逆転裁判 ~東方法闘録〜   作:タイホくん

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法廷1日目 その3

 

 

 

 

 

 

 

  

 

―証言開始―

 

~警察の見解~

 

 「被告人の逮捕の決め手となったのはこの鉄パイプッス」

 イトノコ刑事はそう言うと、ビニール袋に入った長さ五十センチほどの鉄パイプを取り出した。

 「鉄パイプからは被害者の血液と被告人の指紋が検出されたッス。まず、被告人はこの鉄パイプで被害者を殴り気絶させたッス。その後、気絶した被害者を屋上から突き落として殺害した。これが我々の考えッス」

 

 

 

 証言を聞き終えた裁判長は少し悩むような表情を浮かべたが、すぐに普通の顔に戻った。

 「なるほど。良く分かりました」

 「この鉄パイプを証拠品として提出するッス」

 「受理します」

 イトノコ刑事によって鉄パイプが机の上に置かれた。

 「裁判長!」

 ぼくは裁判長に声をかける。

 「なんですかな、弁護人?」

 「ただ今提出された鉄パイプを調べさせてもらえないでしょうか?」

 「ふむ。確か弁護人はまだ実物を調べていませんでしたな。亜内検事、どうされますか?」

 「我々はすでに調べてありますので。どうぞご自由に」

 「ありがとうございます」

 許可が下りたのを確認した上で、机の上から鉄パイプをビニール袋ごと持って弁護席に運ぶ。

 机の上に鉄パイプを置いた後、あらかじめ持参しておいた白手袋をはめて、袋からパイプを取り出した。こうすることで、指紋が付かないようにする。

 

 鉄パイプは目測五十センチほどの長さがある。

 片方の先端が少し曲がっている。恐らく、被害者を殴打した際に曲がってしまったのだろう。曲がった先を見ると、一部が青白く光っていた。これはきっとルミノール試薬の跡だろう。

 ルミノール試薬とは、血液を検出するための特殊な化学薬品のこと。これを吹きかけると、たとえどれだけ血をきれいに拭い取ったとしても、血が付いた部分が青白く光り血液があった場所が分かるという優れものだ。

 

 他に怪しいところはないかと、いろいろな方向から観察してみる。

 曲がっていない方の先端にはこの鉄パイプと同じくらいの大きさの穴が開いた四角いでっぱりがある。……他の鉄パイプとつなぐためのものだろうか?

 他にも手がかりがあると思い、さらによく観察する。

 ……おや。ルミノール試薬以外にも何かついているな。

 パイプをよく見ていると、白い粉が付いているのを見つけた。たぶん、瑠波さんの指紋だろう。粉の正体は指紋を採る時に使うアルミの粉だな。

 粉は鉄パイプの先端、ルミノール試薬のある部分に重なるようにして着いていた。

 ……妙だな。なぜ被害者が殴られた部分に指紋が付着しているのだろうか?

 

 その後も何かないかと探してみたが、これ以上の手がかりは得られなかった。

 調べ終わったパイプを袋にしまって、元の机の上に置き、白手袋をはずして弁護席に戻った。

 

 

 

―証拠品「鉄パイプ」のデータを

法廷記録にファイルした―

 

・鉄パイプ

被害者を死に至らしめた凶器。

殴った衝撃で、一部が曲がってしまっている。

被告人の指紋と、被害者の血液が付着。

 

 

 

 「弁護人、もう大丈夫なのですか?」

 裁判長がぼくに聞いてくる。

 「大丈夫です。ありがとうございました」

 それを聞いた裁判長は頷く。

 「さて、弁護人も証拠品を十分に調べられたことですし、そろそろ……」

 「あ、ちょっと待って欲しいッス」

 口を開いたのはイトノコ刑事だった。

 「まだ何かあるのですか?」

 話をさえぎられた裁判長が、少し驚いた様子で聞いた。

 「あまり関係ないかもしれないッスが……実は今、東深見高校では工事を行っているそうッス」

 「工事、ですか?」

 「そうッス。ただ、何の工事だったか忘れてしまって……」

 「あ、それなら私、分かります」

 被告席から声が上がった。瑠波さんだ。

 「ふむ、そういえば被告人は東深見高校の生徒でしたな」

 裁判長は何度か頷く。

 「それで、一体何の工事を行っているんですか?」

 前のめりの姿勢で裁判長が問う。

 「耐震化工事です」

 「耐震化、ですか……」

 「うちの学校、校舎が古くて地震が来たら危ないからって、先生が言っていました」

 「なるほど。日本は地震大国ですからな。“備えあれば憂いなし”というやつですね」

 裁判長は感心したような顔をする。

 「それで、糸鋸刑事。その工事がどうかしたのですかな? わざわざ発言したということは、何か重要な意味があるのでしょう?」

 「重要かどうかまでは分からないッスが……実は、工事現場の足場が被告人が発見された屋上にまで通じていて、もしかしたら何か関係があるのかもと思って……だから、念のために伝えておこうかと、思ったッス」

 「なるほど……。確かに重要なことかもしれません。話してくださってありがとうございました」

 裁判長の反応にホッとしたのか、イトノコ刑事は安堵の表情を浮かべる。

 「一応、その工事現場の写真を撮っておいたッス。ただ、危険だと言われたから足場の外側と、屋上からしか撮らせてもらえなかったッス」

 「分かりました。では、その写真を証拠品として受理しましょう」

 工事現場の写真が証拠品として受理される。すぐに複製されたものが検事席と弁護席に配られた。

 

 一枚目は地上から撮られた写真。足場を覆うように向こう側の見えない白色の幕が張られている。一見するとなんてことの無いただの工事現場だ。

 二枚目は屋上から撮られた写真。こちらもただ足場が写されているだけである。……あれ。二枚目の写真の足場、一か所だけ鉄パイプが抜けている。安全第一が聞いてあきれるな。

 正直、事件に関係あるとは思えなかったが、念のため法廷記録にファイルした。

 

 

 

―証拠品「工事現場の写真」のデータを

法廷記録にファイルした―

・工事現場の写真

イトノコ刑事が、現場近辺で撮影してきた写真。

全部で二枚ある。

 

※詳細

一枚目…地上から撮られた写真。足場を覆うように向こう側の見えない白色の幕が張られている。一見するとなんてことの無いただの工事現場。

二枚目…屋上から取られた写真。鉄パイプで作られた足場が写っている。

一か所、鉄パイプが抜けている部分がある。

 

 

 

 「さて、それでは今度こそ次のステップに進むことにしましょう」

 裁判長が場の空気を整えるためにそう言った後、木槌を一回鳴らした。

 「では、弁護側に尋問をしていただきます」

 ついに来た。尋問の時間が。

 

 ……尋問をするのは、実は結構ご無沙汰だったし、久々に手順を確認しておこう。

 

 尋問が始まると、証言者が話した証言がいくつかのブロックに分けられる。

 そして、それぞれのブロックには、【ゆさぶる】というボタンが用意されている。

 それをクリックすると、証言がゆさぶれるんだったな……。

 ゆさぶると、証言者は詳細な話をしてくれるから、そこで情報を得る……そして、話が終わったら、元のタブに戻って、別の証言をゆさぶる……基本はこれの繰り返しだ。

 

 そして、証拠品や、人物の情報とムジュンする情報を見つけたら、【ゆさぶる】ボタンの隣にある【つきつける】ボタンを押して、法廷記録から、ムジュンしていると思う証拠品、もしくは人物をつきつける、だったな。

 

 よし、こんなものかな。とりあえず、実際に尋問してみて、感覚を思い出していくとしよう!

 

 「では弁護人、尋問をお願いします」

 「はい!」

 ぼくは尋問を開始した。

 

【尋問へ】

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

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