逆転裁判 ~東方法闘録〜   作:タイホくん

39 / 116
語りが今回のみ三人称になっています。


探偵 後半 その6

 

 

 

 

 

 

 

  

 

【同日 午後6時47分 大図書館】

 パチュリー・ノーレッジは白黒の服を着た少女と対峙していた。

 

 「……どうやら、またネズミが忍び込んで来たようね」

 「悪いがそれは誤解だ。今回はちょっと借りたい本があって来ただけさ」

 「借りる、借りるって……あなたは、今まで借りて行った本の数を覚えているのかしら?」

 「ざっと、十三冊ってところだな」

 「嘘仰い。百十三冊よ」

 「おっと、それは間違っている。私が普段借りているのは魔道書だ。本っていうのは、小説や随筆のことを指すと私は考えているぜ」

 「……なにを言っても無駄な様ね。それで、何を借りに来たのかしら?」

 「とある異変、いや事件を解決するための本さ」

 「事件?」

 「ああ、ちょっと厄介事に巻き込まれていて、今すぐ必要なんだ。貸してくれ!」

 「……もしも、嫌だと言ったら?」

 「力づくでも貸していただく。今回は本当に急いでいるんだ」

 「はあ。……やっぱり大きめのネズミ取りを買っておくんだったわ」

 

 パチュリーは気だるそうにため息を一つ吐くと、懐から本を二冊取り出した。

 魔道書だ。動物の皮を(なめ)してできた高級感のある魔道書は、辞書ほどの厚みがある。

 また、表紙には、太い白色の線で書かれた魔方陣があしらわれていた。

 

 パチュリーがおもむろに魔道書の表紙に手をかざす。すると、魔方陣がそれに共鳴するように黄色と水色の光を放った。魔方陣が光った瞬間、本はパチュリーの手からするりと抜けだし、ひとりでに動き出した。

 

 同じようにもう一冊の魔道書に手をかざす。今度は茶色と緑色に魔方陣が光り、またひとりでに動き出した。

 「水、木、金、そして土か。ならば、コイツの出番だな」

 白黒服の少女は悪戯っ子のような笑みを浮かべると、ポケットから何か小さなものを取り出した。

 

 彼女が取りだしたのはミニ八卦炉と呼ばれるものだ。緋々色金(ひひいろかね)という、貴重な金属を加工し八角形にしたもので、手の中にすっぽりと収まるほどの大きさである。

 

 ミニ八卦炉は小型化された火炉で、卓上コンロのような小さな火から、山一つなぎ払えるほどの高火力まで自由に調節できる便利なマジックアイテムである。

 白黒服の少女は、このミニ八卦炉を武器として使用し、戦闘を行うのだ。

 

 「さて。それじゃあ、始めようぜ」

 少女が、持参した箒にまたがって、そう言った。

 

 それを皮切りに、二人は室内にいるのにもかかわらず、空高く飛び上がった。

 パチュリーが使役する魔道書の方を向いて、何かを指示する。すると、二冊の魔道書のページがぱらぱらと捲れ、やがて小さな発射口のあるページで停止した。

 それと同時に、魔道書がパチュリーの両脇から、少女に向けて極太のレーザーを発射した。

 

 「よっと!」

 少女は、レーザーを臆することなくひょいひょいと避ける。

 それを見たパチュリーは、再び魔道書に指示を出す。

 すると、魔道書から野球ボールほどの大きさをした緑色の弾がいくつも現れ、少女の方へ飛んでゆく。

 

 「どうした?そんなんじゃ当たらないぜ?」

 しかし、少女は怖気づくどころか、パチュリーに向かって挑発をかます。

 少女は巧みに箒を操り、弾を回避しようとした。が、そう上手くもいかない。

 

 少女が弾を避けようとした瞬間に、パチュリーは再びレーザーを放ったのだ。

 弾を避けるのに必死だった少女は、レーザーの接近に気づくのが少し遅れた。

 少女が弾を避けきるころには、レーザーはすでに彼女の目前に迫っていた。彼女はこの時初めて、レーザーの存在に気づいたのだ。

 さすがに避けきれないだろうと、パチュリーは余裕の笑みを浮かべる。……しかし、パチュリーの予想を上回る出来事が起こった。

 

 弾を避けきった後にレーザーの接近に気づいた少女は、驚いた様子を見せたが、すぐに姿勢を整えると、一気に箒のスピードを上げてレーザーを回避したのだ。

 スレスレで回避したため、少女の服の裾が少しだけ燃えて白い火花を散らす。

 コンマ一秒の出来事だった。あともう少しだけ気づくのが遅ければ、少女はレーザーに被弾していた。

 

 「おっと、危ない危ない」

 額に垂れた汗を手の甲で拭いながら、少女はパチュリーの方を見てそういった。

 

 「ぐ、しぶといわね」

 勝ちを確信していただけに、避けられた時のショックは大きかった。パチュリーは、精神的な余裕を失いつつある。

 

 「……このままこうしてても埒が明かない。一気に決めさせてもらうわ」

 そう言うと、パチュリーは胸ポケットからカードを取出し、天高く掲げた。

 

 「スペルカード発動!」

 パチュリーがカードを掲げながら、そう告げた。

 すると、カードが金色に光り始める。眩い光を放つカードは、やがてパチュリーの手の中で、小さな光の粒になった。その光の粒は、パチュリーの側にある魔道書の中に吸い込まれていく。

 光が魔道書の中にすべて吸い込まれた瞬間、魔道書もまた先ほどのカードと同じように金色の光を放った。

 

 「金符・メタルファティーグ」

 パチュリーが宣言すると、魔道書がより一層輝き、金色の大きな弾を放ち始めた。

 弾の大きさは先ほどの弾よりも大きく、サッカーボールほどの大きさがある。

 

 「おっと、スペルカードか」

 その様子を見た少女が独り言をつぶやいた。

 「そっちがその気なら、こっちにも考えがあるぜ。」

 

 にやりと笑うと、少女はミニ八卦炉を構え直し、箒を猛スピードで走らせた。

 少女は、まばゆい光を放つ弾に怖気づくこともなく、グングンとパチュリーに接近して行く。途中、弾が掠り、先ほどと同じように白い火花を散らしたが、少女はそんなことは気にも留めなかった。

 

 「さて、一気に片づけるぜ。」

 パチュリーがすぐ目の前に来たのを見た少女は、ポケットからカードを取り出した。

 

 「スペルカード発動!」

 少女が宣言するとカードが今度は虹色に光り、やがて光の粒となって、彼女の持つミニ八卦炉にすべて吸収された。

 ミニ八卦炉が大きな音を立てて起動する。それから一秒と経たないうちに、ミニ八卦炉が虹色の煙を吐き始めた。

 

 「さあ、パチュリー。これでお終いだぜ!」

 少女はそう言いながら、ミニ八卦炉の照準をパチュリーに合わせた。

 

 「恋符・マスタースパーク!」

 少女が宣言したと同時に、虹色の極太レーザーがパチュリー目掛けて発射された。

 あまりにも突然の出来事に、パチュリーは少女の放ったビームを避けることが出来なかった。ビームがパチュリーに直撃し、大きな爆発を起こす。

 

 「む、むきゅー!」

 被弾したパチュリーが悲鳴を上げながら、一気に急降下していった。傍らにある魔道書は、主が力尽きたせいか、光を失っていた。

 

 「へへん。この勝負、私の勝ちだぜ!」

 地面で目を回すパチュリーを見て、少女はピースサインを作り、勝ち誇った。

 

   

 


 

 

 

 

 




どうも、タイホ君です。
恐らく今作最初で最後の戦闘回をお送りしました。
戦闘描写、書くの難しいのでしばらくはいいかなって感じです。

次回は2月8日に投稿します。
九千文字近い説明回になるので、覚悟の準備をしておいてください!

それだけです。

では。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。