IF:仮面ライダージオウ 『アマゾンズ編』   作:TAC/108

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C Part

「仮面、ライダー……?」

「ヤツは……一体……」

 

緑の影はバイクの突撃を受けて吹き飛んだハゲタカの怪人に向かって駆ける。ハゲタカの怪人が起き上がると、彼は立ち止まって構えを取った。

両手を開き、腰を落とした独特の構え。解放と制御の狭間、人にして獣たる者は静かに躙り寄る。

両者が動いたのはほぼ同時だった。跳躍の後、空中から躍り掛かったハゲタカの怪人は、鋭い爪で緑の怪人を引き裂こうとした。緑の怪人は、体を捻って上段に回し蹴りを放った。

金属の衝突するような音が響く。次いで骨肉の砕ける音。ハゲタカの怪人が撃墜され、腕を押さえて蹲っていた。起き上がりざまに殴りかかるも、顔面にパンチを喰らってよろめく。その隙を逃さずに緑の怪人は腰に巻いた機械的な装置の右ハンドルを引き抜いた。

『VIOLENT BREAK』

装置の容積を超えた質量の槍が、黒い液体を纏って現れる。前蹴りで距離を離して勢いよく投げつけると、槍は直線軌道を描いて易々とハゲタカの怪人を貫通した。

一瞥をくれてやることもなく、緑の怪人はアナザーアマゾンネオの方を向いた。緑の怪人の背後で爆発するハゲタカの怪人を見遣り、怒りに満ちた唸り声を上げる。

「ウゥゥゥ……!」

爆風で飛ばされてきた槍をキャッチし、緑の怪人は腰の装置に槍を収納する。二匹の人獣が、静謐の中に凄まじい暴力を隠しながら、一歩一歩距離を詰めていった。

アナザーアマゾンネオが動く。右腕に形成したフックロープを凄まじい速度で飛ばしてきた。緑の怪人はそれに対して、武器を収納したのとは逆の——左ハンドルを捻る。

『VIOLENT PUNISH』

黒い左腕が備える、魚のヒレめいた器官が肥大化した。飛んできたフックロープを右腕で掴み、生体凶器と化した左腕で切断、続いて前方に跳躍して斬り抜ける。一瞬の出来事だった。

刀の血振りめいて左腕を振るう様は、どことなく残心を思わせた。

「強い……!」

「敵だとすれば手強いな……」

ソウゴとゲイツは起き上がって、この戦いの一部始終を目撃していた。アナザーアマゾンネオとの戦いに乱入した緑の怪人。相当な実戦経験を積んでいるのか、僅かな動きでアナザーアマゾンネオをも変身解除に追い込んでしまう戦闘能力は、敵に回せば恐ろしいことこの上ない。

「ア、グぅあ……アア……!」

身体の許容域を超えたダメージ。ついにアナザーアマゾンネオはその変身を解かれた。

「ぐ、う……まだだ、まだ終わっては……」

アナザーアマゾンネオであった中年の男は、目の前の事態には目もくれずに何事かを呟いていた。

 

「そうだな。まだ終わってもらっては困る」

男の言葉に呼応するように、新たな男が現れる。それと同時に、先程まで降り続いていた豪雨の音が止んだ。

雨が止んだのではない。雨粒一つ一つが、空中に静止している。

時間が止まっていた。その場の誰もが停止している。アナザーアマゾンネオであった男と、新たに現れた男を除いては。

即ち、タイムジャッカー・スウォルツである。スウォルツは変身解除時に転がり落ちた、紫色のライドウォッチを拾い上げる。

「お前がお前の目的を果たすための方法は簡単だ。より強くなれ。他者の運命を喰らってでも生き延びてみせろ。物食わぬ生命の限界は浅いものだ」

『AMAZON NEO!』

「ああ……!」

紫色のライドウォッチ、それはアナザーライダーの変身用ライドウォッチだ。アナザーウォッチを再起動させたスウォルツは、アナザーアマゾンネオであった男にウォッチを埋め込んだ。男は再びアナザーライダーとなって、次の目標へ向けて何処かへと跳んでいった。それを見届けたスウォルツも去ると、止まっていた時が動き出した。

 

ソウゴとゲイツは結果として、アナザーライダーを取り逃がすこととなった。タイムジャッカーの介入に対応出来なかったことで、せっかく掴みかけていた手がかりは失われてしまったのだ。

「今の感覚は……タイムジャッカーか!」

「アナザーライダーも逃しちゃったね……」

「怪物にされた男から、何か話が聞けるかもしれん。行くぞ」

ソウゴ達は立ち上がり、ハゲタカの怪人だった男の方へ向かう。後方へと吹き飛ばされたためか、離れた位置にいる。緑の怪人はいつの間にか姿を消していた。

 

「待ってください」

響く第三の声。若い男の声だった。何者かが、ソウゴとゲイツを背後から呼び止めたのだ。

「えっ?」

ソウゴが振り向くと、黄土色のファーコートと緑色のジーンズを着用した若い男が立っている。髪は茶色で、どこか幼さすら感じさせる端正な顔立ちだが、その瞳には強い意志が宿っている。

「貴方達は、アレを追っているんですか?」

「そう……ですけど」

「待て。一つ聞かねばならんことがある」

ゲイツがソウゴを腕で制止し、一つの問いを投げかける。

 

「お前は、誰だ?」

その問いに対して、青年は決然と事実を述べる。

「僕は水澤悠(みずさわはるか)。あの青い『アマゾン』を追っているんだ。そして、僕も人間じゃない。アマゾンだ」

 

アマゾン。それはとある異聞に語られる人喰いの怪物。ある時は街に放たれ、ある時は人間すらアマゾンと化して、様々に生きていた種族である。

彼こそは、ヒトの遺伝子を受け継いで作られた『第三のアマゾン』。

人喰いの新たな階梯にして、完成形(オメガ)へと至ったモノ。

 

彼の名は、仮面ライダーアマゾンオメガ/水澤悠。

 

次回へつづく




次回、仮面ライダージオウ

「私はお前から手を引くべきじゃなかったんだ……!」
明かされるアナザーライダーの真実!

「異なる時空への門となるやもしれん」

「君がもし、彼を最後まで信じるのなら」
試されるゲイツの信頼……?

「俺は勝つ! 未来を生きるために……!」

「アマゾンッ!!」

EP?? 2019:ZONE OF AMAZONZ

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