目指すは忍ぶ忍者   作:pナッツ

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最終話:まだ見ぬ明日が続く未来

──口寄せの術!!!

 

 突如として忍界大戦の爪痕残るクレーターに巨大な術式が展開され、複数のボフンという効果音が響き複数の人影が異世界から呼び戻される。

 

「あ゛ぁ~~~っ!! ……ってあれ、ここってば……?」

 

 何やら叫びながら召喚されたうずまきナルトだが自、身が見ていた景色が一変したことで状況を確認するために慌てて周囲を見渡す。

 

 するとクレーターに展開された術式の円の外周に沿うように、穢土転生体の歴代火影たちと魂だけ呼び出された各隠れ里の歴代の影たちが地面に手を着いている様子が見て取れた。

 

 そんな彼らの姿の中からナルトは自身によく似た金髪の人影にカグヤとの死闘を経た緊張感を和らげる。

 

「父ちゃんっ! まさか父ちゃんたちが俺たちを……っ!」

 

「お帰り……ナルト、よく頑張ったね」

 

 ナルトの様子にミナトもまた安心感を示すかのように柔らかな笑顔を浮かべていた。

 

 そんな再び父とまみえることが出来たことにナルトだが、ふとナルトは何かに気がついたように周囲を再度見回した。

 

 それと同時にナルトと同じく帰還を果たして自身らが口寄せの術でカグヤの異世界から呼び戻されたことを把握していたサスケも、何かに気がついたのか周囲を気にする様子を見せていた。

 

「どうかしたの……サスケ君?」

 

 激闘を経て身なりもボロボロになっている春野サクラはそんなサスケの僅かな様子の変化に気がつき心配そうに声をかけると

 

「…………いや、今……気にすることではないようだ」

 

 サクラからの言葉にそうサスケは素っ気なく返事をし、話を進めるためか宙に浮かんでいる六道仙人・ハゴロモへと目線を向けた。 そんなサスケの動きに釣られ、サクラとはたけカカシもまた六道仙人を視界に捉えると眉をひそめた。

 

 周囲の歴代の影たちよりもより珍妙な姿の人物が胡坐をかいて宙に浮いているのだ、しかし

 

「カカシ先生……私、余りにも激動の連続でちょっとやそっとのことで驚かなくなったみたいです……」

 

「サクラ…………俺もだよ」

 

 平時であればツッコミや驚きの1つでも上げているであろう2人だが既にそんな体力もないサクラらは一応()()が周囲の仲間にも見えていることを確認するだけに留める。

 

 然しものカカシも大戦を戦い抜いた戦闘の疲れが押し寄せたのかとびきり大きなため息をつきつつも、その手に持っていた戦闘で使用したであろう折れたチャクラ刀を簡易的に背に掛けた鞘へと戻して肩の力を抜く。

 

 すると宙に浮くハゴロモはそんな彼らを満足気に一瞥すると、落ち着いた声で感謝の言葉を述べ始めた。

 

「良くぞ生きて戻って来たな。 見てわかる通りお前たちを呼び戻すために、浄土から呼び寄せた歴代の五影の皆で口寄せの術をしたのだ。 ……ナルト、サスケ、サクラにカカシよ(みな)……よくぞ世界を救ってくれた」

 

 そんなハゴロモからの言葉に、サスケやサクラ、カカシが自分たちが成し遂げたことの実感を得て思い思いの反応を示す。

 

 先程まで現実離れしたカグヤとの戦闘が夢ではなく、その戦いに勝利したのであると。

 

 しかしそんな中でナルトは相変わらず周囲を気にする様子を見せ続けていた。

 

「ナルトよ……」

 

 脅威は全て去ったと理解しているハゴロモがそんなナルトの名を呼ぶと、ナルトは自身の中の疑問を確認するためにハゴロモへと目を向ける。

 

「六道の大じいちゃん……ちょっち聞きてーことがあんだけど……」

 

 ナルトは未だ不安そうな表情のまま、彼が納得の行っていない様子である()()()事情を知っているであろうハゴロモへと問いかけようとしたが、しかし

 

「ナルト、()()()()は今は黙っていろ」

 

 そんなナルトに対して、サスケは咄嗟に彼の肩を掴みその発言を止めさせた。

 

「っ…………分かったってばよ」

 

 サスケの行動にナルトが何でだと喰いかかろうとするも先ほどのサクラとカカシのように認識を共有させたように、つまりナルトの感じる()()をサスケも分かっている素振りを見せたということの意味は……ナルトの中でその疑問を解消させるのには充分すぎる情報量であった。

 

「……?」

 

 サクラとカカシがそんな2人のやり取りに疑問符を浮かべるが、二人のやり取りを見たハゴロモはサスケの意思を汲んでか話題を変えるために目線をカカシへ向け言葉を投げかけた。

 

「お前がはたけカカシだな……よくぞ己が父を越え、その意志を引き継ぎ……皆を導いた。 忍びの祖と謳われたワシが言うのもあれだが、我が母を封印するに至ったお前の功績は正に神の御業よのう」

 

 突然のハゴロモからの言葉にカカシは、ナルトとの会話からも推測しその人物が『六道仙人』であることを理解し少し姿勢を正しながらも返事をする。

 

「えっと……いえ、私はほとんど何もして……いや、そうじゃないな。 ……はい、皆が居たからこそこの結果に至ることが出来たのだと思います。 当然俺一人の貢献なんて微々たるものですが……そんな微々たる俺を支えてくれる、支えてくれた仲間の存在は欠かせないものでした」

 

 カカシはハゴロモからの労う言葉に、謙虚にしつつもその功績に関わった全ての存在に感謝の意志を表明した。

 

 自分たちだけでなく、連合の忍び……尾獣……多くの存在の繋がりが無ければ忍界は崩壊していたことは間違いないのだから。

 

 そんなやり取りをしている傍で、サスケに発言を止められたナルトは彼の考えを汲み取った後、表情を明るくして見せて傍に並び立っていた尾獣たちに手を振り声をかける。

 

「おーいっ!! 皆ァ!! 九喇嘛ァ!! 無事でよかったってばよ~~~っ!!」

 

 大声で叫び無邪気に九喇嘛の前足の指に飛びつくナルトに九喇嘛は照れ隠しで叫ぶ。 

 

「でけー声ですり寄ってくんじゃねぇっ!! ワシの半分はそっちに入ってんだからいちいちくっつくなァっ!!」

 

 溢れんばかりのうれしそうな声と照れ隠しに大きくなる声がクレーターに木霊する。

 

 そんな鬱陶しそうに前足を軽く振りながらナルトを引きはがそうとする九喇嘛に、彼らを眺め微笑ましく笑みを浮かべる尾獣たち。

 

 一部の尾獣からからかわれる九喇嘛が威嚇するように歯茎を向きだすも、そこから感じられる覇気には復讐の権化たる彼の威光など微塵も感じられはしなかった。

 

 そんな和気あいあいと先ほどまで彼らが成していた死闘を忘れさせる雰囲気になりつつも、その疲れは現実のものであり限界を迎えたようにカカシは大きくふらつきサクラに支えられる。

 

「っ! 大丈夫ですかカカシ先生!? 突然ボーとしてっ……」

 

「っ……ああ、サクラすまない。 ちょっと友人と()()()()()()()ところだ」

 

 元七班の中でも、一番疲労困憊の様子のカカシはその瞳を既に扱うことが出来ないハズの写輪眼から彼本来のモノへと変化させつつ笑みを浮かべて見せた。

 

 カカシの様子にサクラも何かを感じたのか意図を汲んだかのように口を閉じる。

 

 サクラに支えられながらもカカシは地面へと腰かけ、明るくなりかけている東の空に目線を向け……新たな決意を胸に抱いた。

 

(ありがとうオビト……お前が、昔のお前を取り戻してくれたことで……俺はこの先も光を見失わずに済みそうだ。 もう心配する必要はない……リンと2人で……暫く待っててくれ。 俺はもう少し……皆とこの世界を良くしていけるよう頑張ってみるよ)

 

 瞳に僅かな涙を浮かべ……カカシは明け方の空を眩しそうに眺めていた。

 

 

 そして

 

 

 

 

 

 

 

「柱間……か」

 

「……うむ」

 

 

 彼らから少し離れた位置で横たわる、うちはマダラと千手柱間が静かに言葉を交わす。

 

 カグヤに取り込まれていたマダラもまた口寄せで異世界より戻ってきており……十尾の人柱力となったその力の源が既に内にない状態で口を動かすのもやっとの様子であった

 

「お前も俺も……結局望みを叶えることは……出来ないものだな」

 

 そんな自嘲気味な乾いた笑みを薄っすらと浮かべるマダラ。 彼の夢の到達点は自分が他者に強いたように、利用されて終わるという幕切れでありそのことを一番みじめに感じているのもマダラ自身である。

 

 柱間はそんな彼の傍に胡坐衣をかいて座り込む。

 

「当然だ、俺たちが一生に出来ることなどしれている。 だからこそ、託していかねばならぬのだ。 それなのに全く……お前と言う奴は……」

 

「ふっ……相変わらず……だな柱間。 相変わらずだが……その考え……は楽観的なだけでは……案外……ないのかもな」

 

「……世に絶対などない、だがなマダラ。 己1人で行くのではなく、後ろをついて行く者を育てることこそ……未来を作る方法だと俺は思うぞ。 お前にもそういう選択肢があったはずであるのに……」

 

「……俺には無理だ。 昔から後ろに立たれるのは嫌い……だったから……な」

 

「呆れた奴め……なら、傍に立つのなら良いだろう。 今や、お前も……俺ももう互いに死ぬのだ……ただの友として……共に居ようぞ」

 

「……フフ、友か……そう……それ……ならな。 共に……夢……」

 

 十尾の人柱力と成り、その十尾が消えた今マダラのその命の灯は消え去る。

 

 傍で最後までそんな彼を友として扱い、看取った柱間は静かにマダラの顔を見て顔を伏せていた。

 

 穢土転生体は涙を流しはしない。 柱間もまた涙を流す姿など見せる男ではない。

 

 だが確かに、その背にはただ友との別れを悲しみ涙する1人の男のものであった。

 

 

 

 

「……友」

 

 そんな2人のやり取りを遠目で見ていたサスケは思うところがあるのか小さく呟く。

 

 するとハゴロモが

 

「それでは皆の衆……全ての穢土転生の解術を今からワシが行う。 ……最後の言葉を交わすと良い」

 

 そう言い……ゆっくりと印を結び始めた。

 

 

 

 ハゴロモの言葉にナルトはハッとし、じゃれていた九喇嘛から離れ尾獣たちから見送られながら……父、ミナトの元へと急いで駆け寄る。

 

 傍に駆け寄ってきたナルトに対して、ミナトは陽のように優しい笑顔を、父としての顔を見せ迎える。

 

「父ちゃん!……俺ッ」

 

 どうにか話を切り出そうとするナルトだが、慌てる彼に対してミナトはゆっくりと落ち着かせるように、この時間を噛みしめるように口を開く。

 

「ナルト……君に言わないといけないことは山ほどあるが……そうだね、まずは

 

 

 

──誕生日、おめでとう」

 

 

 

 ミナトの言葉と共にゆっくりと朝日が顔を出し、まるで祝福するかのように親子を照らす。 親であるミナトから、生まれて初めての誕生日の祝いの言葉をかけられ……ナルトは……

 

「うん……サンキュー……」

 

 寂しさを隠すように、表情を引き締めていた。 内にうずまく感情に大げさなナルト自身も、その表現の仕方を分からないでいた。

 

「……俺たちは外法の存在だ、何時までも穢土にはいられない。 だからこそ……親である俺から……もう1つお前にこの言葉を送らせてくれ

 

 

──生まれて来てくれてありがとう」

 

「ッ゛……!」

 

 ミナトからのその言葉にナルトの感情は螺旋の如くあふれ出そうになる、

 

 母クシナのチャクラとの邂逅を果たしたときにも言われた()()()()に……ナルトはついに我慢が出来ずに顔をクシャクシャにしつつも、涙だけは零さないように咄嗟に上を向く。

 

「俺ばかりこうやって言葉を伝えてクシナに悪いかな……でも土産に……ナルトの事色々伝えておくよ」

 

 ミナトのその言葉の意味を理解したナルトはあふれ出る感情と言葉を抑えようと、嗚咽を交えながらもなんとか言葉を紡ぎ始める。 

 

「っ! そうだ、父ちゃんっ! 俺ってばちゃんと好き嫌いせずにメシ食ってるから安心してくれっ! もちろんラーメンばっかじゃねーよ、友達のおかげで色々なメシが上手いって知れて……以外かもしんねぇけどtちゃんと自分でメシも作ってってし……それからそれから……めんどーだけど身だしなみも気を付けて風呂もほぼ毎日入ってるし、エロ仙人と修行した銭湯にもたまに行ってんだっ! 皆にはカラスのギョウズイとかなんとか言われてっけどっ!!」

 

 ミナトの身体の変化を見て、長くない時間を悟り……ナルトからあふれ出る言葉と涙。

 

「えっとえっと……まだまだ言いてぇーことがあんだけど……勉強とか上手くいかなくても教えてくれる奴がいたし……カカシ先生やイルカ先生……三代目の言うこともちゃんと聞いてたぞ!! 俺ってば皆のこと心から尊敬してんだっ!! んでんで、忍びの三禁ってやつは母ちゃんにエロ仙人と一緒に気をつけろって言われたっけか……エロ仙人は三禁についてダメダメっぽいけど、それでも師匠としても……名前をくれたことについても感謝してるんだってばよっ!! 帰ったら、気をつけながらそこんところエロ仙人に聞かねーとなっ!!

 

 

 とにかく……かーちゃんの言いつけ全部を上手くできてるわけじゃねーけど……

 

 

 最っ高の友達がいっぱいいるんだっ!!」

 

 感情の渦を、言葉として吐き出す中……ナルトの言葉にミナトは

 

「ああ、知ってる……お前の友達は……最高だよ」

 

 ……少しだけ悲しそうな顔を見せた。

 

「っ……やっぱ……いやっ!! そんで夢だってちゃんとあるんだっ!! 父ちゃんたちを超す火影になる!! ぜってーなるからよっ!!!」

 

 既に穢土転生体たちのその姿は魂だけで体は塵となり……朧気に漂っていた。

 

 まだまだ、まだまだ……言いたいことは山の如く、川が溢れるが如くある。 それでもナルトはついに涙地面にボロボロと零しながらも……最後の言葉を精一杯選び伝える。

 

「あっちで母ちゃんにも伝えてくれ……俺のこと心配しなくても全然大丈夫って……そんで

 

 

 父ちゃん、母ちゃん……俺を産んでくれてくれて……俺を、皆と……合わせてくれてぇ……

 

 

──あ、ありがとうっ……う゛ぅ……ッ」

 

 見送る父に情けない姿を見せたくないと思いつつも……溢れる涙はもはや止まらことを知らず、ナルトは肩をすくめつつも必死に拳を握り父を見据える。

 

『全部全部……クシナに伝えておくよ……ありがとう…………ナルト』

 

 ミナトからの優しい声色の声に……ナルトは最後に目を大きく開けその魂が天に昇って行く様を見つめ大きく手を振る。 涙も鼻水も、洪水のように垂れながらも……それでも両手で大きく、ひたすらに。

 

 天へと昇っていく穢土の者たちの魂たち……その中からサスケは志村ダンゾウへ目を向けた。

 

 言葉を交わすことがなくとも、戦争の途中からダンゾウは己の意志でマダラたちと戦っていたことをサスケは知っている。 兄の最大の仇と言えるダンゾウに対し、サスケは……ほんの少しだけ軽く会釈をして背を向けた。

 

 サスケの行動にダンゾウは大きく目を見開きつつ、隣にいる猿飛ヒルゼンに砕けた口調で語りかける。

 

 

『……ヒルゼン』

 

『……どうした、ダンゾウ』

 

 天に昇りつつサスケの背に目線を送るダンゾウに、ヒルゼンは彼の胸中を察した。

 

『俺は…………間違っていたんだな』

 

『何を今更……だがそう言うならワシら……いや()()()()()()()()()()、だろう?』

 

『……ヒルゼン』

 

 ヒルゼンもまた昔の口調でダンゾウへと語りかける。 

 

『生きているうちに友として……話すことは出来なかったが……あちらで存分に語ろうじゃないか』

 

『……ああ』

 

 

 そして全ての穢土転生体の火影たちは……その魂が穢土から消えたことで、その体を構成していた塵芥からゼツがはい出し……その体を樹木へと変えた。

 

 

 ……周囲が明るく陽に照らされ始めたところ、尾獣たちは思い思いに今後の事を語り合う。

 

 自然に戻る者、故郷へ戻る者、そして……離れた相棒の元へ戻る意思を示すもの。

 

「守鶴、オメェーが素直に人柱力の元に戻ることを選ぶとはな」

 

 守鶴のひょんな宣言に驚きを露わにする尾獣たち。 彼を知りものならそのプライドの高さから、その選択をすることの重さが感じ取ることが出来る。

 

 そんな言葉に驚きを露わにし思わず思っていたことを口にした牛鬼に対して守鶴は、照れ隠しのようにその鋭い視線を向けた。

 

「黙ってろ牛鬼ィ……っ! 早く我愛羅んとこに戻ってやんねーとアイツがおっちんじまうから仕方なくだな──」

 

「ケッこれだから狸は、何かと理由をつけてうだうだと……」

 

「うっせーぞォクソ狐がっ!! 陰陽分かれてまで人柱力と繋がってるてめぇと大差ねぇーだろーがよォっ!!」

 

 がやがやと言い合う彼らの様子を眺めるハゴロモはそんな自然体である昔と変わらない尾獣たちの様子に笑みを浮かべた。

 

「なに、皆のチャクラを持つナルトを介せば……いつでも繋がり意思疎通ができるはずだ。 九喇嘛よ、寄り合い所の管理役としてナルトの中にこれからも居てやってくれないか」

 

「……ま、じじいがそう言うならしかたねーけどな」

 

 ハゴロモからの言葉にすんなりしたがい、いそいそとナルトの中に戻ろうとする九喇嘛。 その様子に守鶴が口から小さく風遁を飛ばして吠える。

 

「てめぇも何かと理由づけてんじゃねぇかっ!! じじいからの言葉だからって素直に聞きやがってっ!!!」

 

「ッ黙ってろクソ狸っ!!!」

 

 中指を立て罵り合うそんな彼らの様子を見て、父との別れを済ませたナルトは落ち着き涙を拭き、笑顔を見せる。 

 

 ナルトが落ち着いたことでハゴロモはサスケとナルトを視界に入れてかねてからの思いを口にする。

 

「ナルトとサスケよ……我が母との戦いを経て……己の出した答えに変化はあったか……?」

 

 ハゴロモはナルトとサスケに問いかける。 その言葉の意味についてサクラもカカシも何のことかわからずに仕方なく聞く立場に甘んじる。 そしてナルトとサスケ、2人は真剣な表情を浮かべ

 

「答えは変わんねーよ、大じいちゃん」

 

「……俺もだ」

 

 はっきりとそう述べた。

 

 その返答に……ハゴロモは知っていたかのような表情で目を閉じ

 

「そうか」

 

 一言呟いた。 そして仕切り直すかのようにハゴロモはこの先するべきことの確認をし始める。

 

「さて……では残るは無限月読の解術のみだな。 ナルト、サスケよ……後は尾獣全てのチャクラを持ち、輪廻眼を有するお前たちが互いに子の印を結びさすれば術は完全に解ける。 ……それで最後だ」

 

 そうハゴロモが述べると、サスケは彼らに背を向けおもむろに歩き始めた。

 

「サスケ君……?」

 

 サスケの行動を不審に思ったサクラは彼の名を呼び、カカシもそのことに気がつくが…… 

 

 その彼の背に続くようにナルトも歩き始めていた。

 

「……どうした、2人とも……無限月読の解術は……っ」

 

 すぐにでも解術が行われるとふんでいたカカシが困惑する中、ナルトが振り向き……サムズアップをして見せる。

 

「……まだやることと……確かめたいことがあんだ、カカシ先生。 少し時間がかかるっけどもちゃんと全部やっから……2人はゆっくりここで待っててくれねぇーかな」

 

 そう言って見せたナルトは目線をハゴロモへと移す。

 

「大じいちゃんも。 兄弟げんか……終わらせてくっから安心してくれ」

 

 ナルトからのその言葉にハゴロモは…… 

 

「ああ、親であったワシからは……もはや何も言えぬ……もうじき消えゆくが、それでも不思議と……安心感を覚えている己がいる。 2人とも……どうなろうとも……達者でな」

 

 そういい彼らを見送る。

 

 彼らの行く末がどうなるか……ハゴロモには分からない。 例え……幾多の輪廻の記憶の一部を持とうとも……ここにいる2人はそのどの記憶からも大きく違っているのだから。

 

 訳も分からずにこの場から去ろうとするサスケとナルトにサクラは

 

「ねぇっ!  ちょっと……置いてかないでよ……何かわけがあるならちゃんと……っ!」

 

 2人が止まらいことを心で理解しつつも……なんとか声をかけ駆け寄ろうとする。 すると

 

 

「……サクラ。 待っていてくれ……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 サスケは……優しい表情を浮かべそうサクラへと語りかけ

 

 写輪眼による幻術で彼女を眠らせた。 勢いそのままで倒れそうになるサクラの身体をサスケが支え地面に座っているカカシのすぐ傍に寝かせる。 そのカカシにはもはやナルト達を追いかける体力は残ってはいないため、彼らを信じ……黙って見送る。

 

 一連のサスケの行動にナルトが思わず口を開きそうになるが

 

「……サスケお前──」

 

「黙ってろナルト。 それよりも、お前は尾獣たちは連れて行く気はないのか? 俺は別に構わないぞ」

 

 問いかけに応える気はないと背を向けサスケは話を進めようとする。

 

「……ああ、皆を巻き込むのは──」

 

「オイ、ナルト……ワシはお前の中に戻るぞ。 じじいに言われたんだ、問題ないだろうサスケ?」

 

 九喇嘛は何となくこの先の2人の行動の意図を汲み取り……ナルトについて行くことを宣言する。 

 

「ああ、構わないといったはずだ……さっさと行くぞ」

 

 九喇嘛の同行を許したサスケは時間を惜しむが如く、その場から駆けだした。

 

 そして九喇嘛とナルトが拳を合わせることで、九喇嘛は煙を上げ姿を消し……彼もまたサスケの後を追い姿を消す。

 

 残されたカカシとハゴロモは互いに言葉を交わす。

 

「2人のやり取りを見て……何となくだけど分かりましたよハゴロモ様。 初代様とマダラ、三代目とダンゾウ、そして俺とオビトのように……アイツらにはアイツらだけの繋がりがある。 きっとそれを今から確認しに行くのですね……」

 

「うむ……この先の出来事は彼らにとっても重要な事であり……世界にとっても行く先を決める分岐点ともなるだろう。 ワシは個人的にはナルトの考えに賛同を示すがしかし……今のサスケの考えを否定することもできぬ。 あとは……彼ら自身が決着をつけるしかあるまい」

 

 

 

 

~~~~~~

 

 

 ハゴロモやカカシのいる場所から離れた位置、そこには……一際地形が大きく歪んだ場所があった。

 

 地面が隆起し、岩が転がり地面が剥がされたように裏がっている。

 

 そして……一際目を引く、はるかに巨大なクレーターのその縁でナルトとサスケは言葉を交わす。

 

「……滅茶苦茶に、スゴイ自然エネルギーを感じるってばよ……段々薄れてってるけど、こっちに戻って来て直ぐに気がつくほどに……」

 

「……俺の眼を通して見ずとも……異様なチャクラのぶつかり合いがあったのは明白だ」

 

 2人の視線は、自然とクレーターの中央にそびえる大樹に向けられていた。 異質な雰囲気を醸し出す場違いな大樹はクレーターの中心で悠然と立ちその葉を風に揺らしていた。

 

「…………父ちゃんたちは、ここで何があったか知ってたはずだよな」

 

「当然だ、俺たちがカグヤと戦う以前にこんな痕跡などなかった。 世界が無限月読に堕ちているいま、穢土転生されていた火影たちと六道仙人がここまでの事に気がつかないはずがない」

 

 何があったのか、どんな戦闘が繰り広げられたのか。 卓越した忍びとなった2人には、その現場に立つことで容易にその内容を推察することが出来た。

 

 

 

 

 

「悟か……」「悟だな」

 

 

 

 

 

 同時に一人の名を呼ぶ。

 

「ここには何故かマダラのチャクラも感じるし……悟の奴のチャクラも感じる。 何がどうなってこうなったかなんて全然わかんねーけどよ……悟の存在は近くに感知できねーんだ」

 

「……」

 

「なあ、サスケ……」

 

「ナルト、御託はいい……もう確認は取れた」

 

 サスケは何か言いたげなナルトの言葉を遮ると、その場から背を向け立ち去ろうとする。

 

「オイ! サスケ……」

 

「……これからどこに向かうかは……言わずともわかるだろ」

 

 その言葉を残してサスケはナルトを1人にしてその場から姿を消した。

 

 残されたナルトは再度大樹へと目を向ける。 仙人の修行を経たナルトだからこそ、何となく感じられる感覚がある。

 

 あの大樹は普通ではないことを。 まるで……

 

「……ッ」

 

 ナルトは口を歪ませ、拳を握る。

 

 

(オイ、ナルト……何時までもそうしてるわけにはいかないぞ)

 

 心配そうに、しかし背を押すような言葉を投げかける九喇嘛の言葉にナルトはハッとしたように頭を挙げその顔をごしごしと袖で拭く。

 

「ワリィ九喇嘛……そんじゃ……行くか」

 

 名残惜しそうに……大樹を一瞥したナルトもまた、その場から姿を消すのであった。

 

 

~~~~~~

 

 

 滝から水が落ちる音が大きく響く峡谷、そこに立つ2つの巨大な像の片方の頭上にサスケは目を閉じ立っていた。

 

 すると遅れてナルトが反対側の像の上へと降り立ちサスケが瞳を開ける。

 

「やっぱここかよ、懐かしいな……サスケ。 昔ここでやり合ったな……そういやよ」

 

 感慨深そうに周囲を見渡すナルト。 サスケは遠くを見るような表情のまま口を開く。

 

「あの時とは……俺も、そしてお前も違う。 今は互いにそれぞれ答えを持ち、それを成しえることが出来る力も……互いの掌の内だ」

 

「サスケ……おめぇは……何がしてーんだよ」

 

 ナルトからの問いに……サスケは静かに答える。

 

 

 

 

 

「……革命だ」

 

 

 

 

「っ? 革命……?」

 

「お前も見て来ただろうナルト、今回の戦争でいがみ合っていた五大国は力を合わせ……マダラと戦った。 そして……俺とお前も、カグヤを前に力を合わせる結果となった。 そして……その力は脅威を討ち取ることを可能とした。 俺は今までずっと……平和とは……何か考えてきた。 兄さんが犯罪者と罵られようとも、国と里の為に汚名を背負ったのも……悟が暁に入り天音小鳥を名乗って活動して居たのも。 全ては……誰かに取っての試練となり成長を促す為だったのでないかと。 つまりだ……俺は……

 

 

──革命を起こし、俺自身が世界にとっての()()()()()になり続けることを望む」

 

 サスケから聞かされたその言葉の意味をナルトは受け入れられはずもなく、思わず言葉が漏れる。

 

「っ何言ってんだサスケ……ッ」

 

「俺には兄さんから託されたうちはシスイの眼がある。 それを使い全世界の人間に……潜在的に『うちはサスケは世界の敵』であることを刷り込めば……世界は俺を討つために、1つとなるだろう。 そんな世界を1つにするための革命こそ俺の願いだ」

 

「っ!!! そんなこと……出来るかわかんねぇしっ!! 出来ても俺がさせる訳ねぇだろっ!!」

 

「可能だ。 最強幻術「別天神」は、術がかかったという違和感を覚えさせずに……その者の常識を、認識を書き換えることが出来る。 六道仙人が言っていたような手順で無限月読が解術出来るのであれば、その瞬間俺たちは世界の人間すべてとチャクラで()()()ことになることは間違いない。 その瞬間、ナルト……お前を通して全ての人間に別天神をかけることで……俺の革命は達成される」

 

「……ッふざけんじゃねぇぞっ!!」

 

「……分かっている……お前がこれを許さないこともな。 だがこれが俺の導き出した()()だ。 マダラのように、俺は世界を1つにする脅威となり続ける。 俺という存在を前に些細な争いは消え……人々は共通の認識を持つことで互いを理解し合うことができるようになる。 生まれも、国も、環境も……その認識を前にしては些細なものとなるだろう。」

 

「……そんなことをサクラちゃんにもすんのかよ!? サクラちゃんがどれだけお前のことを──」

 

「サクラには──幻術をかけるつもりはない」

 

「!?」

 

「そして、カカシとお前……尾獣たちも例外に幻術にかけることはしない。 尾獣たちはその力を兵器として利用される恐れがある以上……人々には近づけさせない、そして……唯一お前たちは俺の存在を揺るがすものとして……あえて放置する。 互いに寿命を終える前に俺の革命を覆すことが出来る可能性を持つ存在を許し……それを越えた時、俺が理想とする平和が本当の意味で構築される。 常世の火を影から見守り……闇として火の熱に焼かれながらも世界に有り続ける存在……それが俺が成る

 

 

──火影だ」

 

 自らの思いを言い切ったサスケ。 そして

 

「サクラは……アイツはどうあがいても俺の傍にあろうとするだろう。 ならば、近くで看取ってやるのも……俺の役目だ」

 

 僅かに暗い表情となったサスケに……ナルトが語りかける。

 

「それが……お前の目指す火影なのかよ……サスケ。 自分を犠牲にして、そんで……他の皆が笑ってればそれで良いっていうのかよっ!」

 

「……俺だけじゃない。 同じような事はかつての忍び達が通って来たものだ。 遥か昔から……そして兄さんや悟のようにな……俺はそれを完全に、完璧に成し遂げるまで。 それにだ、ナルト。 お前も俺の考えを完全には否定できないだろう……?  目の前で傷ついている者を、お前は己が傷つこうとも守ろうとするはずだ……それと何が違う?」

 

 サスケからのその指摘に……ナルトは怯むことなく答えを返す。

 

「全ッ然ちげぇよバカっ!! 誰かを犠牲にして……そんで笑ってようなんて誰もおもわねぇよっ!!! 悟だってそうだっ!!! 皆最初っから犠牲になるつもりがあってたまるかってんだ……皆、平和の為に頑張って……そんでも……上手くいかねぇことがある……だからって最初っから犠牲になろうとすんのは間違ってるっ!!」

 

「フッ……かもな」

 

「ッ……! 俺は誰かが犠牲になる世界なんて嫌だっ!! そんでも……この先も、きっとそういう辛いことは無くならねぇかもしれねぇ……でも俺は諦めねぇっ!!

 

 火影になってそんでぇっ!! ちょっとずつでも……皆の思いを繋いで世界を一歩一歩良くしていきてーんだァっ!!」

 

「…………俺とお前の答えは……行き着く先は同じだナルト。 だがお前の方法では遅すぎる」

 

「先も違うってばよっバカ野郎! 俺は、俺も笑っていたいし……皆にも、お前にも笑っていて欲しいっ!! ……今のお前みたいに俺は俺のことも諦めねぇっ!! 父ちゃんと母ちゃんが見守っててくれんのに自分を蔑ろにしちまったら……それは託してくれたみんなの思いを踏みにじっちまうだけだっ!! 1人でやろうとしてもマダラ見てぇになっちまうだけだッ」

 

「だからこそ、お前らを残す。 俺の理想とする世界の……その先の可能性を見出す者の存在を消しはしない。 フン……口で幾ら問答しようとも……やはり時間の無駄のようだな」

 

「っ……ああ、分からず屋の友達は一発殴って目ェ覚まさしてやるってばよっ!!」

 

 ナルトとサスケは互いに……戦闘に入る体勢になる。 互いに己の譲れない信念を抱えていることが分かっている……だからこそ……原始的な方法で白黒つけるのが彼らなりの答えなのだろう。

 

 ふとサスケは互いの境遇の共通点を思い、口を開く。

 

「……俺たちは昔、互いに同じ悟の背を見てきたはず……だが、どうやらお互いにアイツに見出していたものは違うようだな……ナルト」

 

「ああ……そうだな、サスケ。 んでもよ……俺たちは……やりてぇことと、経験してきたこと……色んなもんがちげぇ……全部が全部一緒なわけねぇんだ」

 

 サスケは悟の己の目的に実直で手段を択ばず、そして自己犠牲的な側面を見てきた。

 

 ナルトは悟の仲間を大切にし繋がりを大事にする、そんな博愛的な側面を見てきた。

 

 ……この場に悟が居ればどちらの味方をしたのだろうか

 

 そんな思いが二人同時に過り、そして例え彼がいたとしても自分たちの考え方を変えるつもりは最初からないと二人そろって鼻で笑った。

 

「行くぞウスラトンカチ……これで最後だ」

 

「へっ……ウスラトンカチはそっちだろ……こっから始めんだよ、皆の……思いを引き継いでなっ」

 

 対立の印を同時に結び……

 

 

 片や須佐能乎を纏い、片や六道仙術モードに入る。

 

 

 そして

 

 

 互いの名が終末の谷に木霊した。

 

~~~~~~

 

 

 

 もはやこの忍界は二人の黙雷悟が知っていた知識を越え……ある意味で運命の暁を迎えた。

 

 固定されていたかのように見えた未来に待ち受けていた、マダラによる理不尽な荒廃は阻止され……そして多くの者が生き残り世界を生きていくこととなる。

 

 しかし望みも、願いも……平和も全てが理想通りに続いて行くわけではない。

 

 

 

 それでも……誰かを思う意志は引き継がれ……きっと絶えることはないのだろう。

 

 

 

 黄昏時……クレーターの中心に葉を生い茂らせた大樹から一枚の木の葉が舞い落ちる。

 

 ゆらり……ゆらりと舞い落ちた木の葉が地面へと静かに落ちるのと同時に……

 

 

 

──忍界大戦、最後の衝撃が大地を揺らした。

 

 

 

 そして……

 

~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んがッ……イケない……寝落ちしちゃってた……ふぁ~あ」

 

 木ノ葉の里の日の当たる陽気な公園の景色の中、一人の長髪の女性がベンチでしていたうたた寝から目を覚ます。

 

 ふと気がつけば、豪快に寝落ちし上を向いていた額に木の葉が落ちてきていたようでその感覚が彼女を起こしたのだろう。

 

 そんな彼女は夕焼けを思わせる色合いの簡素な着物に身を包み、しかしその優美な見た目にはそぐわない豪快な背伸びと欠伸をして未だに残る眠気の誘惑を打ち消す。

 

「久しぶりの休みに……陽気な天気だし……ま、寝ちゃうのも仕方ないか~と」

 

 疲れがたまっているのか、その場で軽く柔軟を済ませた彼女は言い訳がましい口ぶりの後、

 

 

 瞬く間にしてその場から跳躍し姿を消した。

 

 

 そして次の瞬間にはその女性の姿は里の孤児院の前に現れていた。

 

 

 

 立て直された跡を見せる小ぎれいな外観からは似つかわしくない古そうな引き戸を開け、彼女は声をかける。

 

「すみませーん。 あの──」

 

 しかしのその声は不意に目の前に現れた、中忍ベストに身を包んだ短い黒い髪を携えた少年の一声で遮られことになる。

 

「母さんなら、今日はこっちにいませんよ……()()()()()

 

「あらっ!! (ハク)君っ!! 久しぶり~っ!! 元気にしてたぁ!?」

 

 着物の女性、日向ハナビは白と呼んだ少年に気がつくといきなり抱き着きその頭をガシガシと撫で繰り回す。

 

 白は突然のハナビからの抱擁に逃れることが出来ず捕まってしまう。

 

「ちょっ! うわッ……っ?! 急に何をするんですか?!」

 

「ほらぁ美少年にあったらこうする礼儀があるってしらないのぉ?」

 

 ロングの髪の頭頂部をわしゃわしゃとされる白が髪型を乱されながらもうっとおしそうに声を挙げる。

 

「どこの常識ですか知りませんよッ!! 父さんも、母さんも今は新しく出来た方の施設に視察に行ってるんで……ッてああ、もうしつこいっ!!!」

 

 白がしつこいと言った瞬間、ハナビに抱きつかれていた白だけが地面に現れた氷の鏡に身を落とすと、少し離れた道路の氷の鏡から姿を現す。

 

 腕の中から白の感触が消えたハナビは残念そうに手を振りながらも、乱れた装いを整える白の方へと振り向き声をかける。

 

「さっすが()()()()()()()ねぇ……あんまり任務で一緒にならないから良く見たことないけど見事な氷遁。 そしてあの強面お父さん仕込みの身のこなしねぇ……貴方が部下に居るなんてミライが羨ましいわぁ~」

 

 一連の動きの感想をしみじみ垂れるハナビに白は髪を整えつつ、鋭い目線を向ける。

 

「貴方がこうやって絡んでくるからミライ先輩の班に入れて貰ったのに……ホントウザい

 

「ちょっ!? ……白雪さんに似た顔でそういう罵倒はやめてよぉ」

 

 本気で鬱陶しそうにする白とその態度にショックを受け若干涙目になるハナビ。 まあ、そう言われても仕方がない絡みをしている自覚があるのか反省する素振りだけを見せるハナビ。

 

 このままでは延々とつき纏われそうな雰囲気を感じた白は話を切り替えるために自ら話題を切り出す。

 

「そ・れ・でっ! 話が進んでないんですけど、母さんに何か用ですか?」

 

 飄々としたハナビの態度に若干こめかみをヒクつかせている白。 流石にからかい過ぎたと感じたのか白は「ごめんごめん」と手に頭を乗せながら軽く謝りつつ用件を話し始めた。

 

「ほら、今日五影会談があるじゃない? それで今日は久しぶりに私も休みだしテンテンさんたちとみんなで夜に会食でもしない~? って誘おうかとねぇ」

 

 ハナビから持ち出された本題の内容に白は考える素振りを見せた。

 

「ふむ……なら今日は諦めてください。 母さんは別の施設の視察に忙しいそうですし、父さんはこの後一日は僕の修行を見てくれる予定って……もう居ない……はぁ……ホント騒がしいフィジカルお化けめ……ミライ先輩はご家族で旅行に行かれているしそうだし……父さんが来るまでは施設の掃除でもしてようか」

 

 話の最中、目的が達せられないと気がついた途端に忽然と姿を消したハナビに、悪態を口にし大きなため息をついた白は玄関の戸を閉めながら今日の予定をボソボソと呟き施設「蒼い鳥」の中へと消えていった。

 

 しかし白のその態度の割には彼の背から悪感情の類は見受けられず、似たようなやり取りを毎日のように繰り返しているかのような慣れか白の表情には僅かな笑みが浮かんでいた。

 

 

~~~~~

 

 

 一方そのころ

 

「青っ!! 春!!! 爆速だあああああっ!!!」

 

 奇妙な掛け声が轟くとある山道。 湯の国へと向かう道中で片足にギプスをつけた見た目の濃い男が逆立ちをしながらその山道を駆けていた。

 

「なぁ大人しく車椅子に座っててくれよ……いい加減自分の歳と周りの目を考えてくれないかなぁ……ガイ」

 

 そんな男の後方で、はたけカカシはため息をつく。 忍び装束とは無縁の装いで旅行客のような服を纏っている集団の中、彼らと同じくカカシの隣で印を構え終えた女性が一言呟く。

 

「何を今更……ガイに口で言っても無駄なのは今に始まったことではないだろう? カカシ」

 

 瞬間、地面から伸びる大きな土の手が逆立ちするガイの胴体を捉え逆さの状態で浮かせた。

 

「ぬぉおおおおお!?」

 

 突然の拘束に驚きの声を挙げるガイを尻目に術を行使した女性の容赦のなさにカカシが若干引き気味になる中

 

「流石見事なお手際ですっ!! マリエさんっ!! あの五月蠅いガイさんを一発で黙らせて捕らえるなんてっ!!」

 

 さらに彼らの後方にいる車椅子を押す朱い目をした女性が口から唾を飛ばしながら目を輝かせる。

 

 興奮気味のその女性が押す車椅子に乗る男性は、そんな彼女の様子に顔に手を当て唸る。

 

「オイ、()()()……あまりマリエのやつを見習うなよ。 アイツは何でもかんでも強引に解決しようとする悪癖が──」

 

 娘の見せるマリエへの羨望の眼差しに猿飛アスマは勘弁してくれとばかりに露骨に嫌そうな表情を浮かべる。

 

「アスマ、お前今回の旅行の代金を立て替えてくれるというのか……そういうなら仕方ないなぁ──」

 

「……っす……感謝してます……マリエ様……」

 

 アスマからの小言に、顔に笑顔を張り付けたまま圧を飛ばすマリエ。 その圧に屈したアスマは車椅子の上で両手を挙げ降参の意を示してシュンとなって項垂れた。

 

 彼らは今、慰安旅行として湯の国を目指して旅路を歩んでいた。 その代金はもろもろ、マリエの懐から出ているものであり……アスマの頭が上がらない理由の一つでもあった。

 

「ウチの旦那は情けないわねぇ……全く……フフフ」

 

 そんなやり取りを優しい笑みで見守る猿飛紅は口元に手を当て笑みを浮かべる。

 

「それにしてもマリエ、ホントに良かったの? こんなにも大人数で……」

 

 さておきと紅はマリエに声をかける。 彼女らの後ろに続く人影もまたこの旅行の参加者であり、マリエの負担が大きいのは見て取れるからだろう。

 

 しかし、マリエは肩まで短くした自身の髪が術の行使で乱れたことを気にする素振りを見せつつも笑顔で答えて見せる。

 

「気にするな……後進が育ってきている以上、私もカカシも……一度ゆっくりとしたいと思っていたんだ。 まさに有意義な金の使い方だと思っているぞ」

 

 マリエがそう言いながら集団の後方に続く人影に目を向ける。

 

 少し離れた位置にいる三人の様子に彼女は笑みを見せ、満足そうにした。

 

「なぁ父さん……ホントに今回の旅行に俺もついて来て良かったのか……後いくら何でも土産物買うの早すぎるぞこれ……まだ行きの道なのに」

 

「なぁに久しぶりの家族のだんらんだ、遠慮することもないだろう()()()()。  こうやって大人数で旅行に行くのも悪くないってもんだっ!」

 

 豪快に笑い既に行の道にも関わらず手土産に両手を塞いだ猿飛キョウマと、その様子に若干呆れつつ……木ノ葉丸はそんな浮かれたキョウマの買った土産物を抱えうんざりしている様子を見せていた。

 

「……フフ、本当は木ノ葉丸は暗隠れのキョウコちゃんとデートに行きたかったんだろうけど……わざわざ着いて来てくれたのだから貴方、はしゃぎ過ぎないようにしてください」

 

 そんな2人のすぐ後ろで……前髪で顔を隠した女性、猿飛ミノトは口元に手を当て小さく微笑んでいた。

 

 ミノトのその言葉に木ノ葉丸は図星を突かれたかのように体を強張り顔を赤らめ、その反応によりキョウマは先ほど浮かべていた笑顔をスンッと真顔に変えた。

 

「……おいミノト。 その話はなんだ……っ俺は聞いてないぞ!?」

 

「あら、木ノ葉丸はキョウコちゃんと──」

 

「母さんっ!? そのことは黙ってていっただろっ!? 元暗部なのに口が軽すぎだぞ──」

 

「許さんぞっ木ノ葉丸っ!!!! キョウコは俺の娘だっ!!!! 絶対に嫁にはやらんっ!!!」

 

「ッ……父さんに否定されても、俺は──」

 

「お前に義父(とう)さんと呼ばれる筋合いはなぁいっ!!!!」

 

「オイ俺も一応アンタの息子だぞコレェっ!?」

 

 

 

 

 

 

「何やってんだか……」

 

「弟として恥ずかしい……」

 

 バカ騒ぎをしてる猿飛親子のやり取りにカカシとアスマは額に手を当て首を振る。

 

 今にも取っ組みを始めようとする父子だが、瞬間ミノトがクナイを彼らの喉元に突きつけ

 

「せっかくの土産物が汚れるわ。 喧嘩なら帰ってからしてください」

 

「「はい……」」

 

 そんなバカ騒ぎも一瞬にして鎮火した。

 

 

 

 そんな集団がガヤガヤ楽しく騒ぎながら道を行く中……ふと僅かな風が吹く。

 

 そんな風に頬を撫でられたマリエは車椅子に乗せたガイの耳を引っ張る最中にその風の吹いた先を見つめた。

 

「マリエ……どうかしたのか?」

 

 彼女のそんな様子にカカシが声をかけると、マリエは優しい笑みを浮かべ

 

「いえ……フフ……なんでもないわ。 ふとこうしていられるなんて……何て幸せなのかって思っただけよ」

 

「……ああ、それもそうだな……ま、俺も火影という任を解かれて肩の荷も降りたし……思うがままに平和を享受しようと思うよ……()()()()の分もね」

 

「ええ、そうね。 皆の思いを経て……今の平和がある……きっとオビトもリンも……そして

 

 

 

──彼も、一時でもこんな平和を夢見ていたはずだから」

 

 幾らでも思い出せる困難な出来事の数々、しかしそれらも今を作るための道の一筋であるならば……

 

 蒼鳥マリエは亡き者たちの意思を忘れぬように、平和を受け入れていた。

 

 優しく吹いた風はそんな何気ない平和を実感させ、カカシやマリエに安心感をもたらした。

 

 後任に託し一応の激務から解放された彼らだが、きっと里に戻ればまた何かと忙しくなるだろう。

 

 そう思えば頬を撫でる一時の風さえも過去からの贈り物のように感じられ心は満たされていった。 

 

 

~~~~~~~

 

 

「マリエさんは今頃カカシさん達と旅行の真っ最中でしょうか……羨ましい限りですね」

 

「そう言っている割にはキビキビと働くじゃないか……今は愛しの旦那様と一緒に居られて満更でも──おっと笑顔で雪羅のチャクラを滲ませないでくれよ」

 

 里から少し離れた位置にある孤児院の施設の中で、()()()()と薬師カブトは雑談を交えていた。

 

「マリエさんも今までマザーという立場を担ってくれていましたので……その後継として張り切っているだけです。 まぁ……再不斬さんと2人っきりの時間が取り難いのはいささか不満ではありますが……マリエさんの今までの頑張りを思えばなんてことはないでしょう」

 

 再不斬と正式に籍を入れた白は、名を白雪とし苗字も桃地と名乗るようになっていた。 忍界大戦を経て再不斬と合わせてその功績が認められ、移住などの問題が一気に解決したのがきっかけであった。

 

 マリエから孤児院経営のオーナーとしてその役割を継いだ彼女は、現場で子どもたちの面倒を見続けている再不斬と2人で火の国の孤児たちを救うための活動を行っている。

 

 その一環で本日、カブトとウルシが運営している孤児院にも視察として訪れているのだが……

 

「はぁ……あまりそういう甘い会話をここでしないでくれ。 独り身のウルシに効くだろ?」

 

「おい、お前らっ!! さっきから雑談ばかりかと思えば何で俺への弄りになってんだっ!!」

 

 落ち着いた2人の会話を書類を運び通り過ぎながらも聴いていたウルシのツッコミで、カブトは肩をすくめる。

 

 白雪もカブトとも必要な手続きや情報のやり取りは既に終えており白雪が次に向かう施設の訪問時間まで、呑気に雑談で時間を潰しているのが現状であった。

 

「やれやれ、親友がああいう以上そろそろ働き始めないとね……まあ、そういう訳だからもう少しだけ実務の視察の方よろしく頼むよ、()()()

 

「……いざ自分がそう言われるのは変な気分になりますね。 しかしこれもマリエさんから引き継いだ任です、しっかりこなしていくためにも……カブトさん、ウルシさん、これからも協力お願いしますね」

 

 白雪からの真っ直ぐな言葉に、カブトは小さく笑みを浮かべながら

 

「だってウルシ、頑張ってくれよ」

 

「だからっ!! カブトお前も頑張んだよっ!! お前の方が俺よか遥かに動けんだろがっ!!」

 

 ウルシと子気味良く会話を重ねた。

 

 そんな施設から少し離れた位置に居た桃地再不斬は

 

「アイツら……俺が抜けた途端に気を緩ませやがって……たく。 白の組手の相手を早くするためにも、里に戻って面倒な手続き進める俺の身にもなって欲しいもんだぜ……」

 

 小さく愚痴をこぼしつつも小さく笑みを浮かべ、その場から姿を消すのであった。

 

 

~~~~~~

 

 

 木ノ葉の里のとある忍具売り場のカウンター。 そこで頬杖を突きぼやく一人の女性。

 

「はぁ~~全っ然お客来ないわねぇ……平和ってやつねぇ……」

 

 だらんと砕けた態度でおおよそ店番の体を成していないその女性はふと店の扉が開かれたことで背筋を伸ばした。

 

「っ! いらっしゃ……ってなんだハナビじゃない」

 

「なんだってなんですか、テンテンさん。 こうやって休みの日に会うのも久しぶりじゃないですか~」

 

「いやぁお客さんかと思ってねぇ……()()()()()と一緒でアンタあんまり忍具使うタイプじゃないから一目見てガッカリするのよ」

 

「っお店にお金落とさなくて悪かったですね……」

 

 仲の良さを感じさせる互いにフランクな雰囲気を漂わせる二人の会話に混ざるように、店の奥の扉から着物を着た一人の男性が姿を現す。

 

「っお、ハナビ様じゃないですか。 お久しぶりです」

 

 そうハナビに挨拶をするのは日向ネジであった。 

 

「直接ここに来るのは珍しいですね……」

 

「やっほーネジ兄さんっ!! せっかくの休日に誰かとご飯食べに行きたいと思って、誘って周ってるんだけど皆用事あるみたいで……テンテンさん達とどうかなーって……」

 

 ネジに来訪の目的を告げたハナビは休日のネジの装いがますます親であるヒザシに似てきていると思い、少し口元を緩める。

 

 喋り方や纏う雰囲気がかつてのヒザシを思わせるネジはそんなハナビからの提案に気まずそうな表情を浮かべつつテンテンにアイコンタクトをとる。

 

「あー悪いんだけどハナビ、今日は元三班の家族で出かける予定があるのよ~ごめんね~」

 

 ネジから説明のバトンを受けたテンテンは申し訳なさそうに手を合わせ舌を出しウインクをする。 彼女からの断りにハナビは肩を落として露骨に残念がった。

 

「えーーーっ……そんなぁ……」

 

「すみませんハナビ様……リーの方との擦り合わせで今日しか空いてなく、以前から予定していたことなので……」

 

 申し訳なさそうにするネジ、ふとそんな彼の身体が後ろから軽く押されたように揺れた。

 

「っと……()()()、せっかくだからハナビ様にご挨拶をしたらどうだ?」

 

 ネジは自身の脚元の袴にしがみつき、ハナビを警戒している素振りをしているどこか昔のヒナタを思わせる少女の頭を優しく撫でながらそう告げた。

 

 するとその少女はオズオズとしながらもネジを盾にハナビを見つめ……

 

「こんにち……わ」

 

 たどたどしく挨拶をした。

 

「こ、こんにちわ~ウルミちゃん……ハナビお姉さんだよ~っ?」

 

 そんな少女・日向ウルミに対してハナビはガッカリしていた態度を隠し、驚かせないようにか優しい声色に成るよう努めて手を振る。

 

 しかしハナビの事が怖いのか小さく悲鳴を上げたウルミはネジの背に隠れてしまった。

 

「……たはは、ごめんね~ハナビ。 ウチの娘、相変わらず日向の人が怖いみたいで……」

 

 そんな光景を微笑ましく見ていたテンテンからの言葉にハナビは頭を掻きながら

 

「いやぁ……しょうがないですよ。 父様とヒザシさんがどっちの孫が可愛いかどうかで、顔合わせるたびに喧嘩しているの見て来てますからねぇ……事あるごとに。 ホントにやめろって言ってるのに父様たちが性懲りもなく続けるから私もウルミちゃんから警戒されるように……トホホ」

 

 そう弁明を述べる。 しかし

 

「いや、ウルミに警戒されるのはハナビ様の距離の詰め方が強引──」

 

何か言いましたかネジ兄さん?

 

「あ、いえ……しかし昔は父上もヒアシ様も仲が良かったのに、今では顔を合わせては罵り合って……まあ、それもある意味で平和であることの象徴でもあるように感じるので俺は微笑ましく思っていますが」

 

「そういうものかなぁ……まあ、そうなのかな」

 

 身内の恥のような光景も、見方を変えれば平和の証でもある。 

 

 かつて十尾の巨体を二人息を合わせた術で揺るがし、その攻撃を逸らし続けた彼らが今や孫自慢で喧嘩をしているなどとは誰も想像がつかないであろう。

 

 今はそれほどまでに、昔と比べて平和なのだとも考えられる。

 

 そう無理やり納得の姿勢を見せるハナビにテンテンがニヤニヤしながら

 

「孫と言えば……ハナビは()()()()()、まだ居ないのぉ?」

 

 ハナビの交際の有無に探りを入れた。 彼女と長年の付き合いをもつテンテンだからこそ出来る軽いノリでの決まりきった返事のある弄り。

 

 しかし

 

 

 

 

「近々父様に紹介したい人は居るんですけどねぇ……」

 

 

 

 

 想定とは違う普段とは違ったその回答にテンテンは思わず頬杖から頭を落とし、ネジも驚きのあまり手に持っていた扇子を床へと落とす。

 

「えっ……いや……マジ? 本気と書いてマジっ!? アンタアイツの事──」

 

 何かを言おうとするテンテン。 だが

 

「テンテン」

 

 ネジが名を呼びその言葉を制止する。 そしてハナビに向け

 

「……おめでとうございます。 ハナビ様の選んだお方ならきっと間違いなんてないでしょう。 まあ報告するのであれば……ヒナタ様に先に話をつけておいた方が無難かと思いますよ。 ヒアシ様もナツも……貴方の事になると見境がなくなると思いますので」

 

 信頼があるからこその賛辞を送り、アドバイスもする。 お家柄そういう話はややこしくなることは間違いないからこその気づかいなのだろう。

 

「ありがとう、ネジ兄さん。 ま、実際どうなるか分からないけど……このあと姉様のとこに寄ってくつもりだからそこで話すつもりなの。 それじゃあ、今日はお暇させていただきますっ!」

 

 感謝を述べたハナビは、妙によそよそしい態度のままテンテンの店を後にした。

 

 思ってもみない情報が舞い込み、騒然とするテンテンは呆けた顔のままであった。

 

 こんな時が来たかと落とした扇子を拾い上げるネジ。

 

「ハナビさん……は誰か好きな人が……居るの?」

 

 そんなネジの影から出てきたウルミの疑問に、テンテンは

 

「居るというか……居たというか……難しいけど、今はほらお義父さんとヒアシさんもハナビのそういう相手に五月蠅いし、あの子もその気がないと思ってたからこのまま行き遅れるのかと……」

 

 何とも言えないともごもごと言い淀む。 要領を得ないテンテンの言葉にウルミが首を傾げると、屈んだネジが彼女の肩に手を置き店に飾ってある1つのボロボロで歪んだ棒状の忍具を指さして語りかける。

 

「……あの俺を救ってくれた忍具を母さんに譲った人が居たというのは前に話したことがあるな?」

 

「うん……父様が火影様を守った時に……母様も一緒になってあの忍具を使って父様と火影様を守ったって……その時に壊れちゃったんだよね? 何回も聞いてる」

 

「……ハナビ様は、あの忍具の元の持ち主の事を……今でも愛している……と思っているからこそ……母さんも俺も少し驚いたんだ」

 

「……その人のことじゃないの?」

 

 ウルミが抱えたもっともな疑問に……

 

「そう言えばウルミ、今日はボルト君とこの後遊ぶ予定があったんじゃない?」

 

 テンテンが話題を変えるようにしてウルミへと語りかけた。

 

「! そうだった。 アカデミーが早く終わったから一緒に『激・忍絵巻』買いに行くって約束してた!」

 

 テンテンの言葉で自身の予定を思い出したウルミはテンションを上げいそいそと出かけるための小さなカバンを抱え急ぎ足で店を出ていく。

 

「母様、父様、行ってきまーすっ!」

 

 か細い声ながらも、大好きな両親に元気よくそう告げたウルミはそのまま日の当たる通りを駆けて行った。

 

 残されたネジとテンテンは二人して大きなため息を着いた。

 

「……如何せんアイツの事を説明するのは難しいな、テンテン」

 

「ええ、大きな影響を私たちに与えた癖に……パッといなくなって……未だに消息不明で……ハナビも遂に愛想を尽かしちゃったのかなぁ……」

 

「……そういう事ではないと思いたいが……人の気持ちを縛ることなど誰に許されることでもない。 他でもないハナビ様自身が決意したことであるなら俺たちがとやかく言うことでもないだろうな

 

 気分が落ち込んだ2人だが、ふとお店に珍しく客が入って来たことで気持ちを切り替える。

 

 時代の移り変わりの、無情さを噛みしめながら。

 

 

~~~~~~

 

 

 

「だーっ!! また父ちゃんかよっ!?」

 

 木ノ葉の里の小さなお店の店先で幾つかのカードを手にそう叫ぶ金髪の少年。

 

「物凄い運だな……ある意味で」

 

「俺ってば、父ちゃんなんかよりも今限定の奴が欲しんだってばさぁっ!! それなのにさぁっ!!」

 

 その様子を呆れた様子で見ていた奈良シカダイの言葉にその少年・うずまきボルトは頭を掻きむしる。

 

「クッソーーっ!! 今月は仮面ニンジャーのグッズも買っちまったからパックそんなに買えね―のによォ!!」

 

「それはお前の自業自得ってやつだろ……まぁ期間限定で特別なゲマキがあるっつーなら欲しくなるのも分かるが……今月だけだろ? 収録されるの」

 

 シカダイのその言葉にボルトは……

 

「なぁシカダイ? ちょっとだけで良いから金貸してくんねーかぁ?」

 

 猫なで声ですり寄る。

 

「言い訳ねーだろ。 ウチも母ちゃんが小遣いの管理うるせーから必死にやりくりしてんだ……流石に何か見返りがねぇとな」

 

「なっ!? 良いだろ良いだろっ? 俺たちの仲じゃんかよ~~~」

 

「ちっ……めんどくせー……ってアイツは……」

 

 そんなやり取りの中、シカダイは駆け寄ってくる一人の少女の姿に気がつき手を振る。 するとボルトも振り返りその少女の姿を目に映した。

 

「ウルミ、おっせーてばさぁっ!! 俺とシカダイのパック開けちまって限定カード出なかったからもうお前だけが頼りなんだっ!!」

 

「必死かよ……ウルミ、ボルトの言う通りにして金貸したり甘やかすのは良くないぞ」

 

 2人に声をかけられたウルミは走って荒れた呼吸を整えながら返事をする。

 

「う、うん大丈夫だよシカダイ君……この前からボルト君にお金を貸すときは、母様を通してボルト君のお母さんにどれだけ貸したか報告することに……なってるから大丈夫。 ゲマキは私も欲しいから買うんだよ」

 

 えへへと笑って見せるウルミの純粋な様子にシカダイはため息つきつつ

 

「だってよボルト。 限定の奴が出ても、ウルミ様次第だな」

 

 ボルトにニヤついた笑みを見せる。

 

「っ……クソォっ!! ……母ちゃんからの手がウルミにも回ってんのかよ……もうこの際、俺が手に入んなくても良いッ!! どんなやつかだけでも見てぇーから当ててくれぇウルミっ!」

 

 もう打つ手はないとせめてどういうものかを拝みたいと手を合わせ、ウルミに頭を下げるボルト。 そんな様子に「えへへ……じゃあ、買って……くるね」とウルミは店の中で店主に向け幾つかゲマキのパックを持っていく。

 

 そんなウルミの様子を見ながら、ボルトとシカダイは限定カードについて話を膨らませる。

 

「つーかよ……なんで今月限定なんだよ。 おかげで俺ってば日課の悪戯をしてる余裕もねぇしよぉ……」

 

「さあな。 何でも開発部の1人が昔、その忍びに両親が世話になったがどうのこうので実装したがってたらしいんだが……開発部の中でも意見が割れて、尚且つ情報が少ないからか期間限定での実装らしい……名前も容姿も非公開でのパック収録何て珍しいもんだ」

 

「あ~もう何でも良いからこの眼で見てみてぇ~」

 

 うだうだと会話を続ける中、ウルミがゲマキのカードの入ったパックを開けながら二人の元へと歩み寄ってくる。

 

「……あ、あんまり良い奴入ってないみたい。 残りのパックも……あと一袋になっちゃった……」

 

 手に持つカードの群は光るものがなく、3人のお眼鏡にかなうものはないようであった。 そしてウルミが最後のパックを開封する。

 

 その様子を喉を鳴らし見守るボルトとどうせ当たらないと澄ました態度でいるシカダイ。

 

 そしてウルミがカードを取り出すと……

 

「おっ……? なんだそりゃ」

 

 そんな中から一枚、様子の違うものに気がついたシカダイが指をさすとウルミがそのカードを取り出す。 3人でその妙に黒いカードを囲んで見てみると……

 

「……明らかに普通のとは違った感じだけど……なんだこりゃ。 名前も説明も……なんも書いてないってばさ」

 

「ああ、多分例の限定カード……なんだろうが、幾らなんで地味すぎねぇか? それに効果の説明書きもねぇから対戦でも使えねぇし、完全にコレクションようだなこれは」

 

「へ、変なカードだね……」

 

 地味なそのカードの外観にあからさまに落胆を見せる。

 

「描いてある忍者も……地味な面に……地味な格好で……棒立ち……こんなのが限定カードかよ、期待して損したァっ!!」

 

 証明写真のような地味な絵柄に自分の注ぎ込んできた労力を惜しんだボルトはその場に崩れこむ。 シカダイも流石にフォローするきもないのか

 

「ま、コレクション用ってことだろーけど……流石にこれは俺もいらねぇな。 どうするウルミ?」

 

 サッサと話題を終わらせたいのかウルミにカードの処遇を尋ねる。 ウルミは……

 

「いらないからボルト君にあげる」

 

 そう言って、項垂れているボルトにカードを差し出す。

 

「え……いや、俺もこんなカードは要らねぇてばさ……」

 

「あげるね」

 

「ちょっ……ウルミ……さん?」

 

 妙な圧を感じるウルミの様子に否応なしにそのカードを手に取ったボルト。 

 

「コレクション用なら……だ、誰か高く買い取ってくれるかもしれないから。 ボルト君にあげる。 これなら……母様に報告しなくてもいいから……ね」

 

「な、なるほどだってばさっ!! さっすがウルミっ!!」

 

 ウルミの説明に納得し無邪気に飛び跳ねるボルト。 シカダイは

 

「流石忍具屋の一人娘、商売の考え方が根にあるって言うか……まあつーか、正直本音だと使えねぇから要らねぇんだよなウルミ?」

 

 そうウルミへと自分の考えを述べた。 そのシカダイの言葉に

 

「う、うん。 実用性のないカードは……私は要らないから」

 

 とハッキリと笑顔でそう答えたのであった。

 

 取りあえずお金を工面する方法を得たボルトがカードを手にはしゃいでいる中、ウルミの少し黒い面を前にシカダイが苦笑いを浮かべていると……

 

 

 

「ボルトォ!!」

 

 

 ボルトの名を呼ぶ声が響いた。

 

 驚いた3人がその声のする方へ顔を向けると……

 

「ゲぇっ!? イルカ先生っ!?」

 

 その人物の名を呼びボルトは露骨にバツの悪そうな表情を浮かべその場から後ずさる。

 

「……ボルト、お前暇がないって言っておきながらまたしょうもない悪戯でもしたのか?」

 

 呆れた様子を見せるシカダイにウルミがシカダイの袖口を引き

 

「今日は一応五影会談……の日だから、アカデミーの中で収まる手ごろな悪戯で済ませたってボルト君言ってた……よ」

 

 事情を説明した。 熱血教師ぶりの衰えていない様子のイルカがズンズンと近づいてくることに怯えたボルトは咄嗟に手に持っているカードをしまうとそのまま2人に手を振りながらその場を後にする。

 

「ちょっ……ワリィ―けど二人とも今日は解散だってばさっ!! また今度なっ!!」

 

「おー、また今度な」

 

「うん、また……ね」

 

 別れの挨拶をしながら逃げ出したボルト、イルカがシカダイとウルミの元まで来るとシカダイはイルカに質問を投げかける。

 

「またアイツ何かしでかしたんですか、校長先生」

 

「ああ、シカダイとウルミか……そうだな。 妙に手の込んでると言うか……クラス名簿の入れ替え何て悪戯をほぼすべてのクラスでされてて午後休みとは言え、教員が元に戻す作業に追われてな。 これならまだ──」

 

「これなら……まだ?」

 

 ウルミがイルカの言いかけた言葉に疑問を浮かべると、イルカは……妙に笑顔になりつつ、それでも困った表情で

 

 

「ナルトの悪戯の方が派手な分、可愛げもあったなって……な」

 

 

 そう2人に内緒話をする様に口に指を当て教えた。

 

 

~~~~~~

 

 

「ぶえっくしょーんっ!!」

 

「っオイ、ナルト……」

 

「んん、悪い……誰か噂してんのかな……」

 

 五影会談の最中、突然大きなくしゃみをかましたナルトが静かになった会議室で注目を浴びる。 側近のシカマルから小声で注意を促され申し訳なさそうに机の資料を整える動作で誤魔化すナルト。 そんな中

 

「さて火影殿もお疲れのようだし、さっさと最後の議題に移ろうか」

 

 五代目雷影・ダルイが進行を促し話題を変える。

 

 五代目風影・我愛羅は配られた資料に目を落としながら

 

「いつも通り最後は()()()の話題か……砂隠れはあまり被害を受けていない以上あまり言えることはないが……」

 

 そう呟くと四代目土影・黒ツチが軽く机を叩き不満そうな声を挙げる。

 

「へー、随分と気楽そうでなにより……火の国と風の国以外では結構な働きぶりで取り締まりに苦労してるってのに……」

 

 辟易した様子の黒ツチがバサッと無造作に机の資料を広げる。 その資料に添付されている画像には人影のような物が写っており

 

「僕の所でも、活動の痕跡が数年前から確認されていますが……いい加減一体どこの誰なのかぐらい、ハッキリとさせたいところですね」

 

 その人影を示して六代目水影・長十郎もまたうんざりした様子を見せた。

 

 長十郎の言葉からは暗に『情報の開示』を迫る意図を感じられたが、五影は全員が悩むように唸りを上げることしかできなかった。

 

 つまり誰も情報を出し惜しみしている様子ではなかったのだ。

 

 ダルイはめんどくさそうに資料を机に置きながら口を開く。

 

「黄昏時の忍び……単純に幽霊……忍界大戦の怨霊……異名は数知れないが、こうしてカメラで画像を収められている以上()()のは間違いはないはずだ。 活動の広さから集団とも考えられるがにしてはあまりにも尻尾がつかめない……個人だとしてもどの里にも属していない非正規の忍びにしては手が広すぎるぜ」

 

 ダルイの言葉に、シカマルが

 

「今は暗隠れが付近で大規模な人身売買組織の掃討に打って出ているらしいですが……そこで目撃情報が出ているそうです。 もしかしたら彼らから新たな情報が得られるかもしれない」

 

 そう現時点の情報を伝えると、ボソッとナルトが呟く。

 

「悪い奴じゃないみたいだけどな……」

 

 その呟きに、ナルト以外の影が顔をしかめた。

 

 その反応にナルトが気づき、やべっと言った感じの表情を浮かべるとシカマルが彼の頭を小突く。

 

「悪い悪くない以前に、どこの誰かもわからない忍びが様々な工作活動をしている時点で対処するべき案件だ。 死人は一度も出ていないらしいが中では施設の稼働を停止させる活動もしているようだし──」

 

「だが、そこは麻薬密売の温床だったんだろ? 結果的に良かっただろ」

 

 シカマルからの言葉にナルトは物怖じすることなく自身の意見を述べる。 その施設があった雷の国の人間であるダルイは

 

「……そういうのを俺たちよりも先に対処されちまうと、里の忍びの信用に関わるんだよ」

 

 呆れながらもナルトにそう告げた。

 

 謎の忍びの義賊的活動に頭を悩ませた五影たち。

 

 それぞれが未来に向けて歩みを進めている。

 

 その事実に変わりはなく今回の五影会談はまた、最後の議題を除き有用な結果をもたらして締めくくられることとなった……

 

 

~~~~~~

 

 

 土の国某所。

 

 とある広めの宴会場のような場所に置かれたベッドの上でプルプルと震える老人を取り囲む人の姿が複数あった。

 

「旧五影会談……ワシが動けんばかりに……集まってもらって悪いのう」

 

 その老人、オオノキの言葉に

 

「えらく弱ったなオオノキのじいさんよ」

 

 と元雷影・エーが僅かに気の毒そうにそう告げた。

 

 忍界大戦で見せた血気盛んな様子はその場にいる誰からも感じられず……

 

「のう、オオノキの爺がここまで老いぼれるとは驚きだ」

 

「先生……失礼ですよ」

 

 車椅子を押され部屋に入ってきた白髪の男性と彼の言動を注意する長髪赤髪の男性に既に部屋に来ていた綱手が目を向ける。

 

「来たか……私からすればお前も随分と老けたように見えるぞ、()()()

 

「お前は相変らずかわらんのう、綱手……と

 

 

 大蛇丸よ」

 

 

 綱手からの言葉に嫌そうに応えた自来也はその流れでオオノキの腕に触れて体調を見ている大蛇丸に目を向ける。

 

「酒のみの為とは言え、一度に旧五影と伝説の三忍が揃うとは……時代とはわからないものね」

 

 場に集まっているメンツの濃さに照美メイが呟く。 その言葉を受け大蛇丸はオオノキの脈を計りつつも視線だけをメイに向けた。

 

「あら、それを言うなら旧暁のメンバーも一部揃っているわよ……?」

 

 小さく不気味な笑みを浮かべる大蛇丸のその言葉に綱手の付き人で来ていた女性と、自来也の車椅子を押す男性が気まずそうに目線を逸らす。

 

「貴様ら……大戦での功績が無かったらこうはなっていないことを忘れるなよ?」

 

 大蛇丸の冗談にエーは面白くないと、珍しく表情を歪ませた。

 

 忍界大戦の終盤、十尾の猛攻を防ぐ一因として大蛇丸たちが貢献したことは紛れもない事実であり大蛇丸は監視と火影の許可制ではあるがこうして里外まで出ることが許されるまでになっていた。 

 

「暗い話はやめだやめだ。 さっさと酒でも飯でも嗜んで、馬鹿みたいに明日の話をするに限る」

 

 そう綱手が話を切ると、綱手の付き人の女性が一枚の紙を窓の外へと飛ばす。

 

 その様子を確認した綱手は

 

「注文も下の厨房に行ったことだ、自来也。 世界を見て回ってる土産話でも聞かせろ」

 

 と自来也に話を振った。 全員の視線が自来也に注がれると自来也は、皺の増えた顔で決め顔をし

 

「……ふふ、では……とっておきの土産話を1つ余興に話して御覧じよう!! あれは別の大陸で騎士と名乗る奴らにワシらが拘束された時のこと──」

 

 気分上々と自分語りを始める。

 

 そんな様子をオオノキと共に少し離れた位置で見ていた大蛇丸は自来也の顔を見つめていた。

 

「……心配か?」

 

 大蛇丸に小さくオオノキが語りかける。 大蛇丸は視線を自来也から外すことなく

 

「元より瀕死の重傷の上にリスクがある術での蘇生行為……貴方よりは先にくたばると思っていましたが……相変わらずの調子で。 さて、私は少し仕事の連絡があるので席を外します、貴方も酒を飲み過ぎると寿命が直ぐに尽きますよ」

 

 オオノキに注意を促しつつ、その場を後にした。

 

 そんな大蛇丸を追う監視の忍びの気配を感じながら、あの大蛇丸に体調を心配されたオオノキは

 

「カッカッカッ……」

 

 小さくその昔では考えられない様を微笑み満喫するのであった。

 

 

~~~~~~

 

 

 

 暗隠れ近辺の某所。

 

 荒れ地に凸凹とした地形が混じり、見通しの悪いそこで一際大きな水柱が天を穿つ。

 

 その柱が崩れ地面に落ちた場所では2人の人影が立っていた。

 

「っかぁ~~~手ごたえの無いカスばかりだな……鬼鮫、帰ったら組手しようぜ」

 

「アカネさん……相変わらずですねぇ……敵組織のアジトの前でする会話とは到底思えませんが……しかし手ごたえが無いのは事実」

 

 暗の額当てを着けたアカネと干柿鬼鮫のコンビが、周囲に突っ伏す人身売買を行っている組織の一員を拘束している中、ふと目の前の建物のアジトの中から妙な喧騒が聞こえる。

 

「――――っ!!」

 

「あん? 中はすでにアタシたちが制圧済みのハズだが……」

 

「もしかしたら見落としがあったのかもしれませんねぇ……」

 

 既に組織は壊滅状態、組織の構成員も外に逃げ出した連中もこうしてシバき拘束し終えた以上建物中から物音が聞こえるはずはなく……

 

 若干の警戒をしつつ2人が身構えると、建物の扉が勢いよく開きそこから

 

「クソがぁっ!!」

 

 小さな子供を1人抱きかかえながら、悪態をつきつつ人相の悪そうな大柄な男が1人姿を現す。

 

 怯えた様子の男は子どもの首にクナイを当てがいながら目の前にいるアカネと鬼鮫に怒鳴りつける。

 

「そこをどきやがれぇっ!!」

 

 その男の顔を見て鬼鮫はため息をついた。

 

「既に組織のリーダーは捕まえたと思っていましたがなるほど、()()でしたか。 どちらにせよ面倒ですねェ……」

 

 組織のリーダーと思われる男は既に牢の中にいるはずが、同じ顔を持つ男がこうして目の前に現れた。

 

 恐らく建物内に隠された部屋に忍んでいた男がやけになり人質事外に飛び出してきたのだろう。

 

 錯乱した様子の男に不信感を覚えたアカネは

 

「子どもには危害が及ばないようにしねぇとな……」

 

 と慎重にことに当たろうとした瞬間。

 

 

 

 

 

 男の身体が、黒い炎に包まれる。

 

 

 

 

「まさか、天照っ!?」

 

 その炎に見覚えのある鬼鮫がそう驚きの声をあげるが、しかしその炎は黒い色を持ちつつまるで夕日を思い出させるような橙色をも交わせていた。

 

 男とともに炎の内に居る人質の少女の安否を気遣いアカネが捨て身で駆けだそうとするとふと、二人の前に人影が現われる。

 

 その人物にまたしても見覚えがある鬼鮫が再度驚きの声を挙げた。

 

「サスケ君ではないですか……っ」

 

 黒い外套に身をつつむうちはサスケ。 その姿を確認したアカネは構わず少女を助けるために行動しようとするがサスケが左手を突き出して制止させる。

 

「オイてめえっ邪魔すんじゃ──」

 

「見ていろ」

 

 抗議するアカネに一言そう呟いたサスケ。 その直後火だるまになっていた男が倒れた瞬間にその炎は綺麗に消え去り、そして……

 

 

 少女の泣き声だけがその場に響いた。

 

 

 火に焼かれたはずなのにも関わらず響く泣き声にアカネが驚愕していると、素早く鬼鮫が男の元に駆け寄る。

 

「オヤオヤ……女の子にももちろん……男にも火傷どころか外傷の後がない……どんな手品を──」

 

 男と少女の様子に不思議がる鬼鮫にサスケがふと男が飛び出してきた建物の入り口を指さして示す。

 

 すると

 

 

 

 狐の面をつけ黒いコートを羽織った人物がゆらりとそこに立っていた。

 

 

 

「っ!?」

 

 あまりの気配の無さに鬼鮫もアカネも警戒を露わにして構えるが

 

 ふと気がつけば……

 

 

 その人物はすでにその場には跡形もなく居なくなっていた。

 

「……鬼鮫、今目ェ離したか?」

 

「いえ……ですが……文字通り消えましたね……口寄せの様子もなく」

 

 あまりに荒唐無稽な出来事に若干の肩透かしをくらいアカネが戸惑いつつも子どもの保護作業をするなか、鬼鮫はふと現れたサスケへと声をかける。

 

「随分とお久しぶりですねぇ……あまり里にも帰っていない様子ですが、何故このような場所に?」

 

「……今の奴の痕跡を追っていた」

 

「それはそれは……あれが例の幽霊などと噂されている……それは火影からの任務ですか?」

 

「それもあるが……個人的な関心もある。 奴が何者なのか……俺自身が知りたいと思っている」

 

 会話を続けるサスケと鬼鮫。 ふと鬼鮫が気になったことを呟く。

 

「以前、木ノ葉に行きましたが貴方の娘さんに貴方の話をして欲しいと頼まれましてねぇ……それで」

 

「余計な事を言ってないだろうな?」

 

 鬼鮫からのカミングアウトにサスケがジト目に成りつつその輪廻写輪眼を向ける。

 

「いえいえ……サクラさんに今の貴方と同じような目で暗に『やめてくれ』と言われたのでその場は誤魔化しておきましたよ。 しかし、こんな私みたいな男にも尋ねるほど貴方の事に飢えている様子です。 ……もう少し家族の時間とやらを大事にしたらどうですか?」

 

 鬼鮫からの真っ当な人間のようなアドバイスを送られサスケは豆鉄砲を喰らったような表情を一瞬浮かべ……

 

「……また今度だ」

 

 ばつの悪そうな様子を見せその場を後にして行った。

 

「他の地点でも制圧は終わったようだぜ……あの変な奴についてもアガリに報告しないとな……めんどくせ」

 

 アカネが少女を優しく抱きかかえ、サスケとの会話を終えた鬼鮫に語りかけると

 

「ええ、では帰りましょうか……我が里に」

 

 ひと段落ついたと、一息つき……撤収作業に入っていった。

 

 

 

 

 少し離れ位置でサスケはふと自身の左手に目を落とす。

 

 それは本来ならば既に失くしたはずの物。 しかしサスケはその包帯に巻かれた左腕を右手で握ると

 

「…………仕方がない。 偶には里に戻るか……でないと五月蠅い奴らが多そうだしな」

 

 そう小さく呟き再度瞬身の術でその場を後にした。

 

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

 

「という訳だから姉様……もしもの時はよろしくっ!」

 

「…………はぁ……お父さん、驚くでしょうね……」

 

 うずまき家のリビングで相談をしていた日向の姉妹、ハナビとヒナタはそろそろ解散しようかという雰囲気を滲ませていた。

 

 テレビからは『幽霊は実在するっ!!』と言った眉唾ものの情報番組の音声が流れ彼女らの耳を通り過ぎ、ハナビは出されていた紅茶を飲み干す。

 

「でも良かったのハナビ……」

 

 言い淀むヒナタの言葉にハナビはニカッと笑顔を浮かべ答える。

 

「私も二十代後半に入って流石に焦ってたしねぇ……まあきっと彼なら父様も姉様も気にいってくれると思うわ。 ……ほらボルトとかヒマちゃん見てると私も早く子ども欲しいなぁて思う訳で」

 

「……そう……貴方がそこまで言うなら私が言えることはないわね。 おめでとう、ハナビ。 お父さんはしばらく口うるさくなるでしょうけど……姉として嬉しく思うわ」

 

 そう話を終えたハナビは背伸びをするとテレビの前に釘付けになっているうずまきヒマワリを後ろから抱きかかえる。

 

「それじゃぁヒマ~、私帰るねっ!! また今度遊びましょう」

 

「わぁ!! うん、お姉ちゃんまたねっ!!」

 

 少しの間じゃれついたハナビはそのまま名残惜しそうにうずまき家を後にした。

 

 

 

 

「はぁ…………」

 

 

 

 その後休日を持て余したハナビが繁華街をぶらぶらとうろついているとふと

 

 目の前から見知った少年が駆けてくることに気がつく。

 

「あら……ボルトじゃない」

 

「っはぁ……はぁ……ハナビ姉ちゃんか……いやぁイルカ先生に追い回されててやっと撒いたところだってばさ」

 

 息を切らすボルトの様子に

 

「また何かやらかしたの? イルカ先生を困らせるのも大概にしときなさいよ、一応私もイルカ先生にお世話になったことがあるから余りに目立つようなら私からも鉄拳が飛ぶって思っておきなさい」

 

 ハナビが拳をちらつかせるとボルトは「ゲッ……」と口にしながらも

 

「分かったってばさ……流石にハナビ姉ちゃんの白眼に睨まれたら逃げられる気がしねえし、しばらくは大人しくするか……」

 

 と反省の色を見せる。

 

「よろしい」

 

 その反応に満足げな様子を見せるハナビはふとボルトの手に握られたカードに気がついた。

 

「それゲマキって奴じゃない? あんたニンジャーのグッズも買ってて小遣い足りてるの?」

 

「もちろん足りてないってばさっ! つーか仮面ニンジャーにハマったのは姉ちゃんが勧めたからだろ? そういうよしみで母ちゃんお小遣い増やすように言ってくれねぇかなぁ?」

 

「さっきあんたんちに行って来たけど、あまりに悪戯が多いようなら小遣い減らすって言ってたわ」

 

「ゲゲッ!? 勘弁してくれよ~……ってそうだ姉ちゃん、このカード要らね? 限定の奴なんだけど高く売れるかも知んねぇぜ!」

 

 ボルトはそう言いつつハナビにそのカードを手渡したその瞬間

 

 

「全く……またしょーもないことしてたみたいね、ボルト。 アカデミーで自習してたら先生たちがアンタの事で騒いでたわよ」

 

「なっサラダ!? んだよお前には関係ねぇーだろっ!」

 

 急に姿を現したうちはサラダが横から顔を覗かせボルトにジト目で睨みつける。

 

「いい加減にしてよね……アンタの悪戯でこっちが迷惑することもあるんだから」

 

「良いだろ、大したことはしてねぇーんだから……今は姉ちゃんと小遣いの交渉中だからちょっと黙っててくれってばさっ!」

 

 うっとうしそうにサラダを扱うボルト。 サラダは「ふーん?」と言いながら、カードを見ているハナビの様子を見てみると

 

 

 

「……っ!」

 

 

 

 そのハナビの表情に目を奪われた。

 

 それが何の感情なのか、どういう思いが込められていたのか。

 

 そこまでの理解はできなかったサラダはしかし、ハナビの浮かべた()()()()()に見惚れると

 

 

「サラダ……? 姉ちゃんの顔になんかついてんのか?」

 

 

 ボルトがその様子を不審に思い彼女の前で手を振ることで意識を現実に引き戻される。

 

「っしゃんなろ~よ全く……ハナビさん、何見てるんですか?」

 

「……えっ……ああ、そうね……このカード限定らしいし、買い取ってあげても良いかも」

 

「マジか!! 姉ちゃん最高っ!! で、幾らで──」

 

 ハナビからの提案にボルトが歓喜の声を挙げる。 しかしハナビは静かにある方向に指を刺し……

 

「先生にボルトの事黙っててあげる……ていうお小遣いはどう?」

 

 笑顔でそう呟くとハナビの指の先にいる油女シノの存在に気がついたボルトが顔を青ざめさせる。

 

「っはぁ!? そんなずりィっ……ックソ、シノ先生相手だと逃げられるか分かんね──」

 

 ふとボルトのつく悪態が止まったことに気がついたハナビとサラダ。 目線をシノからボルトに移すとボルトは右目を抑えうずくまっていた。

 

「「っボルト、大丈夫!?」」

 

 どうしたのかとハナビとサラダがボルトの様子を見ようとすると……ボルトは何かしらの症状が治まったのか汗を垂らしつつも普段の表情で

 

「いや、あの火影岩の上がチカッと光ったかのように見えて目が痛くなったんだが……もう大丈夫みたいだ……」

 

 右目をパチパチさせる。 サラダは心配する素振りを見せながら彼の右目を覗き込む。

 

「……何とも無さそうね、ゴミでも入ったのを大げさにしてんじゃないの?」

 

「顔ちけーよ……痛かったもんはいてーんだよ、大げさもクソも……姉ちゃん?」

 

 サラダが至近距離に顔を近づけてくることにうっとおしそうにするボルトだがふと、ハナビが白眼を発動させ火影岩の方へと視線を向けていることに気がつき声をかける。

 

 すると

 

「ん、いや何か異変でも起きてるのかと思って一応の確認をしてみただけよ」

 

 ハナビは白眼を収めると落ち着いた様子でそう告げる。 ふと

 

(……ハナビさん、何か機嫌良くなってる?)

 

 そんなハナビの細かな様子の変化に気がついたサラダが確認を取ろうとすると

 

「ほら、ボルトは体調悪いかもしんないしサラダちゃんに家まで送ってもらいなさい。 シノさんのことは誤魔化しておくし、ちゃんと後でカードの分のお金もあげるから」

 

 ハナビは急かすように2人を人ごみの中まで押しやると、ボルトを探すシノの元へと駆け寄っていったのであった。

 

 人ごみに紛れた2人は

 

「姉ちゃん急にどうしたんだってばさ……ま、ちゃんと金くれるみてーだし良かった良かったっ!」

 

「呑気ねぇ……ほら、取りあえず家までは送ってあげるからちゃんと着いてきてよね」

 

「へいへい……はぁ~これで今月は乗り切れそうだぜ~」

 

 街道の巨大なモニターが映す番組が次のコーナーに移る音声を聞きながら、その場を後にするのであった。

 

 

『それでは次のコーナーのゲストは、あの初代仮面ニンジャーの主演を務めた──』

 

 

 

 

 

 

~~~~~~

 

 

 それから数分後、木ノ葉にあるとある花屋にハナビの姿があった。

 

「いのさーん、いつもの花お願いしまーすっ!!」

 

「わっ……どうしたのハナビ、そんなテンション高めで」

 

 先ほどまでの目的なくうろついていたテンション低めの姿はどこへやら、ハナビは声高々に花の注文をいのにするとあからさまに目を輝かせ

 

「そう言えば、私と同じ花を注文した人来ましたよね!」

 

 といのへと詰め寄る。

 

「え、ええ……まあ、ちょっと前に来たけど……それが何なの?」

 

 いのは困惑したまま、花の支度を済ませるとハナビはお金を手渡しながら素早く置け取り

 

「それが分かれば十分です、ありがとうございまーすっ!」

 

 そそくさと花屋を後にするのであった。

 

「変なの…………いのじん、何か知ってる?」

 

「さぁ? 同じ花の注文をした人ねぇ……どこかで顔見たことある気がするけど……」

 

 ハナビの様子を怪訝に思いながら親子で話を進める。

 

「何、気になるじゃない……デコピンしたら思い出すかしら?」

 

「ちょっ悪いことしてないのにデコピンは理不尽じゃない!?」

 

 

~~~~~~

 

 

 木ノ葉の記念公園。 そこはかつての忍界大戦を経て、平和を願い立てられた特別な公園であった。

 

 休日になるとハナビは必ずそこへ行き……植えられた大樹の元のベンチで寝息を立てていた。

 

 特別な公園であろうとも、十数年経った今ではそんな特別な思いを胸に訪れる人も少なく子どもたちが遊具で遊ばれる普通の公園になっている。

 

 そんな光景こそハナビは目に納めたいと思い、常日ごろから訪れているのであろう。

 

 大樹の下には小さな石碑が1つ、弔うように建てられていた。

 

『平和を願った者』

 

 そう刻まれた石碑には花を供えるための花瓶が置かれており……

 

「……」

 

 ハナビは既にその花瓶に入れられていたものと同じ花を一輪新たに差し込み……手を合わせる。

 

 周囲ではまだ、日も落ちておらず公園で訪れる人の声で溢れていたがハナビは自分だけの世界に集中し……静かな心の中で呟く。

 

『……報告が遅れました、けど……貴方なら喜んでくれる……かはきっと五分五分ですね。

 

 貴方の性格を考えればきっと相応しくないとか何て文句を言っている姿も容易に想像つきます。

 

 それでも決して、私たちは安易な覚悟で結婚をしようなんて思っていません。

 

 ……貴方との約束も……忘れた訳じゃないんです。

 

 ずっと待っている……って約束はしましたけど……私が待ってるだけで終わらないのはきっと貴方も薄々分かっていたんじゃないですか?

 

 ……ふふ、他にもきっと貴方の思い通りに成っていないことの方が多いでしょうけど……心配する必要はないですから。

 

 マリエさんも、皆も……今を生きています。

 

 貴方たちの知らなかった未来という今を必死に……

 

 今でも偶に、貴方がいてくれたらと思うことはあります。

 

 ですが貴方が身を呈したからこそ今があり……これからがある。

 

 我儘を言ってしまえば、覚悟を通した貴方からどんな苦言をネチネチ言われるか分かったものじゃないですからね……

 

 ……何時までも……何度でも……貴方を誇りに思い……私たちは先を進み道を作っていきます』

 

 

 ふと、ハナビが閉じていた目を開けるとふと

 

 

 大樹の麓に仮面をつけた幼い忍びの姿が視……

 

 

 えたような気がしたが、周囲の喧騒がハナビの耳に届くようになるとそれが幻視であったことは直ぐに理解できた。

 

「……仮面付けてたのに、笑顔に見えるわけないもんね」

 

 ふとそう呟いたハナビは屈んだ状態から、足を延ばし立ち上がると大樹を見上げる。

 

「……」

 

 大樹に触れ、ハナビはじっと瞳を閉じて……しばらくその場から動くことはなかった。

 

 

 そして黄昏時、公園の人も少なくなるころふとハナビは目を開ける。

 

「さてと、そろそろ行きますか……久しぶりに」

 

 その呟きと共にハナビは、まるで事前から予定を決めていたかのように駆け出し

 

 

 里の隅にあるとある飲食店へと向かう。

 

 お店の中が電気で明るい事と、扉の前に「貸し切り」の札が出ていることを確認したハナビは

 

 鼻歌まじりでそのお店の中へと足を踏み入れるのであった。

 

 

 ……

 

 

 今日もまた時間が過ぎていく。

 

 きっとそれは楽しいだけじゃなく、辛く悲しい時間の時だってある。

 

 理不尽に、怒りを募らせることだってあるだろう。

 

 先に希望があるなんて誰にも分らない。

 

 けれどだからこそ人は前を向き……心配を胸に抱きながらも歩みを進める。

 

 過去から学び、今を生き、よりよい未来を作る。

 

 それこそ人の成す何よりも尊いことなのだろう。

 

 道が途絶えたなら振り返ることも時には必要だ。

 

 周囲全てが信用できるわけでもない。

 

 だからこそ目標だけは見失ってはいけない。

 

 無駄と思えることも、時には自分の糧となることもある。

 

 全ては自分次第なのだ。

 

 全ては何を目指すのか……

 

 

──少なくとも忍ぶ忍者を目指した少年の築いたこの世界は未だに平和だとは言い切れない……が

 

 

 それでも確実に……変わっていることには違いないはずだ。

 

 よりbetterな方へと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遡ること昼頃。

 

 火影岩の並ぶ崖の上に、人影が前触れなく立っていた。

 

 後方に並ぶ街並みを背にその狐の仮面をつけた人影は崖の上から里の様子を見渡している。

 

 ふとその人物は何かに反応するかのように体を揺らすと耳元の装置に手を当て、1人で話し始めた。

 

「ああ、お疲れ様。 こっちは上手く済んだよ……ああ、ターゲットも確保できたようだし捕虜も傷ついてはない。 

 

 まあ殆ど暗隠れの皆が処理してくれたみたいだけど……と言うかサスケの奴が僕を狙ってきてたぞ。

 

 アンタの情報だとそんな事一ミリも聞いて……あ? 水月? ああ、サボってたのか……

 

 全く、輪廻眼相手だと逃げ切れるかどうかで冷や冷やしたよ。 今後はこういうことないようにして欲しいね……

 

 僕の術を半分見切って睨んできてたよ、次は逃げきれなさそうだ。 ……ホント頼むよ?

 

 え? 今は木ノ葉まで戻って来てるよ、暫く大きな件も無さそうだし僕も僕で他にやることがあるから……

 

 アカデミーの講師? 僕が? 話は通してあるって……こっちの都合も考えてくれよ。

 

 一応木ノ葉での目的は……取りあえず1つは済ませてあるよ、時間はそうかからないし……それでもう1つは……」 

 

 ふとその人物は眼下の里に目を向けると……しばらくの無言の後

 

「ああ、今もう1つの用事の目途もたったから。 取りあえずこのあともう一仕事終えたら……うん、それじゃあ終わったらそっちの件も考えておくよ……」

 

 何かを確認したかのように頷き、会話を止める。 耳元の装置での連絡を終え一息ついたと思った瞬間。

 

 再度の通信でその人物は仮面のしたの表情をしかめる。

 

「はいもしもし……はい、もうすぐ近くまで来てます。 ええ……え!? あと十数秒!? 何で!! 予定だとまだ……ああ、もう行きます行きますっ!!」

 

 会話の内容に慌てふためいたその人物は通信を切ると、忍術の印を結び

 

 

「忍ぶ忍びも楽じゃないな……まあ……俺が好きでやってることだけども」

 

 

 そう呟くと一瞬にしてその場から消え去ってた。

 

 

 静寂が流れるその場に、里のモニターからの音声が響いていた。

 

 『それでは次のコーナーのゲストは、あの初代仮面ニンジャーの主演を務めた雪の国の有名人のあの方ですっ!! それではお呼びいたしましょうっ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 これにて目指すは忍ぶ忍者は終了とさせて頂きます。

 ここまで読んでいただき誠にありがとうございます。
 
 長い間……ホントに長かったな。 私が現実逃避の為に右左も分からずに書き始めたこの小説も一先ず始めから決めていた終わりまで行きつくことが出来ました。

 一応この先も話を考えていはいますが、現実的な話で執筆に時間をかけられなくなっているのが現状のため今回を最終回として区切らせてもらいます。

 
 私自身、物語は終えることにこそ意義があるという思いがあります。 ですので中途半端に更新して、人知れず失踪します。 なんてことはしたくはないので今後更新する場合は書きたい章をひとまとめにして更新すると思います。 次の更新に時間がどれだけかかるかは未知数です、申し訳ないです。

 何度も言いたいですがここまで読んでいただき本当にありがとうございます。
 
 感想やお気に入り、あと今年に入るまで気づいてませんでしたが評価につけられる一言の感想など多くの皆様からの反応があったからこそここまで来ることが出来ました。

 作品自体の出来は残念ながら丁寧でも、優秀でもないと私自身一番分かっています。 しかしそれでもそんな皆様からの反応に一喜一憂しながら作成したこの「目指すは忍ぶ忍者」は私にとってはかけがえのないものであることは変わりません。

 ここまでこの作品を読んでいただき……本当に本当にありがとうございました。

 それでは……最後に

 皆様により良い明日が来ることを心から願っています。
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