ジリリリリリリリ!!
またいつもの目覚ましの音が鳴り響く。私はそれを止め、体を起こそうとする。
「、、、あれっ??」
どうしたのだろう?体が言う事を聞いてくれない。今日は理恵せんぱいに小町ちゃんと一緒に謝りに行かないといけないのに。
言う事を聞いてくれない体に意識を傾けると体が熱くて、でも寒い、そんな矛盾している感覚が私を襲った。
「やっちゃった。。」
結論を言おう。風邪をひいた。。それも結構重めの。
どうやら、せんぱいの風邪がうつってしまったらしい。
大学に入ってから風邪とは無縁だった私は自分の異常に気付けないでいたらしい。
「とにかく、熱測らないと。。って、家に体温計があるわけないか。。今まで必要なかったんだし。。」
そう思った私は熱が下がったら体温計を買いに行こうと決めながらスマホを手に取る。
「小町ちゃんに、断りの連絡入れないと」
もはや文字を打つのも億劫だが連絡しないと、小町ちゃんに迷惑をかけてしまう。
『ごめん小町ちゃん、風邪引いちゃったから今日の予定無しでお願いします。』
返信は意外にもすぐに返って来た。
『大丈夫ですか??わかりました!小町の事は気にせずゆっくりと休んでください!』
元から早起きなのか、私との予定のために早起きしたのか、後者だったら申し訳ないなと思いつつ、返信を返す事なく私は布団に潜り込んだ。
どのくらいの時間が経っただろうか。二度寝から目を覚まし、時計を見ると既に13時になっていた。
「なにか食べないと。あと水も。。」
そう呟いたのはいいが、やっぱり私の体は思うように動いてくれない。食欲も正直あまり無いので食べないでいいかなと思った時家のインターホンが鳴り響いた。
「誰だろう?」
まさか小町ちゃんが来てくれたのかな?っと思ったが来るとしたら何かしら連絡があると思うし、多分新聞の勧誘かなんかだろう。
訪問者の事を無視して、もうひと眠り着こうと思った瞬間、次は私のスマホが鳴り響いた。タイミングが悪いなと思いつつ私はそれを手に取る。
「えっ?」
そこには【理恵せんぱい】と書かれていた。
なんでだろう?なんで今理恵せんぱいから連絡が来たのだろう?まさか。。
私は急いで内容を見てみる
『小町ちゃんから聞いたけど、いろはちゃん風邪ひいたんだって??大丈夫??今お見舞いに来たんだけどもしかして寝ちゃってるかな〜?』
やっぱり。。
私は動かない体に鞭を打ち、急いで玄関に向かう。鍵を明け扉を開けるとそこには理恵せんぱいが居た。
「うわっ、びっくりした〜!っていろはちゃん起きてて大丈夫なの!?」
「あっ、すみません。急がなきゃって思って。。そしてあんまり大丈夫では無いです。。ね。。」
「ちょ!?いろはちゃん!?いろはちゃん!?」
私は理恵せんぱいに返事をしなきゃと思いながらも、そのまま気を失うように眠りについてしまった。
「。。。うぅん。。あれっ。。?」
目がさめると私はまた布団の中にいた。自分の額には冷やしたタオルが置いてあった。
「今何時だろ?」
そう思い時計を見ると既に18時30分になっていた。
「あっ!いろはちゃん起きた!?」
「理恵せんぱい。。?」
「そうだよ!みんな大好き理恵せんぱいだよ!!」
「また大きく出ましたね。。まぁあながち否定できないのが残念ですが。。」
「良かったぁ〜、それだけ軽口聞けるんだったら大丈夫だねっ!」
「あっ、すみません、つい。。」
「いいよいいよ、気にしないで!それよりどこか痛いところとか無い??」
そう言われた私は自分の体を調べてみたが、特に異常は無かった。
「特にはないですけど。。なんでですか??」
「覚えてない?いろはちゃん、私をお出迎いした後玄関先で倒れちゃったんだよ、でも怪我してないなら良かったよ、、」
「そうだったんですね、心配かけてすみませんでした。。」
「全然大丈夫だよ!それよりほらっ!体温計持ってきてあげたから熱計ってみて!」
「あっ、すみません、ありがとうございます」
そう言って私は体温計を使い、自分の熱を調べた。
「37.2℃か、だいぶ下がったね!実はいろはちゃんが倒れてすぐに熱を計らせてもらったんだけど39.0℃もあってびっくりしちゃったよ!!」
「そうだったんですね。でも確かにさっきよりは大分体が楽になりました。本当に看病ありがとうございます。」
「どういたしまして!それよりいろはちゃんお腹空いてない??お粥作ったよ!」
そういえば私、今日一日なにも食べてなかったなぁ。そう考えたらお腹が。。
「ありがとうございます。実はかなりお腹空いてますね」
「それは良かった!病人は食欲がある方が良いもんね!はい!どうぞ!」
そう言って理恵せんぱいはお粥を渡してきた。シンプルな玉子のお粥だ。
「いただきます、、んっ!。。。美味しい。」
「あはっ、それは良かった!実は昨日帰ってから練習したんだよね!八幡くんがいろはちゃんの方が上手いとか言ったから悔しくて!お陰で昨日はお粥フルコース食べちゃった!」
あははといつも通り笑う理恵せんぱいを見ていると昨日言ってたことが、全部嘘なんかじゃないか、そんな風に思えてくる。
だって。。やっぱ信じられないし。。
「理恵せんぱい、昨日は叩いてすみませんでした!」
私は食べ終わったお粥を置き、理恵せんぱいに頭を下げた。
「うん、許してあげる!いやぁまさか後輩に叩かれるとは思わなかったよ!あ〜痛かったなぁ〜」
「うっ、本当に許してくれてるんですか?」
「あはっ、まぁ冗談はさておき私もごめんね?流石にいろはちゃんの気持ちを考えない事を言っちゃって、私も反省してたんだよ」
「私、考えたけどやっぱ八幡くんに話すことにするよ、病気の事。」
「えっ?」
「昨日いろはちゃんに言われて、私考えたんだよ、で考え抜いた結果、やっぱ私は八幡くんの事が大好きなんだよ。だから少しでも長く一緒にいるために、居てもらうために八幡くんに報告するよ。」
「うん、私もやっぱりその方がいいと思います!そっちの方が理恵せんぱいも後悔しないと思いますし!」
「だよね!だからいろはちゃんありがとね!私、後悔のないように、これから色々頑張るよ!!
よしっ!今から八幡君の所に行ってくるね!」
「今からですか!?流石に急すぎる気がしますけど。。」
「いやぁ、本当はいろはちゃんのお見舞いの後すぐ行こうと思ってたんだけど、いろはちゃん倒れちゃったしね、こんな時間だけど八幡くんも風邪治ったらしいし、早めの方が良いでしょ?」
「うっ、本当にご迷惑をお掛けしました。。」
理恵せんぱいはあははっ、と言いながら立ち上がりそのまま玄関に向かって行った。
「理恵せんぱい!」
「んー?なになにー??」
私は靴を履いている理恵せんぱいに向けて一言
「頑張ってください!!」
「うん!ありがと!頑張るよ!!じゃ〜お邪魔しました!いろはちゃんお大事にね〜!」
そう言って理恵せんぱいは外に出て出て行った。
私も理恵せんぱいが残りの時間楽しめるようにサポートしよう。そう思いながらまずは風邪を直そうと、理恵せんぱいが買ってきてくれた薬を飲み、眠りについた。
ジリリリリリリリ!!
私はモゾモゾと布団から出て大きなノビをした
「んっ〜〜〜!よっし!私、完全復活!理恵せんぱいが買ってきた薬が効いてくれたのかな!今度改めてお礼言わないと!」
そう言いつつ私はスマホを手に取った
「あれっ?」
スマホの画面には小町ちゃんからの電話の着信履歴とメッセージが届いていた。
なにかな〜と思いメッセージを開く。
ガンッ!
何か硬いものがぶつかる音がした。
どうやら私は、スマホを床に落としてしまったらしい。でも今はそんな事は気にならなかった。
なぜなら
『いろはさん、理恵さんが車に轢かれました』
私は頭が真っ白になってしまったからだ。