岩倉玲音と俺の夏休み。それとペルソナぁ!!!   作:げげるげ

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第27話 敵対していた巫女さんを捕まえたらやることなんて、俺は一つしか知らない

 玲音が用意してくれた直通便は、なんというか、あれだ、ゲームにおけるワープゾーンみたいな役割を果たしてくれた。何せ、テレビやパソコンのディスプレイに手を突っ込むだけで、ワイヤードを介して、目的の場所に辿り着けるのだから、らくちんだ。

 

「う、うぇっ……と、トイレどこぉ……」

「美しくない映像が、脳髄に、叩き、こまれて……」

 

 もっとも、この移動には適性という物があるらしく、直也と鴉さんは共に重度の乗り物酔いを発症したような有様で、すぐに倒れこんでしまったのだけれども。

 帰ってくる場所を、自宅に指定してもらってよかった。そうでなければ、約二名がそのまま吐しゃ物まみれになってしまうところだったぜ。

 しかし、あれだ。

 こんなに早く帰ってこれるのなら、最初からやっていただければ助かったのですが、玲音さん?

 

「シリアル」

「はいはい、分かったよ、もう。んじゃあ、京子の部屋にワープして、帰還を知らせてから、一緒に買いに行こう」

「ん」

 

 まぁ、この手の事を玲音に言っても無駄だ。

 玲音はあれだ、気まぐれな山の天気みたいなものである。こちらの都合であれこれ言っても仕方ない。お願いを聞いてもらえる時はお願いして、ギブアンドテイクで答える。そんな健全な関係をこれからも保っていきたいと思います。

 ともあれ、まずは帰還の報告である。

 メールやラインで知らせてもよかったのだが、玲音曰く『すぐバレる』とのことだったので、ネットを介さぬ方法で、直接会いに行くことに。

 うん、僅か数日だったけれども、親友である京子と離れて寂しかったことだし、早いこと彼女のキレッキレのツッコミボイスが効きたいぜ。

 あ、ちなみに鴉さんと直也は自宅でお留守番です、はい。どうにも、あの移動は今のところ、俺と玲音以外だと、負荷が大きいみたいだからね。

 

「…………あっ」

「…………えぇ」

 

 と言うわけで、京子の家にノーアポで突撃した結果、俺が見た光景というのは、ベッドの上で、狐面を被った巫女服の女の子の衣類を脱がせている途中の親友の姿だった。

 京子は、いきなりパソコンのディスプレイから出現した俺の姿に驚き、固まる。

 俺もまた、交流関係の中では生粋の真人間だった京子の奇行に、驚き、固まる。

 

「…………変態」

 

 ただ、玲音だけはいつもの調子でエロ判定に厳しく、京子に侮蔑的な視線を向けていた。

 

「ち、ちがっ! これは違うんだ、玲音ちゃん! つーか、馬鹿テメェ! アポなしで来るなって、何度言えばわかるんだ!? よりにもよって謎の技術で、私の部屋の中にワープしてきやがって! 私がえ、エッチなことをしていたらどうするつもりだったんだ!?」

「落ち着いて聞いてくれ、京子。現状、既にその想定を上回る被害を君は受けている。あの、というかですね。昏倒レイプで、その、仮面を被った巫女さんをレズエッチするってのは、その、業が深いね、君も」

「違う!!」

「大丈夫、大丈夫、お前一人だけを犯罪者にしない――――3Pだ!!」

「死ねぇ!!」

「変態」

 

 俺としては、精一杯の慰めを京子に向けたみたいだけれども、良くなかったらしい。おかしいなぁ。例え、お前とならばどんな罪でも背負って生きていけるぜ! と格好良く告げたつもりだったのに、性欲が俺の考えたかっこいい台詞を凌駕してしまった。

 まぁ、その結果、京子と玲音の二人に踏みつけられるという、定番のやり取りができたので、良しとしよう。

 

「それで京子。その異能伝奇モノのエロゲーに出てきて、凌辱系だったら触手に捕まってそうな人はどなた?」

「例えが悪い!」

「学園伝奇ジュブナイルに登場して、意味深な言動を残して、最終的には主人公に体を許す系の巫女さんはどなた?」

「…………はぁ、もういい。こいつはな、その」

 

 京子はちらり、と玲音に視線を一瞬移した後、ため息と共に説明を始めた。

 

「ナイツだ。私たちを襲ってきた奴と、同種の奴が、私を襲ってきたんだよ。なんかこう、人質にして、お前らを従わせようとする計画、みたいな?」

「なんて卑劣な! 俺がその場に居たら、即座にR指定だぜ! エロい意味で!!」

「お前がその場に居なくてよかったよ、晴幸。でもまぁ、あれだ。お前と違って賢い私は、大人しく人質になったと見せかけて、出来る限りの情報を引き出して…………その上、お前と同じペルソナ能力に覚醒して、こいつを撃退したんだ。どうだ? 凄いだろ」

「流石、俺の親友! 相棒ぉ! 天才! 無敵! 美少女!!」

「やめ、やめろ……そういう褒め方をするのはやめろ……」

 

 誉めて欲しそうにしてたから、思いっきり褒めるとすぐに照れるなぁ、京子は。

 実際、とても凄いことをやって見せたのだから、素直に胸を張ればいいのに。

 …………うん、やはり何度考えても、俺の相棒は京子以外考えられないな。傍に居なくても、ここまで信頼できる相手というのは、俺は他に知らない。

 実際、直也とかの場合は勝手に悪落ちしてたりしたしなぁ、んもう。俺と出会う前に悪落ちするなよなぁ、対処が追いつかなくなるだろー。

 

「ん。あ、ん…………ここは?」

 

 などとほのぼのとしたやり取りをしていると、巫女さんが起きた模様。

 仮面をつけているから分かりにくいが、声を出して、よろよろと起き上がろうとしているので、意識は覚醒に向かっていると見ていいだろう。

 

「あ、拘束するの忘れてた」

「京子のうっかりガールめ!」

「うっせぇ! 汚しちゃった巫女服を着替えさせてからじゃないと、可哀そうだと思ったんだよ!」

「京子のフレンドリーガールめ! そこが好き!」

「ありがとうよ!」

 

 京子と俺は、漫才の如きやり取りをしつつも、共に素早く行動を開始。

 まだ完全に覚醒しきっていない巫女さんを、京子が抱き着いて拘束。体重を思いきりかけた抱き着きなので当然、巫女さんは呻きながら手足をばたばたさせることしかできない。そこに、この俺が床下に転がっているコードの類を拾って、素早く拘束。手足に痕が残ってもまぁ、それはそれでエロスだよね、という気持ちを込めて、巫女さんの動きを封じる。

 

「…………お前、はっ! 天原、晴幸ぃ!!」

 

 なお、動きを封じた結果、物凄く怨念が籠った声で名前を呼ばれてしまう俺である。

 え? なんぞ? 過去に俺に家族でも殺されたの? 今のところ、俺にはそういう記憶とかは無いんだけれども。

 

「んー、京子、俺の名前を教えた?」

「いいや、最初からお前の名前は知っていた…………ナイツとやらの情報網か、それとも、何か、お前に個人的な恨みを持っているか、だ」

「いーや、全然記憶にない。触れるもの皆、幸せにしていくこの俺だぜ? 多分きっと、何かの逆恨みだと思う」

「だよな」

 

 うんうん、と俺と京子が頷き合っていると、何故か、巫女さんがさらに激昂する。

 

「貴様らは! 貴様らはいつもそうだ!! 天原家ェ!! 葛葉の傍流にして! 自由を認められた、唯一の例外ぃ!! わかるか!? わかるか!? 他の傍流が、どれだけ、貴様らを疎ましく、羨ましく思っていたのかを!」

「知らないですがー?」

「私は! 幼い頃から、訓練に訓練を重ねて! 悪魔を祓う生業を務めようと……それが! それが! 一度の失敗で、私は剥奪された! 悪魔を討つ事はもう、許されていない! 何が、 何が、『恨みを持つ者は悪魔に飲まれる』だ! ふざけるな!!」

「あの、すみません。俺には関係のないことでは?」

「お前は! お前は覚えていないかもしれないが! 私は覚えている! あの、あの能天気そうな顔を! 一族の集会で! あの、あの葛葉の者にすら、敬意を持たれているお前たちの血族と違って、私は、私たちがどれだけ惨めで……」

「あ、おいおい、玲音。駄目だぞ、ちゃんと京子の許可を貰ってからじゃないと。スナック菓子ならともかく。ドクペはこいつの命だからな」

「ん、京子、いい?」

「あー、待て待て。冷蔵庫に冷やしたのがあるから、そっちを持ってこよう」

「――――無視するなぁ!!」

 

 俺と京子と玲音が会話していると、巫女さんは泣き叫ぶような声で抗議する。

 こっちを向け、と。

 

「…………ええと、巫女さん。そもそも、俺は君の名前も知らない。顔もわからない。多分、聞いても知らない。見ても気づかない。そんな相手の恨み言なんざ、わざわざ聞く価値があると思うか?」

「――――だったら、仮面を剥いで、見ろ。私の、目を見ろ。お前を睨む、私の目を、見ろ。それでも、覚えていないというのならば、私を好きにするがいいさ」

 

 はぁ、と俺はため息を吐いて、肩を竦めた。

 京子もまた、喧しそうに眼を細めた。俺が名前を憶えていないということはつまり、本当に関わりのない人間であるということを知っているからこその反応だ。

 そうだ、俺は馬鹿ではあるが、友達やかつて共に遊んだ仲間を忘れることはない。

 もしも、忘れているとしたら、それは、一度も言葉を交わしたことがない相手ぐらいだ。

 けれども、それでも、もしも、何かしらの原因で忘れていることがあるかもしれない。

 昔、美少女に立てたフラグが今になって、回収されに来たのかもしれない。

 そんな、淡い希望を抱きつつも、俺は巫女さんの仮面を外した。

 

「――――どうだ、思い出したか?」

 

 京子は細めた目を見開いた。

 玲音は、こちらにまったく興味を示していない。

 俺は訝しむように、その仮面の下をよく観察した。

 狐の面が隠していた顔は、その左目から頬、顎の下まで三条の爪痕が刻まれた痛々しい物だった。加えて、その傷跡は中途半端に無理やり治したのか、左半分の肉がいびつに歪んでいる。右半分の顔が、涼やかな大和撫子を連想させる美しい物だからこそ、その痛々しさは際立っていた。

 …………ふむ? いや、マジで誰?

 

「え? ヒント頂戴」

「…………は、ははは、この顔を見ても、その反応か。ならば、『葉隠』の者と名乗っても、分からないのだろうな?」

「え? 居た? 葉隠れの爺様は知っているけど、え? 居た? 待って、一族の集会でしょ? 正月の集まりでしょ? …………待って、いつ頃まで参加してた?」

「……………………参加したのは、三年前のと、五年前の二度だ」

「その時、こんな感じの顔だった?」

「この顔になってからは、醜いからと許されていない」

「ごめん、割と何百人も人が集まるから覚えていないわ。つーか、挨拶もしてないだろ? 俺、全員の挨拶が終わったら、ガキどもを集めて、TRPG大会やってたから。そこに参加してないともう、知らん」

「は、ははは、そうだな、結局、私の、私の独り相撲…………恨む相手は、歯牙にも……はは」

 

 巫女さんは乾いた笑みを浮かべると、ボロボロと涙を零しながら脱力した。

 京子が、なんとかしろよ、お前、みたいな目で見てくるのだが、流石にこれはどうしようもない。逆恨みってレベルじゃなくて、関りすら皆無だったもん。

 

「好きに、するがいいさ。こんな、醜い私でよかったらな」

 

 脱力した巫女さんは、何故こう、人生諦めモードである。勝手に因縁を付けてきて、勝手に心が折れるとかよくわからない人だなぁ、もう。

 でも、ここで放置するわけにはいかない。何故なら、京子がしきりにアイコンタクトで『どうにかしてやれよ』と伝えてきているからだ。

 や、正直、どうでもいい相手なのだが、親友である京子の頼みならば、仕方ない、ふぅ、本当に仕方ない。やりたくないんだけど、仕方ないなぁ、ほんと。

 

「おい、よくわからんが自分を蔑ろにするんじゃない。そんなことを男の前で言ったら、酷い目に遭うぞ? 良いのか?」

「は? この私を、お前が? この醜く、汚れた私が? 平和な世界で生きてきたお前が、どうするっていうんだ? やれるものならやってみろ!」

「よし、言質とったぞ」

「え?」

 

 親友からの頼み。

 当人からの言質。

 そして、ここ最近性欲処理がろくに出来なかったことによる性欲の増大。

 後から思い返せば、これから起きた悲劇というのは、それら三つが合わさった結果、生まれてしまった物なのかもしれない。

 

「ぐへへへ、敵に捕まった巫女の末路なんざ、エロゲーでは一つだけよ! 即ち、凌辱!」

「ふ、ふん……そんな口ばっかりな――」

「べろんっ」

「ひあっ!?」

 

 手始めに俺は、巫女さん自身が嫌悪していた傷跡を舐めた。べろりと、容赦なく舐めて、ふへへへ、と欲情に駆られた声を出す。

 

「な、なんっ、何を!?」

「俺の性欲を甘く見たな、巫女さんよぉ。俺くらいの性欲の持ち主となれば、その程度の傷跡なんざ、ただのスパイスよ。性欲を盛り上げるだけの調味料だ。おまけに、元が良いから、余計に興奮するぜぇ」

「へ、変態! 変態!」

「おいおい、どうしたぁ? 汚れているんだろぉ? やれるものなら、やってみろ! って君が言ったんだぜぇ? 大人しく受け入れなぁ」

「ひぃ!」

 

 巫女さんが喉を絞られたような悲鳴を上げて、もがく。けれど、拘束で動けない。芋虫のようにもがくけれども、すぐに俺に圧し掛かられて逃げられなくなってしまう。

 その途中、何度も京子から『殺すぞ?』という視線が送られてくるが、待って欲しい。

 そう、何も本当に巫女レイプを始めるつもりはない。

 俺がイケメンであったのならば、『君は醜くないし、汚れてないよ』と良い感じの台詞で説得できたかもしれないが、残念ながら俺はただの強面の高校生。おまけに、相手からはなんか恨まれているという悪環境で、説得なんてできない。

 故に、脅すのだ。

 絶望を上回る恐怖を与えて、生存本能を刺激、生きるという意思を復活させる。

 多少荒療治ではあるが、ほぼ他人の俺が、この巫女さんに出来ることなんて、これぐらいだ。

 

「ぐへへへ! ぐへへへ!」

「やめ、やめて……いやぁ! 来ないでぇ!」

「好きにしろと言ったのは君だろう? ならば、好きにするさ! ハードエロ同人誌のようにな! ははは! 君はこれから、たっぷりと俺に凌辱された上に、カニバリズムされて人生の幕を閉じるのだ! ひゃはははは! 変態の腹の中に納まって終わる人生だぁ! ほら、素敵だなぁ! ――――がぶぅ!」

「ひあっ」

 

 そんなわけで、巫女さんを押し倒して真っ白な首筋に噛みつく俺。気分は吸血鬼か、畜生である。もちろん、本当に噛み殺すなんて野蛮なことはしない。ただちょっと、傷跡が付くかもしれないなぁ? ぐらいの力加減で噛めば、後は勝手に相手が勘違いしてくれる。

 何せ、人間噛み千切られるぐらいの痛みなどわからないので、『本当にするかもしれない』と思わせてから噛みつけば、『噛み殺される!?』と錯覚するのだ。

 あ、ちなみに押し倒してはいるものの、可能な限りエッチな部分には触っていません。それをやらかすと、途中で玲音と京子に蹴られて中断してしまうからです、はい。

 

「がぶがぶ、じゅるじゅる」

「いやぁ……いやぁ……死にたくない、私、死にたくないよぉ……こんな死に方、嫌だよぉ」

「がぶぅ!」

「殺さないで……殺さないで! お願い、私! もう逆らわないから! お前に、貴方に逆らわないから! ちゃんと従うから! 全部言うこと聞くから! だから!」

 

 …………ここまで命乞いされると、心が痛むなぁ。欲情もするけれど。ついでに、首筋に噛みついているので耳が痛い。というか、あれだね。女の子の肌を噛みついて舐めてみても、特に美味しいとか感じないので、俺にはカニバリズムの才能が無いのかもしれない。

 よかった、才能が無くて。

 ともあれ、だ。ここまで命乞いの台詞を引き出せたのなら、脅しはここら辺でいいだろう。半端に絶望して自棄になられているよりは、惨めだろうが、生き抜こうと命乞いする奴の方が、まだ心は立ち直っているからな。

 さて、後は噛みつきを解除して、いい加減、京子に蹴られる前に押し倒した状態から解放しないと…………って、んん?

 

「あ、あははは、私、私ぃ、こんなになっても、汚れていても、生きていたいんだぁ……」

 

 じんわりと、下半身から感じる生暖かい熱の放流。

 それはじわじわと広がっていき、段々と熱を失って冷たくなっていく。

 …………ふむ、どうやら脅しすぎてしまい、巫女さんの下半身のセーフティがこう、決壊してしまったらしい。

 俺は爽やかな笑みを浮かべて、横に居る京子へ視線を向けた。

 京子もまた、不気味なぐらい爽やかな笑顔だった。

 

「ごめん、やりすぎちゃった」

「あはは、許せねぇぞ、馬鹿」

 

 俺は京子に蹴り倒されて、びちゃびちゃのベッドへと倒れこむ。

 どうやら、俺はまた、玲音に頼んで自宅に着替えを取りにいかないといけないようだ。

 …………後は、うん。女性用の下着も、買っておかないとなぁ。

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