「異議あり! 今の証言には決定的なムジュンがある!」
「む、ムジュンですか?」
指を刺された桜さんが動揺する。
「……念のため、もう一度確認します。証人、紅魔館からの帰り道では何も起こらなかった。間違いないですね?」
「何度も言っているじゃないですか。間違いありません!」
少し苛立ちながら、不愛想に桜さんが答える。
「……これで確信しました。桜さん、あなたは嘘をついている!」
そのまま証拠品をつきつける。そう、文々。新聞だ。
「これは、今日の文々。新聞の夕刊です。この新聞の一面にこんな記事があります。“四月八日午後十一時五十分ごろ、霧の湖で小規模な爆発が発生”……と」
桜さんの顔から少し血の気が引いた。図星に違いない。
「証人、貴方と思しき人物が紅魔館に現れたのは十一時五十分ごろのことです。そして紅魔館と霧の湖はかなり近い距離関係にある。もしあなたが本当に紅魔館に行っていたのならば、爆発音を聞いていなければならない。しかし、証人。あなたは帰り道で“何も起こらなかった”と証言した。これについて、どう説明するつもりですか!」
桜さんは、動揺のあまりグロッキーになってしまったのか、「あわわわ」と口に出している。
「異議あり!」
そこに四季検事が異議を挟む。
「どうやら、弁護人は自分自身で犯した過ちに気づいていないようです」
「どういうことですか?」
「証人は紅魔館に行ったのにもかかわらず、爆発音を聞いていない。……これはこの証人が紅魔館に行っていないということを示している。つまり、先程提出された写真は何の意味も持たないということです!」
「い、異議あり! ですが、写真には確かに証人が写っている! 彼女が紅魔館にいたことは明白です!」
「異議あり! しかしそれでは爆発音を聞かなかったという点に説明が尽きません。これについて、どう説明するつもりなのですか!」
「ぐ……ぐおおお!」
「……一度状況を整理してみましょうか」
しばらくして、紫さんが口を開いた。
「先ほど紅魔館の主から提出されたこの写真。これには証人と思しき人物が写っている。しかし、彼女は紅魔館からの帰り際に爆発音は聞いていないと話した。もし本当に彼女が紅魔館に行っていたならば、爆発音を聞いていてしかるべき、というわけね」
「裁判長の仰る通りです。つまり、先程提出された写真はもはや何の力も持たない。写真に写っていた人物は他人の空似だったのでしょう」
「う……」
「やはり事実は何も変わらなかった。被害者を殺害したのは被告人。そして、証人はその犯行の一部を目撃していた。これこそが真実なのです!」
「……どうやらそのようね」
こちらが反論してこないところを見て、紫さんが頷いた。
……ここまでか。……いや、まだあきらめるには早い。考えるんだ! できる限りの可能性を!
あの写真に写っている人物を桜さんだと仮定しよう。なぜ、彼女は紅魔館の前に現れる必要があったのか?
……一つ考えられるのはアリバイ工作だ。もしも彼女が真犯人だとした場合、言い逃れをするために、アリバイを作る必要がある。そのために紅魔館に移動したと考えるならばどうだろうか?
そもそも幻想郷にはカメラというものがあまり存在していない。経緯はともかくとして、桜さんが紅魔館の防犯システムの存在に気づいていたとしたら、それを利用できると考えたのだろう。
彼女が紅魔館の前に現れる理由は思いついた。……でも、まだ問題がある。紅魔館で目撃されて、午前十二時までに現場に戻るためには、紅魔館から人里を十分程度で往復しなければならない。
しかし、調査のために人里から紅魔館まで移動したときは、片道で四十分はかかった。往復するとなればさらに時間がかかるのは容易に想像できる。十分間で往復するなど、人間にできる所業ではない! 替え玉でも用意しない限り、ほぼ同時刻に二か所同時に現れることなんて……まてよ、替え玉?
替え玉、という言葉が頭の中で引っかかった。替え玉……そうだ、それだ! 調査の時に知ったあれを使えば、往復時間の問題も、爆発音が聞こえなかった理由にも説明がつく!
……いや、それどころか、凶器の謎についても解決できるかもしれない!
「しばらく待ってみたけれど、弁護側からの反論はないようね。……では、これをもって、この証人への尋問を終了し―」
「待った!」
机を思いっきり叩いて紫さんの言葉を制止する。
「裁判長! 弁護側は新たな可能性を提示する準備があります!」
「異議あり! ふん。今更何を。写真に写っていた人物は証人によく似た人物だったのです。この証拠品にはもはや何の力もない!」
「異議あり! 何の力もない、それは違う! この写真はある一つの可能性を示しているのです!」
「ほう……面白い。聞かせていただきましょう」
……今ぼくが答えるべきことは、桜さんが替え玉になりうるものを用意できたということだ。これまでの調査で得た情報を総合すれば答えは導かれる!
ぼくは机をたたく。そしてそのまま人差し指をつきつけた。
「この写真から導かれる一つの可能性。それは……!」
―つきつける― 写真から導かれる可能性とは?
「これこそが写真から導かれる可能性なのです!」
「……さすがに違うと思うわ」
裁判長席からため息交じりの声が聞こえた。
「もう一度考え直して頂戴」
……間違えてしまったようだ。
「この証拠品から導かれる一つの可能性。改めて教えて差し上げましょう。それは……!」
―つきつける― 写真から導かれる可能性とは?
以下、投稿当時の後書き
どうも、タイホ君です。
書きためしていた分を書き直していたら遅くなりました。
ついでに文章もわけわからんことになりました。
さて、つきつけるのコーナーです。
今回は写真から導くことができる可能性について答えてもらいます。
難易度は選ぶだけなら星二つ、理由まで答えるなら星四つぐらいでしょうか。
調査パートをもう一度読み直せば、理由についても答えられると思います。
書き直したせいで、少しわかりづらくなっていると思います。
すみません。
では。
―つきつける― 写真から導かれる可能性とは?
(難易度★★☆☆☆~★★★★☆)