キラキラドキドキを追い求めることに執念すら抱いてしまった戸山香澄の話

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戸山香澄の誕生日記念にかすありを書こうとしたらこうなりました

深夜テンションって怖いですね……(震え声)


キラキラドキドキしたすぎて

私は何かに取り憑かれたように星を追いかけていた。ほんとは星じゃなくて星の形をしたシールだけどそんなことはなんでも良くて。ただ、何かが起こりそうな予感を、キラキラドキドキを見つけるために星を探しては進み、探しては進んでいた。

 

そうやって進んでいると流星堂って名前の和風の質屋というお店に辿り着いた。そのお店の壁に沢山の星があって、それはお店の裏まで続いてるみたいだ。

 

星のままに店の裏に行くとすごく大きな蔵があった。お店の壁の星が最後みたいでその先に続く星はない。だから星はこの蔵に来るように私を呼んでいたのだろうと、そう思うことにした。それならこの蔵の中に何かがあるんだ!

 

「すみませーん!」

 

私は今すぐにでも蔵に入りたいという気持ちを抑えて声をかけてみる。……返事はない。

 

「あの、すみませーん!」

 

もう一度声をかけてみたもののさっきと同じで返事は返ってこない。今ならこっそり入ればバレないかもしれない、とそんなことを思いつく。普通に考えたら勝手に他の人の蔵に入ることはダメだって流石に私でも分かる。だけど、どうしても星が導いていたものが何か知りたくて、私は蔵を覗くことにした。

 

蔵の中はあまり手入れがされていないらしくいろいろなもので溢れかえっていた。私が蔵の中を見渡していると大きな星を見つける。その星はケースらしきものに貼ってあるのは分かったけど、何のケースかは分からない。気になった私はそのケースに近づ……。

 

「両手を挙げろ!」

 

「えっ?」

 

こうとしたらいきなり後ろから声がした。分からないことは多いけど、その鋭い声が明らかに私を脅していることは分かる。思わず振り返ると私ど同い年くらいの女の子が両手でハサミを開いて立っていた。

 

「はっ、はさみ!? ひ、人に向けたら危ないよ!」

 

思わず叫ぶものの勝手に入ったのは私の方。あまりあれこれは言えないけど怖いものは怖い。

 

「逃走経路を確保しておかないなんて、とんだ素人ね! 初犯!?」

 

女の子ははさみを構えたまま私を睨めつける。

 

「あ、あの、私星を見つけて……」

 

「両手!」

 

「はい!」

 

「名前!」

 

「戸山香澄です!」

 

私は女の子に従うように両手を上げて名前を言う。女の子はそれを聞くと疑うような目付きになった。

 

「それ本名? 責任逃れで偽名使ってんなら……とめるよ」

 

「……お泊まり?」

 

とめるってなんだろうと思って私が聞き返すと女の子は金髪のツインテールを揺らして違うと叫ぶ。

 

「あんたを捕まえるって言ってんの!」

 

「えっ、泥棒じゃないです!」

 

ようやく私が泥棒だと勘違いされてることに気づいた私はそう言った。だけど女の子は信じてくれないみたいで、私をじっと見つめていると"あっ"と何かに気づいたように声を上げる。

 

「花女……! うちの生徒かー……」

 

「同じ学校!? 何年生? 私、高1!」

 

女の子が同じ学校だと分かった私は食らいつくように尋ねる。女の子はどこか嫌そうにしているような気がするけど……多分気のせいだ。

 

「違うから! もー出てって! 質屋はあっち! こっちは全部ゴミ!」

 

女の子が怒ったようにそう言う。でも女の子の言うことは違うと私は思って私は星シールが貼ってあるケースを指さす。

 

「ゴミ? あれも? あの星の……」

 

「質流れのギターかなにかでしょ!」

 

ギターのケースだったんだ、と私は納得する。ギターのことはそんなに知らないけどこのケースに入っているギターがなんなのか何故か気になった。

 

「見ていい? 触っていい?」

 

「はぁ? お前な……ぁ……?」

 

図々しいのは分かっていたけど、どうしてもそのギターを見たくて聞いてみたけど女の子はふざけるなといった様子で取り合ってくれない。

 

「ちょっとだけ! ちょっとだけ〜!」

 

「待て! 分かった! 分かったから引っ張るのはやめろって!!」

 

我慢しきれなくなった私は女の子の服を引っ張ってそのままギターケースへ歩いていく。その時の女の子の顔が青ざめて見えたような気がするけど多分私の気のせいだと思う。

 

これが私と市ヶ谷有咲こと有咲との出会いだった。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

私は戸山香澄、15歳。花咲川女子高校の1年生。私のことを明るくて面白い子って言うクラスの子が多いと思う。いかにも花の女子高生って言う風に思われてそうだけど私はそうは思わない。だって私は入学式の日の自己紹介で。

 

「キラキラドキドキしたいです」

 

って言った。それって私自身がキラキラドキドキしてないから言えることだ。勉強があまり得意じゃない私でもその位考えることは出来る。キラキラドキドキが何かはっきり分からないけれど、そう出来るようになりたいって、そう思って私は生きてるんだ。

 

私がこんな風になってしまった理由は、はっきりとは分からない。けれどそれが小さい頃、星の鼓動を聞いた時に感じたキラキラドキドキが関係することは分かる。

 

星の鼓動。それは夜の森で聞いた何かが始まるような音。空で宝石みたいにキラキラ輝く星から聞こえてきたようなドキドキという音。私が高校生になってしばらくして、一緒に星空を見た妹の明日香に話してみたら心臓の音だと言われた音。確かにそれは正しいけど、私にとってはそうじゃない。私にとって星の鼓動は、すごく心に楽しくて強い音だった。だから私はその時のことを忘れたくない。そう思っていた。

 

でもそれから何が起きるというわけもなく時間は進んでいった。あの星空に出会ったのはまだ幼稚園くらいの頃だったはずなのに小学校も中学校も終わってしまった。そうやって時間が進むうちに星の鼓動を聞いた時の感覚が少しずつ弱くなるのを感じた。それが怖くなった私はいつの間にかキラキラドキドキするものを探すことに必死になるように変わってしまった。

 

 

 

そして迎えた高校生。新しい生活になると私はいつもドキドキして、私が思うようなものがあるか期待してしまう。初日から友達も出きて傍から見れば順調に見える学校生活、だけどキラキラドキドキするものは見つからなかった。確かに部活は楽しそうだったけどそれで終わり。結局今までのように、見つかると期待しながら何も無く過ごす日々が始まるかと、そう思っていた。

 

 

それは入学してから1週間がたったある日。クラスの友達に誘われてカラオケで遊んだ帰り道の事だった。橋を渡りきって信号が青になるのを待っている私の目に光が飛び込んできた。それは横断歩道の先の、信号機の下に落ちていた。よく見てみると……星のシール、のようだ。なんで落ちてるんだろう。

 

信号が青になったのを確認すると私は星のシールの方に駆け寄る。拾ってみると星はキラキラ輝いていて、かわいかった。こんな風に星に出会えると思わなくて嬉しくなった。いいことが起きそうな気がしていると今度は道路標識の下の方が輝いていているのが見える。気になってそっちに行くと同じ星のシールが貼られていた。

 

また同じ星だ、と思っていると今度は塀の下に星が。さらにその先にも……。気がつくと私は夢中になって星を追いかけていた。まるで星がどこかへ私を連れていってくれているように思えて。

 

そして私は星に導かれて有咲の家に辿り着き、星のギターケースを見つけて、市ヶ谷有咲と出会ったんだ。

 

 

そんなこんなで今は次の日の夕方。私は有咲の蔵。

 

「あ、有咲いた」

 

「いや、だから不法侵入って言ってるだろうが」

 

「えー、いいじゃん別に〜」

 

「いくらばあちゃんに認めてもらったからって、あ、あたしからしたらそうなの!」

 

嫌そうにそう言うものの有咲は無理やり私を追い出そうとしない。そんな有咲の優しさに甘えて私は蔵の中に入る。

 

「でも良かった〜。早退したって聞いたから心配してたんだよ。朝もなんか変だったし」

 

なんだか避けられてる気がする、とは言えなくて微妙に論点をずらして誤魔化す。今日はずっと学校で有咲のことを探していたのに、見つけて話しかけようとすると走って逃げちゃうんだ。ずるい。

 

「いや、午後は出なくていい日だからさ」

 

「どういうこと?」

 

「自主休講ってやつ。別に授業全部受けなくても単位は取れるし……い、いいだろ!」

 

有咲はそう言いながらダンボールに蔵にあるものを入れている。

 

「んー、つまんなくない? 友達に会えないし、お昼一緒に食べれないし」

 

何より、キラキラドキドキするものを探せない。そう思って有咲に聞くと、有咲は少しムカッとした様子で私の方を見る。

 

「なに、自慢? 説教? 先生に頼まれたわけ?」

 

「ち、違うよ〜! 私はただ有咲と……」

 

有咲の責め立てるような言い方に押されて、私は言葉に詰まる。流石にそんなふうにされたら言えないよ。有咲と友達になってバンドをやりたいだけなんだって。

 

 

そう、私はバンドをやりたくて有咲と関わろうとしている。きっかけは昨日、有咲と一緒にライブハウスに行った時に見たGlitter Green っていうバンドのライブを目の前でみたから。その時すごくキラキラでドキドキで、私のやりたいことはこれだって思ったから。その時一緒にいた有咲の目も輝いて見えて、有咲となら一緒にキラキラドキドキ出来ると思ったからだ。そもそもライブハウスに行くきっかけになったのは星のシールが貼られたギターケースに入っていたランダムスターっていうギターを私が触りたくて……。

 

「……あ、ランダムスター! ね、また見せてもらっても……」

 

「いやいや、商品に勝手に触んな!」

 

「えっ、商品……?」

 

私がそう言うと有咲はスマホを操作して私に画面を見せてきた。そこには星みたいな形をした真っ赤なギター、星のシールの貼ってあるギターケースに入っているギターの画像があった。昨日はそのギターにすごくキラキラドキドキして思わず勝手に持ち出しちゃったりしちゃったけどそれどころじゃない。

 

「ネットオークションに出したんだよ。私にとってはゴミでもどっかの誰かにはめちゃくちゃ価値がある」

 

どうして、と思うけどスマホの画面に写っている金額を見て考えられなくなる。30万丁度。それが今このランダムスターにかけられている値段だった。

 

「欲しいなら、あんたもオークションに参加したら?」

 

有咲がフフンとしながら私を見つめてくる。30万でさえお年玉を使っても足りないはずなのにそれ以上払うのは……流石に厳しい。今からバイトをしても入るお金は限られてるだろうし、それに他の人にそれ以上の値段を言われる可能性だってある。でも。

 

「だったら私、30万15円出す!」

 

「はぁ!?」

 

「だってそれ以上の金額を出されなかったらいいんでしょ? だったらそのくらい出すよ!」

 

「いやいや、そもそもお金足りるのか?」

 

「足りない分はお母さんから借りるもん!」

 

「なんも解決してねえー!」

 

「なんで?」

 

「第一それ以上の金額出されたらどうすんだよ!」

 

「それより高い金額出すよっ!」

 

「それぜってーいつか無理になるっての!」

 

「でも私、諦めたくない!」

 

私はそう言うと有咲に近づき真っ直ぐな目で見つめる。有咲は最初は睨みつけていたけど私の目を見るといきなりスマホを操作し始めた。その時ひっ、って言ってたような気がするけど気のせいだと思う。少しすると有咲は顔を上げた。

 

「その……やっぱりオークションの出品取り下げたから」

 

「えっ、ほんとに!?」

 

「う、うん……」

 

私が目を輝かせるようにして聞くと有咲は困惑したように頷く。

 

「というか、もうこれお前にやるよ」

 

「……ほ、ほんとに? いいの?」

 

「い、いいって言ってるだろ」

 

「でもさすがにタダで貰うなんて出来ない!」

 

「……じゃあオークションの取り下げ費払ってくれよ。504円な」

 

「うん! ありがとう!」

 

私がお財布を取り出し540円を払うと有咲は安心するようにため息を漏らす。そして星のシールが貼られたギターケースを手に取ると私が受け取りやすいような持ち方をして差し出してくれた。

 

「じゃあこれな。絶対大事にしろよ」

 

それをおそるおそる受け取ると私は力の限り頷く。

 

「ぜっっっっっっったいそうする!!」

 

「そ、そ、そうか。んじゃ、あたしはこれで……」

 

と言って蔵から出ていこうとする有咲を。

 

「待って!」

 

私が呼び止める。すると有咲は肩をビクッとさせてからゆっくりと私の方を向く。

 

「……な、なんだよ?」

 

「有咲もやろう! バンド!」

 

有咲から漏れたえっ、という声に私は正気に戻る。流石に今ここで言うのはわがままだという考えが頭の中に生まれた。

 

「あ、えっと……昨日の今日だからって流石に……」

 

「い、いや、やるぞ! バンド! あたし楽器ほとんど触ったことないけど!!」

 

でもそれは私の思い込みだったらみたいで、有咲はすぐ私のわがままを受け入れてくれた。

 

「有咲〜! ほんとにほんとに、ありがとう〜!」

 

「あーもう! 抱きつくなー!!」

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

「……なあ、香澄」

 

「どうしたの、有咲?」

 

「最近はそうでも無いけど、結構怖かったからな。昔のお前」

 

「…………えっ?」

 

「特に最初の頃とかやばかったぞ。目が」

 

「……目、そんなに怖かった?」

 

「そうだな。オークション落札するためだったら銀行強盗とかしでかしそうな感じまでしたぞ」

 

「…………」

 

「でもさ、香澄」

 

「うん」

 

「こうやって、香澄やみんなとバンド出来て。私ほんとによかったって……」

 

「有咲ぁ〜!!」

 

「うわっ! だから抱きつくのはやめろっていつも言ってるだろうが!!」


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