ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝 リターンズ 作:ヴァルナル
お待たせしましたぁ!
開会式が終わると、参列していた人達は各々、石碑の前で祈りを捧げていった。
俺達もまたその場で祈りを捧げた。
精霊石から発せられる波動で少し肌がピリピリするけど、大したことじゃない。
今はただ、かつての戦友達や亡くなった人達に想うだけ。
祈りを捧げても頭痛がしなかったのは幸いだな。
祈る対象が聖書の神ではないからなのか、ここが異世界だからかのかは分からないけどね。
おっさんは立ち上がると俺達に言った。
「もう少しいたい気持ちも分かるが、俺達がここに留まってたんじゃ、後ろに迷惑がかかる。このあたりで一旦離れるぞ」
「それもそうだな。この後のプランって何か考えてるのか?」
俺が尋ねるとおっさんは町の方を指差した。
「祭を見て回る前に宿に行く。一息つきたいしな」
あー、確かにそれが良いかも。
朝早くから動いていたし、一度ゆっくりしたいよね。
アザゼル先生がおっさんに尋ねた。
「宿はとってあるのか?」
「ああ。優秀な後任に頼んでおいたからな」
アーデルハイドさんに投げただけじゃん!
元部下とはいえ、現職の騎士団長に宿を手配させるってどんだけ!?
流石にアーデルハイドさん本人が手配した訳ではないと思うけど!
しかし、この人数でよく手配できたもんだな。
これだけの盛況ぶりじゃすぐに埋まってしまいそうだけど。
おっさんが不敵な笑みを浮かべて言う。
「ふっ、騎士団長の権力ってやつだ。祭の宿を取るくらいわけないさ」
「どんなところで権力使ってんだ!?」
なんつーしょうもない使い方してんの!?
騎士団長の権力ってもっと他にあるよね!?
「ちなみに、飲み会の店も騎士団長の権力を振りかざせば一発よ。えっへん」
「だから、そんなところで権力使うなよ!? 権力の無駄遣いじゃねーか! つーか、良いの!? 騎士団長の権力で誇ることそんなので良いの!?」
そんなドヤ顔されても共感できねーよ!
もっと別な使い方で威張ってくんない!?
と、おっさんへのツッコミをしつつも、俺達はアーデルハイドさんが予約してくれた宿に移動することにした。
この町の地図を見る限り、目的の宿がありそうなのは南の商業地区だろう。
実際、ここに来るまでに宿は何軒か見かけているしね。
おっさんが言う。
「どうやら一般向けの宿ではないらしい。都市庁舎の近くに王族貴族、議員向けの施設があってな。そこに世話になるみたいだ」
その横では、アリスがうんうんと頷いていて、
「ま、そうなるでしょうね。私達の立場的に」
半分は旅行気分とはいえ、俺達は異世界からの使者、使節団みたいなものだ。
アーデルハイドさんの言っていたように、かなり重要な立ち位置になってくるだろう。
流石にそんな存在を一般の宿には泊められないか。
それ以前に元王女姉妹と前騎士団長がいるんだ。
雑には扱えないよな。
「アーデルハイド騎士団長に感謝して、お祭りを楽しむとしましょう」
リーシャの言葉に頷きつつ、俺達は鎮魂祭に繰り出すのだった。
▽
鎮魂祭という名前から厳かな行事だと想像していたが、実際はそういうわけではない。
開会式と閉会式以外は一般的な祭と変わらないみたいだ。
ルシアから貰った都市の地図には、祭のプログラムも入っていて、祭の期間中に開催されるイベントも載っていた。
俺達はプログラムを見ながら、町を歩いていく。
「思っていたより出店が多いわね。どこから回ろうか………むむむ」
「レイナ先輩、向こうにこの世界のスイーツが集まったコーナーがあるそうです。祭期間中に制覇するのも一興かもしれません」
「なるほど、アツいわね」
「行かねばな」
目を光らせる小猫ちゃんとレイナ、そしてサラ。
ざっと見ただけでもかなりの種類があるけど、これを制覇するつもりなのかよ………。
スイーツ女子も極めるとこうなるのね。
同じく地図を見ながらリアスと朱乃が話していた。
「工芸品を扱う店舗もあるようね。お土産に良さそうなものがあるかもしれないわね」
「私も父様に何か買って帰ろうかしら。でも、リアス。また買い込むとヴェネラナ様に叱られますよ」
「そ、そんなことしないわよ? 今回は節度を持って、買い物するつもりだもの」
目を泳がせるリアス。
これは油断すると色々買い込みそうだな。
アスト・アーデでじっくり買い物する機会なんて、これまで無かったし、存分に満喫してほしいところだが………。
お怒りのヴェネラナさんと涙目のリアスが目に浮かぶよ。
お買い物は計画的にな、リアス。
その隣ではロセとソーナ、リーシャが話していて、三人は学園地区で開かれるイベントに興味があるようだ。
「リーシャさんと美羽さんにはこちらの世界の魔法を教えていただきましたが、他にどんな魔法があるのか楽しみです」
「私は魔法も気になりますが、魔法学園の授業や生徒の様子がまた見てみたいですね。今後の参考になりそうです」
「期間中、授業はないようですが、研究室の発表や学生主体の催しがあるようです。学園祭みたいなものですね」
「リーシャさんが勤めていた魔法学校にも学園祭はあったんですか?」
「ありましたよ。メイド喫茶とか人気でしたね。私もメイドの格好をしてお客さんをもてなしたものです」
「こっちの世界にもメイド喫茶ってあるんですか!?」
そうなの!?
俺も初耳なんですけど!?
ちくしょう、リーシャのメイド姿とか最高じゃないか!
俺もお目にかかりたかったよ!
………今度お願いしてみよう。
「イベントもあるようだし、どこから見て回るか迷うわ。ねぇ、ゼノヴィアはどこに行くか決めた?」
「格闘技大会があるらしい。ここに行こうと思う。イリナも行くか?」
「格闘技大会って………一応、死者の魂を悼む行事なのよね?」
「そういう悼み方もあるのだろう。先程すれ違った人も強者の気配がした。これは楽しみだね」
などと話しているイリナとゼノヴィア。
格闘技大会と聞いて、プログラムを見ると本当にあった。
しかも、予選から本選まであるようでかなり本格的な大会になってるんだけど。
木場が苦笑する。
「人族と魔族の親睦を深める目的があるのかもしれないね。こう言うとゼノヴィアみたいになるけど、拳で語るってことなんじゃないかな?」
「おい木場。それは私に失礼じゃないだろうか」
モーリスのおっさんが言う。
「種族に関係なく純粋に武を極めようとする奴らはいる。せっかくの祭だってことで、そいつら集めて盛り上げようってさ」
終戦から数年。
戦争なんて真っ平ごめんだって人が大半と思うが、中には血の気の多い奴もいる。
ただ、それは憎悪からくるものではない。
己の力をただ高めたい、強いやつと戦いたい。
ようするにヴァーリみたいなバトルマニアだ。
アリスが思い出したように言ってくる。
「もしかしたら、あいつも出るんじゃない? ほら、あんたを見つける度に突っ込んできてた」
「あー………いたな、そんなの」
うん、いましたよ、そんなの。
会う度会う度、突撃してきた野郎が。
木場が聞いてくる。
「魔族の人かい?」
「まぁな。美羽ならなんとなく分かるんじゃないか?」
話を振ると、美羽は苦笑していた。
「アハハ……。大体の見当はついたよ。悪い人じゃないんだけどね?」
「遭遇したら、俺は全力で隠れるからな? こんな町中でドンパチできるかよ」
あいつのことだ、町中だろうと突撃してきそうで恐いんだよ。
流石に元魔王の右腕であるルシア市長のお膝元で騒ぎを起こすほど馬鹿じゃないだろうけど………。
この町全体を挙げての祭なもんで、店もイベントも盛りだくさんだ。
一先ずは各自で気になったものを見ようということで、数人のグループに別れて探索することになった。
▽
俺は美羽、リーシャ、ロセ、ソーナ、そして匙と共に学園地区に訪れている。
学園地区はその名の通り、学校があり、そこに通う学生と教員が主に活動している地区だ。
ただ、学生と言ってもそこに通うのは子供とは限らない。
リーシャが言う。
「新設された学園――――ゼレン魔法学園は子供から大人、お年寄りの方まで自由に学ぶことができる場所なのですよ」
リーシャが指差す方を見ると、白を基調にした服を着た人達が行き交っている。
あれがここの制服なのだろうか。
老若男女、種族を問わずに何やら講義のことで話し合っているグループもいる。
ソーナが尋ねる。
「お年寄りもいらっしゃるのですね」
「ええ。意欲さえあれば受け入れる方針を取っているようです。多少の学費と卒業時に成果が必要になりますが」
「成果ですか?」
「学科によりますね。魔法やその他の学問であれば、研究のレポート。武芸科であれば、一定の実力があることを試験で示す。あ、料理科であればその手際と味が審査されると聞きましたね」
「魔法学園なのですよね? 武芸はともかく、料理科まであるとは」
「魔法学園と銘打ってますが、その実はなんでも学べる場所になってますよ。魔法、武芸から医学、農学に工学に料理。読み書き算数のようなものまで。こちらの世界では長く争いが続いていたこともあり、教育が行き届いていませんでしたからね。これを機に教育の普及と、それと併せて生活水準を高めたいという意図があるようです」
リーシャの解説に匙が問う。
「それじゃあ、なんで『魔法』学園なんですかね?」
「色々な案が出たそうですが、最終的にくじ引きで決めたとか」
「テキトー過ぎでしょ!?」
「魔法を学ぶ学生の割合が多いそうなので、結果オーライですね♪」
「それで良いんですか!? そんなテキトーな感じで良いんですか!?」
匙のツッコミは最もだが、無難な名前になったんで、それでよかったんだろう。
俺はそう思うことにしよう。
ゼレン魔法学園の規模はかなり大きい。
なにせ、学園地区全体が学校のようなものだからな。
学園地区には複数の校舎があり、学課ごとに別れている。
更に大きな図書館、学食、授業に使う備品、雑貨を取り扱った店まである。
当然、学生が住まう寮もあるようだ。
これはアスト・アーデの世界で見てもトップクラスの規模だという。
俺達がまず訪れたのは魔術科の校舎だ。
複数ある校舎の中で一番大きいのがここだ。
見た目は校舎というより城に近い。
雰囲気で言えば、ホグ○ーツ的な感じだろう。
ザ・ファンタジーな建築物だ。
ソーナと匙は魔法科の校舎を見て、少し興奮気味だった。
「立派な校舎ですね。新築というのもあるでしょうが、これだけの規模になると圧巻です」
「流石の異世界………! 圧倒されるな!」
それに続くようにロセも言う。
「ええ。ここまでのものはアースガルズにもありませんでしたよ」
北欧の魔法学校と比べても相当なものらしい。
リーシャが解説をくれる。
「皆さんの世界と比べて、こちらの世界は魔法の普及率が高いのでしょう。魔法を学ぶ生徒が多いということは、それだけ敷地、設備を要します。それ故にこれだけの規模が必要だったのですよ」
それからリーシャの案内の元、俺達は魔法科の校舎を見て回る。
先に知らされていた通り、祭の期間中、授業はないようで、代わりに生徒の催し物が公開されている。
催し物は魔法科だけあって、魔法に関係するものが多い。
例えば――――
その① 魔法のパフォーマンス
目立つのは魔法を使ったパフォーマンスだろう。
広場で数人の男女が魔法を組み合わせた踊りを披露しており、彼らの躍りに合わせて炎が立ち上ったりしていた。
「へぇ、動きにキレがあっていいじゃん」
「魔族の中でも一部に伝わってる躍りに近いね。アレンジも入ってると思うけど、相当練習したはずだよ」
美羽がそう解説をくれる。
魔族に伝わる躍りか。
中々にアクロバティックな動きをしていて、カッコいい。
踊ってるメンバーの中には人族も混じっていて、魔族の人と息をピッタリ合わせている。
更に空を見上げると、箒に跨がった生徒が飛び回っていて、宙に絵を描いていた。
匙が興味深そうに言う。
「こっちの世界でも魔法使いは箒で飛ぶんだな」
「いえ、あれは魔法ではなく、ジェットエンジンで飛ばしていますね」
「なんでだよ!? なんで箒にジェットエンジン!?」
「ロマンですね」
「そういう問題!?」
一方、空飛ぶ魔法使い――――いや、この場合はジェットエンジン使いとでも言うべきか。
彼らの箒からエンジン音が唸っていて、
ファォンッ! ファォンッ! ブロロロロロッ!
パラリラパラリラ!
「うぉい!? 完全に間違ってるよ! 完全に暴走族じゃねーか! 箒の必要性なくね!?」
「私もああいうの大好きです!」
「兵藤! おまえのところの狙撃主さんの目がキラキラしてるんだけど!?」
「リーシャはメカ好きだからな」
「ツッコめよ!?」
ジェットエンジン付の箒で空を飛ぶジェットエンジン使い達にリーシャのテンションが上がっていた。
その② 研究発表会
魔法科ではいくつかの研究室がある。
それぞれの研究室では、魔法の探求や新たな技術の開発をする者もいれば、魔法の歴史を読み解く魔法考古学を極めようとする者もいる。
また、魔物の研究をする者もおり、研究の分野は多岐に渡る。
この鎮魂祭間、彼らはこれまでの研究成果の発表を行うらしい。
「と、このように今回の結果は、過去の報告とも類似しており――――」
「こちらの魔導具に組み込まれた回路は大きな負荷に耐えられないという課題を抱えていましたが、我々が開発した新たな術式を組み込むことで――――」
「魔物を手懐ける効果的な方法ですが――――」
校舎の一角にある巨大な大広間にはいくつものブースが設けられていて、そこでは学生達が自身の研究結果を説明していた。
見学者達は食い入るように学生達の話を聞き、かなり熱中している様子だ。
学生達の姿にリーシャは微笑む。
「ふふふ、皆さん真剣に取り組んでいますね。成果物も私が想像していたものよりずっと良くできています」
ロセも手元のパンフレットを見ながら興味深げに頷く。
「一つ一つ回っていこうかしら。どれも面白そうな内容で………私達の世界でも使える技術になるかもしれません。ここは色々と意見交換をしてみたいですね」
「それは是非。ロスヴァイセさん程の方からの意見なら学生達もとても参考になると思いますよ」
そりゃあトライヘキサを封じる術式を作るような才女だもんな。
ロセの魔法に関する造詣はこっちの世界でも十分すぎるほどに通じるだろうさ。
美羽が何か見つけたようで、そちらを指差した。
「あれ凄いよ。汚れが瞬く間に落ちる魔法の洗濯機だって」
なにその家電量販店の宣伝みたいなの。
一気にファンタジー感消えそうなんですけど。
いや、まぁ、生活魔法ってのもあるから一概にそう考えるのは違うのかね?
俺は美羽に連れられるままにそのブースに向かう。
そこでは分厚い瓶底メガネをかけた男性が熱く語っていて、
「ご覧あれ、こちらのスライムを! これは我々が数年かけて開発した特別製のスライム! このスライムに服を放り込むとなんと! どんな汚れだろうと一瞬で消し去り、新品同然になるのだ!」
男性がスライムに白い服を無造作に放り込む。
服にはソースでも溢したのか茶色いシミができているが、スライムの中に入った瞬間――――泡を発しながら瞬く間にシミが消えていった!
本当に一瞬だったため、周りからも感嘆の声が漏れている。
更に男性は泥汚れがついた服も放り込む。
結果は先程と同じ。
発生した泡と共に泥汚れは綺麗さっぱり消えてしまった。
こりゃ凄い。
宣伝に負けない性能だ。
一家に一台欲しいくらいだよ。
ワルキュリアも喜ぶだろう。
美羽が男性に問う。
「他の汚れも落とせるの? 油汚れとか、絵の具とか」
「無論! このスライムは
「へぇ………ん? 服以外は全て………?」
「服以外は全て、だ!」
「それって………人が触ったらもしかして………?」
「消え去る!」
「ダメじゃん!」
人も消え去るのかよ!?
危険にも程があるだろ!?
そんな危険なこと、よく営業スマイルで言えたな!?
「洗った後、どうやって取るんだよ!?」
「そのまま放置するしかあるまい!」
「使えないじゃん! 服、着れないじゃん!」
「何を言っている! 全ては服の汚れを落とすためだ! 大義を見失うな!」
「見失ってるの、あんただろ!?」
放り込んだら最後、着れる服がなくなるじゃん!
俺のツッコミに男性は唸る。
「むぅ。これでも成功作なのだぞ? 前回作は失敗して服だけ瞬く間に溶かすスライムになってしまったのでな」
「なにそれ超欲しいんだけど」
「お兄ちゃん!?」