【同日 午前11時41分 留置所】
「……被害者の鬼以外に、毒を飲んでいた人がいた、ですって?」
メディスンさんが面会室に現れたのと同時に、ぼくは今回の調査で得た最も重要な情報を彼女に話した。
「ええ、その通りです。毒を飲んだのは、被害者の右隣に座っていた茨木華扇という人物です」
ぼくはそう言うと、法廷記録から華扇さんの写真を取り出し、メディスンさんに見せる。
「……ああ。そういえば、その人も宴会に参加していたわね」
「ありえないことを承知で聞きますが、この人のお猪口に毒を入れた記憶は?」
「あるわけないでしょ! なんで私がそんなことをしなければならないの!?」
メディスンさんは当然否定した。よし、これでより弁護側の主張が確実になる。
「えっと、なるほどくん。どういうことか詳しく教えてもらえるかな? 分かるようで、分からないの……」
真宵ちゃんは、こめかみを指で押さえている。
「……今回の検察側の主張は、毒物は被害者の体内以外から一切発見されていない、だからメディスンさんが犯人だ、というものなんだ。そして、メディスンさんが被害者を殺害した方法は、手のひらに毒物を生成し、その状態で被害者に直接触れる、と主張している。でも、華扇さんは“酒を飲んだ”ことによって、鬼殺の秘薬を摂取し、吐き気を感じたんだ。この時点で、検察側の主張する、毒物は被害者の体内以外から見つからなかった、という主張は崩れるんだ」
「ああ、なるほど! お酒と一緒に鬼殺の秘薬を飲んじゃった、ってことはそのお猪口かお酒に毒が入っていたってわけだね」
「そういうことだ」
「さらに言うならば、私と華扇さん? との間には距離があったから、私がその人に直接触ることで、毒を盛った可能性はない。つまり、お猪口に毒が入っていたことはより確実になる、ってことね?」
メディスンさんが、見事なロジックを組み立てた。
「その通りです。……すごいですね、メディスンさん」
「ふふん。言ったでしょう? 私、“レディ”だから。このくらいはお茶の子さいさいよ」
メディスンさんは、思いっきり胸を張る。
「じゃあ、このことを、法廷で立証することができたら……!」
「検察側の主張は覆ることになる。……次に問題になってくるのは、真犯人が誰なのかということと、真犯人が、華扇さんに毒入りのお猪口を渡したことを証明しなければならない、っていう話だけど」
「それはもう、勢いで証明しちゃおうよ!」
真宵ちゃんが、ぼくの肩をバシバシと叩く。……簡単に言ってくれるなあ。それができれば苦労はしないのに。
「……まあ、とにかく、これでこちら側の武器が出来上がった。あとは、法廷で全力を出して戦うだけだ」
腕時計を確認する。開廷時間の十二時まではもうすぐだ。
「よし、メディスンさん。そろそろ、お互いに裁判所へ向かう準備をしましょう。あと三十分ほどで開廷です」
「ふふふ。分かったわ。“レディ”として、裁判に臨む覚悟はとっくの昔にできているわ!」
……被告人は、基本的に席に座っていてもらうだけでいいんだが……まあいいか。
「よし。イッチョやるよ、なるほどくん!」
真宵ちゃんがガッツポーズをする。
……まさか、幻想郷で二回も裁判をすることになるとは思っていなかった。
……幸い、前回の裁判の時ほど情報は少なくない。大丈夫だ、恐れることはない。
自分で自分を奮い立たせたぼくは、面会室の重い鉄ドアを開け、裁判所へ向かった。
……勝負だ、四季検事!
どうも、タイホくんです。探偵1日目は今回をもって終了です。お疲れさまでした。
次回投稿分より、いよいよ法廷パートに入ります。
なるほどくんにしては珍しく、裁判で戦う方針を立てている状態での裁判です。
ピンチの状況からのスタートではないので、逆裁みが薄れてしまっているかもしれませんが……。
次回からの法廷パート用に、法廷記録を今回も用意しました。
以前も用意していたヒントについては、今回はいったん設けずに投稿し、つきつけるのコーナーが入るたびに追加していこうと思っております。
次回投稿予定日は2月20日です。
では。