逆転裁判 ~東方法闘録〜   作:タイホくん

34 / 116
探偵 後半 その1

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 【4月9日 午後5時13分 留置所】

 閉廷後、ぼくたちは咲夜さんから事件の詳しい話を聞くために、治安改善エリアにある留置所の前に来ていた。

 エリアの隅の方に建てられた留置所は、もう何年も使われていないそうだ。煉瓦をいくつも積み上げて作られた建物は、もう手入れがほとんど入っていない。屋根からは、名前も分からないような草が何本も垂れ下がり、外壁には所狭しと苔が生えていた。

 

 「なんだか、お化け屋敷みたいな建物だね」

 留置所を見て、真宵ちゃんがポツリと感想を漏らす。

 ……同感だ。外の世界の留置所はここの何倍も大きくて、整備もきちんと行き届いていた。

 

 紫さんから聞いた話では、ここは一年に一、二回ほどしか使われていないそうで、拘置されている人がいなければ、常に無人状態らしい。そのせいか、掃除も全くと言っていいほどされておらず、入っただけで悶絶するような悪臭に襲われるそうだ。

 

 ……余計なことを聞くんじゃなかった。

 赤茶色に錆びてしまった鉄のドアの前で、一人後悔する。

 留置所についての詳細な情報を聞かなければ、ここに入ることにはそこまで抵抗は無かったのに……ものすごく臭いと言われてしまった以上、進んで入る気にはなれない。

 

 「どうしたの、なるほどくん?入らないの?」

 ドアの前で立ち尽くすぼくを見て、真宵ちゃんが顔を覗き込みながらそういう。

 「ぼくだって、早く入りたいよ。でも、紫さんからあんなことを聞かされたらとても入る気には……」

 「なんのこと?」

 真宵ちゃんは、疑問符を浮かべた。

 さては真宵ちゃん、紫さんの話を聞いていなかったな。

 

 思えば、ぼくと紫さんが話をしている時、真宵ちゃんは控室のソファに寝転がっていた。だから、留置所の話も聞こえていなかったんだな。

 「もう。ナルホドくんが留置所に寄ろうって言ったのに」

 真宵ちゃんが口を尖らせながらそういう。

 「なるほどくんが開けないなら、私が開けちゃうからね!」

 真宵ちゃんがそう言いながら、ドアノブに手をかける。

 

 ま、まずい!そのドアを開けてしまったら、鼻が曲がるほどの悪臭が!

 そう、口に出し、真宵ちゃんを止めようとした。が、なぜか言葉を発することが出来ない。そんなぼくの思いも届くことなく、留置所のドアが開かれる。

 

 終わった。と、思った矢先だった。

 「うわぁ!中はすごく綺麗だよ、なるほどくん!」

 真宵ちゃんが、感嘆の声を上げたのだ。

 中はすごく綺麗?一体どういう事だ?

 恐る恐る、留置所の中をのぞいてみる。

 「ど、どうなっているんだ?」

 思わず素っ頓狂な声が出てしまった。

 

 どういうわけか、建物の中は、外とは打って変わって隅々まで手入れが行き届いていたのだ。

 窓ガラスや、合金で作られたであろうドアノブなどは、外から射して来る陽の光をくっきりと反射するほどにきれいに磨かれ、受付のカウンターや、ソファ、壁に使われている木と同じこげ茶色の絨毯などには、埃一つ落ちていない。

 また、建物の中からは、鼻が折れ曲がるほどの異臭などは一切漂って来ず、むしろほのかにバラのようないい香りがする。

 ど、どうなっているんだ?紫さんの話では、掃除は全然行き届いていないらしいが。

 

 「あら、いらっしゃい」

 ぼくが、困惑していると、受付の方から聞き覚えのある声が聞こえた。

 「あ、紫さん!」

 真宵ちゃんがそう言いながら、受付の方へ駆け寄る。紫さん、なんでここにいるんだ?

 そう思いながら、紫さんの方へぼくも向かう。

 「ふふふ、驚いているようね」

 カウンターまで来たぼくを見ながら、紫さんが悪戯っぽい笑みを浮かべる。

 「……一体どうなっているんですか?さっきの話ではこの留置所は、全然掃除が行き届いていないと話していましたが」

 「ああ、あれ?嘘に決まっているじゃない」

 ……嘘だったのか。

 

 紫さんは、ぼくの方を見てニヤニヤした顔をしながら続ける。

 「ごめんなさいね。ちょっと驚かそうと思って。あなたがここに来る前に、大急ぎで掃除したのよ」

 「さ、先回りして掃除って……裁判所からここまで五分程度しかかからないのに、どうやったらこんなに早く掃除が出来るんですか?」

 「ああ、それは、あの人に手伝ってもらったのよ。もうそろそろ出てくると思うんだけど」

 紫さんはそう言うと、廊下の方を見る。すると、一番奥にある扉が開かれ、中から誰かが出て来た。

 「あら、成歩堂様。いらっしゃっていたのですね。お待たせして申し訳ありません」

 そう言いながら、ピッタリ斜め四十五度でお辞儀をする。

 「さ、咲夜さん? 何でここに!?」

 掃除用具を持ちながらお辞儀をする彼女を見て、ぼくはそう尋ねることしかできなかった。

 

   

 


 

 

 

 

 




どうも、タイホくんです。お久しぶりです。

本日、以前あらすじのみ投稿して運営さまに起こられてしまった「調整裁判」を投稿しました。もしよろしければ読んでいただけると嬉しいです。

では。

大妖精の証言内でムジュンしあっている番号の組み合わせを選べ!

  • ①と④
  • ④と⑦
  • ⑤と⑥
  • ②と③
  • ③と④
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。