逆転裁判 ~東方法闘録〜   作:タイホくん

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今回、少々短めです。


探偵2日目 その2

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 【同日 午後3時16分 留置所】

 

 「遅かったじゃない! 私ずっとここで待ってたんだから!」

 受付を済ませ、面会室に入ったぼく達は部屋に入るや否や、メディスンさんに怒られてしまった。

 「す、すみません。紫さんとちょっと話し込んでしまって……」

 頭に手を当て、ヘコヘコとぼくは謝る。メディスンさんは、しばらくの間、機嫌が悪そうに腕を組んでそっぽを向いていたが、やがてこちらに向き直る。

 「ま。いいわ。私、れでぃだから。許してあげなくもないわ。それに、大事な話をしていたのでしょう? なら、しかたないということにしてあげましょう」

 「あ、ありがとうございます」

 許してもらえたってことで……いいんだよな? 

このまま立っているのも何なので、ひとまず席に着くことにした。しばらく誰も座っていないであろうパイプ椅子は嫌に冷たく感じる。

 

 「調査の前に、いくつかお話を聞かせていただけますか」

 「いいわ。何でも聞きなさい」

 メディスンさんは、自信ありげに腕を組みなおす。

 

 「ではまず一つ……茨木華扇さんの使っていた盃の柄に覚えはありますか?」

 「盃の柄ね……。申し訳ないけれど、そこまで覚えていないわ」

 メディスンさんは頭を抱える。まあ、そりゃそうか。事件当時はアルコールが入っていたんだ。記憶がおぼろげになるのも無理はない。

 

 唸り声をあげなんとか記憶を辿ろうとしてくれるメディスンさん。やがてあることを思い出してくれた。

 「……盃を準備していた人なら、私覚えているわ」

 「本当ですか!」

 「ええ。あれは確か……人間と、鬼灯鈴(ほおずき れい)っていうちっちゃい鬼だったかしら」

 人間というのは名琴さんのことだろう。もう一人の、鬼灯鈴という名前は初耳だ。六人いた鬼の参加者の一人だろう。

 「その二人が盃を用意していたところを見たんですね?」

 「ええ。伊吹って鬼に声をかけられた後、すぐに宴会場に向かったからだわ。尤も、一部始終を見ていたわけではないけれど。あの時は、特にすることがなかったから。その二人が、高そうな木の箱から盃を取り出していたのを見ているわ」

 「なるほど……」

 その二人なら、華扇さんの席にどの盃を置いたか覚えているかもしれないな。

 

 「ねね。もしかしたらさ、その二人のどちらかが犯人だったりして!」

 真宵ちゃんが、やや興奮気味に話す。

 「いや、それはどうだろう……」

 「そうね。今日の裁判を聞く限りだと、宴会で使われた盃からは毒は見つかっていないそうだし。その線は薄いんじゃないかしら。準備しているところを見ていたけれど、毒を盛るような仕草をしているようには見えなかったわ」

 「そっか……」

 真宵ちゃんはやや落胆する。自信がある説だっただろうか。

 

 「毒を盛った可能性は低いけれど、その二人が最有力候補であることは事実だと思うよ。ひとまず話を聞いてみることにしようか」

 「うん。そうだね!」

 少しフォローを入れてあげると、真宵ちゃんはすぐに元気を取り戻した。やっぱりこの子の一番のとりえは、この元気さだな。

 

 「あ。盃の事と、もう一点。他の参加者たちについて聞いておきたいんですが」

 「他の参加者? いいけれど、何か役に立つのかしら」

 「被害者と面識のある人はマークしておきたいな、と。私情のもつれからの犯行、なんて線もあり得ますし」

 「ああ、そういうことね。えっと……裁判の前にも話したと思うけれど、参加者の半分が鬼だったわね」

 「被害者と親しげに話していた人はいましたか?」

 「親しげに……陽皐瑠夏(ひさわ るか)って鬼と、東雲璃月(しののめ りつ)って鬼。後、さっき話した鬼灯って鬼は、呼び捨てで被害者のことを呼んでいたわね」

 「つまり、今日の法廷で証言していない鬼たちがそれに該当すると」

 「そうね。ただ、呼び捨てという面だけで言うならば、今日証言していた鬼たちも呼び捨てで話していたわね。でも、自己紹介をしていたから、たぶん初対面だったと思うわ」

 勇儀さんと萃香さんは初対面と。

 「華扇さんはどうでしたか?」

 「ああ、あの人も初対面だったわね。自己紹介していたし」

 華扇さんも初対面か。

 

 「これでメディスンさんを抜いて七人ですか。名琴さんと、もう一人の参加者はどうでした?」

 「名琴っていう人は……微妙ね。さん付けで呼んでいたけれど、初対面って感じではなかったわ。もう一人の人は……そもそも私から見えない位置にいたから、声もあまり聞こえなかったわ」

 「なるほど。そのもう一人の人の容姿は分かりますか?」

 「えっと、確か私と同じ金髪で、瞳の色が緑色の女の妖怪だったわね」

 金髪に緑の瞳……外国の人みたいな見た目だな。

 「後は……。席に着く前に一瞬姿を見たのだけれど、親指をずっと噛んで何かぶつぶつと言っていたわ。呪詛か何かの類かしら。それに、勇儀って鬼のほうをちらちらとみていたわね。もしかしたら知り合いなのかも」

 「呪詛、ですか……」

 うわあ……なんか怖そうな人が出てきたぞ。それに、勇儀さんの知り合い疑惑あり、か。

あの人の交流関係が心配になってきた。

 

 「私が話せるのはこんなところかしら」

 「分かりました。ありがとうございます」

 さて、聞いておきたい情報はこんなものかな。

 

 「よし。真宵ちゃん。そろそろ行こうか」

 「了解! 次はどこに行く?」

 「うーん……他の宴会参加者に話を聞きたいけど、どこにいるのか分からないし、にとりさんあたりに聞いてみようか」

 「あ、にとりって今日の法廷に立ったあの河童よね? それなら、警察署にいると思うわ。さっき廊下で署に向かうって声が聞こえたから」

 「ありがとうございます。じゃあ、まずは警察署だな」

 「よし。イッチョ行くよ、なるほどくん!」

 真宵ちゃんは、重い鉄扉を軽々と開け、メディスンさんに一礼すると部屋を飛び出す。

 ぼくも一礼すると部屋を後にした。さて、にとりさんのところに行こう。……説教されていないといいのだが。

 にとりさんの安否を気にしつつ、警察署へと足を運んだ。

 

   

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも、タイホくんです。「探偵2日目 その2」をお送りしました。
キリのいい場面だったので、短いですが今回はここまでです。ストックの都合があるもので……申し訳ない。

今回、名前が初めて出た三人はオリキャラです。もう少し後のパートで出てきますので、お楽しみに。

次回投稿予定日は、7月17日です。

では。

茨木華扇の証言とムジュンする証拠をつきつけろ!

  • 弁護士バッジ
  • 鬼道酒華の解剖記録
  • 鬼殺の秘薬
  • 宴会参加者の情報
  • 名琴の証言書
  • 被害者の盃
  • 華扇と勇義たちの関係
  • 茨城の百薬升
  • 鬼殺し
  • 神便鬼毒酒
  • 盃と徳利セット
  • 鬼の四天王時代の写真
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