やはり俺が箱庭に行くのはまちがっているのか。   作:ザンザス

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投稿遅れてしまい申し訳ありませんでした。


ハンティング

昨晩の出来事が終わり、八幡は部屋に戻ろうとする時に書物などがある所はないか、とジンに聞きに行き案内してもらった屋敷の地下にある書庫にそれから朝まで籠っていた。

 

「ペルセウス、隷属させた魔王……か」

 

コミュニティの元魔王である仲間を所持しているコミュニティの事を調べつつ、箱庭の事も調べていた。

 

「しっかし魔王ってのは厄介だな……鬱陶しいほど

 

顔を険しくしそんなことを呟いていると扉からノック音がした。

 

「八、居るか?そろそろ時間だから。行くぞ」

 

「分かった」

 

アリスに呼ばれ八幡は、屋敷を出て"フォレス・ガロ"の住居地に出発した。

 

* * *

 

「なぁアリス」

 

「ん、何だ?」

 

「レンのやつが居ないがどうした?」

 

「ああ、レンはコミュニティで年少組のお守りだ」

 

「なるほど」

 

「それと、懐かしいなその服」

 

「あ?ああ、この服か。レンが仕立ててくれたんだ」

 

「そうか」

 

そんな緊張もない話をしていると黒ウサギの声が聞こえた。

 

「あ、皆さん!見えてきました……けれど、」

 

黒ウサギは一瞬、目を疑った。それと言うのも、居住区と言うにはかけ離れ過ぎたものが眼前に広がっていたからである。ツタの絡む門をさすり、鬱惣と生い茂る木々を見上げて耀が呟く。

 

「……。ジャングル?」

 

「虎の住むコミュニティだしな。おかしくないだろ」

 

「いや、おかしいです。"フォレス・ガロ"のコミュニティの本拠は普通の居住区だったはす……それにこの木々はまさか」

 

ジンはそっと木々に手を伸ばす。樹枝は生き物のように脈打ち、肌をどうして胎動の様なものを感じさせた。

 

「やっぱり–––––"鬼化"してる?いや、まさか」

 

「ジン君。ここに"契約書類"が貼ってあるわよ」

 

飛鳥が声を上げる。門柱に貼られた"契約書類"には今回のゲーム内容が記されていた。

 

『ギフトゲーム名 "ハンティング"

 

・プレイヤー一覧

久遠 飛鳥

春日部 耀

アリス・ストレンジ

ジン=ラッセル

 

・クリア条件 ホストの本拠内に潜むガルド=ガスパーの討伐。

・クリア方法 ホスト側が指定した特定の武具でのみ討伐可能。指定武具以外は"契約"によってガルド=ガスパーを傷つける事は不可能。

・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

・指定武具 ゲームテリトリーにて配置。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、"ノーネーム"はギフトゲームを開催します。 "フォレス・ガロ"印』

 

「ガルドの身をクリア条件に……指定武具で打倒⁉︎」

 

「こ、これはまずいです!」

 

ジンと黒ウサギが悲鳴の様な声を上げる。

 

「このゲームはそんなに危険なの?」

 

「いえ、ゲームそのものは単純です。問題はこのルールです。このルールでは飛鳥さんのギフトで彼を操る事も、耀さんとアリスのギフトで傷をつける事も出来ない事になります……!」

 

飛鳥が黒ウサギに問う。

 

「"恩恵"ではなく"契約"によってその身を守っているのです。これでは神格でも手が出せません!彼は自身の命をクリア条件に組み込む事で、御二人の力を克服したのです!」

 

「すいません、僕の落ち度でした。初めに"契約書類"を作った時にルールもその場で決めておけばよかったのに……!」

 

ルールを決めるのが"主催者"である以上、白紙のゲームを承諾するというのは自殺行為に等しい事だった。ゲームに参加した事がないジンは、ルールが白紙のゲームに参加する事がどれほど愚かな事だとは分かっていなかったのだ。

 

「敵は命がけで五分に持ち込んだってことか。観客にしてみれば面白くていいけどな」

 

「気軽に言ってくれるわね……条件はかなり厳しいわよ。指定武具が何も書かれていないし、このまま戦えば厳しいかもしれない」

 

「いや、そうでもないぞ。ガルド自身に"恩恵"が効かないだけで使えはするんだ。そこは本人の技量次第だな」

 

飛鳥がゲームに挑んだ責任を感じているのに気付いた黒ウサギと耀は、飛鳥の手をギュっと握って励ます。

 

「だ、だいじょうぶですよ!"契約書類"には『指定』武具としっかり書いてあります!つまり最低でも何らかのヒントがなければなりません。もしヒントが提示されなければ、ルール違反で"フォレス・ガロ"の敗北は決定!この黒ウサギがいる限り、反則はさせませんとも!」

 

「大丈夫。黒ウサギもこう言ってるし、私も頑張る」

 

「……ええ、そうね。むしろあの外道のプライドを粉砕するためには、コレぐらいのハンデが必要かもしれないわ」

 

黒ウサギは飛鳥を励まし、耀はやる気を見せながら二人は飛鳥に檄を入れる。これは売った喧嘩で買われた喧嘩、勝機があるなら諦めてはいけない。

その陰で十六夜はジンに昨日のことを話していた。

 

「この勝負に勝てないと俺の作戦は成り立たない。だから負ければ俺はコミュニティを去る。予定に変更はないぞ。いいな御チビ」

 

「……分かっています。絶対に負けません」

 

八幡とアリスもその隣で話していたら。

 

「アリス、俺のギフトが使えるからと言って油断するなよ。探知と逃げるには役立つが攻撃は無力化されるんだからな」

 

「安心しろ。それくらい分かっている」

 

「気を付けろよ」

 

「ああ」

 

* * *

 

門の開閉がゲームの合図だったのか、生い茂る森が門を絡めるように退路を塞ぐ。

光を遮るほどの密度で木々が生えもはやそこは人が通れる道ではなかった。

緊張した面持ちのジンと飛鳥に、耀とアリスが助言する。

 

「大丈夫。近くには誰もいない。匂いで分かる」

 

「そうだな。何か来る気配も察知しないからな」

 

「あら、春日部さんは犬にもお友達が?」

 

「うん。二十匹ぐらい」

 

「アリスさんの場合はあの"契約"って言うギフト?」

 

「ああ、そうだ。あのギフトは正確には契約した主人の"恩恵"を二割くらい使えるっていうギフトだ。居場所の把握はその付属効果だ」

 

耀のギフトは、獣の友人を作れば作るほど強くなる。身体能力がずば抜けて高いのはそのためだ。五感は十六夜や八幡よりも優れているだろう。

アリスは"契約"の能力で八幡のギフトの"影の道化"を少し使えるようになっているため陰で周囲を探索していた。

 

「詳しい情報はわかりますか?」

 

「それは分からない。でも風下にいるのに匂いがないのだから、どこかの家に潜んでいる可能性は高いと思う」

 

「私は、八と違ってあまり影を伸ばせないからまだ分からない」

 

「ではまず外から探しましょう」

 

元は人が住んでいたとは思えない廃墟と化していた。

黒ウサギは"フォレス・ガロ"に大きなゲームを仕掛けるのは不可能だと言っていたが、たった一晩で奇怪な森を作り上げたガルドの力は油断ならないものだろう。

 

「彼にしてみれば一世一代の大勝負だもの。温存していた隠し球の一つや二つあってもおかしくないということかしら」

 

「ええ。彼の戦歴は事実上、不戦敗も同じ。明かさずにいた強力なギフトを持っていても不思議ではありません。耀さんとアリス姉はガルドを見つけても警戒は怠らないでください」

 

三人は散策をしながら指定武具を探す。耀は一番高い木に飛び乗ってガルドを警戒していた。

 

「……駄目だな。ヒントも武具もない。この状況だとガルド自身がその役目を担っているな」

 

「そうね。気が乗らないけど、方針を変えましょう。まずは春日部さんの力でガルドを探して」

 

「もう見つけてる」

 

ジンと飛鳥、アリスは樹の上にいる耀へ目を向けた。

樹を飛び降りた彼女はレンガの残骸が残る街路を指し、

 

「本拠の中にいる。影が見えただけだけど、目で確認した」

 

耀の瞳は普段の瞳と違い、猛禽類を彷彿させるような金の瞳で本拠を見ていた。

鳥の視力をもってすれば造作もない距離だったのだろう。

 

「そういえば鷹の友達もいるのね。けど春日部さんが突然異世界に呼び出されて、友達はみんな悲しんでるんじゃない?」

 

「そ、それを言われると……少し辛い」

 

「おい、その話は後にして今はゲームに集中してくれ」

 

少し落ち込む耀に飛鳥とアリスは肩を叩き、警戒しながら館へ向かった。

館までの道は木々が侵入を阻むように絡み合っている。

 

(これだけの量を鬼化させるなんて……まさか彼女が……?)

 

ジンは一人だけ心当たりがあったが、ありえないとその考えを振り払う。

 

「見て。館まで飲み込まれてるわよ」

 

"フォレス・ガロ"の本拠に着く。虎の紋様を施された扉は無残に取り払われ、窓ガラスは砕かれている。豪奢な外観は塗装もろともツタに蝕まれて剥ぎ取られていた。

 

「ガルドは二階に居た。入っても大丈夫」

 

内装は、贅を尽くして作らせた家具は打ち倒されて散乱しているという酷いものだった。

流石に四人はこの舞台に疑問を持ち始めていた。

 

「この奇妙な森の舞台は……本当に彼が作ったものなの?」

 

「……分かりません。"主催者"側の人間はガルドだけに縛られていますが、舞台を作るのは代理を頼めますから」

 

「代理を頼むにしては、罠が無かったが?」

 

「うん」

 

その疑問にアリスと耀が応える。

 

「森は虎のテリトリー。有利な舞台を用意したのは奇襲のため……でもなかった。それが理由なら本拠に隠れる意味がない。ううん、そもそも本拠を破壊する必要なんてない」

 

一番の疑問は、ガルドの野望の象徴とも言える本拠の破壊だった。普通そんなことをするだろうか。

四人は今までと違う緊張感の中で散策を開始する。

 

「二階に上がるけど、ジン君。貴方は此処で待ってなさい」

 

「ど、どうしてですか?僕だってギフトを持っています。足手まといには」

 

「そうじゃない。久遠は上でなにがあるか分からないから二手に分かれて退路を守って欲しいって言ってるんだ。正直に言って久遠にも残って欲しい」

 

「……どうしてかしら?」

 

「参加者は私達、四人。私と春日部は攻撃特化の力が、久遠は支援型の力がある。もしも何かあった時に、久遠の力があればガルドの足止めは可能だろう。だから久遠は何かあった時に準備してくれるとありがたいと言うことだ」

 

「でも、このゲームは私が売ったものでもあるのよ。そんなこと言われても」

 

「そうだな。じゃあガルドの様子を見てから考えてくれ」

 

「ええ、分かったわ」

 

四人は警戒しながら二階へ上がり、その先にあった扉の両脇に立って機会を窺う。意を決し勢いよく飛び込むと中から、

 

「ギ……」

 

「–––––––……GEEEEEYAAAAAaaaa‼︎‼︎」

 

言葉を失った虎の怪物が、白銀の十字剣を背に守って立ち塞がった。

 

* * *

 

門前で待っていた黒ウサギと十六夜、八幡の元に、獣の咆哮が届く。

森に忍び込んだ野鳥達は一斉に飛び立ち、一目散に逃げて行った。

 

「い、今の凶暴な叫びは……?」

 

「ああ、間違いない。虎のギフトを使った春日部だ」

 

「あ、なるほど。ってそんなわけないでしょう!?幾ら何でも今野は失礼でございますよ!」

 

ウサ耳を立てて起こる黒ウサギ。

十六夜も本気で言ったわけではなく、肩を竦ませて訂正した。

それに乗じて八幡も冗談を言う。

 

「じゃあジン坊ちゃんだな」

 

「いやいや、腹を空かせたアリスだろ」

 

「ボケ倒すのも大概にしなさい‼︎‼︎」

 

専用のハリセンでツッコミを入れる。よっぽど暇を持て余していたのだろう。

十六夜は門からはみ出た奇妙な樹の枝をへし折って笑う。

 

「今の咆哮といい、この舞台といい、前評価より面白いゲームになってるじゃねぇか。見に行ったらまずいのか?」

 

「お金をとって観客を招くギフトゲームも存在しておりますが、最初の取り決めにない限りは駄目です」

 

「何だよつまんねえな。"審判権限"とそのお付きってことにすればいいじゃねえか」

 

「だから駄目なのですよ。ウサギの素敵耳は、ここからでも大まかな状況がわかってしまいます。状況が把握できないような隔絶空間でもない限り、侵入は禁止です」

 

チッ、と舌打ちした十六夜は手の中で蠢く樹を縦に引き裂きながら呟く。

 

「……貴種のウサギさん、マジ使えね」

 

「せめて聞こえないように行ってください!本気でへこみますから!」

 

ペシペシと叩く黒ウサギ。

だが状況がわかってまう黒ウサギは、内心ハラハラしながら三人の無事を祈っていた。

 

(この鬼化植物……必ず彼女が関わっているはずです。ならゲームは公平なルールで提示されているはずです。三人ともどうかご無事で)

 

「ん?」

 

「どうした。比企谷?」

 

「いや、何でもない」

 

「そうか」

 

(アリスの動きが若干おかしくなってる?)

 

"契約"でアリスの動きを把握していた八幡はそう思った。

 

* * *

 

目にも留まらぬ突進を仕掛ける虎を止めたのは、飛鳥を庇った耀とアリスだった。

二人は飛鳥を階段に突き飛ばし叫ぶ。

 

「「逃げて(ろ)!」」

 

ワータイガーではなく、虎の怪物そのものになったガルドは四人を待ち構えていた。階段を守っていたジンはガルドの姿を見るや否や、彼の身に何が起こったかを理解した。

 

「鬼、しかも吸血鬼!やっぱり彼女が」

 

「つべこべ言ってないでさっさと逃げろジン‼︎久遠頼んだぞ‼︎」

 

「ええ‼︎」

 

はジンの襟を掴んだ階段から飛び降りる。

二人を標的にしたガルドは二人を追い変えようとするが、アリスにそれを阻まれた。

 

「GEEEEYAAAAaaa‼︎」

 

「行かせるか‼︎」

 

飛鳥とジンが屋敷から出たのを一瞬だけ確認するとアリスは耀に指示を出す。

 

「春日部、武器を取れ!」

 

「分かった‼︎」

 

耀が武器を取りに行ったのを察知したガルドはアリスに背を向け耀を追いかけてる。

 

「GEEYAAaa‼︎」

 

「やっぱり追いかけるか、春日部‼︎武器は取れたか‼︎」

 

「うん!」

 

「よし、私が盾になるからガルドに攻撃しろ」

 

「分かった」

 

ガルドが耀に攻撃を仕掛けるが横から入って来たアリスが腕を盾にして防ぎ、その横から耀が回り込んで指定武具で攻撃をする。

 

「GEEEEYAAAAaaaa‼︎」

 

「グッ、流石に強い。だが、今だ春日部‼︎」

 

「ハアァァァ‼︎」

 

「GEEEEYAAAAaaaaa‼︎」

 

「なっ!」

 

「え⁈ きゃあ‼︎」

 

「春日部ェ‼︎」

 

ガルドに攻撃が当たる、と言う直前急激にガルドの力が強くなりアリスを弾き、耀の右腕を爪で切りつけた。

 

「春日部、大丈夫か‼︎」

 

「う、うん……」

 

(マズい、傷も若干深いが出血が……一旦撤退するか)

 

「一旦この場から逃げるぞ」

 

「分かった」

 

アリスは影を使って天井を破壊し、耀を抱えて館を退散した。

 

「辛い所悪いが、久遠とジンの場所分かるか?」

 

「うん」

 

アリスは耀の案内に従って二人の元へ急いだ。

館から少し遠くの茂みに向かうと飛鳥の声が聞こえた。

 

「誰?」

 

「私達だ」

 

二人は耀の右腕を見るや否や悲鳴のような声を上げた。

 

「か、春日部さん!大丈夫なの!?」

 

「大丈夫じゃ……ない。凄く痛い。ちょと、本気で泣きそうかも」

 

そう言うと踏ん張っていた力が弱まって崩れ落ちた。

 

「済まない。剣は取れたんだが想像以上に力があって春日部に攻撃が行ってしまった」

 

「ほんとは倒すつもりだった。……ごめん」

 

何に対しての謝罪かは分からないが、そう言って耀は気を失った。

 

「傷よりも出血が酷い……久遠にジン、ここで待ったてくれないか?直ぐに終わらせてくる」

 

「いえ、私も行くわ」

 

「だが……」

 

「友達がこんなことになってジッとなんてしてられないわ」

 

「そうか。なら、行くぞ」

 

「あ、アリス姉さん」

 

「大丈夫だ。もう、負けない」

 

「出血、これで止めておいてくれる」

 

「え……あ、はいっ」

 

飛鳥は髪を二つに結んでいたリボンを解く。

 

「じゃあ、行ってくる」

 

「行ってくるわ」

 

声に反応したのか、耀は左手を振って"いってらしゃい"を込めて答えるのだった。

 

* * *

 

「久遠」

 

「何かしら?」

 

「どうやってガルドを屋敷の外に出す?」

 

「そうね……燃やすっていうのはどうかしら?」

 

「いいな。それで決まりだ」

 

「なら、早速」

 

「ああ、始めよう」

 

二人は屋敷の前で燃えていた松明を館に投げ込んだ。

それから数分で館全体に燃え広がり、ガルドが屋敷から飛び出してきた。

 

「GEEEEYAAAAaaaa‼︎‼︎」

 

「思っていたより早かったな」

 

「そうね」

 

「なら」

 

「ええ」

 

「「決着をつけよう(つけましょう)」」

 

そういって二人は森の一本道へ入って行き、ガルドはそれを追いかけた。

 

「じゃあ、手筈通りに」

 

「分かったわ。……今よ、拘束しなさい!」

 

「影よ、木々を覆え‼︎」

 

一喝、鬼種化した木々が一斉に影で覆われながらガルドへ枝を伸ばした。

 

「GEEEEYAAAAaaaa‼︎‼︎」

 

樹を振り払うように絶叫を上げる虎の怪物。だがそれよりも速く、飛鳥の支配によって破魔の力を十分に発揮する白銀の十字剣が、正眼に構えられた飛鳥の手によって額を貫く。

最後の抵抗で吹き飛ばされた飛鳥は木々に背を強く打ち、咳き込みながら苦笑を交えた皮肉げな顔で言葉をかけた。

 

「今さら言ってはアレだけど……貴方、虎の姿の方が素敵だったわ」

 

「大丈夫か、久遠?」

 

「ええ。さぁ、春日部さんの元に急いで行きましょう」

 

* * *

 

ゲーム終了と同時に木々が霧散した。樹によっては支えられていた廃屋が倒壊していく音を聞いて十六夜と八幡、黒ウサギは一目散に走り出す。

 

「おい、そんな急ぐ必要ねえだろ?」

 

「大ありです!黒ウサギの聞き間違いでなければ、耀さんはかなりの重傷のはず……!」

 

「黒ウサギ!早くこっちに!耀さんが危険だ!」

 

風より速く走る三人は瞬く間にジン達の元に駆けつけた。廃屋に隠れていたジンは三人を呼び止める為に叫ぶ。黒ウサギは耀の容体を見て思わず息を呑んだ。

 

「すぐコミュニティの工房に運びます。あそこなら治療器が揃ってますから。御三人はアリスと飛鳥さんと合流してから共に帰ってください」

 

「わ、わかったよ」

 

「おい、待て黒ウサギ」

 

「何ですか。八幡さんこの一大事に!」

 

「まあ、ちょっと落ち着け。傷はここで治す」

 

「え?」

 

八幡は耀に触る。すると傷がだんだん小さくなって行き終いには塞がった。

 

「こ、これは‼︎」

 

「傷は塞がったが、出血した分の血は元に戻らないから戻って輸血してやれ」

 

「は、はい‼︎」

 

黒ウサギは耀を抱えて全力疾走で工房へ向かった。

 

「は、八幡さん。今のは、治療系のギフトですか?」

 

「いや、違う。アレはただ傷を"移し替えた"だけだ」

 

「移し替えただと?だったら比企谷、お前の右腕は……」

 

十六夜の言葉を遮るように、ブシャッと音を立て、右腕に傷が出来る。

 

「八幡さん‼︎」

 

「大丈夫だ。直に治る」

 

「で、ですが……」

 

「それよりも、お前らはやらなきゃいけないことがあるんだろ?それをやってこい」

 

「……いいんだな?」

 

「ああ、問題ねぇよ。それとジン、ゲームは終わったんだ、この敷地に入ってもいいのか?」

 

「え?問題ないと思います」

 

「そうか。なら、俺は少し用がある。アリス達に伝えといてくれ」

 

そう行って八幡は屋敷のあった方へ歩き出した。

 

* * *

 

ガルドの屋敷の跡地に着く。

 

「……この辺りか。影よ、地を掘れ」

 

八幡はギフトを使い地面を掘り始めた。

 

「死体を食わせていたとはいえ好んで骨までいく奴はそういない。それに此処には後悔や恨みといった感情が漂っている点からすると………やっぱりな」

 

掘り始めた地面から、かなりの数の骨が出てきた。それは、ガルド達が攫い、殺し食わせた者達の骨だった。

 

「辛かったよな、怖かったよな。冷たく暗い土の中で、彼奴らを恨んだよな。けど、安心しろ今から仲間の元に送り届けてやる」

 

悲しい様な顔をした八幡はそう言うと、影の中に劣化の具合を見て古い順で遺骨を収納し、アリスや十六夜がいる門前へ向かった。

 

* * *

 

八幡が着くと衆人の歓声が上がっていた。丁度、ジンの演説が終わった所だった。

 

「邪魔するぞ」

 

「比企谷か?用ってのは済んだのか?」

 

「いや、これで最後だ。おい!あんたら。これから攫われた者達の遺骨を返す、ガルドに強制された古い順で並べ」

 

その一声で、歓声が静かに止み各コミュニティの者達は八幡の前に並んだ。

 

「ちゃんと、埋葬してやれ」

 

「ありがと……ありがと‼︎」

 

皆、涙を流しながら八幡に感謝した。

 

「良かったな」

 

「あぁ」

 

こうしてガルドとのギフトゲームが幕を閉じた。

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