逆転裁判 ~東方法闘録〜   作:タイホくん

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探偵 前半 その9

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 「あ、なるほどくん!」

 建物の上の方から、聞きなれた声が聞こえた。条件反射で、思わず視線をそちらにやると、真宵ちゃんがピョンピョンとはねながら、こちらに手を振っていた。

 

 「真宵ちゃん!」

 エントランスに声を響き渡らせながら、ぼくは慌てて螺旋階段を駆け上がった。

 

 「もう、なるほどくん。一体どこをほっつき歩いていたの?」

 到着するや否や、真宵ちゃんは頬を膨らませながら、文句を垂れた。

 

 真宵ちゃんに、その言葉をそっくりそのまま返してやりたい気持ちもあったが、彼女なりにぼくのことを探していてくれたのだろうと考えると、真宵ちゃんへ対する反論の言葉は自然と引っ込んだ。

 

 怒っている真宵ちゃんを、ミソラーメンを今度おごるという約束で何とかなだめると、ぼく達は、お互いの情報交換をし合った。

 やはり、真宵ちゃんもぼくと同様に、外の世界に開いていた“スキマ”から落ちてこの世界に来てしまったようだ。しかし、落ちたタイミングが違ったせいか、真宵ちゃんとぼくは別々の場所に出てしまった。

 

 話によると、真宵ちゃんは商業エリアの大通りに落とされたそうだ。

 霊夢さんが人里の方で人が倒れていて騒ぎになっていると言っていたが、大通りに落とされたのなら納得がいく。その時に、団子屋で出会った魔女の子に介抱され、裁判所に行くことを勧められたそうだ。

 

 「つまり、私たちは今、異世界に転移されているってことだよね。いやはや、なんだか漫画みたいな展開だね!」

 真宵ちゃんが、興奮気味に言った。

 ぼくとしては、早く元の世界に帰してもらいたいものだ。今月は珍しく事務所に依頼があったのに、それを残したまま異世界に転移されたのだから堪ったものではない。

 

 「それにしても……裁判所なのに、やけに人が少ないな」

 平日の昼間だというのに、裁判所にはぼくと真宵ちゃん以外には、数える程度の人しか見当たらなかった。

 「確かに、私たちがいつも行っている裁判所よりも、明らかに人が少ないね」

 確かに、外の世界の裁判所も、人は少ない方だが、ここまで少なくはなかった。

 裁判所に人がいないということは、それだけ幻想郷の治安は安定しているということなのだろうが、それにしても人が少なすぎる。まるで、不必要なものがすべて排除されているようにも思えた。

 

 「……おや、傍聴人か。珍しいね」

 突如、背後から女性の声が聞こえ、反射的に振り返る。

 そこには、二十歳ほどの見た目をした少女が立っていた。椛のような赤い髪を同じような色の髪留めで結び、藍色のロングスカートと着物をイメージしたような洋服を着ている。

 

 「おっと、いきなり話しかけたから驚かせてしまったか。悪かったね」

 ぼくがポカンとした顔をしていたのか、少女は少々申し訳なさそうに笑った。

 「あたいは、小野塚小町。この裁判所の係官をやっている者さ。あんたは?」

 「あ、成歩堂龍一と言います。こっちの子は、綾里真宵と言います」

 「成歩堂、か。変な名前だな」

 そんなにおかしいかな、この苗字……。

 「あんたら、裁判を傍聴しに来たのかい?」

 「ええ、そうですが。」

 「ふーん、物好きなやつだね」

 「も、物好き?」

 

 小町さんの言葉に思わず小首をかしげる。幻想郷では、裁判を傍聴する人は物好きとして扱われるのだろうか。

 「いや、ここでやっている裁判はすぐ終わっちまうから、見に来るやつが全然いなくてさ。あんたみたいなやつは半年に一人いるかいないくらいだから、驚いてしまったもんで」

 裁判がすぐに終わる、ということは、よっぽど優秀な検事か弁護士がいるということなのだろうか。一体どれほどの手腕の持ち主なのだろう。

 

 そう思うと、興味が無かった幻想郷の裁判を少し見たくなってきた。

 「裁判を見たいなら今の内だよ。あと五分で始まるから、急いだ方がいい」

 小町さんは、指で、チョイチョイと法廷の入り口を指す。

 どうしたものか。出来ることならば、これから帰る方法を探したかったのだが……まあ、行く当てもないし、すぐ終わるのなら、傍聴してもいいかな。

 「ありがとうございます。せっかくなので見てみようと思います」

 それを聞いた小町さんは、「そうか。楽しんできな」と言って、仕事があるのか、どこかへ消えてしまった。

 

   

 


 

 

 

 

 

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