IF:仮面ライダージオウ 『アマゾンズ編』 作:TAC/108
夜が明けて、午前9時。
ソウゴ達は守衛家に泊まることとなった。互いにある程度の情報交換をしているうちに、いよいよクジゴジ堂に帰るにも遅すぎる時間帯になってしまったからだ。マンションの一室であったために寝室が限られたいたのに加えて、ソウゴ達は来客の身ゆえに遠慮し、リビングの床で寝た。その後、ソウゴが礼二と電話番号を交換し、彼らはマンションを後にした。かくして彼らはクジゴジ堂へと戻ることとなる。
未知にして不可思議のアナザーライダー、アナザーアマゾンネオを倒す。それが今回の目的だ。だが、ソウゴはそれだけで終わらせるつもりなど毛頭なかった。アナザーアマゾンネオの変身者、高坂大介を怪物の道から人の道へ戻さねばならないとソウゴは決意した。それが『最高最善の魔王』を目指す常磐ソウゴの、今回果たすべき責務であると認識していた。
クジゴジ堂へ帰ると、常磐順一郎とツクヨミが出迎える。
「お帰り、ソウゴ君。外泊どうだった? ヨソの家に迷惑掛けたりして……ないよね?」
「大丈夫……だと思うよ! あれ、そういえばゲイツは?」
悠とゲイツの姿が無い。妙だと思ってソウゴはツクヨミに尋ねた。
「今日もニュースで、例の怪人……アマゾンに関する報道があったの。ゲイツと悠さんは調査に行ったわ。記録映像に映った場所をいくつか当たってみるって」
またしてもアマゾンによる事件が発生してしまったらしい。事態は想像しているよりも深刻だった。
「わかった。ウォズ、俺達も行こう」
「我が魔王、一つ提案が」
ウォズがソウゴの前に跪く。彼はツクヨミからタブレット端末を借り受け、地図を画面に表示する。
「恐らくアナザーアマゾンネオは、最終的には我蘭製薬の関連施設を狙うだろう。アマゾンの目撃場所はゲイツ君達に任せ、我々はこちらに行ってみるべきかと」
指針は決まった。後は自分の足で探るだけだ。早速ソウゴは荷物の整理を始めた。その姿を見て、後ろからツクヨミが呼びかける。
「一つ言っておくわ。これまでアマゾンの目撃情報は夜間に集中してたけど、今日のニュースでは日中に現れたって報道されてたの。何か変化があったのかもしれない。気をつけて」
◆◆◆◆◆◆
午前11時。ソウゴは自らのバイクを駆り、街を巡る。アナザーアマゾンネオの出現しそうな場所を絞り込み、二手に分かれて探す。万が一アマゾンに遭遇した場合は、これを撃破する。アマゾンの変身者から情報を得られるならば、可能な限り情報を得る。
かつてハゲタカアマゾンにされた守衛礼二。彼から得られた経験や情報はどれも今回の相手には役立つものであった。
二人で定めた場所を粗方調査し終えて、あらかじめ決めていた合流地点にてソウゴとウォズは再び出会った。
「そっちはどうだった?」
「特に異常は無かった。もしや、と思って警戒を強めてみたが杞憂だったようだね」
周囲を見回す。集合地点は橋の上である。この橋は我蘭製薬の研究施設に近く、何らかの異常が発生した場合に迅速に対処できるように、ソウゴ達はここを集合地点に選んだ。
「ところで我が魔王。少し左に寄ってくれないか」
「え、急にどうしたの? まあいいけど……」
突然妙な要求をしてきたウォズに困惑しつつ、ソウゴは橋の左側に移動する。次の瞬間、虚空に向けてウォズは自身が身に付けるマフラーを勢いよく伸ばした。マフラーが伸びる先にいたのは、不安定な足取りで歩くサラリーマン。
「何してるの!?」
「私の目を欺けると思ったなら大間違いだ。我が魔王、彼はアマゾンだ」
マフラーでサラリーマンを拘束し、空中に放り投げると、サラリーマンが低い唸り声と共にアマゾンに変身した。全身が黒い棘で構成されており、さながら人型のウニである。
ウニアマゾンは体を丸めて死の車輪となって突撃してくるが、ウォズとソウゴは身を翻して避けた。
「ここは私が相手をしよう。我が魔王の手を煩わせるほどの相手でもない」
『ビヨンドライバー!』
『ウォズ!』
ウォズは懐から蛍光色の緑が特徴的なバックルと、ライドウォッチを取り出す。ライドウォッチはソウゴやゲイツが使うものとは全く異なる形状をしており、所謂『スマートウォッチ』に近い。
バックルを腰に装着してベルトを展開。ライドウォッチのスイッチを押して起動させ、ベルトの右側に嵌め込む。
『アクション!』
EDMを思わせる待機音声が流れ始め、ウォズの背後に逢魔降臨暦を思わせる立体映像が投影された。
「変身」
『投影! フューチャータイム!』
立体映像が水色の『ライダー』の四文字へと切り替わり、無数の光の線へと解ける。
『スゴイ! ジダイ! ミライ! 仮面ライダーウォズ! ウォズ!』
光がウォズの体に収縮し、銀と緑の二色が眩しい戦闘形態を形成した。
マッシヴな体躯は機械的でシンプルながら、確かな力強さを秘めている。顔面でV字を形成するアンテナは、時計の針の如く左右の長さが異なる。そして目の部分には水色で『ライダー』の文字が刻まれていた。
それは別の未来から持ち込まれた異物。魔王オーマジオウが救世主によって倒された世界からやってきた、
現在それはこのウォズの手にある。奪ったモノであり、託されたモノ。
彼はこの力を使い、新たな未来を創出し、正しき歴史を記す。
かつては未来の創造者。そして今は——。
「祝え! 過去と未来を読み解き、正しき歴史を記す預言者。その名も仮面ライダーウォズ! 新たなる歴史の1ページである!」
歴史の預言者、仮面ライダーウォズ。
魔王の忠臣として、彼は眼前の敵を打ち払うのだ。
『ジカンデスピア! ヤリスギ!』
ベルトから出力されたは、タッチ
槍モードは取り回しに優れる。素早く振るって三回突くと、緑色の閃光が走った。
「うぐうッ……」
ウニアマゾンが呻く。すかさず斬り上げて空中に浮かせ、返す刀で袈裟斬りにして地面に叩きつけた。
「どうにも手応えが薄いな……」
ウォズは仮面の下で懐疑の表情を浮かべていた。
「誰か助けてくれ……」
助けを求める声。その主はウニアマゾンであった。
「何?」
「ひょっとして……意識がある?」
ウォズの後方に控えるソウゴが推論を述べた。このアマゾンは人間から変えられたものだ。とすれば、目の前のウニアマゾンは人間としての意識を残す個体だったということになる。
「何か聞き出せるかもしれない! ウォズ、あんまり痛めつけすぎないようにね!」
「了解した。多少骨が折れるが、やってみせよう」
『クイズ!』
『アクション!』
別のライドウォッチを、ビヨンドライバーに装填する。
この時代に存在しない、別の未来のライダーの力を宿すライドウォッチ。それは『ミライドウォッチ』と呼ばれる。
仮面ライダーウォズ、彼自身もまたこの時代には存在しないライダーであり、故に彼は自らと同じく未来の力を使うことができる。
彼が取り出したミライドウォッチは、2040年に活躍する仮面ライダーの力を持つ。
『投影! フューチャータイム! ファッション! パッション! クエスチョン! フューチャーリングクイズ! クイズ!』
ウォズの上半身に、赤と青の装甲が追加される。赤い右肩の装甲には
別の未来の2040年にて活躍するライダー、その名は仮面ライダークイズ。正解を答え、世界を救う、○×クイズの仮面ライダー。ウォズは彼の力を使い、正しき未来のために謎を掛ける。
ライダーの力を宿すが、アーマータイムに非ず。未来より顕れる力を行使する形態、人呼んで『フューチャーリング』。
その名も仮面ライダーウォズ・フューチャーリングクイズ。
『ジカンデスピア! ツエスギ!』
ジカンデスピアを杖モードに変形させ、ウォズがゆっくりとウニアマゾンに歩み寄る。
「知性があるならこの問題に答えてみたまえ。問題! 一般にウニとナマコは共に棘皮動物である。○か×か?」
大仰な身振り手振りから、スムーズにクイズを出題する。
「……ナマ、コ……?」
ウニアマゾンが頭を抱える。微睡む意識が首をもたげ、微かに残った人間的知性を発揮しようとしていた。しかし……。
「時間切れ。ちなみに正解は○だ」
正解を出す前に、ウニアマゾンは頭上から雷に打たれた。これがクイズの能力だ。自ら出題したクイズに不正解、あるいは無回答だった相手に、雷撃を浴びせる。非常にトリッキーだが、使いこなせば強力だ。使いこなせるなら、の話だが。
「では第2問。青いバラの花言葉には『不可能』が含まれる。○か×か?」
言うが早いか、ウニアマゾンが駆ける。問題を答えずとも、先にウォズを倒せば良いと判断したようだ。ウォズはジカンデスピアを棒術の要領で振るい、ウニアマゾンを打ち据える。
「回答権は行使して貰えないと困るな。盛り上がりに欠ける」
「ぐぅッ……ば、×……」
不正解。かつて『青い薔薇』という言葉は不可能の象徴としての意味を持っていた。ジカンデスピアの先端から発生した電撃が、縄となってウニアマゾンを縛り上げる。
「よろしい。では最終問題! 私の攻撃は君に当たる。○か、×か!」
『ビヨンドザタイム!』
ウォズはジカンデスピアを空中に投げ上げると、ビヨンドライバーのレバーを引いた。
「あ……!? ば、×で頼む!」
ウォズが空中に飛び上がる。飛び蹴りの体勢に入ると、○と×を象ったパネルが、ウニアマゾンの背後に現れた。雷撃を纏って一直線、飛び蹴りがウニアマゾンに直撃……せずに、遥か後方の地面に突き刺さって爆発した。
「え……せ、正解……?」
「不正解だ!」
『クイズショックブレーク!』
ウォズの手元にジカンデスピア・杖モードが戻ってくる。飛び蹴りを行ったもう一人のウォズは、ジカンデスピアが創り出した幻影だったのだ。
爆発光が消えると、ウニアマゾンだった人型は、スーツを着たサラリーマンに戻っていた。決着を確認し、ウォズは変身を解いた。
「大丈夫ですか!?」
ソウゴとウォズがサラリーマンに駆け寄る。傷を負ってはいるが、重傷というほどではなく、ソウゴは安堵の表情を浮かべた。
「ぐ、またか……」
サラリーマンが譫言のように呟く。『また』とは、とウォズが尋ねた。
「5日くらい前に青い変なのと出くわして、さっきみたいな姿になったんだよ。何が起こってるんだか分からんうちに、緑色のバケモンに倒されて……ソイツに血液検査を受けてくれって言われたから、次の日に会社休んで行ったんだけど、何も異常は無くてさ……」
「(水澤悠、か)……すまないが、所属を教えてくれないか。重要な情報だ」
「我蘭製薬ってトコだよ。前はそこの研究開発部門にいたんだけど、研究施設が焼けてから異動になってな……ってか君ら何者? あんまりウチを詮索して回るのは、若い君達にはオススメできないけど……」
我蘭製薬。やはりアナザーアマゾンネオは、我蘭製薬の関係者を手当たり次第にアマゾンにして回っている。
しかし、同時に厄介なことが明らかになった。一度アマゾンになってしまった人間が、何度でもアマゾンに変身できてしまうということだ。
「ところで、青い変なのって言ってましたけど……今日は見ました?」
「いや、見てないな。ただ……なんか異様なくらい腹が減って、そこから意識がこう、朦朧として……」
「それで今に至る、と。我が魔王、かなり事態は深刻だ。我々が思っている以上に、アナザーアマゾンネオは強力な敵だったようだ」
「そうだね——待ってウォズ、アレ見て!!」
ソウゴが突然声を張り上げて、
飛行可能な鳥類は、一対の大きな羽を筋肉によって制御する。一般にハトの胸部は前面に突き出しているように見えるが、それは飛行するにあたって形状的に都合が良いというだけでなく、胸の筋肉が非常に発達しているからでもある。
そういう意味では、宗教画などに描かれる
しかし、今ソウゴ達が見ているのは、そんな『人型の天使』めいた空飛ぶ異形であった。
六枚の巨大な翼を羽ばたかせて、高層ビル群に向かって飛んでいく青い怪物。遠目ではあったが、紛うことなくアナザーアマゾンネオである。
荒唐無稽を通り越し、驚きが平静を呼び起こす。あんなものを放置しておくわけにもいかない。悠長に構えていれば、多くの犠牲が出るだろう。
ソウゴは『秘策』を実行するため、守衛礼二に電話をかけた。
『お掛けになった電話は、電波の届かない場所にいらっしゃるか、電源が入っていないため、かかりません』
遅きに失した。一度アマゾンになってしまった者が、再びアマゾンになってしまうのなら、礼二もまた、恐らくは……。
「我が魔王!」
ウォズが背後にいたサラリーマンに蹴りを入れた。ソウゴは一瞬驚いたが、サラリーマンの目が虚ろになり、獣じみた唸り声を上げたのを察知して、拳を構える。サラリーマンは全身から蒸気を放出しながら、再びウニアマゾンと化した。
ウニアマゾンはソウゴ達には目もくれず、アナザーアマゾンネオが飛び去った方角へと走っていく。
「逃げられたか……」
「でも……ある意味チャンスだ、アナザーアマゾンネオを追う。ウォズも後で合流しよう」
「私に何を任せると?」
「街には人が大勢いるハズだ! 一人でも多く避難させて!」
ソウゴはライドストライカーを展開して走り去る。アマゾンの特性はソウゴにとって未知数だ。いつアマゾン達が無差別に人を襲い始めるかも分からない。
「やはり、人使いの荒い魔王だ……」
『シノビ!』
ウォズが新たなミライドウォッチを取り出す。魔王からの命を果たすために、彼もまた独自に動き始めた。
B Part-2につづく。