錬金術師は曇天に嗤う   作:黒樹

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サクッとチュートリアルを飛ばしたかったため短めです。
主人公は此処はドライに行きます。


チュートリアル

 

 

 

『魔法陣』

 

それはこの世界ではありえない物だった。いや、ありえないというわけではない。確かに知識としては存在するし、ゲームや漫画の世界では良く語られる、殆どのファンタジー系の創作物に関わる代物。それが教室に現れた時、最初の感想は「?」という間抜けなものだった。突如現れた教室位の大きさの魔法陣を見て、誰が本物だと思おうか。だが、この世界の技術力で突然教室の床が発光するなんてありえない。

 

半信半疑だったが咄嗟に鞄を手にして反射的に鬱陶しい奴を守るべく動き、『もしも』という嫌な予感を胸にそいつの肩を抱いた。その直後、光が爆ぜた。

 

–––そして、光が晴れた先で俺は見た。

 

教室だった場所は薄暗い光の差し込まない部屋へと変わり、中心に位置する学校の連中、俺達を取り囲むように法衣を着た白い宗団が何の冗談か存在したのだ。有るのは蝋燭の明かりだけ。辛うじて目を凝らせばそいつらが神妙な顔をしているのがわかる。その中でも烏帽子のようなものを被った他とは一線を画した法衣の老人が目に入った。

 

「い、一体何が……」

「みんな、無事か?」

「な、何が起きたのよ?」

「……ここ、どこ?」

 

周りが状況の把握に努める中、俺の腕の中で捥がく二つの存在。俺は烏帽子の老人から目を逸らさず、二人が服の袖を引っ張ってくるのを感じた。

 

「け、圭?」

「ねぇ、圭一、私夢でも見てるのかしら」

 

言い表すならば、嫌いなものの中でも少なくとも悪くは思っておらず、守るべき対象の優花と雫が何やら動揺した様子で服を掴んでくるが生憎とそっちに構っている余裕はない。

まぁ、言うなれば全人類嫌いだけど、少なくとも気にかける程度の存在である二人だが、俺は気にした様子もなく危険はなさそうなので肩を抱く手を離して立ち上がる。ちらりと見た優花が物悲しそうな表情で見上げて来たが無視をした。

 

未だに状況を掴めていないクラスメイト達を差し置いて、俺は状況の把握と整理を冷徹に行っていた。不測の事態に対して俺は淡々と一周回って冷静になった頭で考えた結果、異世界転移したらしいと結論付ける。

そして、おそらくはあの烏帽子の人間が最高位の人間だろう。俺にとって戸惑っているクラスメイトはどうでもいいので、さっさと足を進めて老翁に話しかけることにした。

 

「おい、どういう状況だ。テメェだろ責任者は」

「……ほぅ、中々肝の座った少年と見える。それに良き慧眼をお持ちで」

 

突拍子も無い俺の行動にクラスメイト達が注目する中、一時沈静化した騒ぎの中で老翁ば名乗りをあげる。

 

「お待ちしておりました。お初にお目にかかります勇者様方。私はイシュタル・ランゴバルト。聖教教会教皇の地位に座するもので御座います」

 

 

 

 

 

 

その後、一旦の落ち着きを取り戻した一行は別室へと連れて来られた。勝手にほいほい歩き回っていた俺の両隣を挟むように優花と雫が席に座る。移動する間も何故か腕を絡められていたものだから、正直鬱陶しい。歩き難いったらありゃしない。そんな愚痴を吐いて腕を振り解けばまた絡まれる始末、早い話が諦めた。

 

「ほっほ、さてまずは何からお話致しましょうか……」

 

教皇イシュタルを上座に天之河、坂上、偶然巻き込まれた社会科教師の畑山愛子先生と続く中、カースト制にある程度の順番で席が自動で決まった後、雫の隣に移動した白崎を除いてはこれが普通だと言えるだろう。その状況に対し天之河が何やら文句のありそうな目で訴えかけてきたが、俺は雫の友達である白崎が座るのは当然のこととして無視をしておいた。

 

話は戻るが教皇イシュタルがそうやって話を切り出した時、俺は全く興味なさそうに咄嗟に用意していたゲーム機を起動して冒険の書の続きから冒険を始める。

そうしたら、左右にいる二人から携帯ゲーム機を没収された。……何故だ?

 

「さて、ではまずこの世界の話から始めましょう–––」

 

そして、語られるのはこの世界の話。曰く、この世界は創世神エヒトなる神から創造され、曰く三種の種族が存在しており、そのうちの人間と魔人族が争っているらしいと。

即ち、魔物を従えた魔人族に対抗して神が遣わせて下さったのが俺達であり、救世主なのだと。異種族以外は興味ないので聞き流したが中々面白そうではないか。

 

「おい、榊原聞いているのか!」

 

欠伸をしながら聞き流していた俺の態度、そして美少女を全部持ってかれた当て付けか天之河がこちらに目くじらをたてる。実際に退屈な話なので聞き流していたが重要な部分は覚えている。

 

「要は魔人族を潰して世界を平和にしてくださいってことだろ」

 

簡潔に言えばそれだけの内容だ。しかし、事実を事実として認識して何がいけないのか天之河は少々カルシウム不足のようだ。

 

「お前は真面目に聞いていたのか!世界を救う話をしているんだぞ!それを何でもないようにヘラヘラとっ!」

 

激昂する天之河に対し俺は相手にしない。その態度が気に食わないってだけじゃないだろう。天之河は教皇に向き直り拳を固く握り決意を口にした。

 

「俺達は世界を救うために召喚された。ならば、世界を救えば元の世界に帰れる。違いますか?」

「えぇ、エヒト様も世界を救った英雄の意思とあらば無碍にはしないでしょう」

「なら、俺は……この世界を救おうと思う。俺はこんな話を聞いて黙っているなんてできない」

「へ、おまえならそういうと思ったよ。付き合うぜ、光輝」

 

奮い立つ天之河に感化され「俺も」「私も」と立ち上がる。

俺は内心で毒吐いていた。

 

(よくもまぁ、殺しをこうも正当化できるものだな……)

 

戦争。そう教皇は言った。で、あらばその意味がわからないはずもない。決起するクラスメイト達を有象無象のように眺めながら、俺の判断を仰ごうとする二人に俺は言いようのない寒気を感じていた。

天之河に感化されて正常な判断が出来ていないようだが、例外は存在する。二人も然り、この社会科教師も然りだ。

 

「だ、ダメですよ、戦争なんて!」

 

流石は社会科教師と言ったところだろうか。身長は高校生である俺達に劣り小学生とまで言われるものの、「戦争」というワードには人一倍反対するチビ教師畑山愛子。その小さな身体で生徒達を諌めようとするがカリスマ性で言えば天之河には引けを取るため、教師という威厳も吹き飛び止めることはできなかった。

 

「ね、ねぇ、圭……」

 

不安そうに優花が服の袖を引っ張る。何を言うべきか思いつかず不安そうな視線を向けてくる。頼られるという背中が痒い事態に俺は勝手にしろと言いたかった。

 

「ほら、世界を救えば元の世界に帰れるらしいぞ」

「そ、それはわかってるんだけど……」

「圭一、あなたはどうするのよ?」

 

臆病風に吹かれたのか二人は俺の顔色を窺った。白崎も何故かこっちを見てやがる。はっきり言って責任なんて終えないが。

 

「こんな面白いイベント見逃すなんて面白くねぇだろ」

 

あくまでそう答えると三人は決意を固めた。

まぁ、もっとも戦わないという選択肢はあってないようなものだが。




圭一は魔法陣を見た一瞬のうちに様々な思考をした。
(魔法陣か?何故か嫌な予感がする。本物な訳がない)
そして、最悪の事態を即座に予測。
(もしこれが本物だと仮定して、最悪なパターンは一つ。バラバラに飛ばされる系の転移トラップ。触れているものであれば同じ場所に飛ばされる可能性もある)
用心に用心を重ねた結果、守る行動へ移行。

※主人公は厨二病ではありません
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