サッカーが大好きな少年は、とあるミスによりサッカー部が無い雷門中学に入学してしまう
だが、彼はどうしても諦めることはできず、サッカー部を作ろうとするが……そこでもう一人のサッカー馬鹿と出会う

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サッカー馬鹿、雷門中学に入学する

「母さんただいまっ!俺宛の手紙着てるっ!?」

「着てるわよ、だからそんなに慌てないの」

 

 小学校卒業間近の12月のある日。

 学校が終わり、リトルでの連中もない俺は全速力で家に帰還していた。

 何故か?そんな理由は一つしかない、その日は俺の憧れているクラブのジュニアユース(中学生チーム)の合否結果が発表される日だからだ。

 いや、正確に言えば、配達ゆえ数日前後するのだが……閑話休題。

 

「ありがと、母さん!愛してる!」

「気持ち悪いわ、それよりも早く中身見てみなさいよ」

「分かってるって!」

 

 受け取った手紙の封を破り、中から二つ折りとなった紙が一枚出てきた。

 恐らく、ここに俺がジュニアユース選手に選ばれたと書かれているのだろうと、簡単に想像がつく。

 自慢ではないが、俺はリトルチームでは司令塔を任されるほどのボールテクニックとパス能力、更にはフィジカルの強さを誇っている。

 そりゃまだ所謂、必殺技は使えないが、ユース試験でも、その能力を発揮してミニゲームは圧勝したし、パスやドリブル能力を計る試験も誰よりも上手く合格した……という自信はある。

 そんな俺だからこそ、ジュニアユース昇格は当然であり、未来の日本サッカーに俺の名前を刻むのは確定なのだ。

 だからこそ──

 

小立 陽太(こだち はるた)様 誠に残念ながら、今回の試験は不合格とさせていただきます】

 

「………………はふんっ」

「は、陽太ぁ!?」

 

 ──こんな結果になるだなんて、思いもしなかった。

 は、春から通う雷門中学って……サッカー部、あったっけなぁ。

 

・・・

 

 そうして現在、俺は……はぁぁぁ、いや、マジでなんでこんなことに。

 なんでよりにもよって、周りの中学で唯一、サッカー部が無い雷門中学に入学した、俺。

 あ、そっか。サッカーならジュニアユースでするから中学はてきとーでいいやって、一番近くの雷門を選んだんだっけ。

 アハハハッ……。

 

「慢心しすぎだろ、このクゾボケェ!!貴様の頭は何も詰まってないのか!?」

「何あれー、電柱に頭ぶつけてる人いる……」

「……キチガイ?」

 

 はぁはぁ……幾らか血が出たお陰か、頭だいぶ冷えてきたな。

 兎に角……これからのことを考えなければ。

 高校に上がるまでずっとサッカーしないってのはない。というか、それは流石に不味い。

 3年間、ずっとボール触っていれば、ボールテクニックは落ちないだろうが……試合をしないって言うのは、それだけプレイヤースキルが落ちるのを意味する。

 将来、俺の憧れているチームに入るためにも……絶対に中学の間、試合が出来る環境を手に入れないと。

 

 ……等と考えている内に雷門中学校まできた、来てしまった。

 はぁぁぁ……結局、何も浮かばなかったなぁ。どーすりゃいいんだろ。

 

「おい、そこの1年!ちょっと俺の話聞いてみないか!?」

 

 そりゃジュニアユース相当の上部組織があるリトルチームもあるけどよ。そこも間違いなく、定員は一杯だろうし俺が入る余地はない。

 んー……近くにフットサルチームってあったっけ?

 

「なぁ!少しでいいから話聞けって!これからの3年一緒に青春しないか!?」

 

 駄目だ、あるにはあるけど、あれは高校生以上限定のチームだ。

 中学の俺が入る余地はないし、そもそも入れてくれるとは思えない。

 

「なぁ、少しでいいからさ!聞こえないのか!?」

 

 無理言って練習に混ぜてもらうとか出来ないかな?

 試合とかに参加は無理だろうが……練習参加くらいなら許してくれるかもしれない。

 試合できないのはプレイヤースキル低下は免れないけど、対人練習が出来ないよりはずっとマシ──

 

「俺 の ! 話 を ぉ お お お ! ! 聞 け ぇ え え え え ぇ ぇ ぇ っ っ っ ! ! ! 」

「うぴぃっ!?」

 

 な、なんだこの馬鹿デカい声は!?

 とても人間の出す音とは思えない……!両耳からきーんって音が幾ら経っても鳴り止まないし、何より戦闘機が耳元を通ったのかってくらい耳が痛てぇ!?

 ……ん?あれは【野球部新入部員募集中】……だと?

 

「漸く気がついたみたいだな、1年!俺は雷鳴 仁(らいめい じん)!雷門野球部のエースにして四番だ!よろしく頼むぞ!」

「は、はぁ……小立 陽太です。よろしくお願いします」

 

 ……なんというか、特徴的な髪してる人だなぁ。バナナみたいなメッシュが入ってて野球部っぽくない(偏見かも知れないが)。

 というか、雷門って野球部あったっけ?運動部自体盛んじゃなかった気がするが……とりあえず、聞いてみるか。

 

「そりゃそうさ!去年、俺が作ったばかりだからな!部員も俺一人だっ!だからこうして部員を募集しているわけさ!」

「はぁ……さいですか」

「そういうわけで小立!俺と一緒に甲子園を目指さないかっ!?共に青春を野球に捧げようぜ!!」

「いや、甲子園は高校からで……ん?」

 

 今、雷鳴先輩なんつった?野球部を作ったって……?

 そうか……そうだっ!その手があったかっ!!

 

「雷鳴先輩、ありがとうございます!俺、このご恩忘れないっす!」

「本当か!?それじゃあよろしく「いえ、野球部には入りませんっ!」……そうか、なら部活動はどうするつもりなんだ?」

「俺、サッカー部作ります!先輩が野球部作ったみたいに一から頑張るっす!」

「……おう、頑張れよっ!」

「はいっ!」

 

 そうと決まったら全力前進だ!今日は入学式だけの筈だし、それが終わり次第、部活申請出して……にししっ!やることが一杯だな!

 

・・・

 

 入学式が終わり……ショートホームルームの時間。

 

「……影野 仁(かげの じん)です、よろしくお願いします。趣味は……特にないです」

 

 ……影野 仁かぁ。雷鳴先輩と同じ名前か。多分、間違えるとは思えないけど……うん、なんと言うか影が薄いな。

 影野がサッカー部に入ったらポジションは何処かな?SB(サイドバック)とかも良さそうだけど、あの影の薄さを利用するなら、トップ下とかが一番良さそうか……って違う違う。

 入るとは限らないんだし、勝手なこと考えても意味ないな。

 

「次は小立君、自己紹介お願いできる?」

「うっす!小立 陽太です!小学校ではサッカーのリトルチームでプレイしていました!ポジションはボランチ、趣味はサッカーとJリーグ観戦、海外サッカーも見ています!中学でもサッカー部に所属するつもりです、よろしくお願いします!」

「あははっ、サッカーが好きなのね。でもね、小立君?雷門にはサッカー部無くて……」

「分かってます!なのでサッカー部作るつもりなので、皆さん!良ければ一緒にサッカーやりませんか!?」

 

 俺の言葉にざわつき始めるクラス。

 そりゃそうだろう、サッカー部を作るだなんて自己紹介したらクラスで注目の的……いや、奇異の目で見られても仕方ない。

 

「……へぇ、面白そうじゃん」

「サッカーは分かるけど?ボランチ?なにそれ?」

「ふむ……やるつもりはありませんが……ぬふふっ」

「サッカーのポジションって……フォワードとディフェンスとゴールキーパーだけだよな?ボランチって……何処?」

「……ふんっ」

「なんか真ん中のポジション無かったっけ?えと……確か、フィルダー?ミッドフィルダーだっけ?」

 

 ……反応は上々。興味示してる奴いるんだし、何人かはサッカー部に入ってくれるかもしれないなっ!

 

「えと……せ、先生は応援するつもりだから頑張ってね?えと、次は……紫電?紫電 戒(しでん かい)君、お願いできる?」

「はーい」

 

 ふーん、紫電か。そういえばライバルのリトルチームにも同じ名前の奴いたな。

 確か、ゴールキーパーだったけど、他にも全部のポジションをオールマイティーにこなせる器用な選手(ポリバレント)だったな。

 そうそう、あんな風に月桂冠を被って……え゙っ。

 

「紫電 戒です、よろしくね。僕も前の小立と同じで小学校ではサッカーチームに所属してました」

「紫電、テメェなんでここにいる!?と言うか、なんだ所属してましたって!ましたって!テメェ、ジュニアユースに合格した筈だろ!?」

「やっ、小立久しぶりー」

「挨拶なんてどうでもいいわっ!?それよりも質問に答えろ、ボケェ!!」

「ん?いや、合格したはいいけど……退屈でさぁ。そんなわけで辞退したわけ」

「辞退したぁ!?テメェの実力ならソッコーでレギュラー取れんだろ!?なんでそんな勿体無いこと……」

「小立君、友達と会えたことに嬉しいのは分かるけど……自己紹介中だから後にしてね?他の子も待ってるから」

「…………うっす」

 

 ……ちっ、畑中先生に止められたが、追求は止めねぇぞ。

 部活動申請出したら、きっちり問い詰めてやるからな。

 そんな俺の視線を軽く紫電は受け流し……自己紹介は続いていく。

 

目金 欠流(めがね かける)です。趣味は漫画鑑賞と収拾、よろしくお願いします」

 

 そして最後の自己紹介も終わる。……目金、どっかで見たことあるような。

 もしかしてあいつ、どっかのリトルチームに所属していたとかかな?

 まぁいいか、兎に角まずは……っと!

 

「それじゃ、これでショートホームルームはこれで終わりにするわ。この後は自由時間だからクラスの皆と「失礼しますっ!」あ、こらっ!?」

 

 ホームルーム中に書いた部活動申請書を職員室まで出しに行く!

 待ってろ、俺の中学サッカー人生っ!

 

・・・

 

 確か……職員室ってこの辺だよな?んー……書いたはいいものの、書類って職員室に出せばいいんだよな?

 まぁ違ったとしても、他の先生に聞けば。

 

「いよっしゃあ!」

「おめでとう、円堂君っ」

 

 あ?なんだ?

 職員室前で喜んでる……多分、俺と同じ新一年生の男女?それにその手に持ってるのって……サッカーボールっ!?

 おい、おいおいおいっ!!まさかまさか……!

 

「おい、お前っ!?もしかしてお前もサッカーやるのか!?部活動申請通ったのか!?お前のポジションはっ!?そういえばお前の名前はっ!?部員はお前だけかっ!?」

「……っ!もしかしてお前もサッカーやるのかっ!?俺は円堂 守!ポジションはゴールキーパーで、部活動申請は通ったばかりで部員は俺だけだ!」

「マジか!マジなのかっ!?やたっ、まさかサッカー部を作ろうとか思ってた奴が俺だけじゃないとは……!」

「お前もサッカー部作ろうとしてたのか!?なら」

「勿論、入らせてもらう!俺は小立 陽太!ポジションはミッドフィルダーでボランチ担当してる!よろしくな、円堂!」

「あぁよろしくな、小立っ!ボランチって言っても、色々と得意分野とか苦手なこととかってあるよな?小立は守備中心のボランチなのか?それともパス中心に動く感じか!?」

「どっちも行けるけどパス回し(ワーク)の方が得意だな!ボランチ一枚とゴールキーパー一人しかいないチームだけど、これから頑張ろうぜ!円堂!」

「おう!」

 

 はぁはぁ……テンション上がりすぎたな、俺。

 そーいえばもう一人……円堂の隣に女の子がいたな。

 俺が視線を向けると女の子は唖然とした表情で俺と円堂のことを見ていた。

 なんというか……ドッペルゲンガーでも見たような顔で俺達のこと、見つめてる。

 

「あ……あのぉ、少し聞いてもいいかな?」

「もしかして君もサッカー部なのかっ!?最近はなでしこも有名になってきたし、日本女子はレベル高いからな!だとしたらポジションは……」

「ふぇっ!?えと、その、私は……」

 

 もしかして今まで運動とかしたこと無い……とかか?なぁに気にするなっ!

 初めは誰でも初心者なんだ!慣れていけばいいってこと──

 

「あー……悪い、小立。秋はその、なんというか、選手としてじゃなくて……なんだっけ?」

「マネージャーね。マネージャーとして部活に参加させてもらおうと思ってるの」

「マネージャーかぁ……うん、マネージャーも悪くないけど選手もやってみないかっ!?サッカーはいいぞ!見てるだけじゃ勿体無いって!」

「えぇ!?だから私は選手としてじゃなくて」

「確かに男子ばかりで気になるかもしれないし、中学サッカーの規則じゃ女子は混ざれなかった筈だけど……気にするな!一部の大会じゃ女子も一緒に混じってプレイ出来るからな!きっと楽しいぞ、サッカー!」

「だから私は選手としてプレイするつもり無いんだってばぁ!?」

 

 そんなこんなで時間が過ぎていく。

 サッカーをするには最低でも11人……練習試合とかなら無理をすれば10人いればプレイできる。

 後、8人か9人、何としてでも集めないとな。


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