ありふれた職業で世界最強~シンゴジ第9形態とか無理ゲー~   作:ユウキ003

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大変遅くなりましたが、最新話です。


第81話 驕り

~~~前回のあらすじ~~~

最後の大迷宮であるシュネー雪原へと向かう司たち。今回は、光輝、龍太郎、鈴の3人も含めた合計12人で大迷宮に挑む事になった。ジョーカーを司より貰い受けての、大迷宮攻略。入り口前で現れたビッグフッド型の魔物も、新装備を持った光輝たち3人と雫の健闘もあって撃破。彼等はついに最後の大迷宮へと足を踏み入れたのだった。

 

 

私達が突入した洞窟はさながらミラーハウスのようだった。内部の通路は大きいが、壁が全て透明度の高い氷で出来ているためそこに人影が映り込んでしまう。だからミラーハウスのようなのだ。そして更に、ここは洞窟の中だと言うのに雪が舞っている。

 

しかもこの雪は極低温で、生身で触れれば凍傷は免れない。まぁ、今の私達はジョーカーを纏っているから問題無い。蒼司も、周囲にエネルギーフィールドを張って雪を防いでいる。

 

戦闘を、近接戦の心得がある龍太郎が進んで居る。『一番前は俺に任せろ』と言うので、彼に頼んだ。もっとも、内部に突入してから今まで一度も戦闘は無い。龍太郎の後ろを天之河、雫、蒼司、鈴の順に付いていく。更にその後ろを、私を先頭にティオ、シア、ハジメ、ユエ、ルフェア、香織の順で続いている。

 

皆、それぞれの武器を手にしたり、魔法を発動出来るようにした臨戦態勢のまま進んで居る。

 

そして……。

「ん?おい皆、あれ何だ?」

先頭を歩いていた龍太郎が何かに気づいて前方を指さした。それは、人、正確には魔人族だった。それが、壁となっている氷の中に埋まっているのだ。

 

「……龍太郎、天之河。調べるぞ、来てくれ」

「え?お、おぉ」

「おうっ」

俺が名前を呼ぶと、天之河の方は戸惑った様子だ。……まぁ、お互い相手に良い感情を持っていないのは百も承知。だがここは大迷宮でどんな危険があるか分からない。そして今の我々はチームだ。だから少しは協力して貰おう。

 

「他の皆は念のため周囲の警戒を」

そう言って指示を出し、私は2人と壁の傍に近づく。

 

「完全に氷に埋まってるな、こりゃ」

「あぁ。しかし、どうやったらこんな風になるんだ?見たところ、氷の壁に寄りかかった後、まるで氷の中に取り込まれたような……」

 

そう言って天之河が氷の方へ手を伸ばす。

「ッ、待て」

それを咄嗟に私が左手で遮る。

「な、何だよ新生っ!?」

「不用意に触るな。今天之河が言った通りなら、下手に触れると、氷の中に取り込まれる可能性があるぞ?」

「っ!?」

私の行為に最初は声を荒らげた天之河だが、その言葉を聞くと息を呑んで手を引っ込めた。

 

「にしたって、なんで魔人族がここに?」

「奴らの隊長でもあるフリードはここで神代魔法を手に入れた。それを知った他の魔人族たちが、第2のフリードになろうとここへ挑んだのだろう。だが、試練を突破する事は叶わずここで……。と言う事だろう」

龍太郎の言葉に応えながら立ち上がる。

 

「触れるだけでは取り込まれないかもしれないが、念のためだ。皆、壁には基本触れないようにしておこう」

私の言葉に、皆が頷く。そのまま私達は歩みを進める。幸い、内部はエコーロケーションによるマップ作成と、樹海の大迷宮で手に入れた羅針盤もあって、迷路のようにいくつも枝分かれしている大迷宮の中を迷う事無く進んで居た。

 

が……。

 

『ピクッ』

 

私の傍を歩いていた蒼司が何かに反応して眉をひそめた。彼は即座に振り返り、ガルグイユの柄に手を掛けた。それを前にして、私も即座にアレースを抜いて振り返る。

 

「蒼司?」

それに雫が問いかける。ハジメ達も一瞬理解が追いつかなかったのか、呆然としている。しかし……。

 

「足音、後方からだ」

「「「「「「っ!!」」」」」

蒼司の言葉にハジメや香織、雫や龍太郎、天之河、鈴らが息を呑み、即座に武装を構えた。ハジメや香織、ルフェアはアテンを構える。ユエは各部のジェネレーターを光らせ、魔法の準備を。シアとティオは、それぞれアータル・アックスモードと玄武を構える。天之河や雫もマスティマや青龍を構え、龍太郎と鈴も、それぞれ臨戦態勢だ。

 

だが……。

 

「ッ!?」

今度はシアが気づいて振り返る。

「皆さんっ!前からも来ますっ!」

「えっ!?」

シアの言葉にハジメが驚きの声を上げる。

 

「今から名前を呼ぶ者は来た道側の迎撃をっ!名を呼ばれなかった者は後ろを頼みますっ!割り振りは、私、ティオ、ハジメ、香織、ルフェア、シアの6名は前方をっ!残りの6名は後方の迎撃をっ!」

 

「「「「「「了解っ!」」」」」」

「って事は、俺らは後ろだな光輝っ!」

「あ、あぁっ!」

「や、やってやるんだからっ!」

 

後方は、雫、龍太郎、天之河、鈴、蒼司、それとユエに頼む。ユエの超火力の魔法と蒼司がいれば、恐らくは何とかなるだろう。

 

6人一チームに分かれた私達は背中合わせのまま敵を待つ。

「にしても、後方からってどういうこと?司の索敵能力にも引っかからなかったのに」

「可能性として考えられるのは、何らかの方法で隠れていたか、或いは仮死状態だったか」

私はハジメの言葉に応える。

 

「仮死状態、って?」

「あくまでも私の索敵能力は第1に『生命体を検知する事』を前提としています。仮に仮死状態だったならば、索敵能力に引っかからなかったとしてもある程度説明が出来ます。生命体を検知する力は、遠くまでの索敵を可能としていますが、反面生きていなければ捕捉する事が出来なかった、と言う訳です」

 

そう、話していると……。

「おしゃべりはそこまでだな。来やがったぜ」

そう言って警戒を促す蒼司。すると聞こえてくるうなり声。その恐ろしい声に鈴などはビクッと体を震わせている。

 

そして、前後の暗がりの中から現れた『それ』は……。

 

「ぞ、ゾンビッ!?」

 

現れたそれは、魔人族の軍服を着ているが、肌が真っ青で体のあちこちに霜がある。そしてその瞳を赤黒い光で爛々と輝かせている。だが魔人族だけではない。ここに来るまでに見つけた、氷壁の中に埋まっていた死体がチラホラといる。

 

大半は魔人族だが、人間の冒険者の姿もある。そしてそのゾンビを前にしてハジメが素っ頓狂な声を上げてしまう。

 

「だと良いがなっ!こいつらがゲームのゾンビと同じなら、頭吹っ飛ばして終わりだが、生憎ここは大迷宮だっ!そう簡単かどうかっ!」

 

ハジメの言葉に蒼司が応え、ガルグイユを構える。

 

「……来るぞっ。総員、戦闘態勢……っ!」

 

私の言葉に、皆が改めて武器を構え直した。刹那。

 

『『『『『ヴァァァァァァァァッ!!!』』』』』

 

本当にゲームのゾンビのような雄叫びを上げながら、氷漬けのゾンビたち、さしずめフロストゾンビ達が前後からこちらに向かって来た。

 

「射撃と魔法に自信のある者は頭部を狙えっ!それ以外は接近戦で囲まれないように留意せよっ!ジョーカーの装甲が突破される可能性は低いが、組み敷かれぬように注意をっ!戦闘開始っ!」

 

私の合図で全員が攻撃を始める。ハジメや香織、ルフェアなどは手にしたアテンから光線を放ち、ユエやティオ、鈴は魔法を放つ。私や蒼司、雫や天之河は手にしたアレースやガルグイユ、青龍やマスティマを振って斬撃を放つ。龍太郎は拳の衝撃波を飛ばして攻撃する。

 

攻撃を食らったゾンビは、どうやら内部まで凍っているのか砕け散り欠片が周囲に飛散する。

「こいつら、凍ってるから思ったより砕きやすいぞっ!」

「だったらぁっ!」

蒼司の言葉を受けて龍太郎はラッシュを繰り出す。ガトリングのように放たれる衝撃波が次々とゾンビ達を砕いていく。が……。

 

「むっ!?皆、あれを見るのじゃっ!」

戦っていたティオが砕けたゾンビを指さす。見ると、まるで時間を巻き戻すかのように体を粉砕されたゾンビの欠片が集合・合体し元通りになってしまった。

 

「再生するっ!?」

ハジメは驚きながらもそのゾンビの頭をアテンで撃ち、蒸発させた。流石に細胞レベルで蒸発してしまえば、再生のしようが無いのか頭を失ったゾンビは倒れて動かなくなった。

 

……かと思いきや、起き上がってきたではないか。

「嘘でしょっ!?頭無いのに何でっ!?」

これには驚き声を荒らげるハジメ。更に……。

 

「な、何か火属性の魔法使うとすんごい魔力量持って行かれるんだけどぉっ!」

鈴の悲鳴が響く。

「恐らく炎系の魔法が阻害されておるのじゃっ!」

鈴の声にティオが応える。

 

「鈴っ!ここは魔法を使わずに両掌にあるビーム砲を使って下さいっ!」

私は迫り来る敵を衝撃波で吹き飛ばしながら叫ぶ。

「あなたのタイプTSにはユエのタイプUと同じように、掌に魔力を純然なエネルギーに変えて放つビーム砲がありますっ!それを使って下さいっ!」

「う、うんっ!」

 

私の言葉に頷くと、鈴は両手からビームを放ってゾンビを迎撃し始めた。私は改めて前方を見据え、ゾンビ共を衝撃波で粉々にしながら吹き飛ばすが、再び合体して起き上がり、向かってくる。

 

「このっ!!」

その時、ハジメのアテンがゾンビの両足を撃ち抜いて消滅させる。そうか。足か。

「各自っ!アテンを使える者はこれに切り替えて奴らの足を狙えっ!頭が無くなって動けたとしても、足が無くなれば移動速度を低下させられるっ!」

 

「「「「了解っ!」」」」

私の言葉にハジメ、香織、ルフェア。更にアータルを地面に突き刺してアテンを取り出したシアが答え、アテンの熱線で次々とゾンビ共の足を消し飛ばしていく。

 

「蒼司っ、私と交代ですっ」

「了解っ!」

そして私と蒼司が位置を入れ替え、私もアテンを取り出して前方のゾンビの足を次々となぎ払っていく。

 

「司っ!今更だけどG・ブラスターは!?」

「いえっ。あの超火力では、下手に使うと洞窟が崩落する危険がありますので、今は……っ!」

確かに、ハジメの言うとおりG・ブラスターを使えばこいつらを消し去る事は出来るだろう。だが、洞窟というこの環境では……。大迷宮を破壊しかねないし、それでは神代魔法が手に入らない。

 

「にしたって、何なんだこいつらっ!?頭が無くなっても動くってっ!操り人形じゃあるまいしっ!」

その時叫んだ龍太郎の声に、私はピンときた。

 

「各自っ!時間を稼いで下さいっ!」

「どうしたのっ!?」

私の言葉に雫が叫ぶ。

「龍太郎の言葉で理解しましたっ。こいつらは恐らく、人形。操られているロボットのようなものですっ。こいつらの体内にコアである魔石などは発見出来ない事からして、どこかで何かがこいつらを操ってる可能性がありますっ」

「ガンダ○の○ァンネルみたいなものって事かっ!」

ハジメが私の言葉を聞いて叫ぶ。

 

「ならば操っている者が近くに居る可能性がありますっ。それを索敵するので、20秒、いえっ、15秒時間を下さいっ!」

「分かったぜオリジナルっ!お前等っ!気合い入れろっ!高々15秒。お前等なら余裕だろうっ!」

私の言葉を受けて蒼司が叫ぶ。

 

私はその場に膝を突き、自分の中の索敵機能をフル活用する。如何に秘匿しようと、コントロールしているのならその流れは必ず存在する。それを探す。この氷漬けのゾンビ達から情報を読む。1匹に狙いを付け、そいつを精査していく。…………見つけた。かなり厳重に隠されていたが、指示を飛ばすその力を。その主をっ!

 

「目標発見っ!前方の離れた地点に魔石と思われる反応ありっ!恐らくこれが、このゾンビ共を操っていると思われるっ!」

「じゃあその魔石を破壊しない限り、ずっと戦えって事っ!?」

私の叫びにハジメが答える。

 

「じゃあここでこうしててもダメなんじゃっ!?」

「えぇっ。香織の言うとおりです。ですから、早急に連中の包囲を突破しっ、魔石の破壊を優先しますっ!総員、私に続いて下さいっ!このゾンビの群れを突破しますっ!」

 

そう言って駆け出すと、私に続いてハジメ達が。少し遅れて雫たちが続いた。最後尾を蒼司が走る。私は前面に不可視の物理シールドを展開しながら走る。

 

ゾンビ映画で車がゾンビの群れを弾き飛ばしながら進むように、無数のゾンビ共がシールドに弾かれ宙を舞う。

 

そして、先頭を走る私に続くハジメ達。しかしその後ろを更にゾンビ共が『ドドドドドッ!』と地鳴りのような足音を響かせながら追ってくる。

 

「ひぃっ!?何か凄い勢いで追ってくるよぉっ!」

最後尾を歩いていた鈴が悲鳴を上げる。

 

「ちっ!各自っ、分かる物はスロットからプラズマグレネードを取りだして後方に投擲っ!少しでも時間を稼げっ!」

私の指示を受けて、ハジメや香織、ユエ、ティオ、シアらがジョーカーの左腰のスロットからプラズマグレネードを取り出し、スイッチを落とすと後方へと投げた。

 

数秒の間を置き……。

 

『『『『ドォォォォォォォンッ!』』』』

グレネードの炸裂と共に広がったプラズマに突っ込んだゾンビ達が跡形も無く消滅していく。が……。

 

『『『『『『どどどどどどどどどっ!』』』』』』

倒しても次が追ってきた。

 

「ダメだっ!完全に焼け石に水状態だよ司っ!」

「ならば仕方無いかっ。とにかく足を止めずに前進っ!奴らの相手はするなっ!」

「す、するなって言われてもぉっ!」

そう言って鈴は肩越しに振り返り、片手からビームを放つ。それがゾンビの腕を溶断し落としたのだが……。

 

『カサカサッ!』

千切れた腕がGみたいな動きで追ってくるではないか。

「ひやぁぁぁぁぁぁっ!リアルバイオはダメェェェェェッ!」

悲鳴を上げる鈴。香織とシアは、何も言わずに前だけを見て走っている。しかし、各機のバイタルデータを閲覧出来る私から見ると、かなり心拍数が上がっている。どうやら、2人もゾンビは無理なようだ。

 

「とにかく駆け抜けろっ!今は前だけを見て進めっ!」

全員が全力で地を蹴って駆ける。ジョーカーの補助もあってかなりの速度だが、ゾンビ共も負けじと追いかけてくる。それでもジリジリと距離を離していると……。

 

突如として我々全員が大きなドーム状の空間へと出た。空間はかなり広大で、大きさは東京ドームと同等だ。そして、ついにジョーカーのレーダーでも捉えた。今正に入ってきた入り口とは逆。前方の氷壁の中にあるコアらしき反応。

 

「香織っ!コアらしきものの位置データを送りますっ!」

「任せてっ!ミスラで狙撃するっ!」

 

香織は足を止め、19ミリのミスラを取り出し狙いを定める。が……。

「直上っ!敵機多数っ!」

ハジメの叫びを受けて香織以外が視線を上げる。見ると、上空から氷で出来た大鷹が無数に襲ってくるではないか。それがまるで、銃弾の雨のように襲いかかってくる。

 

「総員迎撃っ!香織をフォローしろっ!」

私が指示を出した次の瞬間、ハジメは両手に召喚したグリムリーパーのマシンガンで。ユエと鈴は掌のビーム砲で。ルフェアは2丁のバアルで。シアはアータルのラッシュモードで。ティオや雫、蒼司、天之河は斬撃波で。龍太郎も衝撃波を放って迎撃し、私もタナトスを撃ちまくる。

 

そして……。

 

「そこっ!」

香織がミスラの引き金を引いた。爆音と共に発射された19ミリが氷壁を貫き、コアを目指して突き進むが……。

 

何とコアが氷壁の中を泳ぐように移動し、ミスラの19ミリを回避したではないか。

「コアが動いたっ!?」

「ロードっ!それに皆もっ!恐らく、以前アンカジでオアシスを汚染したバチュラムの同類じゃっ!」

「それって水の化け物の、スライムモドキだよねっ!?」

ティオの言葉にハジメが迎撃しながら反応する。

 

「って事は、まさかこの周りの氷、全部アイツの支配下って事!?」

「恐らくはっ!」

ルフェアの言葉に答えるティオ。と、その時、周辺の氷壁から氷で出来た2メートルサイズの狼が現れる。更に追ってきたフロストゾンビと、空を舞う氷の鷹、フロストイーグル。その数は多く、3種類合わせれば1000に届きそうな勢いだ。しかもこれらは不死身と来た。

 

と、そこに更に、魔石の埋まっていた氷壁がせり出し、周囲の氷を取り込んで形を為した。それは、かつて私達がカトレアと戦った時に従えていた6本足の亀の魔物に似ている。だが、こっちは20メートル級の巨体を誇り、体も全て氷で出来ている。

 

更に奴が咆哮を放つだけで衝撃波が襲いかかるが、それは私のシールドを破壊するほどではない。

 

フロストゾンビ、フロストイーグル、フロストウルフの群れに、ボスらしき巨大な氷亀。

 

「各自、気合いを入れろ。ここが第1の正念場だ」

私が声をかければ、ハジメやルフェア達が各々の武器を構える。蒼司や天之河たちもだ。

 

「ここからは、こちらが全滅するよりも早く、あの巨大な亀の内部にある魔石を破壊しなければならない。なので、チームを2分する。片方は雑魚を引きつけつつこれを撃破。もう片方は、奴の撃破を狙う」

 

そう言って私はアレースの刃の切っ先を氷亀に向ける。

 

「さて、その人選だが。……天之河、龍太郎、鈴、雫、蒼司、それと香織。お前たちがあの亀をやるんだ」

「えっ!?」

私の言葉に驚いたのは天之河だ。

 

「なっ、ど、どうして俺達なんだ!?」

「……お前達は皆、自分達の意思でこの大迷宮に来た。各々、試練を突破し力を得るために。違うか?」

「「「っ」」」

私の言葉に、天之河、龍太郎、鈴の3人が息を呑む。

 

「お前達の力をこの大迷宮に示せ。でなければ、樹海の二の舞だ。お前達は神代魔法を手に入れられない。……同じ過ちを繰り返すつもりか?」

その言葉を受け取った彼等は……。

 

「分かったっ!俺達だけでやってやるっ!龍太郎っ!鈴っ!香織っ!雫っ!フォローを頼むぞっ!」

そう言って天之河はやる気を見せる。

 

「よぉしっ!そうだな光輝っ!いっちょやるかっ!」

「うんっ!フォローするよっ!」

「しょうが無いわねっ!行くわよっ!」

龍太郎、鈴、雫が答えそれぞれの武器を構える。私は香織と蒼司に目を向ける。

 

「2人は4人のフォローをお願いします」

「うん。任せて」

「OKだ、オリジナル」

2人の言葉を受けて、私は改めて周囲を見回す。ジリジリと雑魚たちが包囲網を狭めてくる。

 

それを前に私もアレースを構え、ハジメ達と並ぶ。

 

「雑魚はこちらで引き受ける。お前達の力を奴に見せつけてこいっ!」

 

そう言って私とハジメ達は雑魚目がけて駆け出した。天之河たちも氷亀、フロストタートルへと向かっていく。

 

 

~~~~

「よっしゃぁっ!切り開くぜぇっ!」

まず最初に動いたのは蒼司だった。彼はガルグイユを振り抜き、巨大な斬撃波を放ってフロストタートルまでの道を塞ぐ雑魚を粉砕してしまう。それがすぐさま修復されていくが、修復された傍から蒼司が切り裂き破壊していく。

 

「雑魚とフォローは任せろっ!お前達は奴に集中しろっ!」

「了解っ!行くわよ光輝っ!龍太郎っ!」

「あぁっ!」

「っしゃぁっ!」

 

雫が先頭で駆け出し、光輝と龍太郎が続く。

「はぁっ!!」

そして、まずは雫が一閃。有線でジョーカーと接続された青龍が圧倒的な熱量を持ち、それがフロストタートルの足を1本、切り裂いた。

「どりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

更に龍太郎の渾身の一撃が、もう1本の足を殴って粉砕した。

6本の内、前足2本を砕かれたフロストタートルはバランスを崩しそうになり、顔が前のめりになる。

 

「まずはこいつの動きを止めるっ!光輝っ!トドメは任せたわよっ!」

「分かったっ!神威の準備をするっ!鈴っ!」

「うんっ!フォローするよっ!」

敵を倒すために準備を始める光輝とそれを守る鈴。

 

すると、足を止めた事で狙われたのか、2人目がけてフロストタートルが大口を開け、そこから氷雪のブレスを放った。怪獣の放つブレスもかくやの大きな渦が迫る。絶対零度の冷気は喰らった者を凍結させ、それに耐えてもブレスの中を飛ぶ氷片が相手を切り裂く。

 

が……。

 

「させるかよぉっ!!!」

2人の前に躍り出た蒼司の握るガルグイユが空間を切り裂き、ブレスは時空の裂け目へと消えていく。

それに驚愕した様子に僅かに後退るフロストタートル。それが隙となる。

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」

雫のタイプCと龍太郎のケンプファーモデルが攻撃を仕掛ける。振るわれる青龍の一刀が足を切り裂き、ケンプファーモデルの拳が頭の一部を粉砕する。

 

だが……。

『クルアァァァァァァンッ!!』

フロストタートルの砕けた頭が咆哮を上げた。直後。

「っ!?2人とも下がれっ!」

蒼司の声が響く。

「「っ!?」」

雫と龍太郎の2人は考えるよりも先に、その場を飛び退いた。

 

直後、2人がいた足下から氷の柱が飛び出してくる。

「ッ!?あいつの固有魔法かっ!?」

龍太郎は叫びながらも下がり、鋭い氷の柱を避ける。

 

「それでもっ!」

雫は飛び上がると空中をジョーカーに搭載されている空力を生かして、駆け抜ける。しかしその道を阻むように、無数のフロストイーグルが雫のタイプCに襲いかかった。が……。

 

「遅いっ!クロックアップっ!!!」

次の瞬間、雫のタイプC全体をタキオン粒子が満たしその姿が消えた。

「おぉしっ!俺もっ!クロックアップっ!」

更に雫に次いで龍太郎もクロックアップを発動した。

 

神速の域へと至った2人が戦場を駆け巡る。瞬く間にフロストイーグル、フロストウルフの群れが砕け散っていく。タキオン粒子を持たないフロストタートルには、2人の攻撃に対応する術が無い。2人の攻撃がその体を削っていく。

 

しかしフロストタートルも、負け時と自身の周囲や自分自身の体から氷柱を打ち出し、2人を遠ざけた。

 

『『Clock Over』』

 

そして、システムが自動的にクロックアップを停止させてしまう。タキオン粒子はジョーカー内部で生成される訳ではなく、こちらは蒼司、或いは司から補給を受けなければならない。なので内部に貯蔵された粒子を使い切ると、補給するまでクロックアップシステムは使えない。

 

「ちっ!攻めきれねぇかっ!」

「流石は大迷宮の敵。一筋縄じゃいかないわね」

龍太郎と雫は、マスクの下で険しい表情を浮かべながらも向かってくるフロストイーグルとウルフの群れを蹴散らす。

 

しかし、時間稼ぎは十分だった。

「雫っ!龍太郎っ!下がれっ!」

 

不意に響く光輝の声。2人が振り返ると、光が光輝の武装であるマスティマへと収束していた。

神威の準備は整った。しかも光輝のジョーカー、タイプAKにはユエや鈴のウィザードモデルとは逆に、エネルギーを魔力に変換するシステムが内蔵されている。ジョーカーが持つ莫大なエネルギーを魔力に変換して練り上げる事で、神威の威力を引き上げる事が可能なのだ。

 

そして、光輝の言葉を聞いて2人がフロストタートルの前から飛び退く。

「行くぞ化け物っ!『神威』っ!」

 

突きの動きから放たれた神威は、直径5メートルはあるかという光の柱となってフロストタートルへと突き進む。

 

しかしフロストタートルも、ただで神威を受ける気は無いようだ。その巨体を動かして神威に背を向ける。そして背中の甲羅を円錐状に変化させた。どうやら神威の力を分散して受け止めようと言う作戦なのだろう。

 

『ドガァァァァァァァァァッ!』

甲羅に命中する神威。それを防ごうとするフロストタートル。

 

しかし、ジョーカーのスペックやシステムによって強化された光輝の神威の威力は、フロストタートルの防御を打ち破るには十分だった。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

圧倒的な熱量を持つ神威の前に、氷の装甲は瞬く間に溶け出し蒸発していく。蒸発した水分によって水蒸気が発生し、周囲に広がっていく。

 

「証明してみせるっ!俺の強さをっ!そしてっ!もっと大きな力を手にするんだぁっ!」

 

咆哮を上げながら神威を放つ光輝。

 

『力の証明、ねぇ』

その時、敵と戦いながら蒼司は光輝の様子を見つめていた。

 

『お前は何の為に戦う。勇者君。……この世界の平和のためか、仲間のためか。……それとも或いは、『自分自身の正しさ』のため、か』

 

蒼司は、呆れつつも警戒するような視線を光輝に向けるのだった。

 

 

神威とフロストタートルの拮抗は、すぐに破れた。強化された神威の一撃は、防御を突破してフロストタートルを飲み込んだ。

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

最後のダメ押しとばかりに、ありったけのエネルギーを魔力に変換して放ち続ける光輝。

 

そして、神威に飲み込まれたフロストタートルは、最後は全身を蒸発させられ、体内にあったコアである魔石も、神威の前に砕け散ったのだった。

 

そして、魔石が砕け散った事で、他の魔物達も次々と体を崩し、ただの氷片へと成り果てた。

 

「ハァ、ハァ、ハァッ!」

肩で息をする光輝。だが、彼はやがて視線を上げると、目の前に広がる神威によって削られた大地を見つめる。そして、敵が居なくなった事や、最後に砕いた魔石の感触。それらを受けて彼は……。

 

「よしっ……!」

小さくガッツポーズを浮かべていた。

 

「お~~い!光輝~~!やったな~~!」

そこに龍太郎が駆け寄ってくる。

「あ、あぁっ!」

光輝も、マスクの下で笑みを浮かべながらそれに答える。だが……。

 

『新生から与えられたジョーカーがあるとは言え、俺でもあの怪物を倒せたっ!そうだ、俺はこの前までの俺じゃない。俺だって確実に強くなっているはずだっ!これならっ!』

 

光輝は、マスクの下で密かに司と蒼司、そしてハジメへと目を向ける。

 

 

確かに光輝達は魔物を退けた。だがしかし、この勝利が『驕り』を生んでしまうとは、誰も思わないのであった。

 

     第81話 END




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