【同日 午前11時49分 裁判所 被告人第2控室】
留置所から早足で裁判所に向かったぼくと真宵ちゃんは、控室で開廷の時を待っていた。まだ、法廷への入室許可は出ていない。
部屋についてから、二、三分ほど経ったころ、部屋の扉が開き、小町さんがメディスンさんを連れてきた。
「んじゃ、私はこれで。時間になったら呼びに来るんで。ふぁ~あ」
相変わらずのんきな小町さんは、役目を終えると気の抜けた欠伸をして部屋から去っていった。
「ど、どうも弁護士さん……さっきぶりね」
控室にやってきたメディスンさんは、心なしか……いや、さっきよりも明らかに動揺の色が見える。やはり初めての法廷という物は緊張してしまうもののようだ。
「大丈夫ですか? 緊張しているみたいですけど」
真宵ちゃんが、メディスンさんの目をのぞき込んで聞く。
「へ、平気よ……! このくらい、“れでぃ”の私にはなんてことないわ!」
メディスンさんが強がる。
「安心してください。メディスンさん。被告人は基本的には座って審理を聞いていればそれで問題ないので」
「あ、あらそう?」
どうやらメディスンさんは、裁判で被告人が何をするのかよく分かっていなかったようだ。ぼくが一声かけてあげると、緊張が少しほぐれたようだ。
「それなら安心ね。座ることは、人形の得意分野だから!」
メディスンさんは胸を張った。……ああ、確かにフランス人形にしろ、日本人形にしろ、人形って座っているイメージがあるもんな。……いや、日本人形はどちらかと言えば、立っていることのほうが多いか。
「あ、でも、なるほどくんの弁護は毎回ギリギリの綱渡りだからねー。あれを被告人席で聞いているときの心地と言ったら。それはもう、喉元に死神の鎌をつきつけられる気分になるよ!」
「え……そうなの?」
「真宵ちゃん、余計なことは言わないでくれ……」
メディスンさんの顔が再びこわばってしまった。……真宵ちゃんの言葉を否定できないのが一番つらい。
「ま、まあ。今回は裁判の方針も固まっていることですし、綱渡りとまではいかないと思います。……たぶん」
「そうだねー。いつもは綱渡りだけど、今回は……鉄骨渡りぐらいかな。……風が吹いたら、倒れちゃうことに変わりはないけど」
「……だから余計なことを言わないでくれ」
「ふふふ。面白いのね、あなたたち。聞いていて飽きないわ」
ぼくたちの会話を聞いていたメディスンさんが笑い出した。…‥まあ、結果的に緊張がほぐれたのなら良しとするか。
腕時計を確認する。裁判の開廷まであと五分だ。そろそろ法廷に移動しても問題ないかな。
「よし。二人とも、そろそろ行きましょうか」
「お、ついに開廷だね。よーし、がんばるよ。なるほどくん!」
「私の命、預けたわよ。弁護士さん。……信じてるわ」
それから、メディスンさんは迎えに来た小町さんのほうへ行く。
「あ、そうだ。弁護士さん」
小町さんが、部屋を出る直前、こちらに一声かけてきた。
「なんでしょう?」
「法廷に入って驚かないようにしとけよ。今日の傍聴席は、ものすごいことになっているからな。そんだけだ。それじゃあ」
と、言って、小町さんは部屋を出ていった。
……傍聴席がものすごいことになっている……人がたくさんいるということだろうか。昨日の法廷は傍聴人なんて誰一人いなかったのに……なぜなんだろう。
……まあいい。さて、やれるだけのことはした。今回の目標は一つ。華扇さんが、宴会中に毒物を口にしたことを立証する。その一点に集中するんだ!
どうも、タイホくんです。
本日より、法廷1日目がスタートとなります。
なるほど君たちの目的がはっきりしているいる関係上、今回の法廷パートではあまり動きがないと言えてしまいます。なので、今回はそこにたどり着くまでの過程をお楽しみいただければと思います。……序盤にこんなこと言ったら、期待が薄れてしまうかもしれませんが。
あと、本日の投稿分ですが、パート分けの都合とストックを小出しにしたいという思惑から、本来ならばこの控室のシーンで終わる予定でしたが、あまりにも味気なさすぎるので、法廷の序盤のシーンを本日の午後3時21分に投稿しようと思います。時間が中途半端なのは、3時きっかりより、中途半端な方がトップページに長く残れそうな気がするからです。こうすれば多分PV数も増えますし。
……万が一、4話完成までにストックが切れそうになったら、今回の分の埋め合わせを後からすればいい話なので。
と、いうことで「法廷1日目 その2」本日午後3時21分に公開いたします。
では。