ようこそ実力至上主義の教室への7巻の内容。
+ショートストーリー集になるかな。

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ようこそ実力至上主義の教室への7巻の裏話的なifの物語です。それ以外言うことはないです。あとはタグを見て気になったら読んでくれると嬉しいです。
そんなことより昔に途中で挫折したゲームのドラッグオンドラグーンを最近やってるんだけど楽しい(アヘ顔ダブルピース

2020/8/21更新:誤字修正。


ようこそ実力至上主義の教室へ〜破滅する秩序の向こう側〜

ㅤようこそ実力至上主義の教室へ

ㅤifストーリー

『破滅する秩序の向こう側』

 

ㅤ???視点

 

「待機命令」

 

 

 

ㅤ分かりきったことだが待機とは「ヒマを持て余せ」と言う命令ではない。

ㅤ例えば、目の前にいる偉くて金持ちで怖い顔をしたオッさんの「暇潰し」の相手をしなくちゃいけなかったりする。

 

「……」

 

ㅤだが、コミュ障の自分から会話を振るのはもちろん恐れ多く必然と室内は無言になる。

ㅤ社長室のような部屋のど真ん中に対称的に置いてあるソファーの片方に自分は座っている。

ㅤオッさんの方は書斎に座っている為、互いに向かい合っていないことだけが救いだった。

ㅤなんでも彼は息子の学校に行く手続き待ちだそうで、自分は仕事でその付き添いをしなくてはならない。

 

「何か話したらどうだ?」

 

ㅤと、沈黙を破られるように会話を振られる。

 

「アンタと会話する理由があったか?」

 

ㅤ会話に理由など必要はないが、特に会話するネタがなかったのでそう間髪入れずに強気で返しておいた。

 

「そう言わずにたまには老人に付き合うのが若者の役目だぞ」

 

「若者も大変だな」

 

ㅤ世代が離れすぎて会話の内容が合わない。なんて言い訳は通用しない。

ㅤ常に目上の相手には「yes」と答えるのが正解なのだそうだ。

 

「なら、聞きたいことがあるんだが良いか?」

 

ㅤ老人には老人の特権があるが、若者にも特権がある。

ㅤ分からないことは質問するという特権をオレは行使する。

ㅤそれに対し彼はどうぞと答える。

 

「息子に会いに行くだけだろ? なんで、そんなに手続きに手をこまねいてんだ?」

 

ㅤ彼はオレの質問に対し「なんだ、そんなことか」と言わんばかりのツラで返された。

 

「あそこは私にとって敵地にも等しい場所だ。ただそれだけだ」

 

ㅤ警戒されているからと言いたいらしい。

ㅤ確かにこんなおっかない顔したオッさんは警戒したくもなる。

 

「一体どんな目的を持って作った学校なのか少しだけ気になるな」

 

ㅤ在学中の生徒を社会から隔離する場所であることと、素晴らしい教育を施してくれる。と言うこと以外はほとんど学園の情報の開示がない。

ㅤもちろん国主導で運営されて多数の大企業からの支援もあり、優秀な生徒が育つ保証をされていることから、それなりの信用があることを踏まえての情報規制なのだろうが……。

 

「簡単な話だ。理不尽な世界を教えることが学園の創立の目的だ」

 

「意味がよく分からないな」

 

ㅤ正直な感想を述べる。

 

「今の日本は戦後、歴史上最大とも言える格差社会が生まれてしまった。この理不尽な世界を体現するために学園はクラス毎にランク付けをし格差を付けている」

 

ㅤ彼の言う通り、労働者不足のデフレスパイラルによる貧富の差は確実に広がっていき、今では日本の歴史上で最大の格差社会が生まれた。

ㅤ急速に増えた人口と共に発展した社会はその高い水準を維持する為に人手を減らしていった。しかしそれを行なった結果、若手の人間は減り、少子高齢化による労働者の減少が続き、果てには企業が減らした最小の人手にすら届かない状況が続いた。

ㅤしかし、それはすでに過去の話だ。

ㅤすでに日本は国外の人種を多く受け入れ労働者を確保し社会水準を保っている。

ㅤだが、それはもちろん日本と言う国の社会経済を維持する為で日本人を守るための最適な行動ではなく、日本人の低賃金化は避けることが出来ない結果となった。

 

「日本は格差社会が続いた結果、貧困の影響から犯罪者が急増。貴様もよく知っている特別指定禁止区域などと言う治外法権のスラム街が生まれてしまった。そこに比べれば学園のクラス格差など稚拙なものだ」

 

ㅤ彼はそう語りながらデスクに置いてあるナイフをオモチャのように片手で遊んでいる(あぶねーな)。

ㅤ学園に対しては特に好ましくも、さほど興味がある訳でもなさそうな口ぶりだ。

 

「流石にそんなガチなものと比べられても学園のガキ共は困るだけだと思うけどな」

 

ㅤ格差社会の影響が続いた結果、犯罪者は急増した。

ㅤかつて日本は銃規制が行われており、銃を見る機会などなかったそうだ。

ㅤだが、自分のスーツには拳銃を仕舞うホルスターが付いており、その中には黒光りする立派なものが腰に下がっている。

ㅤ時代が移り変わり、護衛のライセンスを持つ人間には銃を持つことが許可された。

 

「何の取り柄もないオレがこうして仕事に就けてるのも、ある意味この時代のおかげかもな」

 

ㅤ治安の悪さ故に、屈強な人物によるボディーガードや武器の需要が上がったのは言うまでもなく、皮肉にも日本企業の根幹を支える『倉屋敷重工(くらやしきじゅうこう)』の武器や兵器と言った類は世界規模で売れ始めたことにより、日本経済が回復の兆しを見せている。

 

「今の時代も酷いものだが日本はまだマシな方だ。世界に目を向ければどうしようもない暴力に包まれている」

 

ㅤ確かに今では世界は大戦の準備を着実に進めており、小さな紛争は既に始まっている。

ㅤそして、それには日本の兵器産業が多く参入していることも確かだ。

 

「こんな世の中で、実力主義だと言うが、平等に実力が評価される世界などどこにもない。そう思わないか?」

 

ㅤ彼はオレに対する問い掛けと同時にナイフを投げつける。

 

「………」

 

ㅤ刃物はオレの右の眼球に刺さる寸前で止まる。

ㅤ指2本で捕まえたナイフをオレは持ち替えて座っているソファーにぶすりと刺した。

 

「確かに、オレの知り合いも言ってたな。どれだけ鍛えあげられようが、どんな武術の達人でも子供の持つマシンガンには敵わない……ってな」

 

ㅤ彼はナイフがオレに刺さらなかったのが気に入らなかったのか、仏頂面でこちらを睨んだ。

 

「その通りだ。どれだけ実力を磨こうが、身につけた個人の実力は正当に評価はされない。あるのはただ突きつけられる理不尽な現実だけだ」

 

ㅤ彼の言うことが正しければ、このナイフがオレに刺さっていれば、それもまた理不尽な世界の一つなのだろう。

 

「貴様は生まれはゴミみたいなものだが、才能は評価している。世の中では何の意味もなさないカスみたいな才能だがな」

 

「そりゃどうも」

 

ㅤゴミだのカスだの酷い言われようだ。

 

「アンタも、いい性格してるよな。そんなんだから息子に逃げられたんじゃないのか?」

 

「貴様には関係のないことだ。貴様はただ私の護衛をしていればいい」

 

ㅤ部屋にある電話が鳴り、それを彼がとる。

ㅤ電話の内容がいかようなものかは知らないが、彼は立ち上がり「出発する」と言い放つ。

ㅤ散々待たされたオレは腰かけた重い身体を奮い立たせ、自分の仕事に集中することにした。

 

「ただ、そこにある現実か」

 

ㅤオレは誰に言うでもなく呟いた。

 

 

 

 

 

堀北鈴音・視点

 

 

第1話「ノアの方舟」

 

 

ㅤ冬休みが間近に迫った肌が凍るほど寒い季節。

ㅤ夏では助かる風通しが良いスカートも冬では猛威をふるう。

 

「はぁ…」

 

ㅤ息を漏らせば、体温で温められた空気が外の冷たい空気と混じり水蒸気となって細かな水滴が白いモヤを作る。

ㅤ今日の授業は全て終わり、あとは帰るだけだが、教室の暖房で充分に温められた脚を外の寒さでスカートの中を冷やすことはかなり勇気のいることだ。

ㅤ学校と寮はそれほど距離が離れていないまでも寒さで身が縮んでしまうには充分な距離。

ㅤ私は暖房の効いてない冷たい廊下を目的地まで一直線へと足を急がせる。

 

ㅤ目的地へ到着するとスカートから下が一気に温まり安堵のような息が漏れた。

ㅤ目的地は暖房が充分に効いており、とても静かな場所で沈黙を貫いている。

ㅤ私は暖かさもそうだがこの静けさも求めてここへ来た。

ㅤ静かな場所。と言えば学園内では限られており、1番最初に思い浮かぶ場所は図書館ではないだろうか。

 

「……すぅ」

 

ㅤ本棚と本棚の間を通れば、嫌でもこの古臭い紙の匂いを嗅ぐことになる。

ㅤだが、この嗅ぎ慣れた本の匂いは自然と落ち着く。

ㅤ今では電子データ化が進み、その影響で世界の図書館の数は減少傾向にあると言うが、本は手に持ちページをめくる行為そのものに意味があると感じる。

ㅤもちろん、電子データ化を否定する訳ではない。

ㅤ情報化社会になった今では大量の情報を保管するには紙では狭い日本が埋もれてしまう。

ㅤただ、電子データに埋もれてしまうほどの味気のない世界に変わっていっていると言うだけだ。

 

 

「さらば愛しき(ひと)よは相変わらず人気ね」

 

 

ㅤレイモンド・チャンドラーが書いた名作『さらば愛しき女よ』が置いてあるであろう本棚はぽっかりと空白となっている。

ㅤそれは誰かがまだ借りている証拠であり、人気にまだ落ち目が見られない証拠でもあった。

ㅤもしかしたら、まだ綾小路君が借りているのかもしれない。

ㅤ私はすでに読み終えており、その本棚は素通り。そして、政治部門の本棚へと直行する。

 

ㅤそして、目当ての本を見つけた。

ㅤ見つけたのだが……

 

「………っ。相変わらず女性に優しくないわね。この本棚」

 

ㅤ私はつま先立ちで本棚の上側へと手を伸ばしたが身長が足りず中々目当てのものが取れずにいた。

ㅤ本の題名は『破滅する秩序の向こう側』。著者は五十嵐行雄(いがらしゆきお)

ㅤ政治関連の内容で現代日本と今後の未来予想についてが語られている。

ㅤ実は前々からこの本のことは気になってはいたが、ある理由にてこの本は販売打ち切りの絶版となり、電子書籍版も廃止。さらには電子書籍に関しては返金にて電子データの削除まで行われたと聞く。

 

「……っと」

 

ㅤ少しはしたないが、ジャンプをして本を掴み取る。

ㅤ着地の瞬間には空いた片手をスカートに当て中身が見えないように気を使う。

ㅤその後、周りを確認して誰も見ていないかとキョロキョロと見渡した。

 

「本当に短すぎる」

 

ㅤ誰に言うでもなく嘆いたが、嘆いたところでこのスカートが長くなるワケでもなかった。

 

「その本、気になりますよね」

 

「え?」

 

ㅤ振り返るとそこには杖をつく小柄な小さい少女が立っていた。

 

「一瞬、小さすぎて目に入らなかったとか思いませんでしたか?」

 

「いえ、そんなことないわ」

 

ㅤめちゃくちゃそんなことあった。

 

「こうして対面で会話をするのはこれが初めてですね」

 

「ええ、そうね。坂柳さん。いつもの取り巻きはどうしたのかしら?」

 

ㅤAクラスの坂柳有栖。

ㅤ儚い少女。守ってあげたい。

ㅤそんな第一印象を与える見た目をしている。

ㅤだが、実際に話して見ればそれは間違いだと気付く。

ㅤ吸い込まれそうな魔性を秘めた存在だ。

 

「私でも1人になりたい時はあるのですよ。それよりも、その本……確かプレミアが付くほどの絶版の本ですよね」

 

ㅤ私は警戒する。

ㅤ坂柳さんはAクラスの中では葛城くんとは対極に位置する存在。

ㅤ私自身は葛城くんの考えや戦略自体には共感している。

ㅤ私がAクラスだとするなら、彼のように守る戦いに専念するだろう。

ㅤスタート地点から勝者ならば他クラスとの差を保ち、逃げ切りさえすれば良いのだから。

ㅤしかし、坂柳さんと葛城くんが対立しているのは、彼女の考え方が攻撃的だからに他ならない。

 

「犯罪者の書く本は出版社にとって見れば悪印象でしかないわ。早々に絶版になるのは当然ね」

 

ㅤこの本の著者は元政治家であり大臣まで上り詰めたほどだが、政治家業を退役した後に、本の販売間もなく歴史的なテロ犯罪を起こした。

ㅤ地下の根城を拠点に立て篭もっていたが、日本の警察組織に射殺された彼はそのテロ首謀者として新聞やニュースにて世界へと知れ渡った。

 

「彼がまだ政治活動をしていた頃、一度だけ会ったことがあります。父に顔合わせだと言われ挨拶しただけでしたが、私は幼いながら彼が凄まじいカリスマ性を持つ人物だと肌で感じとれました」

 

ㅤ坂柳さんの父がどのような人物かは知り得ないが、昔を振り返りながら語る様からして全くの嘘ではないように見える。

 

「カリスマ性の使い方を間違えただけね。犯罪者は犯罪者よ」

 

「ええ、そうかもしれませんね。彼の悪評のとばっちりを綾小路先生も受けてしまったのですから」

 

「………それで? 本の話をしにきただけかしら?」

 

ㅤ一瞬知っている単語を聞いたが、今までの会話から私の知っている彼と結びつくはずがないと心の中で切り捨て、私は警戒を解かずに本題を切り出した。

 

「ええ、そうですよ。私も読書に耽けようかと思いましてね。貴女をたまたま見かけ面白そうな本を手に取ろうとしていましたから、つい声をかけてしまいました」

 

ㅤ私はふと彼女が片手で持つ本に目を向ける。

ㅤREMINISCENCE(レミニセンス?)と題名が書かれていた。

 

「興味がありますか?」

 

「ないわ」

 

ㅤ私の視線に気が付いたみたいだが私は即答で否定する。

ㅤそして、これ以上の会話を不要だと感じその場を立ち去ろうと貸し出しの受付まで歩みを進めようとした。

 

「そうですか……残念ですね。この学園の秘密が書かれているかもしれないですのに」

 

「……秘密?」

 

ㅤ私は歩みを止め聞き返す。

ㅤもちろん鵜呑みにはしない。映画の見すぎか何かだと心で笑う。

 

「知っていますか? この学園は国だけでなく企業の倉屋敷重工が支援をしていることを」

 

ㅤ『倉屋敷(くらやしき)』とは人の苗字で倉屋敷(くらやしき)一族が数世代で急成長させた企業。それが『倉屋敷重工(くらやしきじゅうこう)』だ。

ㅤゲーム機や携帯端末、果てにはミサイルの製造まで手を出している。

ㅤ前社長の倉屋敷亜希子(くらやしきあきこ)は人工知能開発にて大きな功績を残していることで有名だ。

 

「それぐらい知っているわ。それがどうして学園の秘密に繋がるのかしら?」

 

「この高度育成高等学校の校舎は倉屋敷重工が設計しました。そして、牢獄のような学園のシステム。埋め立て地にて建てられている為に物理的にも遮断されているとも言えます」

 

「けれど何不自由なく物資は行き届いているわ。それに社会から完全にシャットアウトされる訳でもないわよ」

 

ㅤ現に学生端末でのネット利用は出来ている。

ㅤSNSにて個人情報を載せることや投稿の発言、家族とのネット接触には制限が設けられているが、それ以外は自由に外の社会情報を得られる。

 

「もちろん、全てを遮断してしまっては不満が出てしまうでしょうからね。あえて穴を設けたのですよ。そして、学園はある臨床実験をする為のものだと言われています」

 

「私達は何だか分からない本番の為の実験と言うことかしら?」

 

「ええ、そうです。この学園の端っこの敷地で未だに続けられている工事。地下深くを掘り続ける為のとても大きな掘削機のような機械が見えますよね」

 

ㅤそれがこの学園の大きな秘密だと彼女は言う。

 

「地下にはこの学園の敷地よりも広い地下空間が広がり、そこにはこの学園のように何不自由なく物資が詰め込まれているだけでなく生産も可能で、地下世界だけで100年や200年と言った未来を見据えた生活が出来るプラントがあるそうです」

 

ㅤつまり、要約すればとんでもない規模の核シェルターと言うことだ。

 

「妄想もそこまで行くと笑えないわね」

 

「ふふっ、そうですね。私も信じていませんし話半分で聞いてください」

 

ㅤやはりからかわれているのだろうと理解する。

 

「話にならないわ」

 

ㅤ私は鼻で笑う。

 

「堀北さん、これも縁ですし最後に質問してもよろしいでしょうか?。貴女にはドラゴンボーイさんが探していらっしゃる方をご存知なのでは?」

 

ㅤドラゴンボーイとは龍園くんのことだろう。

ㅤ先日、龍園くん達が高円寺くんに絡みクラスは騒然としたばかりである。

ㅤそして彼が探している人物は間違いなく綾小路くんだ。

 

「そんな人物がいると過程して、それを答える義務があるのかしら?」

 

「確かにありませんね。ですがその口ぶりからすると心あたりぐらいはありそうですね」

 

「貴女は妄想が好きなようね。ありもしないことを次から次へと……小説家の才能があるんじゃないかしら?」

 

「嬉しいですね。褒め言葉として受けとっておきます」

 

ㅤとても不愉快だ。

ㅤ彼女の言葉は一つ一つに棘がある。

ㅤそして、坂柳さんは本当に龍園くんが探している人物を聞き出したい訳ではなく私の反応を伺っているように感じる。

ㅤボロを出すつもりは毛頭ないが、万が一と言うこともある。

ㅤ私は今度こそと歩みを進めようとする。

 

「にゃー……」

 

ㅤしかし、その歩みは地面を踏むことはなかった。

 

「え?」

 

「あっ」

 

ㅤ私と坂柳さんは同時に間抜けな声をあげる。

 

ㅤ私は踏みそうになったものを慌てて避ける。

ㅤしかし、それによって身体のバランスを大きく崩した。

 

 

ㅤどてん!

 

 

「〜〜〜っっつっぅ!!」

 

ㅤ叫び声を上げなかったのは私のせめてのプライドだったが、お尻から倒れた私は痛みに悶絶した。

ㅤバランスを崩した直後に本棚のどこかに捕まっておけば良かったのだろうが、片手に持つ本がそれを邪魔した。

 

「にゃー、にゃー」

 

ㅤ私の痛みなどつゆ知らずに私に踏まれそうになったそれは呑気に鳴いていた。

 

「だ、大丈夫ですか? 堀北さん」

 

ㅤ若干の間があったものの坂柳さんは私を心配する。

ㅤ坂柳さんは持っていた本を適当な本棚に置き、空いた手を差し伸べてくる。

 

「いいえ、大丈夫よ」

 

ㅤしかし、私は彼女の差し伸べた手を拒否した。

ㅤ坂柳さんは脚を曲げるのですら一苦労であり、差し伸べた手の反対側は常に杖を持っている。

ㅤそんな彼女の手を取る訳にいかず私は自力で立つ。

 

「踏まなくて良かったわ」

 

ㅤ私は打ち付けたお尻をさすりながそう呟いた。

ㅤ踏まれそうになったそれは「何のこと?」と言いたげな愛くるしい顔をしていた。

 

「子猫ですか。もの凄い小さいですね」

 

「こんな場所に迷い込むだなんて、とんだ冒険家ね」

 

ㅤ坂柳さんの言う通りそれは子猫だった。

ㅤふさふさでいかにも撫でたら気持ちよさそうな毛並みをしている。

 

「おいで、外に連れだしてあげるわ」

 

ㅤそう言って手を出したが猛烈な連続猫パンチを2発くらった。

 

「いたっ……!」

 

ㅤまだ小さな爪が手の皮膚を突き破り血が滲み出す。

ㅤ猫は私を素通りし坂柳さんの足へ擦り寄った。

 

「堀北さんは意外とおっちょこちょいなんですね」

 

「う、うるさいわね」

 

ㅤ猫は何故か坂柳さんの足にまとわりついて顔を擦り寄せている。

ㅤなんとも羨ましい光景である。

 

「私を転ばせる為に仕掛けた坂柳さんの飼っている猫なんじゃないかと私は推測するわ」

 

「それこそ妄想ですよ。それに私は入学してからこの学園の敷地で猫を見るのは初めてです」

 

「そうかしら? 初対面にしてはその懐き方は異常だと思うのだけれど」

 

「それを言われると困りましたね。動物に懐かれやすい体質だと言い訳しておきましょうか」

 

ㅤ冗談を言い合う私達は互いに少しだけ笑った。

 

 

 

 

「すみませんね。荷物を持ってもらって」

 

ㅤ坂柳さんの鞄を持ち、私達は寒い外へと足を運んでいた。

 

「貴女の為ではないわ」

 

ㅤ坂柳さんに片手で抱きかかえられた猫に視線を向けながら、そう言った。

 

「先生達もお手上げみたいだし仕方なくよ」

 

ㅤ図書館の受付をしている先生や職員室から駆け付けたAクラスの担任である真嶋先生も私と同様に猫パンチの洗礼を受けた。

ㅤ相談し合った結果としてこの敷地内で唯一のペットショップへと預けることになったが、その役を担う坂柳さんには少し荷が重かった。

 

「いえいえ、猫のことを想ってのことだとしても充分ですよ」

 

ㅤそう彼女は言うが、外へ出た当初よりも足取りが重くなってきている。

ㅤ顔には出さないが疲れてきているのが分かる。

 

「あそこのベンチで少し休憩しましょう」

 

ㅤ私はそう提案するが彼女は拒否する。

 

「もう、それほどの距離ではないですよ? それまで大丈夫です」

 

「猫を預けてしまっては私がその猫を触れる機会がなくなっしまうでしょう?」

 

「なるほど。そういう考えもありますね」

 

ㅤ彼女は諦めたようにベンチへと向かい腰掛けた。

ㅤその後、自分の足をさすって少しだけだが安堵したような表情を見せる。

ㅤやはり、少しだけ無理をしていたようだ。

 

「この子は呑気に寝ていて羨ましいわね」

 

「今なら触れるのでは?」

 

ㅤ確かに……

ㅤ坂柳さんの提案通りに恐る恐る触ってみる。

ㅤ頭を触るが起きる様子はなかった。

 

「猫がお好きのですか?」

 

「嫌いな人がいるのかしら? 嫌いな人がいるならそれは人ではないわ」

 

ㅤ私は本心でそう語る。

 

「ぷ……確かに、それは同感ですね。私も動物は嘘を付かないから好きですよ」

 

ㅤ珍しく吹いた彼女の眼は少し寂しさを帯びている。

 

「堀北さん。貴女は私と少しだけ似ていますよね」

 

「そうかしら? とてもそうは見えないわ」

 

「そうでしょうか? プライドが高いことと同時に、完璧な存在への劣等感を抱いている所などそっくりだと思ったのですがね」

 

ㅤ彼女を自らの足へと視線を向けてそう語る。

 

「くだらないわね」

 

ㅤ私はそう吐き捨てたが否定はしなかった。

 

「そうですか……。では、今のは聞かなかったことにしてください」

 

「……」

 

「……」

 

ㅤ会話が途切れ互いに無言になる。

ㅤヒマを持て余した私は先程借りた本を広げる。

ㅤだが、広げたのは私が借りた本ではなく坂柳さんが借りた本だ。

ㅤ坂柳さんの荷物を持つと言うことは当然、彼女が借りた本も手元にある。

 

「やっぱり、さっきの話は嘘だったようね」

 

ㅤ『レミニセンス』と題名が書かれた本の内容は自立型AIのロボット工学についてが語られている本だった。

 

「ええ、そうですよ。それはアンドロイドに搭載されたAI技術、そして人工知能が人間のように成長し、必要のないものを忘却するようプログラムされたアンドロイドの忘却システムについての考察が書かれています」

 

「アンドロイドなんかに興味があったのね」

 

倉屋敷重工(くらやしきじゅうこう)が完成させた世界初のアンドロイド。

ㅤ『ユウキプロジェクト』と言うもので、見た目は人間とほぼ変わらないロボット。

ㅤ倉屋敷重工は元々ロボット工学に力を入れており、AIを専門とする倉屋敷亜希子(くらやしきあきこ)により「外見」と「中身」の全てが揃った。

ㅤしかし、AIの自動忘却システムに欠陥があり、記憶を蓄積するデータ温存の処理が追いつかなかった為まだまだ人間の代用になるようなものには至らなかったそうだ。

 

「いずれは実用化されるかもしれないですよ? そんなものがあったら便利じゃないですか」

 

ㅤきっと甲斐甲斐しく介護してくれるんじゃないでしょうか。と自虐混じりに彼女は語る。

ㅤ確かに小説や映画の中のアンドロイドは介護用や生活の助けをする近未来ファンタジーが多く、アンドロイドの最終目標はそれが到着点だとも言える。

 

「ここには丁度、実用化して一般の人達の手に渡るようコストダウンするまで150年くらい掛かると書いているわ」

 

「あら……そうでしたか。それは残念です」

 

ㅤ彼女はちっとも残念がらずに残念だなと肩を竦めた。

 

「ですが、アンドロイドなど数年前までは500年先ですら実現不可能と言われてました。しかし、1人の天才によりブレイクスルーが起きて150年に縮まった。もう1人天才が現れれば更に年数は縮まるかもしれませんよ?」

 

「私達が生きてる間にそんな便利な時代が来れば良いわね」

 

「便利すぎてそれに頼りきってしまうのも考えものですけれどね」

 

ㅤ確かに私達は便利すぎる世の中に生まれてきた。

ㅤこの学生用端末にしてもケータイ端末にしても個人のプライベート情報が詰まっている。

ㅤ人によっては仕事の連絡を取り連携。または広告などを掲載してる会社もある。

ㅤこれらがなくなれば仕事や生活すらまともに出来ない可能性すらあるほど私達は機械に頼りきっており、依存している。

ㅤかつては、ケータイ依存症などが社会問題となったことがあるそうだが、今では社会形態そのものが機械依存と言っても過言ではない。

 

「そろそろ行きましょう。ずっと外に居ては猫の身体も冷えてしまいます」

 

「ええ、そうね」

 

ㅤ坂柳さんに同意し立ち上がる。

ㅤそして、私は坂柳さんを立ち上がらせる為に手を差し伸べた。

 

「ありがとうございます」

 

 

ㅤそう礼を言った彼女はやはり少し悲しげだった。

 

 

 

 

 

 

一之瀬帆波・視点

 

 

 

「じゃあ、今日はかいさーん。また明日ねぇー」

 

ㅤ元気よく担任の先生である星之宮先生から今日を締めくくるホームルームの終わりを告げられる。

 

「にゃはー、今日も星之宮先生は元気だねー」

 

ㅤ私は乾いた笑いを漏らす。

ㅤ小テストから始まった波乱の期末試験が終わりを告げてから、そんなに日は経っておらず結果としてAクラスに敗北し、Bクラスは疲弊して全体的に意気消沈としていた。

ㅤそんな中で星之宮先生は変わらず「呑みにいくぞー」とか叫びながら教室を出て行った。

ㅤいつもながら嵐のような人だ。

 

「星之宮先生も悪気はない。むしろ、アレほど明るければこちらも暗い気持ちを忘れさせてくれる」

 

ㅤ席が近いクラスメイトの神崎くんがそう言う。

 

「わかってるよ。それでも悔しくてねー」

 

「気持ちは分かる。だがクラスメイトのリーダー的存在である一之瀬が暗ければ周りも不安になる」

 

ㅤもっとキチンとしろと言いたいらしい。

ㅤ厳しいものだが、相変わらずの口ベタで神崎くんなりに励ましているのかもしれない。

 

「私は、あんまり勝ちとか負けとか明確に勝敗を決める試験には参加したくないものだね」

 

「俺達に参加をするしないの選択権はない。あるのはただ理不尽な現実を受け入れる選択だけだ」

 

ㅤ理不尽な現実。

ㅤ入学するまで学校のルールの開示はなく、個人ではなくクラス対抗であること。

ㅤ特別試験のようなルールが不明瞭な試験。

ㅤこの世の全ては理不尽と言う名の硬い鉄で出来ており、誰かを蹴落とすことでヒエラルキーを構築していると言わんばかりの仕組み。

ㅤ私の勝敗を決めたくないなどと言うのは子供の戯言にすぎない。

 

「神崎くんは、この学校をどう思ってるのかな?」

 

ㅤ神崎くんは周りとは違う独特な考えを持っている。

ㅤ神崎くんは神崎くんなりの学校への答えを見つけてるのかもしれない。

 

「質問が漠然としすぎて意図が見えないが、俺自身まだこの学校のことを図りかねている。それが答えだ」

 

「そっか」

 

ㅤ私は神崎くんの嘘を見抜きつつ、短く頷く。

 

「………すまない。少し用事が出来た」

 

「?」

 

ㅤ神崎くんは廊下を見てそう言った。

ㅤ誰か約束をしている知り合いが通ったのか慌てて荷物を持ち帰る準備をする。

 

「一之瀬も少しは気晴らしをしたらどうだ。誰かと遊びに行ったりとかな」

 

ㅤ神崎くんはそれだけ言い残して、私はさよならも言えずに彼は駆け足で誰かの後を追っていった。

ㅤいや、そう見えただけで本当に用事を思い出しただけかもしれないが、そこは彼のプライベートだ。追求するべきことではない。

 

「いっちゃった……」

 

ㅤ星之宮先生もそうだが皆慌ただしい。

 

「彼氏に振られちゃったねー、一之瀬さん」

 

ㅤクラスメイトの千尋(ちひろ)ちゃんが、スキンシップよろしくで私に後ろから抱き付く。

 

「ひゃ!」

 

ㅤ私は驚き間抜けな声をあげる。

 

「一之瀬さんはやっぱり神崎くんみたいな人が好きなの?」

 

「か、神崎くんとはそんなんじゃないよぉ」

 

ㅤそもそも男女の好きとか嫌いとかがまだよく分かっていない。

 

「えー、それじゃあ誰か気になる人とかいないのー?」

 

ㅤ私は頭の中を捻るがやはり異性として気になる相手は思い浮かばなかった。

 

「私は花よりダンゴなのかもなー」

 

「えー、それ以上成長したら溢れ落ちちゃうよー」

 

ㅤ一部分を言われていることは何となく分かったが、大きいものは大きいなりの苦労がある。

 

「なんとなく言いたいことは分かるけど、可愛い服とか太って見えるから大変なんだよー?」

 

ㅤ気に入った服ほど自分には似合わなかったり、そもそも自分に合うサイズがないなんて一度や二度じゃない。

ㅤワンピースなどは着ると下品に見えたりもする。

 

 

「失礼します。一之瀬さんはいらっしゃいますか?」

 

 

ㅤクラス内は一瞬ざわつく。

ㅤそれは、訪ねにきた人物によるところが大きいだろう。

 

「私はここにいるよ。坂柳さん」

 

ㅤBクラス内には坂柳さんを嫌う者も多く、私は騒ぎになる前にいち早く坂柳さんの前に立つ。

 

「今日は何の用があるのかな?」

 

ㅤ皆、平等と行きたいところだが、坂柳さんは危険な種を蒔いて歩いてるような存在だ。あまり邪険にしたくはないが、やはり警戒はしてしまう。

 

「用と言うほどのものではありません。人望の厚い一之瀬さんに少し相談をしたくて来ました。今日は私の周りに誰もいません。鬱陶しいと思うのなら力尽くで私をクラスから排除することをオススメします」

 

ㅤ私がそんなことをする人間ではない。と承知の上での発言。

 

「私はそんなことしないよ。本当に坂柳さんが困っているなら助けてあげたいよ」

 

ㅤそして、それは分かった上で私は返答をする。

ㅤそれが、例え毒牙に自らの腕を差し出す行為だったとしても……

 

 

 

 

坂柳有栖・視点

 

 

ㅤこの世界は理不尽に満ちている。

ㅤ私の足は私の意思に反し自由に動くことはない。

ㅤしかし、あの白い部屋に集められた私と同世代の子供達は私のような欠陥を持っていないにもかかわらず、私よりも遥かに不自由な制限が設けられている。

ㅤただ、ひたすらに課せられた目の前の課題をこなして行く毎日。

ㅤ意思なきロボットのような瞳を持つ彼らの中で一際に異彩を放つ子供。

ㅤ他者よりも不自由なはずの私は、父に蝶よ花よと育てられ不自由さを感じることはなかった。

ㅤしかし、彼は肉体や知識において他者より秀でているが圧倒的に不自由だ。

ㅤもし、彼が自らが不自由だと感じとることが出来たならば、その不自由の牢獄で育てた翼を大きく羽ばたかせるだろう。

ㅤしかし、彼は1度広げた翼を仕舞う術をきっと知らない。

ㅤ何故なら彼は不自由なのだから。

 

 

 

 

「坂柳。尾行はいつまで続けるつもり?」

 

ㅤある日の全ての授業が終わった直後のこと。

ㅤ真澄さんが呆れるような態度で私に談判する。

 

「私の気が済むまで……ですよ」

 

「それがいつか。って聞いてんのよ」

 

ㅤもっともな意見。

ㅤしかし、私自身がその答えを持ち合わせていない。

ㅤ私の興味が彼から離れることが私にあるのか。それは、私にも分からない。

 

「真澄さん自身の綾小路くんの感想を聞きたいところですね。その意見によっては私も彼をマークから外すかどうかを一考します」

 

「その答えだったら私は変わってない。あいつはどこにでもいる平凡なヤツだよ」

 

「ふむ……そうですか」

 

ㅤ私はいつものように意見を突き返すつもりだったが、彼女の反応に疑問を持つ。

 

「ちなみになのですが、尾行前から真澄さんは綾小路くんと接点があるのですか?」

 

「は? あるわけないでしょ。クラスも違うし。てか、前も同じこと言ったわよね。私は綾小路のことは何も知らないって」

 

「そうですか。聞き返してすみません。真澄さんが『綾小路』と苗字ではなく『あいつ』と呼んだのでつい」

 

「は? それがなんなの?」

 

ㅤ尾行は既にバレているのは承知の上だ。

ㅤ推論でしかないが綾小路くんの方から真澄さんの方へ何かしらの接触があったと見て良いだろう。

ㅤ元々、尾行で情報を得ようなどほぼほぼ無意味なのは分かりきっている。

 

「では尾行はそろそろ終わりで良いでしょう」

 

「どういう風の吹きまわし?」

 

ㅤ元から真澄さんが綾小路くんと接点を持つことそのものが目的だった。

ㅤその目的が果たされ今、これ以上は無意味だ。

ㅤ彼女は綾小路くんから何かしら脅されているのか。それとも何か言いくるめられたのか。

ㅤそれは分からないが、これ以上は真澄さんが完全に彼の側に取り込まれる可能性もある。

 

「尾行は時間や労力が掛かりますからね。真澄さんのことを思ってこれ以上はよそうかと」

 

「随分と優しいのね」

 

「私は元から優しい淑女ですよ」

 

ㅤこれで私が綾小路くんへ直接出向くまでもなく綾小路くんへのアプローチが可能になった。

ㅤ他者を挟むことによって、こちらの真意を探らせることなく揺さぶることができる。

 

「ですが、あと数日だけ尾行は続けてもらいます」

 

ㅤ真澄さんが綾小路くんと接触を持ったのは昨日、あるいは今日の出来事の可能性もある。

ㅤだとするなら、すぐに尾行を切り上げれば彼は真澄さんが接触したことを私にバラした。と思い真澄さんに対し警戒心を高めるだろう。

ㅤ綾小路くん自身が、真澄さんが綾小路くんと私のどちら側にいるのか不明瞭な状態が好ましい。

 

「疑ってるの?」

 

ㅤ真澄さんは私の考えを読んだのかそんなことを聞く。

 

「いいえ、私は貴女のことを信じていますよ」

 

「心にもない言葉ね」

 

ㅤ吐き捨てるように言われるが、私に問い詰められるかもしれないと考えていた真澄さんの顔は安堵しているように見えた。

ㅤただ、現時点では彼女が本当に彼と接触しているかはやはり断言は出来ない。

ㅤ彼女が、綾小路くん本人を目の前にしている時の反応を伺うのが一番良いだろう。

 

「そうと決まれば早く尾行に付いてほしいものですね」

 

ㅤ私はそう催促するがその願いは叶うことはなかった。

 

「綾小路なら茶柱先生に連れてかれたぜ」

 

ㅤ私達の会話に橋本くんが割って入り、そう報告する。

 

「橋本くんには綾小路くんの尾行は頼んでいなかったはずですが?」

 

「ただの趣味だ。俺は無人島の時に龍園と通じていたからあの時の戦況はよく分かっていたつもりだぜ。堀北には何も出来なかった。堀北の金魚のフン扱いだった綾小路を怪しむのは当然の流れじゃないのか?」

 

「人を付け回すのが趣味だったとは橋本くんはとんだストーカー気質なのですね」

 

「ああ、自分でもビックリだぜ。とにかく後は神室に任せる。特別職員棟の近くにある応接室に入って行くのは見た。進路相談でもしてるんじゃないか? ついさっきのことだし見張ってれば出て行くのを見れると思うぜ」

 

「ふん。そりゃどうも」

 

ㅤ真澄さんは雑に感謝を述べる。

ㅤもう用はないと言わんばかりに真澄さんは綾小路くんのがいるであろう場所に足を運ぼうとした。

 

「待ってください。今日はもうよろしいです。元々切り上げるつもりでしたしそこまで熱心にやる必要はありません。明日から尾行を数日だけ続けてください」

 

「その数日ってのはアンタの気分?」

 

「はい。そうです」

 

ㅤ嘘だ。

ㅤ龍園くん達の動向によってそれを変えるつもりだ。

ㅤそして『終わり』は近づいている。

 

「あっそ、だと思った。じゃあ今日は帰らせてもらうわ」

 

「ええ、お気をつけて」

 

ㅤ真澄さんはどこか行きたい用事でもあったのか急ぎ足でこの場を離れる。

 

「お前ら仲が良いのか悪いのか分からんな」

 

ㅤ私と真澄さんの関係性を橋本くんは口にする。

 

「長年連れ添った親友のように見えるでしょうか?」

 

「いや、それはない」

 

ㅤ橋本くんは呆れたように否定する。

ㅤ残念です。

 

「それより姫さん、荷物をお持ちしますぜ」

 

ㅤ彼がこう言ってくるのは何か打算的なことがある。

 

「そんな警戒しなくても紳士のマナーみたいなもんだ」

 

「そうですか。それはありがたいですね。しかし、結構です。今日は1人になりたい気分なので」

 

「なら龍園に気を付けるべきだな」

 

「彼は今、Dクラスにご執心なようですからね。そこまで警戒する必要はありませんよ」

 

ㅤたまに私への攻撃があるが今はCクラスからの監視の目は消えている。

 

「そう見せかけて不意打ちをかますのは奴の常套手段だと思うけどもな」

 

「それもそうですね。忠告は素直に受け入れておきましょう」

 

ㅤ龍園くんに対しては思うことは何もない。

ㅤそれよりも綾小路くんの方がやはり気になった

ㅤしかし、もし私の勘が正しければ真澄さんを向かわせることは悪手になる。

ㅤだからと言って私が言っても話がこじれるだけだと予想した。

ㅤならば今日くらい大人しくするのが良いのかもしれない。そう思った。

 

 

 

 

「なあ、図書室ってどこにあるか分かるか?」

 

ㅤ橋本くんと真澄さんと別れた後、唐突に見知らぬ人に声を掛けられる。

ㅤなんてことはない日常的なことかもしれない。

ㅤしかし、ここは特殊な規則を採用している学園の中。

ㅤ相手はスーツを着た男性。1年近く通えば学年の違う先生や職員の顔は覚えられる。その記憶に該当しない人物。

 

「校舎そのものが違いますね。こことは反対方向です」

 

「え、マジか」

 

「この窓から見えますね。天球棟(てんきゅうとう)と言います」

 

ㅤ私は窓から見える天球棟(てんきゅうとう)を指差す。

ㅤ天球棟は人と知恵との出会いを描き、劇場を作り出すための空間だと言われている。

ㅤ天球とはあの円状の空間をさながら知恵を中心とした宇宙と見立てているのかもしれない。

 

「あの丸い建物の中に図書室があるのか?」

 

「いえ、あの建物全てが図書館になっています。学園のパンフレットやネット紹介をお読みにならなかったのですか?」

 

「いや、サッパリだ」

 

「計画性のない方ですね」

 

「よく言われる」

 

ㅤ粗野な言葉遣いと態度。

ㅤおよそ育ちが良いとは言いきれない人間性が(にじ)み出ている。

ㅤどこか龍園くんに近いものを感じるが彼は粗野な行動とは裏腹に計算した上で行動を起こす。それとは対称的に目の前の人物は行き当たりばったりの無計画そのものを楽しんでるように感じた。

 

「もう一つ聞きたいことがあるんだが良いか?」

 

「ええ、私の答えられる範囲で良ければ」

 

「ここら辺は人がいないよな。空き教室ばっかだ」

 

ㅤそんなことかと私は思ったが…。しかし、それは彼が本来聞きたいこととは別だと彼の態度で瞬時に気が付く。

 

「別にこのような現象はどの学校でも見られると思いますよ。ここは以前3年生が使っていたそうです。しかし、少子高齢化に伴い子供の総数が減ってしまった現実があります」

 

「あー、確かこの学校は初期はEクラスまであったとか聞いたな」

 

「はい、その通りです。しかし、数年ほどで生徒総数の見直しが入ったそうです」

 

「そこまで歴史がある学校でもないのにそんなことあるんだな」

 

「聞きたいこととはそんなことですか?」

 

ㅤ私は一通り説明した後、相手が本来聞きたかったことを聞き出す。

 

「いや、俺は単純に迷ったからだが、お前は人がいない場所に何でこんなところにいるのかなってな」

 

ㅤ彼は少し聞き辛そうに聞く。

ㅤだが、生徒が1人こんなところにいるのを疑問に思うのは当然のこと。

 

「五月蝿いのも結構ですが、静かな場所は貴重ですからね。歩いていると何となく世界に私だけの気分に浸れるのですよ」

 

ㅤ寮の自室や図書館とはまた別の特別な『無音』を楽しむ為の行為。

ㅤ1人取り残されたような不安と共に訪れる1人と言う開放感。

ㅤそれを味合うためにただ目的地もなく歩いていた。

 

「よく分かったよ。お前が変人だってことがだが」

 

「ふふっ。その自覚はあるので安心してください」

 

ㅤ彼は遠慮なく嫌味を言うが特に不快な気分にはならなかった。

ㅤ彼自身の本心だからなのか、彼の特性なのか……

 

「ま、ありがとな。流石にもう迷わん」

 

「それは良かったです。不躾で申し訳ありませんが、こちらも質問よろしいでしょうか?」

 

ㅤ立ち去ろうとする彼を私は引き止める。

 

「ああ、なんなりと。1人の世界を邪魔したみたいだしな」

 

「護衛のライセンスバッチをお持ちのようですが、誰か重要な要人の方でも来られているのですか?」

 

ㅤ彼は背も高く身体付きも普通の人よりも鍛えているのが素人目でも分かった。

ㅤボディーガードの資格を持つ人間にはライセンスバッチが授けられ、それを彼はスーツに身に付けている。

ㅤつまり、彼は不審者などではなく仕事でここへ来ていると判断するのが妥当。

 

「いや、ここの生徒の親だ。金持ちのワガママだからモンスターペアレントしに来たんだとよ。付き合うこっちの身にもなってほしいもんだ」

 

「なるほど。それではその親御さんは?」

 

「今頃親子水入らずで談笑してるんじゃないか。んで、今こうして話し合いが終わるまで暇してる訳だ」

 

「貴方にとっては気楽でしょうが無関係な人を野放しにしておくとは学園は無警戒ですし一度招いてしまった方を放っておくのも不親切ですね。誰か案内人を付けるべきです」

 

ㅤもちろん監視も含めてだが。

 推測でしかないが護衛を引き離し親子だけの対面にしたのは学園側が暴力での解決を恐れたのだろう。

 

「オレ自身この学園に無関係って訳でもないからな。自由にしてもらった」

 

ㅤ護衛のライセンスを取得するにもかなりの金銭的な額が要求される。それもあってか親が資産家だったりする場合がある。

ㅤ長男のような跡取り以外の兄弟にライセンスを取らせ、縁のある親族に恩を売らせる為に護衛に付かせる。

ㅤ彼もその類だろう。

ㅤこの学園に顔ききが出来るほどだ。国を動かせる神崎家に関係する人間であっても驚きはない。

ㅤ彼の態度を見るに護衛対象とはただの雇用主と労働者と言った関係でもないように見える。

 だが、この推測は何か重大な矛盾があるように思える。

 

「なるほど、図書館へ行くのはその暇潰しですか?」

 

 私はその矛盾を追求するべく会話を進める。

 

「ああ、そんなとこだ。本は嫌いじゃないからな。仕事なんてせずに1日中読んでいたいもんだ」

 

ㅤそこまで行くと嫌いじゃない。と言うより本が好きなんだろうと肌で感じる。

 

「そうですね。私も学校で授業を受けずに本を読み漁っていたいものです。今から図書館へ足を運ぶべきでしょうかね」

 

「オレも不真面目だったから言えた義理じゃないが学生の本分は勉学だぞ。って一応大人だから言っておく」

 

「冗談ですよ。これでも真面目で通っています」

 

ㅤ多分ですけど。

ㅤ龍園くんなどが私を真面目だと聞いたら鼻で笑いそうですね。なんて思った。

 

「お前みたいな賢そうな奴が不真面目だったら世の中を疑うな」

 

「見た目に騙されるのであればもう少し世の中を疑った方が良いですよ」

 

「そうかもしれないな」

 

ㅤ彼は軽く笑い私の冗談を聞き流す。

 

「本好きの貴方にもう一つ」

 

 私はそう言うと「仕方ねぇな」と言った様子で私に質問を許可する。

 

「オススメの本などがあれば私に教えてもらっても構いませんでしょうか」

 

 相手に勧める本の題材。これは教養やセンスを問う。

 相手を見て発言するのか自分の好きなものを押し付けるのか。押し付けるにしても魅力ある本の紹介をしてくれるのか。

 私は彼がどのような回答をするか試した。

 

「英語の勉強は得意か?」

 

 だが、私は質問を質問で返されて試しの儀は破壊された。

 

「……それなりに。ですかね」

 

 私は相手の質問の意図を汲み取れずに眉をしかめる。

 

「なら、自分が好きな小説とかの原文を読むことをオススメする」

 

「なるほど…。それで英語ですか」

 

「オレは自分の感性が他人に褒められるようなもんじゃないからな。ガキに勧められる本なんてのはない」

 

「原文だと日本でよく知られる名言などが違った意味に聞こえる。など耳にしますね」

 

 そう言った意味では自分が読んだ本など1割も理解してないのかもしれない。

 

「お前の頭が良ければ色んな言語で読むと良い。国ごとの解釈違いや言語の歴史が読み取れる。オレは今でも誠意勉強中だ」

 

 つまり、遠回しに学生は勉強しろ。と諭されてしまった。

 自分はまだ学生であり子供だがここまで『こんな自分』を子供として見てくれる大人は久しぶりだった。

 私は相手を試したつもりだったがそもそも相手にされていなかったのだ。

 

「そろそろ行くぜ」

 

 彼は私に興味が失せたのか立ち去ろうとする。

 

「えぇ、貴重な意見ありがとうございました。貴方に合う良い本に巡り会えるよう願っています」

 

「変なガキだな。まあ、自分もそう願っとく」

 

ㅤ彼はそう言い残し立ち去った。

 

 

 

 

ㅤ名も知らぬ彼は本を嫌いじゃないと語っていた。

ㅤ私も本を探すために図書館へと足を運び始めたが歩く方向は同じだったはずだが彼の背中はもう見えず、追い付くはずもなく虚しく1人で歩く。

 

「私と本当の意味で足並みを揃えれる人間なんている訳ないのですけどもね……」

 

ㅤ生徒達のいるエリアを離れた職員室を超えて図書館へ向かう。

ㅤ図書館へとは少し遠回りになるが、橋本くんの情報通りなら、もしかしたら綾小路くんに出会える。と心の中で無意識に働いたからかもしれない。

 

「行くぞ、二階堂(にかいどう)

 

「随分と早かったな。もう少し話込んでても良かったんだがな」

 

ㅤ追い付くはずのないスーツの男性と見覚えのあるもう一人の中年の男性が応接室から出てきたところだった。

ㅤすぐ近くにはDクラスの担任である茶柱先生もいる。

ㅤ彼ら2人はすぐに帰るつもりか立ち去ろうとするが、帰り道は階段がある私の方向へと来る為、嫌でも対面する形となった。

 

「お久しぶりですね。綾小路先生」

 

「坂柳の娘か」

 

ㅤ声を掛けたは良いが、相手は物か何かに話しているかのように冷たい態度で向き合う。

ㅤ彼とは父を通し何度か会ってはいるが、以前にお会いした頃よりも老いることなく眼光が鋭さを増していた。

 

「よう」

 

ㅤ綾小路先生に二階堂と呼ばれていた彼の方は対称的に気さくに挨拶する。

 

「そちらの方はさっきぶりですね」

 

「ああ、あの後すぐに携帯で呼ばれたもんで本には出会いがなかった」

 

ㅤそれはお気の毒に。と返そうとしたが綾小路先生は護衛に対し睨み付ける。

 

「余計なことは言ってないだろうな?」

 

「余計なことってなんだ? 知られて困ることでもあるのか?」

 

ㅤ綾小路先生に対し怯むことなく皮肉を返す。

ㅤこの短いやり取りだけで彼がただの護衛者ではないことが分かる。

 

「確かに。このガキに知られて困ることなど何もなかったな」

 

「そうか。割と色々話したから怒られると思った。よかったよかった」

 

ㅤ今にも殺し合いが始まりそうな雰囲気だったがそれが日常的なのか何事もなく彼らは立ち去ろうとする。

 

「待ってください。綾小路先生に聞きたいことがあります」

 

「私は聞きたいことなどない。つまりこの会話は無駄でしかない」

 

ㅤ相変わらずの唯我独尊。

ㅤだが、引く訳にも行かず強引に話をする。

 

「ならば、質問を聞くだけでも良いです。答えるか答えないかは先生の自由です」

 

「……さっさと話せ」

 

「貴方ほどの者ならば気が付ついているのではないですか? 綾小路くんは確かに誰よりも優秀な人間かもしれません。しかし、リーダーシップを発揮するようなタイプでもありません。貴方の望むこの国を引っ張り上げるような方ではない」

 

ㅤ現にDクラス内では堀北さんの影に隠れている。

ㅤ綾小路くんが表舞台に立つのを嫌がっているのもあるだろうが、彼自身がその器ではないと自覚しているからに他ならない。

 

「確かにな。特定の人間には別かもしれが大勢を魅了するカリスマ性は奴にはない」

 

ㅤ堀北さんは言ってしまえば操り人形。

ㅤしかし、同時に堀北さんなくして綾小路くんの力が発揮出来る訳でもない。

 

「先生の口から、最高傑作に欠陥があるという肯定を聞くとは思いませんでした」

 

「最高傑作が完成されたものとは限らん。そもそも奴に大勢を支配するようなカリスマ性は求めてはいない。どれだけ理想を追求しようが100%のものなど出来るはずもない。力を持つ者同士が結局は欠点を補うものだ」

 

「それはまさかと思いますが……」

 

「これ以上、貴様と話すことはない」

 

ㅤ綾小路先生は無情にも私との会話を打ち切り今度こそ帰路に着く。

 

「じゃあな、おチビちゃん」

 

ㅤもう1人の彼は今までの会話に特に興味もなく退屈しているように見えた。

ㅤだが、明らかに何かが違う違和感の塊。

ㅤ過ぎ去る彼の横顔から見えた冷めきったその(ひとみ)の色はどこまでも深くて黒く(にご)りきった形容しがたい何かが(うごめ)く。

ㅤ綾小路くんとはまた違ったベクトルの色であり、恐らく私が『私』である限り生涯(しょうがい)知ることのない恐怖。

 

 

「お前も色々と大変そうだな」

 

 

ㅤ今まで沈黙を貫いていた茶柱先生が私に近づき話しかける。

距離があった為、聞かれていたどうか分からないが綾小路くんと私の関係を仄めかした会話を聞かれていないことを願うばかりだ。

 

「大変なのは貴女の方じゃありませんか? 茶柱先生」

 

「……そうだな。…そうかもしれない」

 

ㅤいつも毅然(きぜん)とした態度の強い女性のイメージを持つ茶柱先生には似つかわしくないほど覇気が感じらなかった。

 

「私はこれで失礼します」

 

ㅤ誰と何を話しているか分からないが応接室にはまだ綾小路くんが残っている。

ㅤこれ以上の長居は鉢合わせになると考え当初の目的である天球棟へと足を運ぶことにした。

 

「ただ、そこにある現実を受け入れる」

 

ㅤ誰に言うこともなく呟く。

ㅤいずれ彼との決着を付けなければならない。

ㅤでなければ私は前へ進むことが出来ない。

 

ㅤそれが、例えどのような理不尽な結果であったとしても……

 

ㅤそれは現実であり、乗り越えなければならない課題なのだから。

 

 

fin.

 




解説:
ㅤ今回は7巻であった出来事の裏であったこと。的な内容で書かせてもらいました(語彙力皆無
2020/1/10更新の暁の護衛〜偽りの偶像世界〜(タイトル仮)のプロローグを追加しましたが短編2話に移動。

ㅤ衣笠先生の過去のノベルゲーム作品

ㅤ著者:衣笠省吾
ㅤイラスト:トモセシュンサク
ㅤ「暁の護衛」
ㅤ「レミニセンス」

ㅤ現在、MF文庫で衣笠先生が執筆連載中の作品

ㅤ著者:衣笠省吾
ㅤイラスト:トモセシュンサク
ㅤ「ようこそ実力至上主義の教室へ」

ㅤ上記3つの作品内容を掛け合わせました。
(元々「暁の護衛」と「レミニセンス」は設定上で繋がっています。トモセシュンサク先生の書き下ろしで「よう実」と「レミニセンス」のコラボイラストが出ているので探して見ると良いかもしれません)
ㅤそのイラストは一之瀬帆波、堀北鈴音、島津秋、キズナの4人がいます。

ㅤ衣笠先生の作品は主人公やその他キャラクターの置かれている立場はどれも違えど資本主義と社会主義。それと格差社会についてを語っているように感じますね。


ㅤ内容の説明:

ㅤまあ、正直、レミニンスと暁の護衛やってない人にはちんぷんかんぷんな内容で申し訳ないと思ってます(反省はしてない
ㅤ基本的に坂柳ちゃんメインの内容。

ㅤ時間軸はよう実の世界が「暁の護衛・罪深き終末論」から数年後を想定しています。
ㅤ基本的にレミニンスへ繋がる為の内容です。
ㅤ今回の話では朝霧海斗(二階堂海斗)は綾小路パパの護衛と言う形ですが、実は護衛がメインではなく二階堂からの監視も兼ねている護衛です。
ㅤ綾小路パパもそれを分かった上で海斗を側付きにしています。
ㅤ二階堂源蔵(麗華のパパ)は五十嵐が起こした禁止区域の一件から日本社会の仕組みに疑問を持つようになった。と言う設定にしています。
ㅤ二階堂も綾小路パパも日本社会の変革を求めておりそこは利害が一致しています。なので綾小路パパと二階堂源蔵は将来的に変革組織を立ち上げる準備をしているのですが、そのリーダーになる人物を探していてその行程としてホワイトルームがあります。
ㅤ綾小路パパと二階堂は最終的に変革組織のリーダーを海斗にし、その海斗の知識不足を埋めることや補助役のサブリーダーとして清隆を起用するつもりでいた。

ㅤと言うifのお話ですね。

ㅤもちろんレミニンスではそれが失敗して世界は破滅へと進むことが決定してますが()

ㅤ次のお話は7.5巻を飛ばして8巻の裏話をしたいと思います。(7.5巻は完成されすぎてて書きたい内容なかった)
ㅤ堀北と一之瀬が中心の話になるかな思います。
ㅤ残念ですが、暁の護衛絡みの話は今回で完結しているので今後一切ありません。
ㅤそれではまた次回で。


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