【【CLOCK UP】】
私たちがギアを纏って、フィーネと向かい合った瞬間、響と蠍みたいな鎧の戦士は同じ電子音を残してその場から消えた。正確には超高速で動いているだけなのだけど。
私たちも翼さんと奏さんを前衛に、私とクリスを後衛としてフィーネへと攻撃を仕掛ける。
「全部持ってけ!」
クリスが開幕早々、大量の小型ミサイルを放つ。だけど、それはフィーネの振るった鞭と蜻蛉のような銃を持った鎧の戦士によって全て落とされた。でも……!
「はあぁぁぁ!!」
「そらよっ!」
落とした時に発生した爆煙を目眩ましに翼さんと奏さんが突っ込む。翼さんの連続した斬擊を短く持った鞭を剣のようにして捌き、奏さんの刺突は鞭を格子状に展開してバリアを作って防いだ。その隙間に私がビームを放つけど、軽く体を捻っただけで避けられてしまった。
「……想定の範囲内だな。ドレイク、貴様はサソードと共にカブトを始末しろ」
【CLOCK UP】
銃の方がドレイクで、剣の方がサソードって名前かな?覚えたよ。それにしても想定の範囲内って……。私たちを舐めないで!
「まだだっ!もっかい行くぞ、翼!」
「ええ!」
「クリス、行くよ」
「ああ!」
先ほどと同じ様に翼さんと奏さんがフィーネへ接近。フィーネに攻撃の隙を与えないように連続で畳み掛けていく。その間に私はミラービットとアームドギアの鏡を連結して大きくし、エネルギーをチャージしていく。クリスは背中に二発の大型ミサイルを背負う。
「「いっけぇぇぇぇぇ!!!」」
そして同時にビームを、ミサイルを放った。狙いはフィーネ……の後ろのカ・ディンギル!翼さんと奏さんは左右に別れてフィーネの逃げ道を塞ぐ。当たれば大勝利、防がれてもフィーネは疲労する。最善の一手だと思う。
「チッ!させん!」
フィーネは伸ばした鞭でミサイルを掴み、軌道を無理矢理動かして私の放ったビームにぶつける。そこで大爆発が起きて、フィーネも含めて私たち全員がその場から吹き飛ばされる。
「くっ……もう一発はどこだ!」
そうだ、クリスの用意していたのは二発。でも発射したのは一発。じゃあ残りの一発は?それにクリスもいないし。
「 Gatrandis babel ziggurat edenal 」
クリスを探して周囲を見回すと、空からクリスの歌が聞こえてきた。この歌は、まさか……。
――――――――――――――――――――――
一方。クロックアップして超高速の世界に入っていた響。サソードと何度も刃を交えていると、だんだんと一つの感情が響の心を埋め尽くしていった。その感情の名前は
響はカブトの正規適合者である天道総司に凄く憧れている。日々、天道総司に近づけるように研鑽を積んでいる。もちろん、性別の違い等から完全に同じことが出来るとは思っていない。何しろ、人は他人にはなれないのだから。だから響は自分なりの『天の道』を往こうとしている。憧れからきたその『心』は、『信念』は、本物だ。
しかし、このサソードとドレイクはどうだ。確かに装備を見事に使いこなし、戦闘能力もある。状況的不利だったとは言え、一度は響を下している。だが、それだけだ。自分に対する絶対的な自信を持ち、『貴族として姉の仇でもあるワームを狩り庶民を守る』。女性にしか興味のない、女性の味方『花から花へと渡る風』。このような彼らの『信念』が欠片も感じられない。ただ、ライダーとしてのサソードとドレイクの皮だけを被った偽物だ。それは響にとって、『仮面ライダーカブト』という作品を侮辱する事と、響の憧れた天道総司を侮辱する事と同じだ。
故に。
【RIDER SLASH】
【RIDER SHOOTING】
放たれたサソードとドレイクの必殺技。先ほど響が変身解除に追い込まれたそれを、
【RIDER KICK】
絶妙なタイミングで、僅かに先行していたライダーシューティングをサソードに向けて蹴り返した。そしてライダースラッシュとぶつかり合い大爆発。
【CLOCK OVER】
そしてクロックアップが終了する。奇しくもそれは、未来たちとフィーネの所でミサイルとビームが衝突したのと同じタイミングだった。
ライダーキックの威力が乗ったライダーシューティングを受けたサソードは変身が解除されて、ヤイバーが地面に刺さり、ゼクターもその横に落ちていた。変身者とみられる者は燃え、炭と化していて誰かは判別出来なかった。
「 Gatrandis babel ziggurat edenal 」
残りはドレイクとフィーネ。未来たちでは対処の難しいドレイクを倒そうとしたとき、クリスの歌が戦場に響いた。
「この歌は……」
――――――――――――――――――――――
「 Gatrandis babel ziggurat edenal 」
フィーネの思い通りにはさせない。アタシと小日向の一撃が止められた以上、カ・ディンギルの発射に次の攻撃は間に合わない。だから、アタシは唄う。
「 Emustolronzen fine el baral zizzl 」
あいつらには怒られんだろうな。でも、アタシしか空高くまで上がれるのはいない。
「 Gatrandis babel ziggurat edenal 」
いつだったか響が言っていたな。『私が望めば、運命は絶えず私に味方する』って。だからさ、アタシに力を貸してくれよ。フィーネを止める力を。
「 Emustolronzen fine el zizzl 」
そんで………パパ、ママ。アタシは引き継ぐよ。パパとママの『歌で世界を平和にする』って夢を。その為にまずは!
――――――――――――――――――――――
「一点収束!?押し留めているだとぉ!?」
クリスの絶唱はカ・ディンギルから放たれた月を穿つ砲撃を押し留めている。響はまだ戦闘を続けているけど、私を含めたその他の皆はクリスとカ・ディンギルの衝突の行方を見守っている。
次第にクリスの絶唱がカ・ディンギルに呑み込まれていく。
「負けないで、クリス……」
そう祈るけど、残念ながら通じなかった。クリスも呑み込まれ、カ・ディンギルの一撃は月へと届く。だけど、クリスのお陰で逸れたようでごく一部が欠けただけだった。
そして、空から落ちてくる一筋の光。ここからじゃよく見えないけどわかる。あれはクリスだ。下の森林へと落ちて、激しく土煙が舞い上がる。いくらシンフォギアを纏っているといってもあれじゃあ………。それを見て私の足から力が抜けて座り込んだ。せっかく響に出来た友達なのに……。
「バカ野郎……お前は自分の本当の夢を見つけたばかりなんだろうが……」
ドックンッ
「その身を犠牲に月を守ったか。無駄な事を」
無駄?クリスの尽力を無駄?
ドックンッ
「無駄、だと!?」
「ふざけるな!」
「見た夢を叶えられずして散ったのだ。そんな愚図を笑って何が悪い」
ドックンッ
「嗤ったか……?命を燃やして大切なものを守り抜いた事を。お前は無駄とせせら笑ったか!」
「フィーネ、やっぱりてめぇだけは……」
………さない。
「フィーネェェェェ!!!!」
絶対に許さない!クリスを、私と響の友達を馬鹿にするなんて!
――――――――――――――――――――――
「小日向!?」
一体何が起きているのだ?小日向が叫んだと思えば、その身が黒く塗り潰されて暴れだした。まるで獣のように。
「小日向未来の使っている神獣鏡はシンフォギアのプロトタイプ。故にその性能はダントツで低いが、シンフォギア自体にかけられているロックの数も少ない」
「何を言ってる!貴様は小日向のこの状態を知っているのか!」
「簡単に言えば聖遺物の暴走だ。……おっと。小日向未来の気持ち……この場合は怒りか?それに神獣鏡が共鳴してギアの出力が引き上げられているのであろう。だが、先ほど言った通りロックの数が少ない故、制御しきれず暴走と言ったところだ。……プロトタイプとは言えここまで力を引き出すとは、実に興味深い」
暴走した小日向の攻撃に晒されながらも、フィーネは軽くあしらいながら説明する。
「奏、小日向を……」
「ああ、止めないと不味い気がする」
「させるものか!」
奏と一緒に小日向を止める為に駆け出そうとすると、フィーネがソロモンの杖を取り出して大型ノイズを複数体呼び出した。フィーネ、貴様というものは!
「未来は私に任せろ」
【ONE TWO THREE】
「ライダー……キック」
【RIDER KICK】
急ぎ、ノイズを倒していこうとした私たちの耳に声が聞こえた。私たちの後輩で、リディアンの料理担当で、何よりも小日向の親友の声が。そしてその声と同時に飛んできた何か――フィーネと共にいた銃の戦士――がノイズにぶつかり、その上に現れた彼女の蹴りでノイズ諸とも爆発した。
「任せていいんだな?」
「ああ」
「ならば私たちがフィーネを止める。行くよ、奏!」
立花に小日向を任せ、私たちはフィーネへと駆け出した。