俺ガイル主にサキサキの短編集(仮)   作:なごみムナカタ

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サキサキ誕生日おめでとう記念SS2021!

なんとか間に合いました。
推敲が足りないので追記できそうなところ見つけたら手直ししてきます。とにかく期限優先だったもので。
ちょっと変化球な作りですが読んでいただけると嬉しいです。

一色いろはが一年の春頃に川崎沙希と出逢っていたら……。
原作2・3・5・6・6.5・8・9巻あたりの沙希が出るとこを満遍なく拾い上げていきます。


サキサキ生誕祭2021
わたしの気になる先輩。


《 Side Iroha 》

 

 ――――惜春の候

 

「ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ――!」

 

 かしゃーん、と屋上の床を叩く音が鳴り響いた。

 原因は投げつけた棒針。犯人はわたし、一色いろは。

 

 普段ならわたしの築いてきたイメージがぶち壊れるんでこんな行動しないんだけど、お昼休み屋上にわたしだけという神に愛されたとしか思えない僥倖で気も緩んでいた。

 

「何なのこれ地味っ!」

 

 わたしってー、どちらかというと派手めなのが好きじゃないですかー? だからー、こういう単調な作業の繰り返しが苦手っていうかー。

 ……僥倖をくれた神様に言い訳してしまうくらい逃避してた。

 

 これは葉山先輩に贈るクリスマスプレゼント用手編みのマフラー……を練習中。

 総武校どころか近隣高校中の女子が憧れる葉山先輩。その葉山先輩が所属するサッカー部のマネージャーは入部するのに高い倍率を誇る。ま、とーぜんわたしは受かる側の人間ですけども。

 マネージャーとして務め始めるとそれをやっかんでか、わたしに対する女子の当たりがキツイんだよねー。なので、編み物なんて教室で出来るはずもなく、屋上を見つけてからは日々ここで練習している。

 家でやるのが一番落ち着くんだけど、仕事を家に持ち帰る? 的な感覚が何かこう、めっちゃ嫌。あと隠れてやっててもいずれは誰かに見つかるし、バレたそれが編み姿なんて男子に見られたらこれ以上ない女子力アピールじゃん? バレる危険を好機に変えるわたしマジ策士! ……ここ人いないけど。

 

「……ちょっと」

「いっ、……ふえ⁉」

 

 おっと、素で返すとこだった。

 人いたの? やっべー、奇声上げたの聞こえたかな?

 

「もうちょっと静かにしてくんない? あたし今寝てんだよね……」

「す、すいません!」

 

 思わず敬語で答えちゃったけど、一年の校舎で見たことない人だし多分上級生。

 屋上からさらに上へ突き出た部分、梯子を上った先にある給水塔。女生徒はそこから覗き込むように見下ろしてた。

 睡眠を邪魔されたからか目付きが怖い。でも顔立ちは整ってて綺麗。うん、充分に美人だ。わたしとタイプが違うんで比較できないけど例えるならポメラニアンとシベリアンハスキー。片っぽは可愛いより強そう。っていうかめっちゃ睨んでる。怖い、この人怖っ⁉

 ってよく見ると視線はわたしの持ってる毛糸と投げ付けた棒針に向いていた。

 

「……」「……」

 

 しばらく睨め付けた後、その先輩(多分)は給水塔の方へ引っ込んでいった。

 

 

 

 

 その後も屋上に行くと必ず怖い先輩が給水塔で寝ていた。

 あそこってあの先輩の巣なの? リ〇レウスなんですか? 古代樹の森16番エリアなんですか? なにそれ、タワーリング・イ〇フェルノのラストみたいに給水塔爆破したい。

 いけないいけない。これパパ世代じゃないと分からないよね。

 

 いつものようにスマホで見本動画流しながら編んでいると視線を感じた。これは男子のべったりとした厭らしいものじゃない。女子特有の怨嗟や陰湿なものでもない。

 ……この世にMとF以外の視線ってあったっけ。動物? と思ったら給水塔のリオ〇ウスがこっち見てた。やっば! その表現めっちゃ怖いんですけど⁉

 

 ぶっちゃけゲームだったら怖くも何ともないですけどねー。

 いつもわたしは貢がせた弾丸を手にライトボウガンでぺしぺししてますし、従者の男の子たちにランスと大剣と太刀でも持たせて尻尾斬りとブレスの盾させたり、たまに男の子たちを後ろから撃って怯んだところにレ〇スが突進したりもするけど『ごっめーん、当たっちゃったー☆』って謝ればおーるおっけーだし、モン〇ンってちょろくないですか?

 

 おっと話が逸れた。

 今は給水塔からこちらを見ているリオレウ〇……じゃなかった。あの先輩をなんとかしないと。

 どうしようかと頭捻ってるとリオ〇ウス……じゃなかった。先輩の方から話し掛けてきた。

 

「ねえ」

「⁉ は、はいー、なんですか!」

「それって何編んでるの?」

「え、あの、……マフラー、ですけど」

「ふーん。……だったらアクリルかウール使った方がいいんじゃない? それ綿糸でしょ」

「ふえ?」

「棒針ももうちょっと太いの使ったら? 細いと編むのに余計な力入れるから疲れるよ」

「あ、えっと……」

 

 え? これってもしかして、……アドバイス、してくれてる?

 

「手付き見てると慣れてないみたいだけど編み図とかないの?」

「あ、編み図? 編み図ってなんですか?」

「……ないんだ。練習なら別にいいけど」

「一応、スマホで動画見ながらやってますけど……」

「画面小さいし、両手塞がってたら見逃したとことか戻せないじゃん」

 

 そーなんですよねー。まだ慣れてないから表裏表とか切り替わるともたつくことも多くて、それで動画に置いてかれちゃうとリカバリーがしんどい。動画戻すために糸から手を離したら表裏が訳わかんなくなっちゃうし。

 

「そーなんですよねー……。隣で一緒に編んでくれる人がいれば最高なんですけど、うちのママは編み物できなくて」

 

 それが家でやらない理由の一つでもあった。

 まあ、わたしも続くかどうか分からないし、完成しなくてママに嫌味とか言われたくないんで。

 予防線と打算に塗れた愚痴をこぼしていると、いつの間にか隣にいた先輩はわたしのスマホ動画を見ている。

 

「……これなら編めるから一緒に編もうか?」

「へ?」

 

 隣を見ると、怖かったはずの先輩は顔を赤く染めていた。シベリアンハスキーがトイプードルになったなんてもんじゃなく、リオレ〇スがオトモア〇ルーになるくらいの変わり身。もう原型すらない可愛さ。

 

「い、いいんですか⁉」

「いいよ。……そんなに驚くこと?」

 

 女子から優しさを向けられるなど滅多にないわたしは、驚きで先輩を引かせてしまう。感動で取り繕うことも忘れてしまった。

 

「じ、じゃあ、明日も昼休みに来ますから! あ、わたし、一年の一色いろはっていいます!」

「あたしは二年の川崎沙希」

 

 こうして、わたしは川……なんとかさんっていう怖い人と知り合った。

 ……やっぱり先輩だったか。敬語で話してて正解でしたね。

 

 

 

 ――――薫風の候

 

「あ、そこ違う。こうね」

「はーい」

 

 あんなに地味でつまんないと思ってた編み物も、川崎先輩にお手本を見せてもらいながら編むと楽しい。見た目が怖いだけで普通にいい人って感じ。最近は一緒にお弁当も食べて、おかずを交換したりもしてる。それを機に少しずつ話すようになっていく。

 

「――で、ちょーっとわたしが男子にちやほやされてるからって妬みと僻みで女子が排除しようとするんですよ?」

「そ、そう……」

 

 いけない。川崎先輩が引いてる。今までこの人から彼氏の話はおろか友達の話すら一切なかったし、クラスの人間関係になんて興味ない人なのかもしれない。その価値観からはわたしの悩みなんて到底理解できないだろうし、この手編みも男子受けを狙ってのものだって白状したら見放されちゃうかな。

 でも、その割りには川崎先輩ナチュラルに女子力高いですよね。手編みも出来るし料理も上手だし。お弁当の見栄えは、……うん、まあ地味だけど。美味しければいいよね、地味だけど。……地味、なんだよね……。

 

「そ、そういえば川崎先輩、最近ここで寝てないですよね。生活スタイル変えたんですか?」

「え、ああ。前はちょっとバイトが忙しくて寝不足だったけど、お節介な奴のお陰で違うバイトに変えたから……」

「へー」

 

 何となしに話題を振ったけど、川崎先輩が他人を示唆するその言葉に少しだけ興味を魅かれた。

 

 

 

 ――――白露の候

 

 夏休み明け。まだくっそ暑いのにもう休みが終わるとか文部科学省は一体何をしてるんだろう。わたしが入省した暁には10月まで夏休みになるよう法案を提出しようと思う。……いつの間にか国会議員になってるぞわたし。

 日差しを避けてなお容赦ない猛暑にそんなことを考えていると、いつの間にか隣に川崎先輩の姿があった。

 

「……川崎先輩、夏休みどっか行きました?」

「んー、予備校の夏期講習と家の手伝いとバイトくらい」

「……どっか遊びに行ったとかしてないんですか?」

「……サイゼにあいつ呼び出して弟の進路相談してもらった、かな。そんくらい」

「……」

 

 あいつ? 川崎先輩が他人のことを口にするのはこれで二回目。もしかして、

 

「あいつ? それってこの前話してた『お節介な奴』って人のことですか?」

「うっ……そ、そう、だけど」

「へー」

 

 あ、いまなんか顔がちょっと照れた。この人も可愛いとこあるんだ。

 

 

 

 ――――寒露の候

 

「……ねえ、愛してるって言われたことある?」

「はぁ?」

「……な、なんでもない、忘れて!」

「はぁ。……沙希先輩そこ違いますよ。表表裏です」

「あ」

 

 文化祭が終わってから沙希先輩がちょっと……いや、だいぶおかしい。

 横で編んでてもぽつぽつわたしが指摘する立場になることがある。

 

 

×  ×  ×

 

 

 文化祭に引き続き、体育祭の衣装も担当することになったらしい。

 うわ、面倒くさそう……この人、本当に手芸が好きなんだな。

 

「でも沙希先輩って目立つの好きじゃないのによくやる気になりましたよね」

「……あいつに頼まれたから仕方なく、ね」

 

 あいつ、ね……。

 多分、沙希先輩をポンコツにした張本人。

 沙希先輩に血を通わせたあいつ、わたしまで興味が湧いてきちゃった。

 さすがに教えてはくれないだろうな……。

 

 

 

 ――――朔風払葉

 

「はぁ……」

「……」

「はぁ……」

「……なんか、あった?」

「! い、いえ、別になんにも!」

 

 やばっ、沙希先輩に気づかれる。

 あんなにため息ばっか吐いてたらそりゃそうだよね……。

 

 ついに女子たちの嫉視が『生徒会長立候補』という名の悪意に変貌した。

 城廻先輩に相談して、奉仕部ってところを紹介してもらったけど、話し合いが上手くいかなくて空気が悪い。最悪、このままなし崩し的に信任投票で決まってしまいそうだ。

 それを思うと、どうしてもため息が漏れるのを止めれなかった。

 沙希先輩には相談できない。相談してもどうにもならないからっていうのもそうだけど、予備校通いに弟妹のお世話とこの人が色々忙しいのを知っている。手編みに付き合ってもらってるだけで充分に目をかけてもらってるんだ。これ以上の負担をかけられない。

 昏い表情で編んでいると、見兼ねた沙希先輩が柔和な表情で声をかける。

 

「……多分だけど、なんとかなると思うよ」

「え?」

 

 沙希先輩はまるでわたしの事情全てが分かっているかのように続けた。

 

「……きっと、あいつは悪いようにはしないから」

 

 また、『あいつ』か。

 沙希先輩を救ったその人が、わたしのことも助けてくれるって疑わない。

 

「沙希先輩は『あいつ』さんを信じてるんですね」

「⁉ ――ばっ、ばっかじゃないの! そんなんじゃ、……ないから」

 

 あは、照れた照れた。

 沙希先輩可愛いー。

 そんな顔見せたら『あいつ』さんなんてすぐに堕とせますよー?

 

 

×  ×  ×

 

 

 お昼休み。さすがに寒いので教室でお弁当を食べてから沙希先輩に会いに行こうと思っていた。すると、澱んだ目をした先輩が教室まで来てわたしを呼び出す。

 

「生徒会選挙の件で手伝ってほしいことがある」

 

 そう言われたら聞かないわけにもいかない。今日は沙希先輩に会えないかもなー。あ、でもせめてお昼が……。そう思って放課後に引き延ばそうと懇願するも、

 

「超まずい」

「超まずいですかー……」

 

 諦めて連行されることになった。

 図書館に着くと推薦人名簿を手書きで写しながら、目の澱んだ先輩はつらつらと先生みたいに講説する。

 わたしのプライドを尊重し、時にはくすぐり要望に沿うよう道筋立てて生徒会長へと導こうとしていた。そうと分かっても不思議と苛立ちがない。もうわたし自身がやってもいいと感じてしまったからだ。

 

 説得されながら、沙希先輩の言う『あいつ』さんってひょっとすると……そればかりを考えていた。

 

 

 

 ――――熊蟄穴

 

 海浜総合との合同クリスマスイベントで、交渉のため先輩と保育園に向かった。

 話も恙無くまとまり、置いてきた先輩を探しているともう一人の見知った先輩を視界に捉えた。

 

 ……あれって、沙希先輩? なんでこんなとこいるんだろ。先輩と何か話してる? 知り合い?

 先輩を見つめる沙希先輩の眼差しと雰囲気にぴんときた。

 

 『あいつ』さんが、先輩だということに……。

 

 

 

 ――――冬至の候

 

「マフラーも綺麗に編めましたし、これも沙希先輩のお陰です。ありがとうございました」

「あたしはただ自分用にマフラーを編んでただけさ。あんたが勝手にそれを見ながら頑張ってたんでしょ」

「……そーゆーとこは先輩と同じであざといですよね」

「え」

 

 この二人は似た者同士だって、付き合っているうち自然と思うようになった。

 

 

「沙希先輩、そのマフラー自分で使うんですか?」

「まあね。あんたに見せる手本でいくつか作ったから、もう家族皆に行き渡ってるし」

 

 手本て言っちゃいましたね。何が「自分用に編んでただけ」なんだか。語るに落ちてるじゃないですか。

 

「沙希先輩も誰かにプレゼントすればいいじゃないですかー」

「んぐっ……、べ、別に、あげるやつなんて……」

 

 まったくもー、素直じゃないんだからー。

 そんな照れきった顔でへどもど言われても説得力ゼロですってーの。

 しょうがないから可愛い後輩が一肌脱いであげますかねー。

 

「……じゃあ、わたしのと交換しませんか?」

「え?」

「ほら、自分で編んだ物を自分で使うとか何となく虚しいじゃないですかー?」

「そ、そう?」

「そうなんです! わたしのも結構自信作ですし、不足はないと思うんですよねー」

「でもそれあげる相手決まってんじゃないの?」

「また作りますからダイジョーブです♪」

「じ、じゃあ…………交換、する?」

「はい♡ 早めのクリスマスプレゼント交換ということで♪」

 

 こうして何度もやり直して完成したわたしの自信作と、沙希先輩のマフラーが交換されたのである。

 

 

 

 

 

 

 

《 Side Saki 》

 

 ――――初春の候

 

『沙希先輩、明けましておめでとーございまーす!』

『お、おめでと。……それと、声デカいって』

 

 新年早々、いろはから電話がかかり初詣に誘われた。兄弟で初詣に行く予定があると断ろうとしたが、その会話を大志に聞かれ、一緒に行こうと勧められる。

 

『あ、弟さんと妹さんもご一緒ですか? もちろん、おっけーでーす♪』

 

 大志と京華に懇願されたあたしが拒めるはずもなく、四人で初詣に行くこととなった。

 

 

×  ×  ×

 

 

 いろはと合流すると、大志はその色香で完全に骨抜きにされ、京華はいろはのあざとい所作を真似して暴力的なまでの可愛さを披露する。

 途中、『まるで美人三姉妹みたいですね!』とナチュラルに大志をいない者扱いしていた。こっそり涙する大志を目の端で拾うと、いろはにちょっとだけ強めのチョップをお見舞いする。痛がり方まであざとい後輩に底知れぬ恐怖を覚えた。

 

「あー、せんぱいたちだぁー。おーい!」

「はーちゃん!」

「お兄さんじゃないっすか!」

「え」

 

「あ、お兄ちゃん、沙希さんたちがいるよ!」

「あー、いろはちゃんだー! あれ、沙希⁉」

「……珍しい組み合わせね」

「……!」

 

 奉仕部と比企谷の妹が大はしゃぎでこちらに手を振ってくる。柄にもなく振り返そうとした手がぴたりと止まった。比企谷の首に巻かれたモノを認識したせいだ。

 

「あけましてやっはろー!」

「明けましておめでとうございまーす!」

「明けましておめでとう」

「……」

 

「明けましておめでとうございまーす♪」

「明けましておめでとうございます」

「あけましておめでとー」

「……」

 

 京華もちゃんと挨拶してるのに、あたしと比企谷は黙り込んでいた。

 何故なら比企谷は、あたしたち家族といろはが巻いてるのと同じマフラーを巻いていたから。

 なんで? いろはが渡した? あの子は葉山にあげるんじゃなかったの?

 いろはを見ると、口角を上げ挑発的な顔を見せる。

 

「いろはちゃんって沙希と仲良かったの? それにえっと、その……」

 

 由比ヶ浜は目敏くあたしたちの首に巻かれた物に視線を向けた。うちの兄弟ばかりか、いろはと……比企谷まで同じ物を着けていたら誰でも気になるだろう。

 

「葉山先輩にプレゼントするために練習してたら沙希先輩が隣で編んでくれたんですよね、お手本として。それから仲良くなったんですよー」

「へー、そーなんだー。……で、その、」

「なぜ比企谷くんまで同じマフラーを?」

「沙希先輩に教わりながら練習で作ったものが余ったので、先輩に押しつ……プレゼントしたんですー♪」

「誤魔化せてないから」

「……そう。それにしては随分と見事な出来なのね。とても練習段階の物とは思えないのだけれど」

「先生が良いですから☆」

 

 あたしを見ながらいろはは誇らしげに答えた。

 

「あんたの頑張りだって言ったでしょ」

「それもそうなんですけど……」

 

 いろはは自分のマフラーを摘んであたしに誇示しながら、妖艶な微笑みを浮かべる。

 

 ぎく

 

 いろはの首に巻かれたそれをよく見ると、わずかな違和感があった。

 

 ……それ、本当にあたしが編んだ物?

 綺麗に編めてはいるが、上達したいろはならこのくらい編めるのではないか?

 疑い始めるとさっきの悪戯めいた微笑みの説明もつく。

 

 あれはきっと……。

 

 自覚すると顔が熱くなっていった。

 だって、それだと比企谷がしてるのって、あたしが作っ……!

 

「沙希先輩」

 

 夢の中にあるような意識があたしを呼ぶ声で引き戻された。

 たっぷりと含みを詰め込んだ笑顔でこう問いかけてくる。

 

「……どっちだと思いますか?」

 

 屋上で出逢ったあたしの後輩は、

 とびっきりに小憎らしく、

 極上の可愛さを持った、

 

 ――――最強の小悪魔である。

 

 

 




お読みいただきありがとうございました。

あとがきっぽい活動報告はこちら→https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=269956&uid=273071
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