『かぐや様は告らせたい』の石上くんと四条眞妃先輩のお話です。石ミコが幅を利かせ石つばが大変少ないことは前作でも述べましたが、それにつけてもツンデレ先輩の不遇さときたらありません。石上くんと並んで報われてほしいキャラです。

ネタバレは一応コミックス14巻まででありますが、原作134話(15巻収録予定?)を知っているとニヤッとできる設定ではあります。

ちなみにタイトルは「祈りたい」で合ってます。

石マキ流行れ!

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冒頭の秀知院学園の昼休みについてはオリジナルです。
話の導入上で作っただけなので、本筋には絡みません。


四条眞妃は祈りたい

 他の学校がどうであるのかは良く知らないが、少なくとも秀知院学園の昼休みが短いなんてことはないと思う。なんでもまだ貴族や士族のための学校として機能していた時代、西洋風のコース料理を好んで食べた彼や彼女の昼餉はとても時間がかかったから、その時の名残りなのだとか。

 いずれにしても、大多数の学生にとって、長い昼休みはありがたい。ゆっくりとご飯が食えるし、食後に友人たちと談笑する時間も増える。生徒会に所属する自分からすれば、昼休みは格好の作業時間だと言える。昼飯を食べ終わった中庭で、白い雲がぼつぼつと見られる冬の空のもとで、石上優はそんな思考を抱いていた。

 

 そう、秀知院学園の昼休みはわりかしに長い。昼ごはんのあと、誰かに草の上で相談が出来る程度には――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・で?結局のところ、アンタは私に何をお願いしたいわけ?頼れる先輩なら私じゃなくても自分の周りにいっぱいいるでしょう?」

 

 

 

 

 季節のために冷たくなっている草花の上に寝転んで、石上の相談相手は――――――四条眞妃はそう言葉を放った。

 

 

 

「お願いというか、相談ですよ。生徒会の先輩方にはちょっと話しづらい―――少なくとも、今の生徒会の状態では話しにくい相談です。」

 

 

 

 眞妃からの少し意地悪ともとれる発言に、石上は自らの事情を明かし始めた。

 

 相談。

 

 ふだん、石上優はあまり人に相談するタイプではない。生徒会での業務的な質問は行うものの、私生活に関してはそもそもあまり明かさない。それは、曲がりなりにも生徒会の会計を担いその貢献が大きい石上ゆえにだいたいの問題を自分で処理する方法を見つけているということもあるし、単純にぼっちの学園生活が根付いてしまっているがために人に相談することに大きなためらいを覚えてしまうというのもあった。

 

 それでも、最近は人と話すようになってきたものだと、石上は感じる。白銀に連れ出してもらって以来、自分の学校生活では、生徒会の面々やそれに関する人達との関わりあいが急速に増えている。白銀会長は言うまでもなく自分が一番信頼する憧れの先輩かつ殆ど無二の親友であるし、四宮先輩も時々怖いけれど、テストの度に自分を気にかけてくれている。怖いけど。

 藤原先輩だって、いつもは罵り罵られといういびつな関係だが、その現れ方に問題があるだけでとても頭の回る人であることは知っているし、そもそも同級生を含めたってあそこまで堂々と暴言を吐ける相手はいない。伊井野にしても、最近は少し仲良くなってきたような気もする。相変わらず自分に対する扱いは酷いし、見かける度にミドジャンを取り上げられてしまうが、それでも関係性が皆無に近かった中学時代と比べたら劇的な進歩だろう。

 

 そう、別に自分の周りの人達に不満があるわけではない。普段接する彼や彼女が、少なからず自分を気にかけてくれていることはわかっていて、それは基本的に孤立無援な自分にとってたまらなく嬉しいことだ。彼や彼女のために少しでも働けて役に立てたらと、当初生徒会に入ったときと変わらない、けれど人数の増えた想いに支えられて、自分はまだ頑張っている。

 だからこそ、この相談を今、彼と彼女らにするわけにはいかないのだ。自分の恋路に関する話は――――――子安つばめに関する話は。

 

 

 

 

 

「ふうん・・・まあ、いいわ。話してみなさい。この四条眞妃サマが華麗に解決してあげるわ!」

 

 

 少し芝居がかった言葉で、胸に手を当てて斜め上を見上げるいつもの仕草と共に、四条眞妃はそう宣言した。

 

 

 

 

――――自分が少し話しづらそうなことを察したのだろう、あえて高飛車に振る舞って相手のハードルを下げるやり方を取るあたり、とても他人想いで優しい先輩だと思う。まだ相談事を話す前であるのに、その透かされる優しさに安心感を抱いてしまう。

 

 

「ええ、実は・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァン、なるほどね。つまり、子安つばめにアプローチをかけるのは良いけれど、ほんとに自分が認識されているのか怪しいと」

 

「はい。そうなんです。」

 

 

 

 

 相談。

 それは、自分の憧れの的であるつばめ先輩が―――自分が思いを寄せるあの先輩が、この自分を、後輩ではなく恋愛対象として見れると見てくれているのか、ということだった。そもそも何故こんな悩みを抱えることになったのかと言えば、話は数日前に遡る。

 

 

 

「僕、先輩のおかげであの後ちゃんと、つばめ先輩と文化祭を見て回れたんですよ。それ自体は別に問題なかったんです。ただ、なんか翌朝実行委員の活動で会ったときから、先輩急に僕のこと避けるようになっちゃって。そうかと思えば、体育館裏に呼び出されてなんか花見の約束?をしました。劇の後に声をかけたら嬉しそうに返事してくれましたし、クリスマスパーティーにもお呼ばれされることになったんですが・・・」

 

 

「先輩との距離が縮まったり離れたりとよくわからない・・と?」

 

 

 

 そう、わからない。

 この数日の間で、つばめ先輩との距離は急速に縮まったような気がする。少なくとも、文化祭やクリスマスパーティーに誘われた時はそう感じていた。けれど、ふと思い返してみると、どうにも良い後輩という枠組みから抜け出せていないような気がする。

 文化祭を回るのに付き合ってくれたのは後輩からのお願いだからで、クリスマスパーティーに誘ってくれたのは実行委員の仲間だからだ。冷静に考えれば、そんな思考が浮かんでくる。12月の終わりというこのタイミングでお花見に誘われたのは少しわからないけれど、ひょっとしたらあれは「これからも良いお友達でいましょうね」的なメッセージだったのかも知れない。

 

 だとしたら、先輩に誘われたことに浮かれてニコニコ笑顔でいた自分はだいぶ滑稽だっただろうか。そういえば、先輩のクラスの屋台ででっかいクッキーを獲って送った時も、なんだか変な反応だった。ふつう、いくら大きくて目玉の景品であるとは言っても、たかがクッキー一枚であそこまで顔を赤らめて喜ぶだろうか。

 あれはもしかすると、クラスのアトラクションが男女別々になって落ち込んでいた自分を気遣ってくれたことの延長線だったのかも知れない。あまり、そういう状況でのフォローに慣れていないから、あんな大げさな反応になったのか。

 もしそうなら悪いことをしてしまったな、と、石上は自嘲的に口をゆがめた。

 

 

 

「結局、舞い上がっていたのは僕だけなのかも知れないっすね。つばめ先輩にとってはいつまでも一人のかわいい後輩なんでしょう」

 

 

 

 かわいい後輩。一見すると嬉しいこの言葉に―――生徒会の先輩達の時には嬉しく感じていたこの言葉に、いつから自分は怯えるようになってしまったのだろうか。

 どうすればつばめ先輩の目を自分に向けられるか。どれだけやっても、自分は見向きもされないかのではないか。そんな不安を抱えるのは、なにも今が始めてじゃない。つばめ先輩を好きだと思い始めたときから―――いや、ひょっとすると、生徒会の先輩達に気にかけられていると感じ始めた時から自分は――――誰かの眼中にないことを恐れている。

 

 中学生の時。同級生の女子生徒にストーカー行為を働きその交際相手を嫉妬に駆られて殴ったとして、自分は厳しい処罰を受けた。

 担任に文句を言われた回数、両親から怒号と反省をすることを要求する言葉を聞いた回数は計り知れない。けれど、それはまだ良かったのだ。しばらくすると、担任はもちろんあれだけ怒鳴り罵ってきた父親でさえ、何も言わなくなった。自分を気にしなくなったのだ。

 

 自分はもはや怒りを顕にするほど価値のある存在ではなく、あの人達の眼中から外れたのだと悟った時、どうしようもない孤独感と閉塞さを抱き、一晩中泣きはらした。結局、翌朝になってもその辛い感情は消えることはなく、金色の飾緒が首筋に見えたあの瞬間まで、自分の心に深く堆積していった。幸い、今の自分はもうあの一人ぼっちで行き場のない辛さを日常的に感じることはない。代わりに、その負の感情への恐れが頭の中に残っている。

 

 もう一人ぼっちにはなりたくない。もうあの暗い部屋の中でしか生きられない環境は嫌だ。その思いが頭を蝕み、数々の不安に反映されている。正直、つばめ先輩に対する自分の考察は過剰すぎるのかもしれない。本当はただ花見に誘っただけで、純粋にクッキーをもらったのが嬉しかったのかもしれない。でも、その可能性を頭ではわかっていても、心が受け入れない。こんな自分では相談するまでもなくつばめ先輩の眼中になど―――

 

 

 

 

 

 

「・・・ねえ、優。あなた、子安つばめへの告白は?」

 

 

「ああ、そのことですか」

 

 

 

 

 

 告白。

 自分は文化祭の最終日、後夜祭のタイミングでつばめ先輩に告白するつもりだった。しかし、劇を終えて出てくる先輩を出迎える人数が予想以上に多く、自分がつばめ先輩を独占することは出来ないと判断して身を引いたのだった。

 

 

 

 ――――いや、違うな。そんな他人に配慮した外聞の良い理由じゃない。自分はただ、恐れていたのだ。つばめ先輩に嫌われたらどうしよう。断られたら?拒絶されたら?そんな不安に屈して、仕方がなかったと諦めて、告白しなかったのだ。結局、器じゃなかったのだろう。告白というのはもっとこう、少年漫画のヒーローのように熱く、少女漫画の王子様のようなかっこいい人間がやるもだ。自分みたいな端の人間はそんなことするべきじゃない。だた胸の内に思いを留めておくだけにすべきだ。

 そんな口上が――――――――もはや言うまでもなく言い訳のセリフが頭をよぎる。

 

 

 

 

「結局、出来ませんでした。器じゃなかったんすね。」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 僕の返答を聞いた四条先輩は、何も言わない。何か悟った顔でどこか遠くを、いっそ虚空でも見つめるかのような目で頭上の葉たちを見上げていた。

 

――――呆れられたか。

 

 考えてもみれば当たり前である。同級生の白銀やかぐやならまだしも、自分はただの後輩。しかも数回相談を聞いて声をかけてもらった程度である。そんな奴が諦めの悪い恋愛事をのたまい、身の丈を顧みないことを口にする。自分が逆の立場だったら意味がわからないと突き放すして然るべき状態だ。仮にも相手は学年三位で四宮の家に連なる者。こんな卑しい人間の話に少しだけでも耳を傾けてくれたことを温情と見るべきだったか。

 つくづく自分は愚かな男だなと思案し、無駄な時間を取らせたことを石上が謝ろうとしたその時、

 

 

 

 

「ねえ、優。ちょっと良いかしら。」

 

 

「・・・・」

 

 

 

 しまった。もはや自分が謝る前に怒らせてしまったか。仕方ない。ここは自分の顔だけで許してもらって、せめて白銀やかぐやに迷惑がいかないようにどうにか―――――――――

 

 

 

 

 

「あなた、子安つばめをどう思ってるの」

 

 

「・・・・どうって、そんな」

 

 

 

 

 

 子安つばめをどう思うか。そんな眞妃の言葉に石上の思考は停滞する。言うまでもなく、自分は子安つばめに恋慕の念を抱いている。しかし、そんなことを今さら口にしてどうするのか。

わからない。眼の前の人物は一体なにを――――

 

 

 

 

「・・・答えにくいなら質問を変えるわ。あなた、子安つばめが何も考えずただのロボットか何かだと思ってるの?」

「それは・・」

 

 

 

 

 

そんなことは、ない。

 

 

 

 

 

 

「・・・つばめ先輩は、そんな非情な人じゃありません。あの人はこんな僕でも臆せず声をかけてくれて―――」

 

 

「ええそうよ。優、あなたの言う通り、子安つばめは感情を持たない冷徹な人間ではないでしょう。それは、きっとアンタよりも彼女と接触の少ない私でもわかる。じゃあ、そんな子安つばめは、何でも正確に迅速に判断できて、完全無欠で隙のない人かしら。

 どんな感情に対しても揺らがず冷静に処理する人かしら。」

 

 

 

「・・・・・・・・何が言いたいんですか。」

 

 

 

 質問を続ける眞妃に対し、石上はすこし棘のある声で返す。

 それを見た眞妃は、彼女にしては珍しい、しかしどこか彼女の叔母を思い出させる目つきを持って石上に向かい直った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私はね、優。子安つばめだってアンタと同じように迷ってるって言いたいのよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――迷っている?あのみんなの憧れであるようなつばめ先輩が、僕みたいに。

 予想外の発言に言葉を失う石上。そんな状況をよそに、眞妃の言葉は止まらない。

 

 

 

 

 

 

「考えてもみなさい。確かにアンタは、子安つばめから見ればかわいい後輩なんでしょう。でも、本当にそれだけ?体育祭から今まで、あなたは自分がただの後輩でしか在り続けられない程度の行動しかしてこなかったの?あなたの子安つばめへの想いは、行動は、本当にその程度だったの?」

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――。喉が張り付く。何か言葉を出さなければいけないとわかっているのに、なんの言葉も浮かばない。

 子安つばめのために。そう思っての行動を、自分は何もしなかっただろうか。

 

 否だ。断じて否だ。醜くても、無様でも、自分は頑張った。期末試験の時は、かぐやの助力を借りて死に物狂いで勉強した。文化祭の前日、自室のベッドの中で、子安つばめを見物に誘う文言を幾度となく考えた。買ってから長く使わずにいたノートをペン先で凹ませて、自分の手から流れる汗で紙をボロボロにした時も。文化祭のパンフレットを擦り切れるほどめくり、最適で最高のルートを考えていた時も、その全てに、子安つばめのためという目的があった。

 そして―――――――

 

 

 

「ねえ優。人間の行動っていうのはね、必ずしもその場で全ての意味が理解されるとは限らない。アンタがやってきたこと、やれてきたこと、それら全てを今の子安つばめが理解していないと、彼女が一切動揺なんかしていないと、どうして言い切れるの!」

 

 

 

 

 昼下がりの中庭に、四条眞妃の声が響く。普段泣き虫な彼女にしては珍しい、強い、力の籠もった声だった。

 

 

 

 

 

「ねえ優。私はね。翼が好きよ。少し気の抜けた用な顔立ちも、不器用に誰かに気を遣うところも、ちょっと調子に乗ってやりすぎちゃうところも、ぜんぶぜんぶ、翼の全てが好き。」

 

 

「もちろん、彼が渚の彼氏だってことはわかってるわ。それこそ、誰よりもね。」

 

 

「だけどそれは、私の彼へのアプローチが無駄だったってことじゃない。彼は、翼は今はまだ、気づいていないだけ。いつか必ず、私が彼に向けてしていた色々なことが、彼を想っての行動だったんだと気づく。」

 

 

 

 

 

 

 

 

だからね、優、と、四条眞妃は言葉を続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今は進みなさい。結局、本人じゃない私達に、子安つばめの内情はわからない。だけど、あなたは今までずっと頑張ってきたじゃない」

 

 

 

「これから子安つばめが卒業するまでの三ヶ月、あなたと彼女に何が起こるのかは誰にもわからない。だけどそれは、何もしなくていい理由では決してないのよ。足掻いて足掻いて足掻き尽くして!そうして描いた想いは、行動は、決して消えはしない!どれだけ遠回りでも!どれだけの時間がかかっても!必ず相手に届く!それを信じるのがーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それを信じるのが、恋をするってことでしょうが!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――言葉が、出なかった。さっきまでの追い詰められるような辛さからじゃない、あまりにも当たり前で当然のことを自分は忘れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

努力の成果は、結果が出るまでわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夏休みの花火大会のとき、あるいは、暗い部屋の中で反省文の紙を眺めていた時、自分は、その結末を知らなかった。もしかしたら、花火には間に合わないのかもしれない。自分は一生このままで、どこにも行けずに命を終えるのかもしれない。そんな可能性は容易に想像できた。実際、そうなる確率だって十分にあったのだ。

 

 

 けれど、その予想は見事にひっくり返った。高速道路を走るタクシーから見る花火の輝きはとても綺麗で、部屋のドアは、もうあの頃のように重くない――――

 

 

 努力の成果を信じて頑張ること。それを自分は、あの先輩達と一緒に学んだのだ。

 

 

 

 

「だから。だからね、石上優。止まらないで。いつか結果のわかるその時まで、自分の出来ることをやり続けなさい!そうして得られたものが必ずあなたの糧になると、私はあなたを信じてる!」

 

 

 

 

 四条眞妃の言葉が、響く。秀知院の敷地に、石上優の心に。

 

 

「・・・・ずるいですよ」

 

 

 そんなことを言われては、自分は、はいと言うしかないじゃないか。

 

 不器用で要領の悪い自分だ。生徒会に入っていくらか経つ今でさえ、不意の発言や行動で不興を買うことは少なくない。そんな自分を、眼の前の人物は信じていると言い放つ。むちゃくちゃだ。

 

 そもそも、石上優にとって四条眞妃は、生徒会室や文化祭で少し関わりがあるだけの先輩だ。吹けば飛ぶような、明日には無関係に戻れるような軽い関係だ。なのに、それなのに――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・わかりました。とりあえず、もう少しだけ頑張ってみることにします」

 

 

 今はそれが、たまらなく嬉しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふんっ!この四条眞妃サマにここまで言わせたのよ!成功しなかったらゆるさないわ!」

 

 

 

 先程までの熱気はどこへやら、再びわがままお嬢様の態度に戻る四条眞妃。その大げさなほど高飛車な態度が照れ隠しのように思えて、やっぱりこの人はツンデレ先輩だなと得心する。

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

 

「あっ、予鈴だ。すいません先輩、僕、次の時間体育で」

「りょーかい、遅れないようにしなさいよ」

「それじゃあ、お先失礼します。」

 

 眞妃の方に頭を下げて、石上は中庭の木の下から出る。時間にすれば一時間もないはずなのに、まるで何時間も話し込んでいたように感じる。

 自分の想いは子安つばめに届くだろうか。その答えは、未だ自分の手の中にはない。けれど、少なくともそれを信じてくれている人はいる。ならば、自分は、自分とその人を信じよう。まだ見ぬ未来の結果の時まで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 校舎の後ろに見える空は、澄み渡るほどに青かった。

 




四条先輩は本編では不遇の立ち位置として半ばギャグキャラ(?)と化していますが、四宮の血を正当に受け継ぐ彼女には、中間試験前の図書室で死んでも約束を守ると宣言した四宮かぐやと同じ、どうしようもなく格好いい一面が存在すると思うのです。











しかしそれにしても、前作のつばめ先輩と比べて書きにくさが異常。


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