【この素晴らしい世界に祝福を!】カズマはのんびりと魔王討伐を志す様です。   作:よるくろ

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【46】 英傑

 

 

 

 カズマとミオ、ニーナ、ウルルの日課となった依頼後の訓練は、既に初日から一週間余りが過ぎようとしていた。

 

「はぁッ!」

 

 気合いの入ったミオの一閃。

 

 剣先がブレず、ヨレず、定規で描いたような軌道を残光として残すその一閃は確かに成長が感じられるものの、カズマには掠りもしなかった。

 

「ふんぬっ!」

 

 そこに迫り来るニーナの大楯。

 

 逃げ道を阻むように振られたそれは容易くカズマに避けられる。

 

「ふん…ぎ!」

 

 しかし、腕の力だけでその大楯を急静止させ、即座にカズマが避けた方向へと軌道を変える。

 

 だが速度の乗っていない大楯では破壊力がなく、逆にその大楯を足場にカズマは跳躍。宙へ躍り出たカズマは、遠方で詠唱をするウルルに目を向けた。

 

「『ファイアボール』、『ウィンドブレス』…!」

 

「『クリエイトスプラッシュ』、『フリーズ』」

 

 ウルルが持つ魔法の中で最も安定して火力を出せる『ファイアボール』に、『ウィンドブレス』による加速を乗せて射出。

 

 風よりも早く打ち出されたそれに対し、カズマは『クリエイトスプラッシュ』を放ち、続けて『フリーズ』を発動。

 

 即席で作り出された氷の壁は見事に炎の弾丸を防ぎ、霧散させた。

 

「せいやぁッ!」

 

「っと」

 

 しかし、そこにカズマと同じくニーナの大楯を足場に、カズマへと跳躍したミオの姿。

 

 足場の無い宙でありながら繰り出される一閃は確かにカズマの胴を捉えた…と思いきや。

 

「今のは合格」

 

「ぎゃん!?」

 

 まるで猫のような動きで身体を空中でしならせ回避し、そのまま剣を振った勢いで姿勢を崩したミオの頭に軽く踵を落とす。

 

 重い音を立てて地面に落ちるミオと、スタッと着地したカズマ。

 

「やめ」

 

「「「っっはぁ〜〜〜」」」

 

 そこで訓練は中止となった。

 

「強くなったね?」

 

「嫌味?まだ一撃も入れられてないわよ…」

 

「カズマさん強すぎです!一体何者なんですかァ!」

 

「…初心者殺しも倒せるようになったのにね」

 

 ここ一週間で、彼女らが挙げた一番の成果と言えば、やはり『初心者殺し』の討伐だろう。

 

 元々はゴブリンの討伐だった予定のクエストだが、運悪く狩りの途中であった初心者殺しと遭遇。

 

 しかし、カズマの訓練を受けた三人は、辛勝ながらも初心者殺しを討伐したのだ。

 

 当然、ギルドや他の同業者は驚愕。

 

 当然だ、何故なら冒(・)険(・)者(・)登(・)録(・)を(・)し(・)て(・)一(・)週(・)間(・)の(・)冒(・)険(・)者(・)が(・)、(・)グ(・)ル(・)ー(・)プ(・)と(・)は(・)い(・)え(・)初(・)心(・)者(・)殺(・)し(・)を(・)討(・)伐(・)し(・)た(・)のだから。

 

 異常にして異質な成果。しかし、彼女らにとっては大きな冒険と経験、そして勝ち取った勝利なのである。

 

「ミオの最後の追撃は良かった。ニーナも会話無しでの連携は及第点に値する」

 

「やったね!」

 

「えぇ」

 

「ウルルも、魔法の同時発動が安定してきたと思う」

 

「…ん、でも自分では納得いってない」

 

「飛ばした瞬間ちょっとだけ『ファイアボール』が散ってたな。『ウィンドブレス』が少しばかり強いから、風で散ったんだろう」

 

「…なるほど」

 

 現在時刻、四時を過ぎた程度。

 

 今この時を以って今日の訓練の終わりを告げたカズマは、少女らへと自由に行動するように伝えた。

 

「あ、そういえば」

 

「どうしたの?ウルル」

 

「カズマさんのパーティって何処にいるの?」

 

「あ、そっか。あれだけ強いんだから、仲間も強い人がいるはずだもんね」

 

「あぁ、俺の仲間なら朝から夕方までクエストをしてるよ。本当は俺も参加したいんだけど、教会がこの有様だからね、治るまでは自己鍛錬で鍛えるだけにしとこうと思って」

 

「どんな人達なんですか!」

 

 えっとね、と答えようとしたところで、カズマが固まる。

 

 クエスチョンマークを頭に浮かべた少女らは、突然固まるカズマに声を掛ける。

 

「あの、カズマさん?」

 

「…えーと、アークウィザードが二人、クルセイダーが一人、アークプリーストが一人かな。で、俺が冒険者で遊撃」

 

「えぇー!アークウィザードやアークプリーストがいるんですね!めっちゃ強いじゃないですか!」

 

「クルセイダー…確か前衛職でも成るのが難しい職業なのに、よくそんな人がいたわね」

 

「………ふぇ」

 

「どした?ウルル」

 

「…今、冒険者…って言った?」

 

「うん。俺、冒険者。最弱職」

 

 その言葉に、今更ニーナとミオがハッとなる。

 

「え!?冒険者なんですか!?てっきりソードマスターとかルーンナイトかと思ったんですけど!」

 

「ないない。そもそも冒険者になる前は家から一歩も出ない引きこもりだったんだから」

 

「嘘でしょ!?…え、まって、冒険者歴は何年なの?」

 

「二年経たないくらい?」

 

「ふぁ!?」

 

「…レベルは?」

 

 隠す理由も無いし別に良いかとカズマは冒険者カードを取り出してミオに投げる。

 

 慌ててキャッチしたミオは、冒険者カードの中で特に目を引く項目…レベルに焦点を合わせた。

 

「れ、レベル52!?」

 

「王都で前線張る冒険者よりも高レベルじゃない!?なんでこんなとこにいるのよ!?」

 

「…な、何このスキル量…しかもまだスキルポイントが大量にある…」

 

「え、ちょ、カズマさん!モンスターの討伐履歴とか見てもいいですか!」

 

「別にいいよ」

 

「ありがとうございます!えとえと、確かここで………エー?」

 

「ちょ、私にも見せなさいよ!………き、危険度が高いモンスターばっか…って、エ!?待って、これ…」

 

「…ベ(・)ル(・)デ(・)ィ(・)ア(・)」

 

 カズマの討伐履歴に記載されている、モンスターの種族名ではなく、ネームド。

 

 通常のモンスターとは逸脱した力を持つ証として記された、その魔王軍幹部の名。

 

 更に、そのモンスターを討伐した勇(・)者(・)は、たった一人。

 

「カズマさんが『英傑』だったなんて!」

 

「…ん?待って俺それ知らない。英傑ってなに」

 

「なんで自分のことなのに知らないのよ。えーと、確か…」

 

「…過去に、魔王軍幹部を討伐した唯一の冒険者が付けられた、二つ名。その人は勇者として、英雄としての頂点に近いとされていた人物」

 

 なんだその物々しい二つ名。

 

 カズマはそう思った。

 

 そもそもベルディアを倒したのは成り行きだし、デストロイヤーだって偶然運良く倒せただけだし、まぁ領主の件は完全にこっちが悪いけど。

 

 だとしてもそんな物々しい二つ名は要らなかった。めぐみんみたいな通り名みたいなのじゃなくても、もっとこうありふれた感じのがよかった。

 

 そう思ったカズマであった。

 

 

 






 最弱職の冒険者がレベル52くらいになるとアクセル中の中堅やトップ層の冒険者達が一斉にフュージョンしないと実力とかスキル数が釣り合わなさそう。
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