謀っ子世にはばかる〜織田信奈の野望   作:☆蛇☆

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お久しぶりでございます。
七難八苦、仕事も忙しく
中々趣味を謳歌することもできませんでした。
何度かコメントを読み返し、それでも尚、
待ち続けてくれたかもしれない読者様方のために、
月に1度でも投稿を再会出来ればと奮起した次第です。
8月より、月1〜2話程のペースで、
自分の中の織田信奈の野望という作品を楽しく綴って行ければ幸いです。

書き方や、登場人物のらしさ、、、
という所が少し薄れているかもしれませんが
久々の最新話、面白おかしく、読んでいただければ幸いです。


憂い残した上洛戦【走為上】

 

 

策が決まり、隊を分けてからは早かった。

 

まるで、大蛇が獲物に巻き付きうねる様に織田軍を主力とした連合軍は六角承禎の居城、観音寺城を包囲しつつあった。

 

他の城を掠めるように隊がうねる。

途中で散発的に攻撃をされても反撃が出来るように、縦に伸びた部隊は小分けされ、余すことなく武将が配置されている。

 

信奈とともに第二陣として、既に観音寺城を見上げる位置に着陣していた皆光は感慨深く、床几の上で鋭く観音寺城を睨みつける信奈を見つめていた。

現代の馬屋から・・・唐突にこのとんでも時空の戦国時代に飛ばされてからかなりの月日が経っていたが・・・驚くなかれ・・・信奈と同じ陣幕に入り、彼女のそばで皆光が軍師らしく居座っているのはこの戦が初めてである。

稲葉山城攻めの際は馬を並べたとは言え、軍師らしく・・・となるとまた別ではなかろうか。

 

彼女は下から挙がってくる報告を手早く片手間で処理し、その都度下知を下していた。

 

総勢六万もの大軍は大軍であるにも関わらず素早く動いていた。

丹羽長秀・柴田勝家・明智光秀・滝川一益と言った織田の主力姫武将に加え、皆光旗下の龍興、義龍、そして美濃三人衆やその他従軍武将により軍の動きは細分化され信奈の命令に対して各将は自分の隊の素早い采配を可能にしていた。

 

その行軍の速さは、他の城が出撃する前に通り過ぎる程であり、流石に支城全てを無視されると思っていなかったのか、六角軍の抵抗は皆無に等しく城門を固く閉じ、奇襲挟撃の機会を虎視眈々と狙っているほどである。

 

 

 

 

織田の強襲に、六角承禎の居城・・・観音寺城勢は、既に浮き足立っていた。

何せ、承禎は織田軍が他の支城・・・特に観音寺城とは目と鼻の先にある箕作城や和田山城を攻めるとばかり思っていたのだ。

だからこそ、観音寺城の兵を和田山城・箕作城と言う支城の中では大城に分類される城へと兵を分けていた。

和田山城に六千、箕作城に三千・・・そして観音寺城に残る兵は二千。

他の中城、小城に分類される各支城に入っている兵は少ない。

織田軍が和田山城を攻めた場合、観音寺城勢と箕作城で挟撃・・・さらに和田山城を攻めさせることで他の支城からの包囲強撃戦を六角承禎は狙っていた。

 

しかし、元々隊をいくつかに分け一斉に城攻めを狙っていた織田信奈に、同じく軍の大返しと言う策で城を一網打尽にする事を考えていた皆光。

六角、織田両陣営の思惑はこれでもかと言うほど食い違っていたのだ。

 

結果、城兵を減らした観音寺城はまさかの人手不足であった。

元々巨大な山城である観音寺城。

山城と言う優位性を持ちながらも、観音寺城は元々大軍を展開された状態での籠城戦には不向きな城だ。

四方八方蟻の通る隙間もない程に攻められては、とてもでは無いが人が足りない。

このままでは、逃げ道が無くなると…。

六角承禎は、流れ落ちる冷や汗と共に、狼煙を上げるように狼煙番に使いを出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

観音寺城から立ち上る狼煙は、本陣に居た信奈の目にも止まった。

 

「皆光・・・あれは?」

 

「狼煙・・・五右衛門達が得た情報では、総攻撃の合図ですね」

 

信奈の疑問の声に、簡潔に答えた皆光。

その視線は、未だ観音寺城へと向いたままだった。

 

「という事は・・・始まるのね?」

 

「はい。背後を固めているのは、左翼に鉄砲隊二百五十・・・右翼に同じく鉄砲隊二百五十・・・指揮する武将は光秀殿と一益殿でございます」

 

信奈は皆光の言葉に、満足そうに頷いた。

更に・・・と皆光は言葉を続ける。

 

「敵の強襲に対する先鋒は騎馬を率いる勝家殿・・・更に馬陰にて機を伺っておりまするは、長秀殿と犬千代殿・・・美濃三人衆が別働隊として兵を分け、各々が長槍隊を率いて迎撃の準備を済ませております。流石にこれは敵も読めぬでしょう」

 

「デアルカ!ふふっ。やっと軍師らしくなってきたじゃない?」

 

「軍師らしく・・・?私は元から軍師として織田家に席を置かせていただいておりますが」

 

信奈の言葉に、皆光は困惑を孕んだ声で信奈に聞き返した。

ううん・・・違うの。と信奈はどこか嬉しそうに口元を綻ばせながら、皆光の言葉に首を横に振った。

 

「だって、あんた・・・いつも一人で先へ先へと行っちゃうんだもん。確かに・・・皆光の成した功績で助けられた事は多いけど・・・こうして私のそばで・・・軍師らしくしているのは初めてじゃないかしら」

 

信奈の言葉に、皆光は自身の感じていた事と同じことを、目の前の少女が感じている事に気が付いた。

 

「確かに・・・最近は特にそうでしたか」

 

「万千代がボヤいていたわよ?あんたが伊勢に戦に行って、上洛軍の物資の帳簿がどうたらとか・・・」

 

信奈の言葉に・・・皆光は苦笑を漏らした。

織田には、優秀な人材が多いが・・・兵糧、戦費、金銭帳簿など政務を取り仕切っているのはかなりの比率で長秀だ。

最近は皆光も手伝っていたが、降りかかる膨大な仕事量を片付ける長秀に、初めて手伝った時は戦慄したものだ。

 

「そうですねぇ・・・確かに。最近は一人で先走り過ぎたかも知れません。ですが・・・何事も手を抜いては後手に回ります故・・・」

 

「確かに、速さは美徳だわ。かくいう私も、遅いよりは手早く片付けた方がいいとは思うけど・・・もう少し周りを頼ることをしなさい。急がば回れ・・・って言うのは嫌いだから、皆で仲良く分担して素早くやるのよ」

 

信奈の言葉に・・・皆光はクスリと微笑を零した。

なによ・・・?と皆光をジト目で見詰める信奈に、皆光は・・・なんでもありませんよ。と零したが、その顔は少しばかり晴れやかな物になり、嬉しそうに綻んでいた。

 

「さて、狼煙が途切れますぞ。迎撃のお下知を・・・」

 

「あんたねぇ・・・もう少し話を聞きなさいよ!・・・はぁ・・・もういいわよ。成政!後方の大返しの部隊に迎撃する様に伝えなさい!」

 

信奈の言葉に、背後に控えていた少し赤が混じる茶色を短髪にした少女があらほらさっさと元気な返事をした。

佐々成政・・・信奈の馬廻りの一人である。

佐々だけにあらほら佐々(さっさ)というわけか・・・。

史実に有るまじきその姿に、皆光は再度・・・この世界の歴史上人物の在り方に疑問を持ちながらも、くだらないギャグに苦笑を漏らす。

 

「今度は何を企んでるのかしら?」

 

笑う皆光に問いかける信奈のジト目が、皆光を射抜くが皆光はスっと表情を戻すといかにも真面目にしていますと言う表情でこちらを見つめる信奈に言葉を返した。

 

「企んでいるとはひどいですよ。策を張り巡らしている・・・と言って頂きたいですな」

 

「どっちも変わらないじゃないの・・・」

 

変わりますよ?と簡潔に答えた皆光は、狼煙の消えた観音寺城を見上げた。

 

「出来れば逃がしたくは無いですが…」

 

「何か言った?」

 

皆光の呟きに、信奈が反応するが皆光は少しの困り顔を浮かべるだけで何も言わない。

そんな皆光を訝しみながらも、信奈は観音寺城へ向き直り軍配を振りかざす。

 

「今こそ!総攻撃よ!」

 

信奈の声が鋭く放たれた。

織田木瓜の紋をはためかせる早馬が、素早く各陣へと馬を向けた。

 

四半刻と待たずして、まるで獅子の咆哮の様な鬨の声が一斉に上がる。

 

始まったのだ。

 

織田信奈の野望・・・天下布武への上洛戦・・・その第一戦が。

 

観音寺城を攻める織田の布陣は、有り余る兵力を惜しみなく投入した磐石の布陣。

 

観音寺城を大将である織田信奈が率いる主力である二万の兵力が囲み、鼠一匹ですらも逃すまいと野山を駆け上がり、攻め立てている。

 

主力の背後には、包囲殲滅を目論む六角方の攻撃に備え、鉄砲隊千、騎馬六千、歩兵戦力が一万。

 

この布陣は正しく、六角の得意とする戦法・・・主城、支城を使った相互挟撃の陣形を逆に迎え撃つ為の布陣だ。

 

その分本陣はかなり手薄ではあるが、別命により小早川軍は伊賀国と南近江の国境に展開されている。

それは一重に、織田に敗れた六角の遁走を防ぐ為だ。

兵法・・・走為上(そういじょう)

簡単に言えば、逃げるが勝ち・・・である。

再起の可能性を残したまま遁走されては、六角が今後の憂いとなるは史実でも語られてきた。

 

いつにも増して、鋭い目線を観音寺城へと向ける皆光は拳を強く・・・握り締めた。

 

決して逃がすまい。

後の憂いを断つために。

 

「戦は先手が重要・・・如何に敵の戦意を削ぐか・・・。六角承禎・・・死の道にはお気を付けを。私には・・・背を任せる天下一の軍師がおりますゆえ・・・」

 

皆光の独り言は、風に吹かれてかき消された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狼煙が上がって僅か一刻余り。

 

突如として、織田軍の背後より鬨の声が上がった。

地の利は我等にあり・・・と潜伏しながら這いより、伏兵と化した支城十八の総兵力が、織田軍の背後へと攻撃を開始したのだ。

 

後藤高治、蒲生賢秀、三雲成持、平井定武ら主立った六角家の家臣団が率いる六角軍は、一万五千程。

主城である観音寺城は、完全に包囲されており、相互挟撃の策は成らないが六角側には、観音寺城と言う体のいい囮があった。

 

観音寺城は、難攻不落とは言えないがそれでも難城。

織田が観音寺城を落城させる前に、支城勢が織田軍を蹴散らせばいい。

 

並の軍勢ならば、如何に大軍とは言え・・・いや、大軍だからこそ、この戦いに敗北していただろう。

動きの鈍い大軍は、背後からの強襲により指揮系統が崩れ、いとも容易く敗走するだろう。

 

だが、あいにくと織田軍は並の軍勢ではない。

 

織田の背後から襲いかかった六角勢が、先ずぶつかるのは、本来ならば荷駄や工兵と言った敵の戦略部隊であるはずだった。

 

だが違った。

 

まず最初に見たのは、こちらを見つめる種子島の銃口。

明智光秀・滝川一益両名による鉄砲隊。

大量に黒光りする銃口・・・その火蓋には、既に火縄が熱で赤く染まり、風に吹かれ、ジジ・・・ジジジ・・・と小さな赤い鼓動を始めていた。

そこから出る白い煙がゆらゆらと風に攫われる。

 

六角勢が、それを視認した時には既に遅し。

一万五千の軍勢はもはや逃げる事も出来ずその足は、既に死地へと吸い込まれていた。

 

直後・・・一斉に火を噴いた種子島は、先陣を切ってなだれ込んできた先鋒を穿つ。

まるで雷が間近で落ちたような轟音に、種子島の音を聞き慣れていない六角勢の騎馬は、竿立ちを通り越してその場で乗り手を落とし遮二無二に暴れ回る。

 

六角勢が、崩壊を始めた。

 

それを見た一人の少女がこれ程効果的な種子島の使い方も無いだろうと、皆光の知恵に舌を巻く。

 

三段撃ちでは無く・・・約五百丁の種子島による一斉砲火。

銃弾は敵を穿ち、その銃声は騎馬の能力を強制的に奪う。

 

皆光と背中合わせになるように後陣の中からいつにも増して表情を強ばらせる一人の少女。

 

今孔明と称される織田軍の軍師。

織田の二大軍師の一人・竹中半兵衛。

戦が始まるまでは、ヒト・オオイ・コワイの三単語を連呼し震えていた彼女だったが、戦が始れば、その天才的な軍略は、信奈が軍師として信頼を置く皆光をも上回る。

 

種子島の銃弾により、敵の先鋒は浮き足立った。

種子島の銃声により、敵の騎馬は使い物にならなくなった。

 

【勝機】

 

幼くも力強い声が、今か今かと待ち構えている織田軍の背中を強く押した。

 

「全軍!かかれっ!」

 

総勢一万六千の軍が、待ってましたとばかりに背後から迫る六角軍に襲いかかった。

六角軍は自らが襲う側から・・・襲われる側へと変わったのを瞬時に悟り・・・勝てないと見るやすぐさま崩壊した。

 

この戦に勝利無し・・・敗北を悟った六角軍は、指揮官の指示も疎らに敗走を始め、それを一気呵成に猛追する織田軍。

柴田勝家隊、丹羽長秀隊、明智光秀隊、滝川一益隊他、その他多数の将の働きにより、十八の支城はその城門を閉じる事なくことごとく落城した。

 

それとほぼ同じ頃、六角承禎は城の守備兵で総攻撃を仕掛け、大軍を展開する織田軍の包囲網を破り、伊賀国へと遁走。

 

六角承禎の敗走により観音寺城は落城した。

 

六角が伊賀国へと遁走した際に、急遽伊賀国の豪族や士族達が散発的に挙兵。

それにより、国境を張っていた小早川隊は小部隊であった為に、深追いは厳しいと撤退した。

 

「伊賀の豪族達が挙兵、六角は既に負ける想定が出来ていたとでも・・・既に手を回していたと言うのですか?」

 

逃がしたことが痛手とばかりにそう吐き捨てた皆光は、織田の旗が翻り始めた観音寺城をその瞳に写しながら…自らの詰めの甘さと不甲斐なさに顔をしかめるのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

九月二十六日、織田信奈が率いる上洛軍は、凄まじき進軍速度で一気に京の都へなだれ込んだ。

畿内を支配していた三好一堂は六角がたった一日で敗北し事実上の滅亡となった事に驚愕し、殆どの抵抗も無く摂津へと兵を引いた。

それと同時に三好と同盟を結んでいた松永久秀も大和へ撤退。

 

織田軍は、抵抗という抵抗を受けること無く京の都へ入る事になった。

 

各将と馬を並べて歩く皆光は、京の都を見て愕然とした。

建物を焼かれた跡、ボロ布に身を包み物珍しげにこちらを見つめる民。

まるでその様は・・・三国にて語られる後漢の洛陽・・・。

腐敗した公家が宦官ならば、さながら将軍家は遊びに耽っていた皇帝といった所だろうか。

 

「まさか・・・ここまでとは・・・」

 

華の都と聞き及んでいたが、まるで廃都。

 

この時代の京がこれほどまでに荒廃しているのは、理由があった。

京の都のある山城国は、大和、摂津、河内、和泉と言った国々が領地拡大と中央政権争奪の為に畿内と言う広大な規模での武家同士の戦いが苛烈を極めていたのだ。

 

事の発端は、応仁元年(1467年)から文明九年(1477年)・・・畿内全土を巻き込んだ大戦が西と東に分かれ勃発した。

詳細は省かせてもらうが・・・皆も、名前だけは聞いたことがあるだろう。

 

応仁の乱である。

 

援軍が援軍を呼び、十年にも及ぶ永き戦いは洛中を焼き付くしながらも東軍が勝利したが、応仁の乱から百年だった後でも、未だに洛中洛外問わず、山城の国を含む畿内はいつ終わるとも知れない闘争が未だ続いていた。

 

だからこそ・・・国も、民も疲弊していた。

 

しかし、そんな中にやってきたのは、尾張の田舎大名とも、生まれながらのうつけ姫とも呼ばれ、蔑まれてきた織田信奈。

 

民は、また新たな戦いが起こるのか・・・と行軍する織田軍を睨みつける。

 

そんな視線の中を気にすること無く堂々と胸を張って軍の先頭を馬で進む。

周囲に増える人集り。

一通り進んだ所で、信奈の歩みが止まりその場で自軍へと振り返る。

 

将として、信奈の後ろを馬で歩んでいた皆光は、振り返った信奈を正面に見据えたとき・・・風もないのに身震いした。

まるで、心を揺られているような・・・。

他の者たちを見ても、皆光と同じく何かにあてられている。

 

その原因は、目の前の少女だ。

 

少女から放たれる覇気。

強く輝く光が・・・皆光達を照らしたのだ。

 

そして、それは背後に居る兵達も、なんだなんだと押し掛けていた京の都の民達も例外ではなかった。

 

そんな中、彼女は派手なマントをはためかせ、まるで京の都へと轟くかのような・・・猛々しくも、凛とした声で言い放った。

 

「わたしが来たからには、兵の乱暴狼藉は許さないわ!民に乱暴した兵はその場で打首!町に火をつけたものも、銭と米を民から取り上げたものも打首!分かったわね!」

 

しん・・・と場が静まりかえる。

 

どこかで・・・女性の呟きが聞こえた。

 

「もう・・・苦しまんで済むん?」

 

どこかで・・・男性の囁きが聞こえた。

 

「もう・・・大切なもん失わんで済むんか・・・?」

 

どこかで・・・子供が声を零した。

 

「・・・お腹いっぱいに・・・なれる?」

 

民の気持ちが・・・ひとつになった。

やっと・・・平和が来るんやんな?嘘じゃないねんな?もう・・・苦しまんでええんやね・・・?

 

通りが・・・まるで爆発したかのような大歓声で満ち溢れた。

嬉色に染まり、歓迎を示した声が織田軍を包む。

 

満足そうに笑みを浮かべた信奈は、正面へと向き直り再度歩みを進めた。

 

「・・・これはまた・・・派手好きな姫様らしい」

 

皆光が、目を伏せ口元に優しく笑みを浮かべながら彼女の後を追う。

 

「ううぅ・・・姫さま・・・ご立派になられて・・・」

 

押し寄せる感動に涙を流し・・・それを拭う勝家。

 

「先ずは民の不安を断ち切るところから・・・満点です」

 

扇子で口元を隠しながらまるで自らの事のように嬉しそうに微笑む長秀。

 

「この十兵衛の目に狂いはありませんでした!信奈さまこそ!この天下を治めるお方!」

 

尊敬と畏怖が入れ混じった眼差しを信奈の背に投げかけながら、より一層の忠誠を胸に抱く光秀。

 

「流石はのぶなちゃんじゃの。じゃが姫ならばもっともっと大きな歓声を起こせたのじゃ!」

 

馬が嫌だ・・・と籠に揺られていた一益が、謎の自慢を始めるが、その表情はいつも以上に明るい。

 

 

 

 

 

民衆の大歓声に迎えられ、織田信奈と言う天下人の器はとうとう、京の都に入った。

風にはためく織田の木瓜紋と、嬉しそうに民衆に手を振る信奈を視界に、皆光は優しく笑みを浮かべた。

 





独自解釈が多分に含まれる当作品を読んで頂きありがとうございます。
当時読んで頂いた方々にも、わずかばかりにこの報が届けば幸いです。

頂いたコメント、ご指摘は励み、勉強とさせて頂きますので、皆様のお声を楽しみにお待ちしております。
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