この素晴らしい世界に祝福を!アナザー・ユニバース・アイアンマン   作:Tony.Stank

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キャプテンアメリカ・ブレイブ・ニュー・ワールドを見てきました。

人に親身に寄り添えるサムにしかなれない新しいキャプテンアメリカの誕生に心が躍りました。
マジで面白かったのでみんなも見に行きましょう




第46話 Mk.47

 

 比喩でもなんでもなく、トニーがめちゃくちゃ光ってる。

 

 月明かりのみが光源だった草原は、今や昼間のように明るくなっていた。

 トニーが急に眩しくなったので目を閉じたら、次目を開けた瞬間にはマクスウェルをパンチでぶっ飛ばしていた。

 それはそれはもうコミックのような勢いで。

 

「すっげぇ……!」

 

 思わず声が漏れた。

 テスト起動でも見たが……。

 

 ──攻撃特化仕様。

 ──自壊する程のエネルギー。

 ──時間制限付き。

 

 ……うん、ロボットアニメでこんなのを何度も見たことある。

 まさか実物を見れる日が来るとは。

 

 めぐみんに至ってはさっきからうるさいくらい叫んでる。

 紅魔族の琴線に触れまくりなのだろう。

 

 俺にも気持ちは分かる。

 

「いいぞトニー! マクスウェルは防戦一方だ! たたみこめ!」

 

 ダクネスの声に、トニーが背中越しに答えた。

 目視できる程の推進リパルサーを足裏から噴射し、マクスウェルの顎に目にも止まらぬ速さでサマーソルトキックをお見舞いする。

 

「サマソゥ!」

「舌噛むから寝そべりながら叫ぶなって!」

 

 興奮しっぱなしのめぐみんが本当にうるさい。

 

 光線やミサイルと言った近代的な装備で戦うアイアンマンが、ここに来てまさかの超肉弾戦。

 

 胴体に高速のジャブを打ち、頭部に後ろ回し蹴りをお見舞いし、敵の攻撃をいなして反撃のストレートを叩き込む。

 以前トニーが見せてくれた、キャプテン・アメリカの戦闘資料動画とよく似た体捌きだ。

 

 闇夜を引き裂くかのように光の線がパンチやキックの軌跡をなぞり。

 飛び散る粒子が星空のように瞬く。

 

 繰り広げられているのはこの惑星最大級の殴り合いだが……。

 

 それは、息を飲むほどに美しかった。

 

「ヒューッ……痛い……」

 

 体のあちこちがひび割れ始めたマクスウェルが、やがてトニーから逃げるように下がり始める。

 

 ……マクスウェルからしてみれば、いきなり召喚されたかと思えば奴隷扱いされ、契約を踏み倒されたあげく今こうしてボッコボコにされている。

 

 悪魔とはいえ、さすがに同情する。

 バニルがさっさと地獄に戻したがるのも納得だ。

 

 これでマクスウェルがアルダープのオッサンにメロメロだというのだからタチが悪い。

 もしかしてダクネスみたいな性癖してるんじゃなかろうか……? 

 

「おいダクネス!」

「な、なんだ!?」

「アイツお前の仲間かもしれないぞ!」

「貴様! いきなり私を悪魔の同族扱いとはどういうことだ! 先にお前をぶっ殺すぞ!」

「おばばばばば! 敵あっち! 敵あっち!!」

 

 激昂したダクネスが、俺の胸倉をつかんで揺さぶる。

 脳みそがババロアみたいに揺れるのを感じるし、床で寝てるめぐみんの視線が冷たい。

 

「といっても……あとはトニーが悪魔をブチのめすヒーローショーで終わりでは……? 懸念点はありますが、余裕はあるはずです」

 

 めぐみんが輝くトニーに紅のスポットライトを当てながらそう呟く。

 

 さっきは俺に冷たい視線を向けてたってのに。

 スーツに視線を移した瞬間にリモコンみたいに切り替わりやがった。

 

「アクアがちゃんと食い止めれてると良いんだけどな」

 

 俺は一応アクアの方も確認するが、泣き叫びながらも悪魔達の攻撃をかわしつつ何とか倒していた。

 あいつは本当に悪魔相手になると心強いなぁ……。

 

 ダクネスの折檻から解放された俺は再びトニーに視線を戻し、一応弓に矢をつがえる。

 

 たしかにこのままトニーが圧勝しそうとはいえ、より確実に倒しに行くためのサポートくらいはしないとな。

 ……あと、俺も大悪魔討伐に関わった者として少しでも功績を残してチヤホヤされたい。

 

 そんな考えを見透かされたのか、めぐみんが俺に再び冷たい視線を向けてきた。

 熱視線をトニーに向けたり絶対零度の視線を俺に向けたりと、めぐみんの目は忙しそうだ。

 

「カズマ、トニーは今集中していますから、邪魔してはいけませんよ?」

「いやしねーから! ちょっとサポートするだけだから!!」

 

 トニーから距離を放そうとしたマクスウェルの足元を狙撃してやろう。

 スーツから迸る光の粒子のおかげで、今なら俺の矢も当たるはずだ。

 

「そのまま……そのまま……」

 

 よく狙いを定めて、弓を引き絞り……。

 

「今だ! 狙げ──」

 

 マクスウェルの脚を撃ち抜こうとした、その時だった。

 

 

 

 

 

「マクス……! 時間だ! 時間を稼ぐのだ……!」

 

 声が聞こえた方に目を向けると、そこにはアルダープがよろめきながらも立っていた。

 

「マクス! 考えろ! それだけ強力な神器なら、なぜ最初から使わなかったと思う!? 簡単なことだ! 時間制限があるに決まってる!」

 

 あのオッサン、余計なことを……! 

 

「スケベでコスいこと思いつくあたり、カズマに似てますね」

「うるせーよ!」

 

 俺は衝撃波を出す矢尻を装填し、アルダープを気絶させようと矢を放つ。

 

 アルダープの眼前で炸裂するかに思えたその矢は、マクスウェルから放たれた魔法によって撃ち落とされてしまった。

 

 クソッ! 悪運の強い……! 

 

「ヒュー……うん、分かった……分かったよアルダープ!」

「スタークの後ろにいるガキ共を狙え! ただし、ララティーナは傷つけるな!」

「うん! うん! やってみるよ!」

 

 ぐるりとマクスウェルの首がこちらに向き、一瞬にして姿が掻き消える。

 気付いた頃には、俺の目の前で貫手を構えていた。

 

「おああああーっ! ヤ、ヤバッ……」

 

 みぞおちに突き刺さる寸前。

 

「無視するなよ。僕じゃ君のダンス相手は務まらなかった?」

 

 横から伸びたトニーの手がマクスウェルの手首を抑え、軽口と共にぶん投げる。

 

「続けろマクス!!」

 

 アルダープが空を舞うマクスウェルへ叫ぶ。

 

 空中で姿勢を整え即座に着地し、地面を踏み砕いて高速で飛び出した。

 

「ちょっ……!」

 

 動けずに転がっている、めぐみん目掛けて。

 

「させん!」

 

 今度はダクネスが間に飛び込み、地面でイモムシみたいにバタつくめぐみんへ振り下ろした手刀を防ぐ。

 

 大悪魔の一撃。

 ダクネスの防御力越しでも、鎧が軋む。

 

「ぐっ……! この……!」

 

 マクスウェルの腕を払い、胸からエアバーストを放ちぶっ飛ばした。

 

 自分がいたぶられる前に敵を倒してしまうからという、頭が痛くなるような理由でエアバーストを封印してるダクネスがこうもあっさり使うとは……。

 

「マクス! ララティーナは傷つけるなと言っただろうが!」

「ヒュー……ごめんね、アルダープ……」

 

 怒鳴りつけられたマクスウェルが、縮こまる。

 

 本当に理不尽な扱いだ……。

 

「カズマはめぐみんの近くに立て。ダクネスが二人を守りやすくなる。余裕があれば僕を援護をしろ、アクアの聖水漬けにした矢なら効くはずだ」

「わ、わかった!」

「あの悪魔は僕に任せろ。月夜に悪魔と踊るのは初めてだが、あいにく踊りには自信がある」

 

 トニーがマクスウェルに向かい、ファイティングポーズを取る。

 地面を踏み込み、距離を取ろうと……、

 

 

 ──バキッ

 

「えっ」

 

 自然と声が漏れてしまった。

 

 何かが砕けたような音に猛烈に嫌な予感がする。

 

「フライデー? トニーのスーツ大丈夫そう?」

『一部のパーツが破損。粒子の流れが乱れています』

 

 インカム越しにフライデーがトニーの不調を答えた。

 

「……さ、流石はトニーですね。あえてピンチを作ってから逆転する流れを作ろうという紅魔族的考えが……」

「いやいやいや! 絶対違うだろ!」

 

 これはもしかしなくても……! 

 

「はははは! 見ろ! スタークの鎧が勝手に壊れているぞ! ワシの言った通りだ!」

「ヒューヒューヒュー!! 眩しい嫌な力も弱まってる!」

 

 最悪だ! 

 ていうかトニーがMk.47のテスト運用してる時はMk.46の外骨格パーツと併用してたはずだ。

 

 マクスウェルとの序盤の攻防に散々使わされた上に、予備のパーツを積んだクインジェットが落とされたからか……! 

 

「ヒュー……! また楽しく遊べそうだね!」

「……ッ!」

 

 さっきまでは余裕で捌いていたマクスウェルの魔法混じりの攻撃に、少しずつトニーが押され続けている。

 

 マズイ……! 

 

「スターク! いつもの軽口はどうした! んん? はははは!!」

 

 クソ! あのオヤジ腹立つ! 

 

「あー……、あんたにどう謝ろうかずっと考えてたのさ。お家を吹き飛ばしちゃったからな。あぁ、あとそのバレバレのカツラも」

「マクスッ! さっさとコイツをブチ殺せぇええっ!」

 

 このオヤジも大概だったわ。

 

「カズマ! このままでは……!」

「アクアは……駄目だ、まだ悪魔と鬼ごっこしてる」

 

 アクアに俺とダクネスで加勢して、マクスウェルの配下を倒してからトニーの元へ……いや、間に合わない! 

 

 解決策が浮かばないジリ貧な状況の中で、先に手札を切ったのは……。

 

「ハァ……やめだ」

 

 逆転されかけていたトニーだった。

 トニーは気だるそうに体の力を抜いて。

 

「Mk.47、オフライン」

 

 ため息混じりにそう呟いた。

 

 スーツを覆っていた光の粒子が霧散し、元のMk.45の姿に戻る。

 ところどころ塗装が禿げ、パーツがあちこち歪んでいた。

 

 ……えっ。

 

「「「トニー!?」」」

 

 その場でトニーを見ていた三人の声がハモった。

 

 いや、何してんだコイツ!? 

 

「トニー!? どうしたというのだ!? まさか、お前も目覚め……」

「やめろ、二度と僕を仲間扱いするな猥褻クルセイダー」

「んっ……」

「こんな状況で特殊なプレイを始めんな! いや、違う! マジで何してんだトニー!」

 

 あまりの異常事態にマクスウェルもアルダープもぽかんとしている。

 

「なんのつもりだスターク……!」

 

 ハッと我に返り睨みつけるアルダープに、トニーは鼻で笑いながら。

 

「別に? これで十分だとおもっただけさ。僕はどこかの誰かと違ってマゾヒストじゃないんでね。あんなのずっとつけてられるか」

 

 あっけらかんと答えた。

 ネタにされたダクネスも怒るどころか目を丸くしている。

 

 なんだその顔。

 

「この劣勢で何をほざいておるのだ? 寿命が短くなっただけだろう」

「あんたよりはある。鏡を見ればわかるだろ? 捻じ曲げる力でも体型はどうしようもなかったみたいだな。生活習慣病に気をつけとけ、ボストロール」

 

 トニーの強烈な煽りに、アルダープは眉間に皺を寄せ、顔を赤黒く染めて叫ぶ。

 

「キサマ……ッ! 今決めた! キサマだけはこの手で嬲り殺す! マクス! スタークの鎧を砕き、殺さぬ程度に痛めつけてワシの元へと持ってこい!!」

「ヒューッ! ヒューッ! 良い悪感情だねアルダープ! わかったよ! 連れてくるね!」

 

 マクスウェルがトニーの元へ飛び込む。

 紙一重でギリギリかわしたところで、反撃のリパルサーを放って牽制した。

 

 スーツから溢れた光の粒子がまだ空気中に漂っている為、辛うじてマクスウェルの力は封じ込められてるらしい。

 

「あいつ、なんであんなことを……」

 

 あえて不利な手を選んだトニーが理解出来ずに首を捻っていると。

 

「……私たちを守るためです」

 

 歯ぎしりを交えて、めぐみんがそう答えた。

 

「マクスウェルが我々を狙い始めたから、トニーは自分にだけ狙いが行くように仕向けたんですよ……!」

 

 悔しそうな声色で、めぐみんは言葉を続ける。

 

「私が……爆裂魔法一発で倒れてなければ……!」

「……今はそんなこと言ったってしょうがないだろ。俺なんて、爆発する矢で嫌がらせして煽っただけだぞ。お前はお前で仕事したんだから、それでいいじゃん」

「むぅ……」

 

 めぐみんは納得いかなそうに唸る。

 

「今は俺たちにできる事をしようぜ。お前も知能高いんだから、なんか考えろよ」

「……わかりました」

 

 深呼吸をして、周囲を注意深く観察するめぐみん。

 俺もスーツの残骸からなにか使えるものはないかと探していると、ダクネスが俺の後ろから声をかけてきた。

 

「カズマ、めぐみん。私に作戦が──!」

 

 

 ▽

 

 さて、さっきのでダクネスに意図が伝わってるといいのだが。

 

 若干望み薄な期待をしていると。

 

「……それで、遺言は思いついたか? スターク……!」

 

 アルダープが下卑た笑みに顔を歪ませていた。

 

 遺言ねぇ……。

 

「そうだな……あぁ、明日の朝刊の見出しにこう書いて欲しいんだ──」

 

 僕はマスクを空け、アルダープより口角を上げて笑う。

 

「──『三流領主、たった一夜で素寒貧!』」

「殺す」

 

 もはや怒りを通り越してしまったか、アルダープはその顔から笑みを消し去り、自覚すらしてないかのような声色で殺意を吐いた。

 

「ヒューッ! ヒューッ! ヒューッ! 君は凄いよ! アルダープからあんなに悪感情を出せるなんて!」

 

 まさか悪魔にお墨付きをもらえるとは。

 

 だが、誇らしげにしてる場合じゃない。

 致命的な威力を誇る一撃が、絶え間なく僕を襲う。

 

 それらを刹那でいなして、弾いて、身を捻って命をつなぎとめる。

 

『ボス、あきらかに劣勢です』

「わかってる!」

 

 フライデーの忠告を無視して、マクスウェル相手にタイマンを張り続ける。

 

 アルダープを散々煽った甲斐があった。

 生け捕りに固執してなければ、今頃マクスウェルの魔法弾幕でバラバラにされてたかもしれない。

 

「ヒュー……ッ、ねぇねぇ、何が狙いなの?」

 

 ただの馬鹿では無いのか。

 なにかに気がついたようなマクスウェルが僕に問いかける。

 

 僕は掌から推進リパルサーを放ち、マクスウェルの顔面に裏拳をかます。

 

「……ヒュー……、ヒューッ、焦燥の悪感情を感じるよ」

 

 殴られた頬を擦りながら、マクスウェルが笑みを浮かべた。

 今度はリパルサーを直接顔面に放とうと掌を向ける。

 

 それが、悪手だと気がついたのは。

 

「つかまえた」

 

 一瞬で間合いを詰めたマクスウェルに、手首を掴まれてからだった。

 

 マクスウェルの手刀が光り輝く。

 

 これはマズイ。

 

「脱出!」

 

 スーツの腕部を強制解除し、一気に手を引き抜く。

 その影を、一筋の閃光が通り過ぎた。

 

「トッ……」

 

 ダクネスが詰まったような息を出す。

 僕の目の前に、引き裂かれたスーツの腕部と……、

 

『ボス、即座に止血を』

 

 僕自身の、手首が転がっていた。

 

「AGHHHH……!」

 

 思わず手を抑えて呻く。

 アルダープの笑い声がベッタリと耳にこだました。

 

『エピネフリンを投与。人造血液を投与』

 

 スーツ内の機能で様々な薬品を投与し、手首からの出血を軽減する。

 

 ある程度痛い目見る覚悟はあったが、まさか手を持ってかれるとは。

 この世界に生命保険が無いのが残念だ。

 

「ヒュー……手が取れちゃったのに、絶望の悪感情が沸かない……」

 

 好みの悪感情とやらを出さない僕が気に食わないのか、張り付けたような笑みが少し薄れた。

 

 空に舞う光の粒子がマクスウェルに当たると、ジリッと水滴が蒸発したような音と共に消える。

 ついに笑みは失せ、顔が少し歪みはじめた。

 

「これも……邪魔……」

 

 腕の一振りで、風の上級魔法が光の粒子を。

 

 ……どうやら気が付かれたらしい。

 残留した粒子も、仰げば散る。当然だ。

 頭が物理的に足りてなくても、勘で察したのだろうか。

 

 光の粒子が霧散し、暗闇が戻ってくる。

 

 だが……時間は十分稼いだはずだ。

 

 地面に膝を着く僕に、マクスウェルがにじり寄る。

 残虐そうな笑みを浮かべて。

 

「脚ももぎ取ったら絶望するかな……?」

 

 マクスウェルが僕の脚につかみかかろうと手を伸ばした時だった。

 

「マ、マクスッ!」

「!」

 

 突然響いた声に、マクスウェルが動きを止める。

 

「どうしたの? アルダープ……。今、そっちにもぎ取った脚とお人形さん連れてってあげるからね」

「違う! 良く見ろ! スタークだ! そいつの……」

 

 ……まったく。

 

「──そいつの胸を見ろ! さっきまでついてた妙な機械がなくなってるぞ!!」

 

 完璧なキメゼリフと一緒にネタ晴らししたかったのに。

 

「!」

 

 僕の背後で、光が溢れる。

 夜明けよりも燦然と、どんな炎よりも暖かく。

 

「なっ……!」

 

 Mk.47は、あくまでも外付けパーツ。

 粒子が亜光速で体表を移動する摩擦に耐えられるように、スーツの外側に装着しなくてはならない。

 

 ……つまり。

 

 僕のスーツにすら匹敵する程防御力の高いヤツが。

 亜光速の粒子に撫で回されても平気そうなヤツが。

 

「いいね。一足早いクリスマスってところかな」

 

 ──硬さだけが取り柄のクルセイダーとかなら、直接身に着けたって良いワケだ。

 

「そ、その姿はなんだ……!?」

 

 信じられないものを見るような目線を、アルダープが向ける。

 僕の背後。

 

「ララティーナ……ッ!!」

 

 光り輝く、ダクネスへと。

 

「HAHA、素敵なドレスじゃないか、お嬢様。ご感想は?」

「……素晴らしい。今まで……」

 

 調子を確かめるかのように、目を落として拳を握ったり開いたりするダクネス。

 下を向いてるから顔色はうかがえないが、それでも僕にはわかる。

 

「いまっ……今まで身に着けた……どど、どんなものよりもッ……」

 

 カッと、ダクネスが天を仰いで目を見開く。

 

「着心地がたまりゃああああああああああああんんん!!!!」

 

 その咆哮は、闇夜を裂いて雲すら貫かん程だった。

 

 僕が作り上げたMk.47。

 

 ──神聖な光の粒子による激しい試練を与え、その身を祝福し神格化させる装置。

 

 なんとなく、僕よりダクネスが装着した方が似合いそうだなと思いながら名付けた。

 

 その名も……、

 

 

Deified Ordeal Machine(神格化試練装置)

 

 略してDo M(ドM)

 

 我ながら最悪のネーミングだ。

 

「ら、ららてぃーな……?」

 

 口が半開きになり、目が白黒するアルダープ。

 

 こればっかりは……少しは同情する。

 

「さあ覚悟はいいか? そう易々と倒せるなどと思うなよ」

 

 体の調子を確かめるかのように、ダクネスが腕を回す。

 粒子が舞い、彼女を切り裂くが、まるで気にする様子は無い。

 

「ヒュー……!」

 

 無視できない存在だと悟ったか。

 マクスウェルは距離を取り、視線を僕からダクネスへと移す。

 

「ゆくぞ!」

 

 ダクネスの跳躍はひとっ飛びで僕の横を抜け、マクスウェルへと一直線。

 

 まるで彗星だ。

 

「あっ……」

「……どこいくの?」

 

 ……あくまでも勢いだけは。

 まさに彗星の如く華麗に光の尾を引いてマクスウェルの横を通り抜ける。

 

 だが……悲しいことにそんな事はみんなわかりきったことだった。

 そう、わかりきっていたからこそ。

 

「ダクネス! 手を貸しますよ!」

 

 メジャーリーガーばりのスライディングを地面に決めそうなダクネスの背後を、めぐみんの声に続いて二つの小さな光が追いかける。

 

 その光たちは、円を描いてダクネスへと飛び、その手を包んだ。

 そして、僕の手にも同じものがもう一対。

 

「たすかるッ!」

 

 ダクネスと僕の手を包んだのは、鋼鉄製の巨大な篭手。

 ひと目でMk.46のパーツを流用したものだと見て取れた。

 

 僕が腕を振ると……ダクネスも連動するように腕を振る。

 

「新しいオモチャなら……ボクにも遊ばせてよ!」

 

 腕を振り上げ、空間ごと切り裂かんばかりの手刀がダクネスを襲う。

 

 首に手刀がめり込まんとしたその時。

 

「ヒュッ……!?」

 

 輝く鋼鉄の拳が、マクスウェルの顔面にめり込んでいた。

 華麗なクロスカウンター。

 

 スポーツ新聞の一面を飾れそうだ。

 

「当たった……! ハハハハ! 当たったぞ!」

 

 自分の攻撃が当たったことに大喜びするダクネス。

 

 僕がマクスウェル相手に時間を稼いでる間に、カズマが必死こいて集めたMk.46の散らばったパーツを、めぐみんが繋ぎ合わせて作り上げた篭手。

 母機である僕の篭手の動きを、ダクネスが装着する子機の腕がトレースして動く。

 

 これなら、ダクネスでも攻撃を与えられる。

 拳を振るうのは僕なのだから。

 

 流石はめぐみん。

 だが、それよりも確かめたいことが。

 

「土壇場の賭けとはいえ、よくスティールで僕のMk.47だけかすめとれたな」

「何言ってんだ。流石にリスクが高すぎたから他の方法にしたよ」

 

 カズマは自分の弓をコンコン叩きながら。

 

「戦ってる隙間を縫って、紐と鉤を括り付けた矢を放って剥ぎ取ったんだよ。わざと取れやすいようにしてたろ?」

 

 理屈はわかるが、相当な弓の腕と幸運がなければ、あんな激しい戦闘の合間にそんな繊細な動きはできないはず。

 

「僕と君なら、ラスベガスを一夜でシャッター街にできそうだな」

「……怖いからやらない。ちなみに、ダクネスから作戦があるって声かけられたワケなんだが、アイツはMk.47を装着したいとしか言わなかったぞ」

「HAHAHAHA!!」

 

 そりゃ、笑うってもんだ。

 そこしか伝わってないことも。

 それでカズマとめぐみんが察して動けたことも。

 

 笑ったおかげで痛みも和らいだ。

 ……さぁ、今度こそ。

 

「ダクネス」

 

 僕の声に、ダクネスが背中越しに顔だけをちらりとこちらに向けてくる。

 

「──みんなで戦うぞ」

 

 へッと、ダクネスに笑いかけた。

 釣られてカズマとめぐみんも。

 

 そして、遠くで悪魔を蹴散らし続けるアクアも。

 

 僕らのふざけた軽薄な笑顔にダクネスは。

 

「……ッ! ああ! 当然だ!」

 

 自身を包む粒子よりも明るい、とびっきりの笑顔で答えた──! 

 

 

 

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