【同日 午後3時37分 警察署内・刑事課】
留置所から警察署までは、歩いて五分程度しかかからなかった。一つの地区に同系統の施設が纏めてあるおかげで、移動時間を短縮できて助かる。外の世界では、留置所と警察署がそれなりに離れていたから大変だっただけに、ありがたみが余計に増している。
受付で簡単な手続きを済ませたぼく達は、二階にある刑事課へと向かった。よくあるオフィスデスクが雑に並べられた部屋で、何人かの河童刑事たちが右往左往しながら忙しそうにしている。
かと思えば、一部の河童刑事は、だるそうに背もたれにもたれて、ため息をついていたり、またある河童刑事は、よく分からない機械をいじくっている。事件現場の時もそうだったが、やはり統率力が取れていないように見て取れる。
「ごちゃごちゃしてるね」
真宵ちゃんが、素直に感想を言った。
「外の世界でも、好き放題やっている刑事さんはいるにはいたけれど……ここまで顕著ではなかったな」
外の世界の刑事課の課長さんの顔がふと、頭をよぎった。普段はだらしなそうにしているのに、あれでタイホくんの生みの親だというのだから驚きだ。
最近は“ミスター・タイホ”なんて安直な英訳をされて、イギリスの方にも進出していると小耳に挟んだ。彼が就職先を間違えたのでは、と思ったことは一度や二度では済まない。
ここにいる河童刑事たちにも同じことが言えるような気がした。向き不向きがあるのだから、機械いじりをしている河童たちはそういう系の部署に異動させればいいのに。
……おっと、話が脱線してしまった。ひとまず、部屋の中をざっと見まわすことにしよう。
河童たちは、みんな同じ格好をしているのでぱっと見だけでは個人個人を判別することはできない。幸い、髪色はみんな違うようなので、それを手掛かりににとりさんを探す。が、姿が見えない。
「にとりさん、いない?」
「うん……同じような格好の人がいっぱいいるから、断言できないけれど……。多分いない」
ああ、なんか目が痛くなってきた。同じ色の服ばかりが視線に入ってくるからだろうか。
「あの、すみませーん! 河城にとりって刑事の方、知りませんか?」
見かねた真宵ちゃんが、声を上げる。すると、部屋の奥に座っている河童が反応した。一人だけ独立した机に座っているところを見るに、課長かそれに相当する位の人だろう。にとりさんより一回り年上な印象を受ける。
机には河童を模したと思われるキャラクターが描かれた紙が何枚かある。まさか、この人も……。刑事課の課長はマスコットキャラを作る運命にあるとでもいうのか。
「ああ、河城さんねー。確か、三階の実験室にいるんじゃないかしら」
ぼくが机の上のデザイン案に困惑している間に、課長さんと思しき河童が居場所を教えてくれた。実験室、か。彼女らしいな。
「ありがとうございます! ほらっ、なるほどくん。行くよ行くよ!」
お礼を言った真宵ちゃんは、そのままぼくの背中を押して部屋を出るよう、促してきた。
少し短いので、本日午後4時56分ごろにもう一本投稿いたします。