岩倉玲音と俺の夏休み。それとペルソナぁ!!!   作:げげるげ

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せみもぐらさんの同人誌が好きです。


第21話 エロ同人のように

 結城直也と天原晴幸の出会いは、少しばかり特殊だった。

 それは、高校入学直後の、とある日。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……貴方が、貴方が悪いのよ……っ!」

「あちゃー」

 

 直也は包丁を持った女子生徒に脅されて、校舎裏で追い詰められていた。

 そうなった理由は実に明白。直也がその外見だけは麗しい少女に手を出して、けれど、遊びの関係だったということがばれたのが原因である。加えて、外見が美しくとも、内面がメンヘラだったので、こういう形で追い詰められてしまったのだった。

 

「あー、確かに、僕が悪かったねー、ごめんごめん。許してよー」

「う、煩い! 私の事なんてどうでもいい癖にぃ!」

「うん。それは本当だけどさー。暴力はいけないよ、暴力はー」

 

 この時、直也は余裕があった。

 何故ならば、当時、直也はペルソナ能力に覚醒しており、ワイヤードの外でも、その能力の一端を使用することが出来たからだ。

 オルフェウス。

 冥界の神すら魅了する、美しき奏者。

 故に、直也がちょっと口笛でも吹けば、瞬く間にメンヘラ女の一人ぐらい制圧できるだろう。そういう算段で、直也は機会を見計らっていたのだが、

 

「まてーい! この学び舎に鮮血の赤は似合わないぜ!」

「「えっ?」」

 

 そういうタイミングとか、雰囲気を一瞬で台無しにしたのが晴幸である。

 晴幸は何故か、その頭や肩に猫をこんもりと乗せており、大体、五匹ぐらいの猫が晴幸の体に乗っかって、奇跡のバランスでその状況を維持していた。

 もちろん、卸し立ての学生服は既に、猫の毛で汚れ、獣臭くなっている。

 

「何か理由があるのかもしれない。そこの男は、アンタに殺されて当然のことをしたのかもしれない。だが、落ち着いてくれ」

『にゃあ』

『にゃー』

『なうー』

「まず、理由をこの俺に聞かせてくれないか? 本当に、アンタがその手を汚すべき相手なのか。それを見定めるためにも」

『にゃっ!』

『にゃーん!』

「もちろん、いきなり、第三者がこんなことを言うなんて……こら、頭の上で喧嘩しない!」

「「猫の存在が邪魔して、全然、話が頭に入ってこない!!?」」

 

 当時、晴幸はたまたまマタタビという猫特攻アイテムを手に入れて、それを学校の周囲の猫に試そうと実験をしていたところだったのだが、直也とメンヘラ女はそのことを知る由もない。彼らにとっては、いきなり猫だらけでガタイの良い強面の男子が、自分たちを仲裁し始めたということだけである。

 

「…………ば、馬鹿馬鹿しい……馬鹿すぎるぅ……」

 

 なお、この時点でメンヘラ女は毒気を抜かれてしまい、包丁を手放してしまった。

 晴幸の話を聞いて、説得されたわけじゃない。ただ、昼ドラみたいな展開をしていたら、途中でギャグマンガみたいな世界の住人が現れて、なにかもが馬鹿馬鹿しくなったのだろう。

 

「うん、それでいい」

『にゃー』

「君に、そんな物騒な玩具は似合わないぜ。代わりに、はい」

『にゃーん?』

「猫をあげよう。野良だけど」

「獣くさいっ!? やめ、なんで頭付近に乗せるの!? 猫も全然、はなれなっ!!?」

 

 晴幸は自分の説得が効いたのだと勘違いして、したり顔でうなずき、何故か、猫をメンヘラ女の頭部に乗せた。多分、意味などない。天原晴幸という馬鹿は、そういう無意味な行動をその場のノリでやらかす悪癖があるのだ。

 

「…………はは、なんだこれ?」

 

 直也はその様子を眺めて、やや、引きつった笑いを作ることしかできない。

 悲劇。あるいは、自分が悪党になるはずだったタイミング。

 それを何もかも台無しにして、ジャンルを塗り替えていくような感覚。

 そして、いつの間にか自分の肩にもそっと乗せられていた、猫の生暖かい体温を感じながら、直也は直感した。

 こいつは、只者ではないと。

 

「ああああああ!!? 猫が次から次へと集まってくる!!?」

「覚えておけよ、名も知らぬ女子。これが、俺の領域展開・ねこまっしぐらだ!」

「わけがわからないわよ!!?」

 

 多分、物凄い馬鹿なのだと。

 

 

●●●

 

 

 そして現在、物凄い馬鹿である晴幸はやはり、直也の窮地に駆け付けていた。

 己を信じられなくなった結果、自らのペルソナによって、自身の存在を乗っ取られそうになった時、晴幸がまるでヒーローの如きタイミングで登場したのである。

 何故か、全裸で。

 

『直也っていつもそうだよね。こういう時、どうしようもない時、颯爽と現れて全てを掻っ攫っていく。だから、一応聞いておくよ……どうして全裸なの?』

「ふっ、この隔離された空間に入るのに少し手間取ってな。その代償が、これさ」

『股間を見せつけないの。なに、セクハラ?』

「セクハラじゃない。というか、え? 何? 既に女の自覚があるの、こっちの直也。え、ひょっとして、あのまま放置していたら、現実世界でもTSしていたのか……くそっ! 選択肢ミスったぁ!!」

『「おい、こら」』

 

 影と実体の直也が同時に晴幸にツッコミを入れる。

 もはや、完全にこの場の空気は晴幸に持っていかれていた。だが、それでも、影の直也は止まるわけには行けない。自殺衝動は、止められない。

 

「まー、流石に冗談さ。あの悪友が、こんな美少女になるなんてぞっとしない。TSは二次元だからこそ好まれるのさ。現実世界でそれをやると、ちょっと厳しい。なんか、社会問題とかに触れそうで面倒くさい」

『君はそういうところがあるよね? というか、僕が僕を殺しても、別に現実世界でTSしたりしないよ。ただのノイズとして生きるだけさ。この世界に無数にいる、雑音の一つとして。でも、それが愚者の末路としては相応しい――スカートをめくるなぁ!!』

「なにこの、純白パンツ。フリルがたくさんあるんだけど? え? こういうの知っているってことは、やっぱり、こういうパンツを履いた女子ともやってたからこその、細部再現なの?」

『――――ぁああああああっ! ペルソナぁ!!』

 

 そして、晴幸もまた、己のノリを止めることはない。

 そうなれば当然、激突が起こる。

 影の直也。

 お姫様としての側面。

 美しいが故に、自惚れ、ヒロインとして愛されることを望んでいた弱い部分。

 結城直也の罪の象徴は、己の心の内から、愚者を呼び起こす。

 その名はオルフェウス。

 音を操り、人を操り、時には神すらも惑わす吟遊詩人の能力が今、晴幸に牙を剥く。

 

『しばらく、動けなくなれぇ!』

「がぁっ!!!」

 

 影の直也が考える限り、最速の攻撃だった。

 先んじてペルソナを呼び、即座に、竪琴を弾くことにより、相手の動きを封じる音を出す。文字通りの音速の攻撃。相手も呼応して、ペルソナを呼ぼうとも遅い。そんな攻撃だった。

 けれど、晴幸の行動は、影の直也の予測をはるかに超えていた。

 オルフェウスが奏でる麗しき竪琴の音。

 それを、己が咆哮で掻き消したのである。

 そう、地面が震え、近くに居た影の直也がオルフェウスごと吹っ飛ぶほどの、凄まじい咆哮によって。

 

「――――――音撃・我獣咆哮。お前に、これを見せるのは初めてだったな、直也」

『せめて、人間の範疇で防げよぉ!!?』

 

 バトル漫画に出てくる怪物みたいな防ぎ方をした晴幸に、影の直也は戸惑いを隠せない。なお、本体の直也はもう色々とあきらめているのか、ぐったりと地面に伏せっていた。

 

『くそ、くそ、くそっ! だったら、僕が持っているワイヤードの権限を全て! 君を封じるために、使う!』

 

 されど、影の直也の方は諦めるわけにはいかない。

 格好つけているくせに、全裸の悪友などに、シリアスを止められるわけにはいかない。

 影の直也は己の権限が届くすべての領域から、心の力を自分のペルソナに集中させる。いわゆるそれは魔力とも呼ばれる力であるが、明らかに器以上の魔力がオルフェウスに注がれ、 その姿が変質する。

 竪琴は消え、吟遊詩人が抱えるのはとてつもない大きさのスピーカー。

 美しい吟遊詩人の姿は襤褸切れを纏った物乞いの如く歪み、ただ、そのスピーカーのみが、ごてごてと様々な機械的なパーツで強化されていく。

 

『世界を嘆く、愚者の歌ぁ!!』

 

 そして、影の直也は全身全霊を持って、その歌を特大のスピーカーから流した。

 大音量だ。

 だが、歌自体はバラードだ。悍ましき、悲しき、嘆く誰かのバラードだ。世界に生まれてきてしまったことを嘆き、死んでしまいたいと嘆く愚者の歌だ。

 己の愚かさがどうにもならないと嘆く、弱者の歌。

 世界中の誰しもが持つ、弱さの歌。

 それ故に、まともに受ければ、晴幸ですら動けなくなっていただろう。

 

「はんっ、辛気臭いメロディーだ。だが、良いぜ。テメェらが世界を嘆くなら――――俺は、勝手に騒いで、テンションを上げてやる! 来い、なんかカッコいいギターぁ!」

 

 無論、まともに受ければ、の話であるが。

 仮に、力任せで突破しようとしても、その歌は晴幸を阻んだだろう。

 仮に、ヤマによる愚者の断罪を実行しようとしても、その歌は晴幸の足を引いただろう。

 けれど、晴幸が選んだのはどちらでもなく――――歌には、歌で返すことだった。

 

「んでもって! 俺の勝利BGMはこれで行くぜぇ!! 『the pillows “Little Busters”』!!」

 

 晴幸の眼前に現れたのは、ヘンテコな形のギター。

 それを、躊躇いもなく握ると、突然、ワイヤード全体の音楽が切り替わっていく。

 あれ? これ、音量のボリューム間違えたんじゃね? と耳を塞ぎたくなるようなやかましいBGMが、晴幸の周囲から流れ始めて、嘆きの歌を押し返し始める。

 

『こ、この曲は―――』

「そうさ! どんなぶっ飛んだ頭おかしい展開でも、この曲をかければ、不思議と名シーンのように思えてくる勝利BGMだぁっ!!」

『君さ、フリクリのことをわけわからないって言っているけど、あれは君の理解力の問題だからね――――』

「うるせぇ!! 俺はポケモンとか、ジャンプ系列みたいな分かりやすいアニメが好きなんだよぉおおおお!!!」

『このっ、分からずやぁあああああっ!!』

 

 影の直也と、晴幸は互いに言葉をぶつけ合う。

 明らかに、この場面で語り合うことではないというのに、影の直也はすっかり晴幸にペースを掴まれてしまい、やがて……嘆きの歌は完全に、勝利のBGMによって押し返されていた。

 

「だったら! 横から! 解説しながら見せないで! 静かに見せろやぁあああ!!」

『みぎゃん!!?』

 

 晴幸のギターが、スピーカーを叩き壊して、猛烈なノイズが一つ、世界に響く。

 それが、二人の戦いの終わりとなった。

 

『ああ、くそ……気づけば、これだ。正直に言うとね、僕は君に嫉妬していたんだよ、晴幸。あの時、あの場所で、君があの人の隣に居たら、きっとあの人は死ななかったんじゃないかな、ってさ』

「いや、お前の事情が分からんから、全然、伝わってくる物が無い」

『君ね、本当にそういうところがモテない理由だよ?』

「んだとぉ!?」

 

 戦いの影響で、直也の思い出の場所を再現した空間は、ほとんど廃墟同然となっていて。

 しかし、何もかも台無しにされたはずなのに、影の直也は不思議と悪い気分はしなかった。影の直也は、だが。

 

『…………僕の負けだ。いいや、初めから分かっていたんだと思う。最初に出会ったときから、僕じゃ君に勝てないことは知っていた。でも、ね、晴幸。君は僕に勝ったけど、だから、なんなんだ? 僕が、僕の本体が愚かで――――死にたがっていることに、変わりはない』

「……直也」

 

 晴幸が視線を向けた先、そこには本体の直也が地面に這いつくばったまま、諦観の笑みを浮かべていた。

 

「あ、ははは、君はやっぱりすごいねぇ、晴幸。でも、僕はね、全然駄目なんだ。ついさっき、自分の生きる意味を失ったばかりでね? 全然、駄目なんだ……気力がさ、湧いてこない。生きる意味とか、そんなの、まったく思いつかない…………だから、僕のことはもう放っておいてよ? こんな奴、さっさと見捨てて、先に行くんだよ、君は」

 

 乾いた言葉だった。

 諦めきった者の笑みだった。

 砂漠に水をやるように、どれだけの言葉をかけても、全て留まらず、通り過ぎて行ってしまう。そんな情景が浮かぶほど、直也は枯れ切っていた。

 死への恐怖すら、今はさほどない。

 いや、自分を遥かに超える晴幸という存在を目にしたからこそ、諦めがついてしまったのかもしれない。

 皮肉なことに、晴幸が介入してしまったからこそ、直也は己を諦めてしまったのだった。

 

「いいのか? 直也」

「いいんだよ、晴幸。僕は、僕という愚者は、ここで終わりだ。もう、放っておいてくれ。これ以上惨めにしないでくれ」

「…………わかった。でも、なんだかんだ動いた割に悪友が変に悟ったことを言ってイラっとしたから、その分の対価はもう一人のお前に払ってもらうな?」

「ああ、好きに…………えっ?」

『えっ?』

 

 ただ、直也は知らない。まだ知らなかったのだ。

 自分がどん底だと思っていた状況よりも、さらに深い底が存在するなんて。

 

「よぉし、一発決めて、童貞卒業するぞー!」

 

 晴幸は、影の直也の体を抱えて、どこかしらの物陰を探し、移動しようとしていた。

 ひゃっほう、と実に爽やかな笑みを浮かべて、スキップすらしそうな雰囲気で、うきうき蛮族状態である。

 

「…………いや、いやいやいや、流石に、ね? 冗談だろ? な? 僕を激励して、こう、生きる気力を出させるための――」

『あぁあああああああああああ!!! 体まさぐられて、色々確認されたぁ!! 畜生ぉ! 僕はさっきの戦いの影響で動けないから、抵抗できないんだよ、畜生ぉ!』

「本気か、君ぃ!!?」

 

 本体である直也の体に、急に活力が戻ってきた。

 それは、悪友がTSした己の半身で童貞卒業せんとするのを防ぐため、天から与えられた最後のチャンスに違いなかった。少なくとも、直也はそう確信していたという。

 

「え? だってお前死ぬじゃん。なら、童貞卒業するために最後、有効活用するよ? というか、お前の半身であっても、別に男のお前にぶち込むわけじゃないからいいじゃん」

「よくない! とても良くないぞ、君ぃ! そういう割り切り方は良くない! というか、中身は僕だぞ? いいのか!? 肉体は美少女でも、僕だぞ!?」

「へへっ、俺は馬鹿だから難しいことはわからねぇ。でもよ? 肉体が美少女なら、俺は全然大丈夫だと思うんだ、別に。どうせ、お前この後死ぬから、気まずくなって困ること無いし」

「…………は、ははは、完璧な演技だ。危うく、僕が騙されかけたよ。でも、結局、僕を生かすための演技だとは知って――――居ねぇ!? どこに行った!!?」

『ああああああああ!! パンツが! パンツが脱がされてるぅ!!』

「くそぉ! 薄々思ってたけど、ガチか、あいつぅ!!!」

 

 直也は残された力を振り絞って、這いつくばって進む。

 止めなければならない。

 死ぬ間際、悪友にTSした自分の半身がヤられるってどういう状況だよ! という混乱を抱えたまま、それでも、前へ。

 

『は、早く、助けに来いよ、もう一人の僕ぅ! 言っておくけど、僕の体験は、このまま死のうとした場合でも、フィードバックするからな! その場合、死の間際の記憶が、あの人との過去じゃなくて、悪友とのTSエロ同人だぞ!?』

「う、うぉおおおおおおっ!」

 

 前へ、前へ、立ち上がれなくても、少しでも前へ。

 

「直也、直也。前戯って、こういう感じでいいのー?」

『ほ、本人に聞くなよ、ひぅっ!?』

「だって、経験豊富じゃん。どうせだったら、こう、今後のために質問をしながらヤるから、お願いします」

『ひぁああああっ! こ、この馬鹿が、僕にいろいろ聞きながら、それを僕の体で試そうとしてくるよぉ!? もういい、助けに来るよりも先に、受け入れろ! もう一人の僕! 自分自身の罪を! 出来ないことを! 愛する人は死んだのだと、受け入れろ! そうすれば、この僕は、再び、君の影に……ひゃんっ!』

「もう一人の僕が、雌の声を出し始めているぅ!?」

 

 これは駄目だ、なんとしてでも阻止をしなければならない、と直也は考える。

 だが、同時に、こんなことであの挫折を飲み込んでもいいのか? と直也は思う。あの幸福な過去を再現しようと、ずっとそのためだけに生きていた。

 けれど、それはお門違いで。

 何もかもが結局、直也にとっては蚊帳の外で。

 自分は誰も救えない、それを思い知らされてしまって。

 

『う、受け入れる! 受け入れると言え! (精神的に)死ぬ、死んでしまうぞ、もう一人の僕ぅ! いいのかぁ!? このままだと、蕩けた顔で雌落ちするぞ、僕はぁ! というか、もう、そろそろ、やば……んんっ』

「あ、これ悩んでいる暇ないわ、受け入れる! 受け入れるから、手遅れにはならないでくれよ、僕ぅ!!」

 

 でも、それでも、生きているのだから、せめて自分だけは救わないといけない。

 そうだ、どれだけ惨めでも、馬鹿馬鹿しくても、生きるしかないのだ。まだ、直也は生きていて、止めようとする悪友がいるのだから。

 

 ―――パキャンッ!

 

 直也が自らの罪を受け入れた瞬間、眼前に、己の影が現れた。

 まるで、楔から解き放たれたみたいな快音と共に、直也の前に、真なるペルソナは姿を現す。

 

《我は汝。汝は我。汝の心の海より浮かび上がりし、死の化身。死を忘れず、前進を続ける愚者よ。自らの愚かさを忘れぬ限り、死神の刃は、共に在らん》

 

 無数の棺桶を鎖で繋いだオブジェを背負い、飾り気のない一本の刀を携えた剣士。顔には獣の頭蓋骨を模した仮面を被っており、さながらその姿は、処刑人のようだった。

 

「…………あ、ああ、ああっ」

 

 直也はそんな自分のペルソナの前で、ようやく起き上がった。そう、起き上がり、自らの体を抱きしめるように肩を掴み、しみじみと生を実感する。

 

「――――――本当にぎりっぎりだったじゃんか、晴幸の馬鹿ぁ!!?」

 

 とてつもなく、情けない自分の生存を。

 ギリギリ、いや、本当にギリギリの部分で己の精神が雌堕ちしなかった、幸運を。

 こんな情けないことで、過去の乗り越えてしまったことを噛みしめながら。

 

「…………ああ、格好悪いなぁ、僕は」

 

 生まれて初めて、結城直也は己の格好悪さを認めたのだった。

 




なお、悪友相手なので説得の方法が雑だった模様。
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