのです。そして彼らは、あの星々からも旗を降ろすことになりました」

 

八幡達六人は驚愕する、完全に絶句した。

 

「……なっ……まさか、あの星空から星座を無くすというの!?」

 

「今夜の流星群は“サウザンドアイズ”から“ノーネーム”への、コミュニティ再出発に対する祝福も兼ねております。星に願いをかけるもよし、皆で鑑賞するもよし、今日は一杯騒ぎましょう♪」

 

飛鳥の驚きに黒ウサギは笑みを浮かべて返す。

 

「こいつはいい目標ができたな」

 

「目標でございますか?なんでございますか?」

 

「あそこに俺達の旗を飾る」

 

今度は黒ウサギが絶句する。しかし弾けるような笑い声をあげる。

 

「それは……とてもロマンがございます」

 

「だろ?」

 

「はい!」

 

「……アリス、レン。俺は逆廻みたいに大きな目標は立てられない。だが、ただの死人だった俺に生きる意味を与えてくれた先生とお前達に恩を返せる様に俺なりのやり方ではあるが努力するよ」

 

「あぁ」

 

「分かったよ」

 

その道はまだまだ険しい。奪われたものをすべて取り返しその上でコミュニティをさらに盛り上げる。ほかの人は反対しないだろう、そんな予感があった。すべてを捨ててここに来たそれに見合う対価はまだ始まったばかりだ。

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