逆転裁判 ~東方法闘録〜   作:タイホくん

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法廷1日目 その10

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 「その証拠品はこれです!」

 ぼくが提出したのは、ネクタイピンだ。

 「この証拠品は、事件現場近くで発生した空き巣事件の盗難物です」

 ぼくの言葉に、裁判長は目を丸くした。

 「つ、つまり弁護人は、証人が空き巣だったと言いたいのですか?」

 その言葉にぼくは頷く。

 「そう考えれば辻褄が会います。空き巣であった証人は盗みを働いた後学校に逃げ込みました。その際運悪く被害者に見つかり殺害してしまった……つまり、この殺人は、計画的ではなく、衝動的な犯行だったのです!」

 

 「異議ありィ!」

 ずっと黙っていた亜内検事が口を開いた。

 「このネクタイピンは、被害者の服から発見されたのです。仮に証人が空き巣だとしても、なぜ被害者が彼の盗んだものを持っているのですか?」

 言われてみればそうだ。このネクタイピンは被害者の胸ポケットから発見されている。わざわざ盗んだものを他人に渡すような間抜けな空き巣はいない。

 なら、一体なぜ、被害者がネクタイピンを持っているんだろう……。

 ……まてよ、共犯という可能性はないだろうか? ぶつけてみる価値はあるかもしれない。一度攻め込んでみるか。

 

 「被害者が共犯者だった可能性はあり得るのではないでしょうか? 盗品の取り分けで起こったいざこざなら、あり得ない話ではないかと」

 「異議ありィ!」

 亜内検事が再び異議をはさむ。

 「空き巣事件の犯人は、現場に指紋が一つしか残っていないことから単独犯説が濃厚です。目撃証言からも、そのことは証明されています」

 「そ、そうですか……」

 空き巣同士の仲間割れ説、結構いい線行っていると思ったが……どうやら違うようだ。

 

 「さらに、弁護人は、もう一つ大きな見落としをしていますぞ!」

 亜内検事が手のひらを頭に当て、ペチペチとする決めポーズをしながら続ける。

 「な、なんでしょう?」

 「返り血ですよ」

 「返り血?」

 「その通りです。証人の服をご覧なさい」

 改めて、管さんの服をまじまじと見つめてみる。服にはどこにも血がついておらず、ワイシャツの清潔な白色しか目には入って来なかった。

 「どうですか? 返り血なんてこれっぽっちも飛んでいないでしょう?」

 管さんの服に返り血は跳んでいない。確かにこれは事実だ。だかしかし、まだ抜け道はある!

 

 亜内検事に、意見をぶつけてみる。

 「証人が、犯行後服を着替えたという可能性はないでしょうか? 証人は警備員ですし、詰所にある他の警備服に着替えれば、返り血の偽装も可能なはずです」

 「あり得ませんな」

 亜内検事に真っ向から否定された。

 「詰所を調べましたが、警備服は証人の服を除いて全てクリーニングに出されていました。さらに、この証人は警察が現場に到着してからずっと、我々の監視下にいました。そして、こうして法廷にやって来るまでの間、一度も服を着替えていないのです。弁護側の主張は、残念ながら通りませんぞ!」

 「そ、そんな!」

 動機に加えて、返り血の謎まで解かなければならなくなってしまうなんて……。

 

 ……こういう時こそ、あれをするべきなのかもしれない。

 追いつめられて、もうどうしようもない状況に立たされた時、ぼくはどうするか。

 普通に考えても乗り切れない状況まで追い詰められたのなら、“発想を逆転”すればいい。

 ぼくは、法廷記録から、現場写真を取り出し、遺体の服に注目する。遺体の服には、土と血が付着していた。

 ……そう、“管さんの服に返り血がついていない理由”ではなく、“被害者の服にだけ血がついている理由”を探すんだ。そうすればおのずと答えは見えてくる! ここが最後の踏ん張りどころだ。ここを抜ければ、勝利は目前だ!

 

 さて、そうと決まれば早速行動開始だ。 

 ぼくは改めて、被害者の服に注目する。女性にしては大柄な被害者は、サイズの大きいワイシャツを着て、ジーパンをはいている。何度も見た通り、服には血が飛んでいる。

 次に、管さんの服に注目する。

 管さんも被害者と同じくらい背が高く、警備員の帽子と、ワイシャツを着ていた。

 ……二人の服が、たまたまワイシャツなのは、偶然なのだろうか?

 二人の服を交互に見比べながら考えてみる。途中、何度か管さんと目が合ってガンを飛ばされたりもしたが、気にせず観察を続ける。

 

 ……さっぱり分からない。

 何度も写真を睨み付けたが、突破口が見つかることは無かった。

 「大丈夫、なるほどくん? 汗でびっしょりだよ?」

 真宵ちゃんが、汗だくのぼくを見てそういった。

 考えるあまり汗が噴き出てしまったようだ。言われてみると、ワイシャツが汗で服にぺたりと張り付いているのが分かる。うう、気持ち悪い。上着を脱いだ方がいいな。

 暑さと汗の湿気を逃がすために、ぼくは上着を脱いだ。脱いだ瞬間、溜まっていた湿気が一気に外に逃げて行く。脱いだら脱いだで、案外寒いな……まあ、後で上着を着れば問題ないか。

 

 改めて、観察を続ける。しかし、やはり何も出てこない。

 ……うう、八方塞がりだ。一体どうすれば。

 思わず机に突っ伏す。

 机に置いてある紙と、自分のワイシャツの白色だけが目に入り、視界が真っ白になる。……はは、今のぼくの頭もこれと同じで真っ白だな。

 そんなふうに考えている時だった。真っ白なぼくの視界にも白以外のものがあることに気づいた。

 

 一つは、資料の文字。プリンターで印刷された文字が寸分の狂いもなくきれいに印刷されているのが目に映る。

 白以外のものは、もう一つあった。

 

 それは、ぼくのワイシャツの“ボタン”だった。なぜだかは分からないが、そのボタンの存在が頭に引っ掛かった。

 ……なんだ、この違和感。ボタンがたまたま視界に映っただけなのに、何かひらめいたような気がする。

 この違和感の正体……もしかしたら!

 

 そう思い、もう一度遺体に注目する。今度は服ではなく、さらに細かい部分。そう、ワイシャツのボタンに。遺体の服のボタンは、左が上になっていた。

 次に、自分のワイシャツを確認する。ぼくのワイシャツのボタンも遺体と同様に左が上になっていた。

 ……なんだ、この違和感。

 情報が、頭の中を血のごとく回り続ける。一度情報をまとめるべきかもしれない。

 胸ポケットから手帳を取出し、白紙のページを開く。とりあえず、今分かったことを書き出そう。

 

 ボタンがある位置

 ぼく  左側

 被害者 左側

 管さん 右側

 

 管さんのボタンだけ付いている位置が違うな。これは何か理由があるのだろうか?  

 他の人のボタンも見て見れば、何か分かるかも。

 ぼくは、亜内検事の背広をじっと見る。ぼくの視線に気づいたのか、亜内検事は少し怯えた顔をした。彼のボタンは、左側に付いている。

 そのことを、メモに書き加える。

 さてと、あとは……。

 

 ぼくが次に注目したのは、裁判長……ではなく、真宵ちゃんだ。彼女の着物にはボタンは付いていないが、着物以外の服も一着くらいは持っているはず。もしもぼくの考えがあっていれば、真宵ちゃんの服のボタンの位置は恐らく……。

 予想を立てながら、話しかける。

 「真宵ちゃんって、着物以外の普通の服って持っている?」

 「着物以外の服? 持っているけど、それがどうしたの?」

 「その服のボタンって、右か左、どっちについていた?」

 「えっと、確か……」

 

 真宵ちゃんが質問に答える。その答えは、ぼくの予想した通りの答えだった。二人のボタンの情報をメモに書き込み、もう一度見直す。

 ……これで分かった。なぜ、被害者の服のみに返り血が飛んでいたのかが。これで、全てに決着がつくはずだ。

 

 そう思った直後、裁判長が口を開いた。

 「……どうやら、弁護側からの新たな発言はないようですね」

 残念そうな顔をしながら、裁判長が木槌を手に取り振り下ろそうとする。

 管さんはそれを見て、冷笑している。きっと、ぼくがもう反論できないと思っているのだろう。

 だけど違う。ぼくはまだ諦めてなどいない。

 木槌が振り下ろされる刹那。ぼくは、管さんの方を見た。

 そして、笑い顔を浮かべた。彼の冷笑をかき消さんばかりの、ふてぶてしい笑いを。

 ぼくの辞書の中に、こんな言葉がある。

 

 “弁護士はピンチの時ほどふてぶてしく笑う”

 

 追いつめられた時こそ、笑いを浮かべる。そうして何度も窮地を乗り越えてきた。今回だって乗り越えられるはず。……ここで一気に片づける!

 

 「異議あり!」

 

 木槌が振り下ろされるよりも早く、異議を叩き付ける。裁判長は我に返って、持っていた木槌を落としてしまった。

 「ど、どうしたのですか? 弁護人。いきなり大声を出して」

 「まだです、弁護側の立証はまだ終わっていません!」

 「どうせハッタリだ、今すぐ発言を止めさせろ!」

 管さんが、証人席から怒声を放つ。

 「ハッタリなどではありません。弁護側は、先ほど検察側の主張について、反論の準備があります!」

 「反論ですか…面白い。弁護側の要請を受け入れましょう」

 裁判長は、落とした木槌を手に取ると、それ打ち鳴らした。

 

 「それでは、弁護側に証拠の提示を求めます。検察側の主張に対する反論の証拠を!」

 何を突きつければいいかは決まっている。被害者の服装が分かる証拠品。それはただ一つしかない。これが最後の証拠品だ!

 

―つきつける― 被害者の服装が分かる証拠をつきつけろ!

 

【法廷記録】

 

──────────────────

・弁護士バッジ【つきつける】

これがないと、

誰もぼくを弁護士として

みとめてくれない。

──────────────────

 

──────────────────

・被害者の解剖記録【つきつける】

被害者の解剖記録。

下部に詳細あり。

 

※詳細

 被害者 女性(身元不明)

 死因 高所からの転落による脳挫傷

 追記 頭部に鉄パイプのようなもので殴られた形跡を発見。一度だけ殴られた模様。

──────────────────

 

──────────────────

・現場写真【つきつける】

現場の様子を写した写真。

 

※詳細

被害者は、あおむけに倒れている。

被害者の身長は、180~185cmほど。

頭から血が流れているが、髪に隠れて傷跡は見づらい。

校舎によって、影ができており、周囲に飛び散った血も見づらくなっている。

──────────────────

 

──────────────────

・現場の地図【つきつける】

現場となった学校の地図。

監視カメラの設置場所なども記入されている。

 

※作者注…画像を用意できていないため、

この証拠品を使う場面は、答えを掲示します。

──────────────────

 

──────────────────

・ネクタイピン【つきつける】

被害者が所持していた。

数日前に発生した空き巣事件の盗難品。

被害者と空き巣事件の関係は現在不明。

──────────────────

 

──────────────────

・謎の紋章【つきつける】

現場に落ちていた謎の紋章。

金メッキで加工されているようで、

ところどころはがれてしまっている。

──────────────────

 

──────────────────

・鉄パイプ【つきつける】

被害者を死に至らしめた凶器。

殴った衝撃で、一部が曲がってしまっている。

被告人の指紋と、被害者の血液が付着。

──────────────────

 

──────────────────

・工事現場の写真【つきつける】

イトノコ刑事が、現場近辺で撮影してきた写真。

全部で二枚ある。

 

※詳細

一枚目…地上から撮られた写真。足場を覆うように向こう側の見えない白色の幕が張られている。一見するとなんてことの無いただの工事現場。

二枚目…屋上から取られた写真。鉄パイプで作られた足場が写っている。

一か所、鉄パイプが抜けている部分がある。

──────────────────

 

《人物ファイル》

──────────────────

・綾里真宵(19)【つきつける】

ぼくの助手。

倉院流霊媒道の使い手。今もなお修行中。

──────────────────

 

──────────────────

・岡瑠波(17)【つきつける】

今回の事件の被告人。

事件の起こった学校の生徒。

隠れオカルトマニアのようだ。

──────────────────

 

──────────────────

・八雲紫(??)【つきつける】

弁護の依頼人。

瑠波さんの学校の先生らしいが

どこか怪しげな雰囲気がある。

──────────────────

 

──────────────────

・亜内武文(54)【つきつける】

どこかさえない中年検事。

昔は凄腕だったとかなんとか。

──────────────────

 

──────────────────

・糸鋸圭介(32)【つきつける】

おなじみイトノコ刑事。

相変わらずビンボーで、

そうめんばかりすすっているらしい。

──────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───これより下部へのスクロールを禁ずる───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───これより上部へのスクロールを禁ずる───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「これがその証拠品です!」

 「……流石にこれはないでしょ」

 真宵ちゃんがあきれた様子で言った。

 

 「最後の証拠品なんですから、きっちり決めなさい!」

 裁判長からも怒られてしまった。トホホ……。

 

 「あ、改めて、検察側の主張について、弁護側は反論の準備があります!」

 「ふむ……いささか不安ですが……面白い。弁護側の要請を受け入れましょう」

 裁判長は木槌を打ち鳴らすと続ける。

 

 「それでは、弁護側に証拠の提示を求めます。検察側の主張に対する証拠を!」

 何をつきつければいいかは決まっている。被害者の服装が分かる証拠品。それはただ一つしかない。今度こそ、これが最後の証拠品だ!

 

 

 ―つきつける― 被害者の服装が分かる証拠をつきつけろ!

 

【法廷記録】

 

──────────────────

・弁護士バッジ【つきつける】

これがないと、

誰もぼくを弁護士として

みとめてくれない。

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・被害者の解剖記録【つきつける】

被害者の解剖記録。

下部に詳細あり。

 

※詳細

 被害者 女性(身元不明)

 死因 高所からの転落による脳挫傷

 追記 頭部に鉄パイプのようなもので殴られた形跡を発見。一度だけ殴られた模様。

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・現場写真【つきつける】

現場の様子を写した写真。

 

※詳細

被害者は、あおむけに倒れている。

被害者の身長は、180~185cmほど。

頭から血が流れているが、髪に隠れて傷跡は見づらい。

校舎によって、影ができており、周囲に飛び散った血も見づらくなっている。

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・現場の地図【つきつける】

現場となった学校の地図。

監視カメラの設置場所なども記入されている。

 

※作者注…画像を用意できていないため、

この証拠品を使う場面は、答えを掲示します。

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・ネクタイピン【つきつける】

被害者が所持していた。

数日前に発生した空き巣事件の盗難品。

被害者と空き巣事件の関係は現在不明。

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・謎の紋章【つきつける】

現場に落ちていた謎の紋章。

金メッキで加工されているようで、

ところどころはがれてしまっている。

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・鉄パイプ【つきつける】

被害者を死に至らしめた凶器。

殴った衝撃で、一部が曲がってしまっている。

被告人の指紋と、被害者の血液が付着。

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・工事現場の写真【つきつける】

イトノコ刑事が、現場近辺で撮影してきた写真。

全部で二枚ある。

 

※詳細

一枚目…地上から撮られた写真。足場を覆うように向こう側の見えない白色の幕が張られている。一見するとなんてことの無いただの工事現場。

二枚目…屋上から取られた写真。鉄パイプで作られた足場が写っている。

一か所、鉄パイプが抜けている部分がある。

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《人物ファイル》

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・綾里真宵(19)【つきつける】

ぼくの助手。

倉院流霊媒道の使い手。今もなお修行中。

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・岡瑠波(17)【つきつける】

今回の事件の被告人。

事件の起こった学校の生徒。

隠れオカルトマニアのようだ。

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・八雲紫(??)【つきつける】

弁護の依頼人。

瑠波さんの学校の先生らしいが

どこか怪しげな雰囲気がある。

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・亜内武文(54)【つきつける】

どこかさえない中年検事。

昔は凄腕だったとかなんとか。

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・糸鋸圭介(32)【つきつける】

おなじみイトノコ刑事。

相変わらずビンボーで、

そうめんばかりすすっているらしい。

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