「証人たちの中に潜む天邪鬼……それは」
五人全員を嘘つきと仮定し、一人一人パズルのようにムジュンが発生しないよう検討していった結果……一人だけ綺麗にお猪口の使用者が被ることなく特定できるパターンを見つけることができた。天邪鬼は……あの人物で間違いない!
「四人目の証人である、鬼灯鈴くん。彼こそが天邪鬼だったのです!」
「え、えええええええッス!」
隅の方で待機していた東雲さんの叫び声を皮切りに、傍聴席が再び騒めき始めた。当人である鈴くんは、ポカンと小さな口をあけっぱなしにしている。
「静粛に! 静粛に! 弁護人、根拠を聞かせてもらえるかしら?」
「証人の中に一人天邪鬼……つまり、嘘の事しか話さない人物がいると仮定し、再度証言を辿っていく……至極単純なやり方です。そして、その結果彼が嘘つきだと仮定した場合のみ、ムジュンが発生しませんでした。他の人物の場合、使用者が被ったり、そもそも使っていたお猪口が特定できないパターンが現れました。以上のことから、鬼灯鈴くんが天邪鬼だと主張します!」
ぼくは、真宵ちゃんから借りたノートに書きこんだ新しい早見表を示しながら話す。
思えば、今日の法廷での彼の言動は、緊張から来ているものだと思っていたが、天邪鬼だとわかった今、改めて振り返ってみると、天邪鬼的な考えに基づいているなと思った。
彼は、四季検事の、「焦って喋る必要は“ない”」という言葉をひっくり返して読み取って、あんなに慌てて証言していたのだろう。気づくポイントは、要所要所に転がっていたのだ。
「……そして、参加者全員の使用していたお猪口が特定できた以上、同時に真犯人の正体も分かるという事になります」
……実を言うと、真犯人の正体は、概ね予想通りだった。ぼくの中にある野生的な勘はどうやら間違っていなかったようだ。
「……ああ! もったいぶらずにさっさと言いなさい、弁護人!」
ペースを乱された四季検事は、苛立たし気に言い放つ。彼女はきっと、天邪鬼の正体に気づいていなかったのだろう。
「鳥のお猪口の使用者……即ち、真犯人の正体。それは……名琴為人さん、あなたです!」
ぼくの言葉に続けて、法廷がまた騒がしくなり始める。
「……ふぅーん」
一方、真犯人として告発された名琴さんは、これまた法廷のざわめきとは裏腹に、落ち着き払っている。まだ余裕がある様子だ。
「静粛に! 静粛に! ……弁護人。今の発言は、告発と受け取って問題ないわね?」
「ええ。その通りです。彼の座っていた位置から考えても、華扇さんとお猪口を交換するのが最も容易だった人物は彼です。一番、真犯人足りえる人物だと判断します」
「……証人、今の告発を受けて、なにかあるかしら?」
やや怪訝そうな表情のまま、紫さんは名琴さんのほうを見る。
「……僕はやっていない、とだけ言っておこうかなぁ」
名琴さんは、ハンチング帽を深くかぶる。その奥に宿る瞳が、じっとこちらを見つめてきているような錯覚を感じ、少し身の毛がよだつ。
「分かったわ」
紫さんは、そう言うと木槌を振り下ろし、一旦場の空気をリセットする。
「さて、弁護側の告発によって、審理は一気に違う展開を見せたわ。こうなってしまった以上、審理を打ち切るわけにはいかない。……これより、十五分間の休憩をとるわ。弁護側、検察側共に現在の状況を整理して頂戴。名琴為人氏に対する尋問等は、その後行うものとするわ」
「弁護側、異存ありません」
「……検察側も同じく」
「では、一時閉廷とするわ」
木槌が打ち鳴らされ、審理が中断された。
どうも、タイホくんです。あまりにもあっさり過ぎる気がしますが、真犯人がようやく判明しました。
もう少し何か書けた気もしますが、気の利いたセリフなんかが思いつかなかったので短いですが、そのまま投稿しました。
真犯人の正体、皆さん予想通りでしたかね?
名琴さん初登場回で、彼の名前を真犯人、と仮書きのまま放置して感想欄で指摘されたときは焦りましたね…。いつぞや指摘してくださった方や、うっかり目撃してしまった方、申し訳ありませんでした。
前回のアンケート、正解が一番選ばれていたので、多分クイズはきちんと解けているようになってみたいでよかったです。まじでここをミスっていたら洒落にならなかったので…。
次回から法廷は後半戦です。真犯人、名琴さんとの対決に移ります。
次回投稿予定日は、7月2日にします。3週間空きます。ちょっとでも時間を稼がせてください…マジで危うい4話くん…。
では。
(改めて)キャラ紹介のコーナー
・鬼灯鈴
ロリっ子に見せかけたショタ鬼。その正体は実は天邪鬼。
キャラデザ、名前等に天邪鬼要素をちりばめていた。
以下で紹介。
その1 目の色
右目が黄色に対して左目が紫色のオッドアイになっている。黄色と紫は色相環においてそれぞれ”正反対”の位置にある補色の関係にある。”正反対”が天邪鬼ポイント。
その2 性別
見た目が女の子なのに対し、実際の性別が男の子、と”真逆”になっている。
その3 年齢
これに関しては他の妖怪でも言えることだが、見た目が幼いのに対し、年齢は人間のそれを上回っているため、見た目と年齢が”真逆”になっている。
その4 名前
鬼灯…鬼灯の花言葉の一つ、「偽り」より採用。
鈴…鈴(れい)→鈴(りん)→燐(りん)→燐灰石(りんかいせき)
燐灰石は「アパタイト」と呼ばれる石の和名。
アパタイトは、様々な色や形で産出されることが多く、他の石と間違われることもあったことから「惑わす、ごまかす」という意味を持つギリシャ語「apate」が語源になったと言われている。
当初は、鬼灯鈴(ほおずき りん)という名前の予定だったが、既存の東方キャラ、火焔猫燐(かえんびょう りん)と読みが被ることと、鈴(れい)の方が男の子っぽい響きの名前になることから、鬼灯鈴(ほおずき れい)となった。
…もう一人、名前遊びにちょっと力を入れたキャラがいます。探してみると面白いかも?