ぼくは、咳払いをすると、説明を始めた。
「では、最初に、鉄パイプの指紋についてお話ししましょう」
一息おいて続ける。
「この鉄パイプは、工事現場から持ちだされたものだと推察されています。またこの鉄パイプには被告人の指紋のみが付着しています」
「それは、鉄パイプに関する記録にも書かれていましたな」
裁判長が頷く。
「ここで、一つ疑問が生じます。なぜ、この鉄パイプには被告人の指紋しか付着していないのでしょう?」
「被告人が殴ったんだから、そいつの指紋だけが残っている。至極簡単な話だ」
「ところが、そうもいかないのです。この鉄パイプは、工事現場から持ちだされたと、たった今話したはずです」
ぼくは裁判長の方を向くと、再び口を開いた。
「裁判長。工事現場と聞いて、どんなことを思い浮かべますか?」
裁判長は腕を組み考える。
「そうですね……人がたくさん働いているイメージがあります」
「そのとおりです。工事現場では、多くの人たちが働いています」
そう言うとぼくは、テーブルの前に移動し、鉄パイプを手に取って、掲げた。
「この鉄パイプは、恐らく資材として使われていたのでしょう」
ぼくは鉄パイプを机の上に置き直し、口を開く。
「多くの人が働く工事現場、資材として使われていた鉄パイプ。ここまで言えばもうお分かりでしょう」
ぼくは、机を叩く。
「多くの人が触れているはずの鉄パイプに、被告人の指紋しか付着していない。これは、明らかなムジュンです!」
「異議あり!」
管さんが異議を唱える。
「ちょっと待ちな。確かに、あんたの推理はスジが通っている。だが、その鉄パイプが工事現場から持ってこられたかどうかまでは分かっていないよな?」
「確かにその通りですな。鉄パイプが、工事現場の物だったというのは、弁護人の憶測に過ぎません。これでは推理は成立しませんな」
裁判長が管さんの意見に頷きながらそう言う。
「待った! では、証明してみせましょう。この鉄パイプが、工事現場の資材から持ちだされたという証拠を!」
その声を聞いた裁判長が、木槌を鳴らす。
「では、弁護側に問います。この鉄パイプが工事現場から持ちだされたことが分かる証拠を提出してください!」
―つきつける― 凶器の鉄パイプが工事現場から持ち出されたことを示す証拠をつきつけろ!
【法廷記録】
《証拠品》
【つきつける】──────────────────
・弁護士バッジ
これがないと、
誰もぼくを弁護士として
みとめてくれない。
──────────────────
【つきつける】──────────────────
・被害者の解剖記録
被害者の解剖記録。
『詳細』
被害者 女性(身元不明)
死因 高所からの転落による脳挫傷
追記 頭頂部に鉄パイプのようなもので殴られた形跡を発見。一度だけ殴られた模様。
──────────────────
【つきつける】──────────────────
・現場写真
現場の様子を写した写真。
倒れる被害者の姿が写っている。
『詳細』
被害者は、あおむけに倒れている。
被害者の身長は、180~185cmほど。
頭から血が流れているが、髪に隠れて傷跡は見づらい。
校舎によって、影ができており、周囲に飛び散った血も見づらくなっている。
──────────────────
【つきつける】──────────────────
・現場の地図
現場となった学校の地図。
監視カメラの設置場所なども記入されている。
※作者注…画像を用意できていないため、
この証拠品を使う場面は、つきつけるをカットします。
──────────────────》
【つきつける】──────────────────
・ネクタイピン
被害者が所持していた。
数日前に発生した空き巣事件の盗難品。
被害者と空き巣事件の関係は現在不明。
──────────────────
【つきつける】──────────────────
・謎の紋章
現場に落ちていた謎の紋章。
金メッキで加工されているようで、
ところどころはがれてしまっている。
──────────────────
【つきつける】───────────────────
・鉄パイプ
被害者を死に至らしめた凶器。
殴った衝撃で、一部が曲がってしまっている。
被告人の指紋と、被害者の血液が付着。
──────────────────
【つきつける】──────────────────
・工事現場の写真
イトノコ刑事が、現場近辺で撮影してきた写真。
全部で二枚ある。
『詳細』
一枚目…地上から撮られた写真。足場を覆うように向こう側の見えない白色の幕が張られている。一見するとなんてことの無いただの工事現場。
二枚目…屋上から取られた写真。鉄パイプで作られた足場が写っている。
一か所、鉄パイプが抜けている部分がある。
──────────────────
《人物》
【つきつける】──────────────────
・綾里真宵(19)
ぼくの助手。
倉院流霊媒道の使い手。今もなお修行中。
──────────────────
【つきつける】──────────────────
・岡瑠波(17)
今回の事件の被告人。
事件の起こった学校の生徒。
隠れオカルトマニアのようだ。
──────────────────
【つきつける】──────────────────
・八雲紫(??)
弁護の依頼人。
瑠波さんの学校の先生らしいが
どこか怪しげな雰囲気がある。
──────────────────
【つきつける】──────────────────
・亜内武文(54)
どこかさえない中年検事。
昔は凄腕だったとかなんとか。
──────────────────
【つきつける】──────────────────
・糸鋸圭介(32)
おなじみイトノコ刑事。
相変わらずビンボーで、
そうめんばかりすすっているらしい。
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餅田桜が倉庫に忍び込んだことを示す証拠品をつきつけろ!
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ナイフ
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ペアネックレスのかたわれ
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凶器のナイフの情報
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カメラの記憶
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コルクボード