逆転裁判 ~東方法闘録〜   作:タイホくん

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探偵1日目 その2

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 【同日 午前8時43分 留置所】

 「やあ、弁護士さん」

 留置所に入ると、いきなり声をかけられた。見ると受付に小町さんが立っている。

 「小町さん。どうしてここに?」

 「見ての通り受付さ。裁判が始まるまでは特に仕事もないし、それまでここで受付でもしておけって、四季様が」

 「ああ、なるほど」

 「私は、昼寝ができればどこでもいいんだけどね。ふぁ~」

 小町さんはのんきに欠伸をする。

 「ああ、そういえば今日の四季様、ずいぶんとご機嫌斜めな様子だったよ。あんた、今日の裁判は覚悟しておきな。開幕早々に軽い説教くらいはあるだろうね」

 開幕早々に説教……クドクドと喋る四季検事の様子が頭に否が応でも浮かぶ。

 

 「説教って……なにも悪いことしていないのにですか?」

 「ああ、そうさ。もはやあの人にとって説教は、息をすることと大して変わらないんだろうね」

 小町さんは「ははは」と笑いながら、面会の手続きをテキパキとこなす。部下の彼女のことだ、きっと四季検事のお説教にはもう慣れてしまっているのだろう。

 それにしても、また悩みの種が増えた。調査を始める前だというのに、これだと調子が出ない。うう、胃が痛くなりそうだ……。

 

 その後、面会の許可が通り面会室に通され、小町さんは容疑者を呼びに部屋を出て行った。

 「ねえねえ、なるほどくん。人形が動くって、どんな感じなのかな?」

 待っている間、手持無沙汰になった真宵ちゃんが聞いてきた。

 「さあ。小さなフランス人形でも出てくるんじゃない?」

 「へえ~。つくづく思うけど、幻想郷ってすごいなあ。小さな人形が動いちゃうなんて」

 「まだ小さいかどうかは分からないぞ」

 「いやいや、人形と言ったら小さいものだって。こう手のひらに収まるくらいの……」

 

 「小さいとは失礼なものの言い方ね!」

 真宵ちゃんが、自分の手で人形の大きさを表現しようとし始めた時、鉄格子の間仕切りの向こう側から、幼い声が聞こえた。

 声の主は、見た目小学二、三年ほどの女の子で到底人形には見えない。

 「に、人形なのに小さくない」

 真宵ちゃんが目を丸くした。

 「だから、失礼ね! 人形だからって小さいと思ったら大間違いなのよ!」

 女の子は、こちらに人差し指をつきつけると、こちらに向かって思いっきり怒鳴り散らした。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 「もう失礼な子ね。人のことを小さい小さいって」

「も、申し訳ありません。うちの連れが失礼なことを……ほら、真宵ちゃんも謝って」

 「ご、ごめんなさい……」

 ほとぼりが冷めた頃、機嫌を損ねた人形の子にひとまず二人で謝罪する。

 人形の子はウェーブのかかったショートボブの金髪を、指に絡みつけながらぼく達の謝罪を聞いていたが、やがてこちらに向き直るとにこりと微笑んだ。

 

 「まあ、いいわ。別にそんなに気にしてないし。私“れでぃ”だから」

 「はあ」

 やけに喜怒哀楽が激しい人だと思った。子どもだからだろうか……いや、でも妖怪だから見た目に反して年齢は高いはずだ。きっと、留置所に入れられてストレスがたまっているのだろう。

 自己完結して、話題を切り替えようとひとまず自己紹介を始める。

 

 「改めまして、弁護士の成歩堂龍一です。こちらは助手の綾里真宵」

 「はじめまして」と真宵ちゃんがお辞儀をする。

 「ご丁寧にどうも。私はメディスン・メランコリー。人形よ」

 「人形ですか……話には聞いていましたが本当に動くんですね」

 「ええ、私は俗に言う、自立型人形。たぶん幻想郷では私ぐらいのものよ」

 「それはいわゆる付喪神的な?」

 「さあ、私にも分からないわ。気が付いたら鈴蘭の花畑の上に寝そべっていて、自分がどこから来て、どう生まれたのかも知らないの」

 メディスンさんは、また髪を指にクルクルと巻き付けながら続ける。

 

 「でも私、過去にはとらわれない主義なの。それが“大人のれでぃ”って奴でしょ」

 「はあ」

 短い髪の毛をかきあげてキメ顔をするメディスンさん。気取っているつもりなのだろう。

 「カッコイイ……!」

 「ま、真宵ちゃん?」

 その言葉に、真宵ちゃんが同調し出した。昨日の裁判所での紫さんとの会話のときにも思ったが、真宵ちゃんはどうも大人の女性に憧れている節があるようだ。爛々とした目をメディスンさんに向けている。

 

 「あら、あなた話が分かるじゃない」

 褒められてまんざらでもないようだ。メディスンさんの口角がゆっくりと上がる。

 「ええ、ええ! まさしく大人の女性って感じです」

 「でしょう!」

 最初の険悪さはどこへやら。二人は意気投合し、鉄格子越しに手と手を合わせようとする。その時だった。

 

 「痛っ……!」

 真宵ちゃんが、小さな悲鳴を上げた。

 「どうしたの?」

 「なんか……手がピリッと静電気みたいに……」

 慌てて真宵ちゃんの手を見ると、鉄格子越しにメディスンさんの手と触れた部分が毛虫に刺されたように赤く腫れていた。

 「ああ、ごめんなさい。またやっちゃったわ」

 「また……?」

 「それ、きっと私の能力のせいよ」

 メディスンさんは、特に動揺することもなく真宵ちゃんの手をチョイチョイと指でさす。

 「能力……たしか、“毒を操る程度の能力”と聞いています」

 「ええ、その通り。ありとあらゆる毒を扱うことが出来る。それが私の能力よ」

 「ありと、あらゆる……」

 メディスンさんは、少し悲しそうな眼をして自分の腕をゆっくりとなぞった。

 

 「情けない話、能力の詳しいことについては私もよく知らないわ。自分の能力だっていうのに、何にも分かっていないし、制御も効かない不便な能力よ」

 再度真宵ちゃんの手に目をやる。腫れは少しずつ引いていっているようだ。赤みが消えかかっている。

 「真宵ちゃん、大丈夫?」

 「うん、大丈夫。痛みはすぐに引いたし、このままそっとしとけば大丈夫だと思う」

 「ごめんなさい……私のせいで」

 メディスンさんはうつむいて謝罪の言葉を述べた。

 「き、気にしないでください! あなたが悪いわけじゃないから」

 「……ありがとう」

 ため息を一つ吐くと、彼女は話しを続ける。

 

 「もう聞いていると思うけど、この能力が私が疑われている最大の要因だって聞いたわ。

まあ、当然よね。現場から毒物が見つかっていないんだもの。私を疑うのが普通だわ」

 現場から毒が見つかっていない……知らない情報だ。これは聞いておかないと。

 

 「毒物が見つかっていないんですか?」

 「そうよ。刑事の人たちから聞いていなかったの?」

 「ええ。まだ調査を始めたばかりなので、事件のことについては何も」

 「だったら、私が事件のことについて話すわ」

 「お願いします」

 もとより、ここへはそれを聞きに来た。話が少々脱線してしまったが、本題にそろそろ入らなくては。メモ帳を取出し、メディスンさんの話に耳を傾ける。

 

 「あれは、昨日のことだったわ。昼ごろに道をフラフラと歩いていたら鬼に声をかけられたわ。名前は……確か伊吹とかいったかしら。“夜に宴会をやるからお前も来い”って」

 ん、伊吹? その人って確か……霊夢さんの知り合いだったか。まさかこんなところでまた名前を聞くことになろうとは。

 

 「その伊吹さんとはお知り合いで?」

 「いいえ、知らないやつよ。その後も手当たり次第に周りにいる人たちに声をかけまくっていたわ。お酒のにおいをぷんぷんと漂わせていたから、きっと酔った勢いで宴会を開こうと思って、参加者を適当に集めていたんだと思うわ」

 「なるほど。それで、その宴会に参加した」

 「ええ、特にすることも無かったし、お酒、一回飲んでみたかったから」

 子どもの見た目をした彼女がお酒を飲む……外では考えられないが、ここは幻想郷。子どもがお酒を飲んでも問題ないのだろう。……たぶんだけど。

 

 「宴会に参加していた人はどのくらいでしたか」

 「私を含めて十人くらいかしら。鬼の参加者が半分を占めていたわ」

 指折り数えながらメディスンさんが記憶を巡らせる。

 

 「宴会はどんな感じでした?」

 「私、今まで宴会に参加したことが無かったから、宴会の雰囲気がどんな感じなのかわからないけれど……普通にみんなお酒を飲んでお喋りしていたわ」

 「いたって普通だったんですね?」

 「ええ、私が見た限りは」

 「そしてしばらくしてから被害者が亡くなった」

 「突然のことだったからビックリしたわ。苦しみだしたと思ったら、血を吐いて倒れて。私までつられて気を失いそうになっちゃったわ」

 「被害者が倒れた時、メディスンさんはどこに?」

 「……それが」

 「? 何か言いにくいことでも?」

 メディスンさんは顔を背けて、言うのをやや拒んでいる。

 

 「いや、言いにくいってわけじゃないんだけれど……被害者が倒れた時、私その人の隣にいたのよ」

 ……! なんだって!?

 「私の能力もそうだけれど、私が座っていた場所も逮捕された原因に入っているの」

 「隣に座っていたから毒を盛ることが出来たということですか?」

 「刑事さんたちはそう考えているみたいね」

 メディスンさんが意図的に被害者の隣に座り毒を盛った、か。とりあえずこの点を崩すことが出来る情報を集めるとするか。

 

 「なるほど。他に何か気づいたことは?」

 「……特にないわ」

 「分かりました。では、これで失礼します。そろそろ調査に向かわなければならないので。お話し、ありがとうございました」

 メモ帳を胸ポケットにしまい、身支度を整える。

 「それでは。また何かあったらお伺いします」

 メディスンさんに一礼して、部屋を後にする。続けて真宵ちゃんの部屋を出ようとする。

が、その直前、「あの!」と、メディスンさんが声を上げた。

 

 「まだなにか?」

 ぼくが聞くや否や、メディスンさんは頭を下げる。

 「あの、真宵さん。怪我、させちゃってごめんなさい。もう一度、最後に謝っておこうと思って」

 真宵ちゃんは、突然の謝罪に少し面食らったようになったが、すぐに彼女に向かって微笑みかける。

 「大丈夫。これでも私、体は強い方ですから。気にしないでください」

 そう言って、真宵ちゃんは鉄格子の方へ近づくと、メディスンさんの手を取る。

 「そうだ、ここからでたら一緒に修行しませんか?」

 「修行って?」

 「能力の制御の修業です。私も霊媒師をやっているんですけど、力がなかなかうまく制御できなくって。力をうまく操れない者同士、一緒に修行してみませんか?」

 「……はい!」

 真宵ちゃんにつられてメディスンさんも笑う。

 さすが真宵ちゃん、と言ったところか。人を元気づけるのが相変わらずうまい。

 

 二人で約束を交わし合った真宵ちゃんを連れ、留置所を後にする。

 今日はやけに日差しが強いようだ。建物外に出るとすぐに、ギラギラと照りつける太陽に体が焼かれそうになるのを感じる。

 ひとまず、事件現場に向かって情報収集だ。

 カバンから地図を取出し、それを片手に事件現場へと歩を進めた。

 

   

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも、タイホくんです。
探偵1日目その2をお送りしました。

今回は、比較的真宵ちゃんに出番を与えられたかな、と思います。
現状、私の作品内において、真宵ちゃん空気化現象が発生していたのですが、今回は上手い具合に役目を与えることができました。
本当ならば、もっとしゃべらせてあげるべきなのでしょうが……ちょっとした合いの手役にとどまっているのが、執筆中の悩みの種だったりします。

メディスンは、ツンツン系の幼女キャラに仕立てました。金髪キャラ=ツンツン系が多い、というのは私の偏見なのでしょうか。某東方ソシャゲで、甘ロリうさ耳ナースの衣装が実装されたときは、メディスンにここまでのポテンシャルがあるのか、と驚かされました。やっぱり、金髪ロリって強いですね。(小並感)

次回投稿予定日は、11月28日です。

では。
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