2人が出会った当時のお話。
短いですけど許してください。
初めまして子うさぎさん。
今日も、アイズはダンジョンからヘトヘトのままホームに向かう。
家族もいない、仲間もいない。生きる気力は、ただ復讐心に塗り潰されて。それさえ出来れば死んでもいいと、幼いながらにやさぐれて。本当に、何故生きているのか、毎日が疑問だった。
早く強くなりたい。なりたいのに、させてくれない口うるさい団員にうんざりしていた。
帰りに、楽しみにしていたじゃが丸君を数個買って、パクパクと食べ進める。もう暗がりが目立つ街道を歩いていると、突然きゅるる〜と、腹の鳴る音が聞こえた。咄嗟に自分かと思ったが、今食べているのに、お腹が減っている合図をしてくるのはおかしい。であれば、誰かのものなのか?
当たりを見回しても誰もいない。しかし、ずっと腹の鳴る音が聞こえる。自分の音ではないと確信した時、アイズは音の元を突き止めた。
薄い暗がり、ボロボロの布切れを貼り付けた真っ白な子うさぎの様な子供が石畳に横たわっていた。
正直、初め見た時は死体なのかと思ったが、モゾっと蠢いたことから、生きてはいるようだ。
「…大丈夫…?」
声をかけてみると、こちらを不思議そうに眺めてくる。
すると、少年の目がアイズの持つじゃが丸君にロックオン。
「………欲しい?」
「うん!」
尋ねると、子供はコクコクと頷き、嬉しそうに微笑んだ。なんだか楽しくなったアイズは、じゃが丸君を右手で持って、手を伸ばす少年をこちらに引き寄せて、ガバッと抱き締める。ギャッ!と驚いた子供だったが、アイズが地面に座り、膝に乗せてじゃが丸君を渡せば、すっかり大人しくなって食べ始めた。
その隙に、アイズは子供の頭を撫でまくる。
荒んだ心が癒されていくのがよく分かる。本当に真っ白な子で、見た目は白ウサギのようでとても可愛い男の子。
歳は自分よりも下だろう。身長はアイズよりも低い。何故こんな所で寝ていたのだろうか、とても痩せ細っている。孤児…なのだろうか。もしかしたら、自分と同じなのかもしれない。
「…君、お父さんとお母さんは?」
「……なぁにそれ?」
「…ううん。なんでもない。もう一個…食べる?」
「うん!」
この子は、自分と同じだ。そう感じたアイズはいいやと首を振った。
それ以上に悲しい。この子は、この歳まで誰かの愛を知らないのだ。母親との、父親との思い出がある分、自分の方がこの子よりも恵まれているのでは無いか。
初めて、自分が少し恵まれているのではないかと思った。
「どーしたの?お腹減った?」
アイズが悲しげな顔をすると、子供は持っていたじゃが丸君を見つめ笑顔でグイッとアイズに押し付ける。
自分の方がお腹が減っているだろうに、自分よりも他人であるアイズを優先した。優しい子だと思った。
「…ううん、私は平気。それ、食べていいんだよ…ありがとう」
「ほんと?じゃあ…食べちゃうね?」
ムシャムシャと一心不乱に食べる少年を見て、どこか────庇護欲と言うのだろうか。なんだかそんなものが湧き上がってきたと同時に、あることを思いついた。
「…ねぇ、名前、分かる?私は、アイズ…アイズヴァレンシュタイン。」
「僕、ベル!」
「そう。ねぇ、ベル…もっと、美味しい物食べたくない?」
「食べたい!」
無邪気に放たれたこの言葉に、アイズは心の中でニヤリと笑った。
「じゃあ…一緒に行こっか。」
「うん!」
誘拐である。
手を繋ぎ、仲良しこよしでホームに帰る。この子と一緒にいれば、何かが満たされるから。だから、誰にも取られないように、自分のものにしてしまおう。子供がお気に入りの玩具を隠す様に、アイズはベルを囲った。
これが、2人の最初の出会い。