私とタバコとあの先輩   作:ましろん

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一色いろはは、決意を固める。

「落ち着いたかね?」

 

しばらくの間泣いていた私を黙って見守ってくれていた先生が声をかけてきた。

 

「はい、みっともない所を見せてすみませんでした。」

 

「なに、気にするな、私も君の本音が聞けて満足してるよ。」

 

さっきの事を思い出すと顔が熱くなる。やばい、次からもうこの店使えないよ。。

 

「さて、君の本音も聞けた事だし、最後の意思確認だ。」

 

さっきまでの行動を後悔している私に先生が話しかけてきた。

 

「意思確認?」

 

「そうだ。正直、私から恋愛のアドバイスというものは出来ない。出来たら私はとっくに結婚している。だから私が出来るのは君を君自身と向き合わせる事くらいだ。

いいか?君がこれから進む道は茨の道だ、苦しくて大変な道だ、勿論その道の先に君の幸せは無いかもしれない。もしかしたら今より辛いことになるやもしれん、それでも君は比企谷の事を諦めないんだな?」

 

わたしは少しの間、目を瞑って考える。そして。。

 

「諦めません。絶対に。」

 

そう決意した。いや、決意していたという方が正しいかな。私の気持ちは変わらない。もう私は止まる気はない。

 

「そうか、自分で選んだ道だ。頑張りたまえ。君が辛くなった時、またいつでも話を聞いてやろうじゃないか。」

 

そう言ってくれた先生はタバコに火を付け、吸い始めた。その姿はいつになく、頼り甲斐があり、かっこいい姿だった。

 

「私も先生みたいにかっこよくなれますかね?なったらせんぱいも少しは意識してくれますかね?」

 

「そうだな、意識してくれるかどうかは正直わからないが、変わりたいと思うなら自分の思うようにやってみなさい。きっと比企谷もその変化には気づいてくれるだろ。」

 

「はい、自分なりに頑張ってみます。」

 

ふと時計を見ると既に21時を回っていることに気づいた。

 

「さて、結構長居してしまったことだし、行くか。」

 

そう言った平塚先生は伝票を何も言わずに持っていき、会計を済ませてくれた。

 

「あっ、平塚先生!自分の分は払いますよ?」

 

「なに、このくらい大丈夫さ。長い間付き合わせてしまったお詫びだ、ここは私に顔を持たせてくれ。」

 

本当にかっこいいなぁこの先生、私が男だったらもう絶対惚れてるよ。本当に、なんで結婚出来ないんだろう。世の中は不思議で溢れてるな。

 

「向こうに車を停めてある。行こうか。」

 

「はい!ありがとうございます。あっ、先生最後に1つ頼んで良いですか?」

 

「ん?なんだ?」

 

「買いたいものがあるのでコンビニに寄ってもらって良いですか?」

 

その帰り、私はコンビニで平塚先生と同じタバコを買った。買えるか不安だったけど、思った以上にあっさり買えた。

私は、なりたいものは形から入るらしい。そんな自分の意外な一面を見つけながら、平塚先生にバレないように買ったタバコを鞄の中にしまい、待っていてくれた先生の車に乗り込んだ。

 

「先生、今日は本当にありがとうございました。私、私なりに頑張ってみたいと思います!」

 

数分後家まで送ってくれた平塚先生にお礼の言葉を伝えた。

 

「なに、気にするな。あっ、そうだ一色、君に伝えたいことがある。」

 

「何ですか?」

 

「私がタバコを吸い始めたのは大学に入って少しの頃だったな。最初はむせて本当に苦しかったのを覚えている。まぁ若気のいたりって奴だ。本当は立場上、私は止めた方がいいのだろうが、君はもう総武高の生徒ではないしな、ただあまり吸い過ぎるのは良くないそぞ?あと、ご両親には迷惑かけるなよ?わかったか?」

 

「ツっ、はい、わかりました。」

 

「うむ、ではまた。」

 

そう言って先生は車を出した。

 

流石先生、すぐにバレちゃったな。

 

 

その日から私は、2日に一本くらいのペースで吸い始めた。ちなみに買った日の夜に一人でむせて、泣いてしまった事は誰にも言えない秘密となった。

 

 

 


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