帰蝶が男で何が悪い   作:けんさん&コハク

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何?前回の投稿から二ヶ月以上期間が開いてて投稿しずらい?

それは評価を気にして投稿しようか迷っていたからだよ。

逆に考えるんだ、投稿し(あげ)ちゃってもいいさと。





番外編
明智光秀1


 “明智光秀”

 

 生い立ちや家族構成に始まり、友人関係、思想、その名前が本名だったのかすらも未だに分かっていない謎の男。

 彼の半生は謎で出来ていると言っても過言ではない。

 幼少期から青年期までの資料は一切発見されておらず、信頼性の高い同時代史料からも判明することなく不詳であるのだ。

 光秀という人物の事がはっきり記されているのも織田家に入ってからのことだが、それすらも曖昧ときている。

 

 何よりの謎が“本能寺の変”で自身の主君であったはずの織田信長に謀反を起こし、長年にわたり支えてきた帰蝶でさえも裏切ったことである。

 明智光秀という男は織田夫妻、特に帰蝶に対して入れ込んでいたという事が分かっている。

 それなのに光秀は帰蝶が居ると分かっている本能寺に火を放ち、あまつさえ死にまで追いやったのだ。

 

 本能寺の変での光秀の行動は諸説あり、権力に目が眩んだから殺した、何か個人的な恨みがあったから殺したのだ、などと尤もらしい仮説が歴史学者達によって立てられてきたが結局何が正解なのかは分からずにいた。

 光秀本人も本能寺の変の最中に帰蝶の手によって殺害されているため、それらしい資料が発見される事はないだろうと考えられてきた。

 

 ほんの数ヶ月前までは。

 

 数ヶ月前のある日、とある歴史学者が明智光秀の事が記された手記の様なものを発見したとの発表があった。

 発見されたのは美濃の国*1の山奥にある小さな廃村。その廃村の中で最も大きな館の中に隠されるように置かれていたのを偶然発見したと意気揚々に語っていた。

 発見されたその手記は全部で数十冊にも上り、そこには今まで隠されていた明智光秀の半生や思想、そしてなぜ本能寺の変にて帰蝶と織田信長を殺害したのかその動機まで書かれていた。

 

 

 それと同時に、今まで知られていなかった明智光秀という男の歪んだ人物像が浮かび上がってきた。

 

 

 

 

 

 明智光秀は大永6年(1526年)に父・明智光綱と遊女との間に明智家の長男として生まれた。

 明智家は清和源氏の土岐氏の支流に当たる一家であり、当時の一般家庭よりは多少地位が高い家系ではあったが、他の土岐氏支流の家と比べると少々見劣りする程度のものであった。

 それでも明智家は土岐氏から小さな村を与えられ、それを仕切る立場として平和に暮らしていた。

 

 そんな明智家の当主であった明智光綱には光秀の母とは違うお牧という妻がいた。

 2人は籍を入れて早十何年と経過していたのだが、なかなか2人の間には子供が生まれてこなかった。

 当時の時点で光綱の歳は35を超えており、2人は明智家の人間から早急に跡取りになる子供を作れという圧力をかけられながら毎日を過ごしていた。

 そんな状態が続いていた折、光綱が息抜きとして行った店の遊女を産ませてしまい誕生したのが光秀であった。

 

 

 当然、明智家は混乱した。

 何処の馬の骨とも分からない遊女が当主の正妻を差し置いて子供、それも女ではなく長男を産んでしまったとあれば無理もない。

 揉めに揉めた明智家ではいつしか光秀を処分するべきだという人間と、このまま育てるべきだという人間の二つに割れてしまっていた。

 

 そんな中、事の発端である光綱は我関せずを貫き続けており、自身が原因で明智家が崩壊寸前であるにも関わらず自身には非が無いと言い続けた。

 それどころかまだ1歳程度の光秀とその母親に全ての非があると言い始め、遊郭から買い取った光秀の母親を自身の保身の為に斬首して村の中央で晒し首にした。

 光秀はまだ子供だからという理由から殺されることはなかったが、母親の生首を目の前に突きつけられ、光綱から毎日の様に暴力を振るわれていたという。

 そんな当主の非道で残忍な行いを見た明智家の人間の中から光秀の味方をしようとする人間は現れず、どれだけ光秀がボロボロになろうとも見て見ぬ振りをする事がいつしか暗黙の了解として村全体にまで広がっていた。

 

 そんな明智家の中でも、1人だけ光秀の味方をする人間がいた。

 当主である光綱に多少の口出しが出来、尚且つ光秀に多大な罪悪感を抱いていた人物。

 

 光綱の正妻であったお牧である。

 

 お牧は自身の夫が犯した罪を少しでも償う様に光秀を愛した。たとえ夫に殴られようとも、側室や明智家の人間達から白い目で見られようとも、光秀をまるで我が子の様に愛した。

 それが光秀に対する贖罪であるかの様にひたすら光秀の味方であり続けたと記されている。

 その甲斐あってか、最初はまるで死骸の様に冷たい表情しかしなかった光秀がお牧の前では笑みを浮かべる程になっていた。

 そして光秀はある日を境にお牧の事を母と呼び始め、そんな光秀をお牧はより一層愛していたという。

 

 いつしか2人でこの家を出て行こう、そして光綱の手が届かない所で一緒に幸せに生きて行こう。

 そう指切りをした2人はたとえどんな苦痛であろうとも支え合おうと誓い合い、たとえどんなに暴力を振るわれていようと約束を思い出して耐え続けた。

 

 

 しかし、2人のそんなささやかな約束が叶えられる事は無かった。

 

 

 とある日の夜、光秀の10歳の誕生日会をひっそりと行っていた光秀とお牧だったが、やけに興奮している光綱にお牧が呼ばれた為に誕生日会は一旦中止となり、すぐに戻ってくると光秀に言い残したお牧はすぐに光綱のいる部屋へと向かっていった。

 

 部屋に着くと中には何やら部屋の中央で蹲っている光綱とボロボロになっている光綱の側近しか居らず、何故か甘ったるい匂いが部屋中に充満していた。

 その匂いを不審に思いながらも正体に気が付かなかったお牧は蹲る光綱を心配して駆け寄った。

 

 次の瞬間、光綱はお牧へと襲いかかり隠し持っていた小刀でお牧の心臓部を突き刺した。

 

 何度も何度も何度も、執拗に小刀を突き刺し事切れた後であろうともお構い無しに小刀を振るい続けた。

 お牧の綺麗だった桜色の髪は血で染まり、美しかった青い瞳は段々と白く濁っていった。

 絹の様に滑らかだったその玉肌に凶刃を突き刺す度、光綱は意味の分からない言葉を叫び続けていた。

 

 部屋中が血塗れになった頃、最早元が何の生き物であったのか分からなくなる程にぐちゃぐちゃにされたお牧を見て光綱は落ち着きを取り戻した。

 しかし落ち着こうともその凶行は留まること無く、次は肉片になってしまったお牧の肉を喰らい始めた。

 

 おまき、美味い、おまき、旨い、おまき、うまい。

 

 譫言の様にそう言い続ける光綱の様子は明らかに正常なものでは無かった。

 散らばった人肉を掻き集めながら喰らい、手ですくった血を啜り血で濡れた白い骨をしゃぶる。

 高笑いをしながら妻であったソレを光綱は幸せそうに喰らい続けた。

 近くに控えていた側近は産まれたての小鹿の様に全身を震わせ、ただひたすらに自身が標的にされない様にと神に祈り続けていた。

 目を瞑って生贄となった女だけで満足してくれとひたすら神に祈り続けていた。

 

 だからこそ気が付かなかったのだろう。

 

 

 

 

 廊下から部屋の中を覗き見ている子供が居たことに。

 

 

 

 それはいつまで経っても帰ってこないお牧を心配して様子を見に来た光秀だった。

 しかし部屋に来てみればそこには自身の母の名を呟きながら何かの肉片を貪り食う自身の父親と、それを見て震えている父の側近。

 自身の母の姿は何処にも見当たらなかった。

 

 賢かった光秀はそれだけで全てを理解した。

 あの肉片は自身の母の物なのだと。

 自身の最愛の母は血の繋がった自身の父親に切り刻まれて喰われているのだと。

 

 父の手からこぼれ落ちた白く濁った青い瞳がコロコロと光秀の傍まで転がってきた。

 その瞳は先程まで生きていたあの母の優しい瞳とは思えない、恐怖と絶望で染まった虚無の瞳であった。

 

 その瞳と目が合った瞬間、光秀は泣き叫びたい気持ちを押し殺してその場から逃げ出した。

 

 光秀はただひたすらに走った。

 山を越えて川を渡り草原を走り抜けた。

 母を殺したあの男の手が届かない所まで逃げる為に、自分を探せない場所まで逃げる為に。

 肺が焼けつくように痛み、何も履いていない足が血塗れになろうとも走り続けた。

 そうして何里かを走り抜けた後、虫の鳴く声すら聞こえてこない静かな草原で光秀は立ち止まった。

 

 そして

 

 

 

 

 光秀は生まれて初めて涙を流し、最愛の母の名を叫んだ。

 

 

 

 光秀は母を愛していた。

 母親として、人として、女性として。

 自身の目の前で血の繋がった女を殺されたその日から、母は自分を守ってくれた。

 精神を病み、笑顔を作ることすら出来なかった気味の悪い自分を蔑む事なく愛してくれた。 

 何年も、何年も、何年も。

 たとえどんなに苦痛であろうとも、たとえどんなに悲しい時であろうとも、母は常に支えてくれた。

 だから光秀は耐え続けられた。

 どんなに暴力を振るわれようとも、どんなに罵声を浴びせられようとも、どんなに寂しかろうとも耐え続けた。

 最後には母が自分を抱きしめてくれると知っていたから。

 それなのに、返しきれない恩をもらったというのに、自身はまだ何も与える事が出来なかったというのに。

 母は死んでしまったのだ。

 

 何故母が犠牲にならねばいけないんだ。

 何故あの父のせいで母が殺されなくてはならないのだ。

 何故他の人間ではなく自分の母なのだ。

 何故殺されたのが自分ではないのか。

 

 どれだけ考えても答えは見つからない。

 

 一つだけ分かっている事はこれから先、どれだけ求めようとも、どれだけ焦がれようとも、どれだけ恩を返したいと思っても

 

 

 

 

 もう二度と最愛の母とは会う事は出来ないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 光秀は泣き続けた、母を思い。

 

 光秀は嘆き続けた、母の死を。

 

 光秀は叫び続けた、母の名を。

 

 

 しかし、それに応えてくれる優しい母はもう何処にも居なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 涙が枯れるまで泣き続けた光秀は血塗れの足を引き摺りながら当ても無く歩き始めた。

 最愛の人を亡くし、生きる希望が無くなったとしても歩き続けなくてはならなかった。

 あの白濁した瞳が頭の中にこびり付いて離れない。

 あの瞳から“生きろ”と言われている気がした。

 そんなありもしない幻想に自笑しながらも、光秀が足を止めることは決して無かったのだった。

*1
現在の岐阜県




お待たせしました
短いし自信ないけどごめんなさい

FGOを期待してくれる人が多いので、ミッチー編を番外編にしてFGO編を本編として書いた方がいいですかね?ご意見お願いします

  • FGO編を本編にして書いて欲しい
  • このまま光秀の話を書いて欲しい
  • 作者の気分で決めて良い
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