岩倉玲音と俺の夏休み。それとペルソナぁ!!!   作:げげるげ

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第5話 女子の買い物って長くね?

 断言しておくと、田舎の買い物は大抵、近所のデパートとなる。

 食品関係ならば、スーパーという選択肢もあるが、田舎のデパートは中途半端に色々揃っているので、特定のブランドや、マイナーな作品を求めなければデパートで大抵の買い物は済ませられる。勿論、本音を言えば、買い物は専門の店で済ませたいのだけれども、田舎の街の中でも、さらに、専門の店がある町はそれほど多くない。

 そもそも、田舎の学生の交通手段は限られているので、自転車でいけない場所には行けない。高校生にもなれば、原付やバイクで移動する奴も居るのだけれども、大抵の学生は自転車と電車を駆使した行動範囲に限られるのだ。

 そして、この度の買い物は京子の家の近くにイオンがあったので、イオンでの買い物になる。

 正確に言うならば、まず、イオンの隣にある薬局店に行くことになるのだけれど。

 

「んじゃ、二人とも買い終わったら呼んでね? 俺は適当にそこら辺をぶらぶらしているから」

「は? 何言ってんだ、テメェ。テメェが頼んだんだから、私たちと一緒に来いよ。つーか、私を玲音ちゃんと二人きりにするんじゃねぇ! ほぼ初対面の相手と何を喋っていいのか、わからねぇんだよ!」

「えー、玲音は初対面でもそうじゃなくでも基本的に無口だから、大丈夫だよぉ。というかさ、生理用品を買いに来た女子と一緒に居る男子って絵面きつくない?」

「きついに決まっているだろ? そして、それくらいの恥は甘んじて受け入れろ。私に対するセクハラの罰だ」

「やー、俺は別にいいけど、その、さ? 君たち二人が生理に関して、あれこれ言っている横で、聞こえなかった振りすることになるんだけど、それでもいいの?」

「……わ、私は一向に構わん! 肉を切らせて、骨を断つ!」

「ごめんな、玲音。このお姉ちゃん、追い詰められると自爆することがあるんだ」

「――――別に、大丈夫だよ」

「おお、珍しくしゃべった」

 

 そういう流れで、俺は年頃の女子二人の整理に関してのあれこれの会話を聞き流しつつ、微妙な気分になったり、「生理用品の他に欲しい物ある?」と玲音に質問したら、何故か、シリアルを大量に買い物カゴにぶち込んできたという、少々のハプニングがあった。

 エッチな事には基本的に過剰反応するのに、何で、こういう生々しい生理の話とかは聞かれても平気なのだろうか? 

 分からない。

 岩倉玲音は未だ、謎が多い存在だ。

 俺に分かる事と言えば、玲音は妙にシリアルを好むということ。うん、前に一度、朝食で出た時、珍しく目を輝かせていたもんな。普段は微妙に無気力な目をしているのに。

 

「さて、必要最低限の物を買い込んだし。後は、玲音の服でも買いに行くか。京子、何か見立ててあげて―――悪い、失言した。俺で何とかしてみるわ」

「おい、貴様。その謝罪の意味を答えろよ?」

「いくら近所のイオンとはいえ、ジャージとサンダルで来ている京子さん。本当に言わなければわからないのですか?」

「ぐっ……だが、このジャージは夏でも涼しい高性能なんだぞ? そこんじょそこらの服よりも、よっぽど高価で実用性で、デザインもかっこいい素敵な服なんだ!」

「え、ああ、うん、そうだね……」

「突っ込めよぉ! 気まずそうに眼を逸らすなよぉ! 馬鹿の癖に!」

「ごめんな、馬鹿でも気を遣ってしまって」

 

 そういう訳で、玲音にざっとイオン内の洋服コーナーを見せて、どれが好みかを選んでもらうことに。

 軍資金は三万円ほどあるので、ある程度、大体、上下の服を揃える程度に一着ずつ買っても問題無いだろう。

 

「んんんー、中学生ぐらいのサイズだとこの辺かなー? ま、夏物なら、結構なブランド品でなければ大丈夫だろ、うん」

「そういえば、晴幸。今の玲音ちゃんの服は姉ちゃんのお下がりなのか?」

「そうだね、下着のお下がりは流石に駄目だろうということで、即日買いに行ったから、それ以外は姉ちゃんのお下がり……というか、現役というか」

「は? お前の姉ちゃん、とっくに成人しているだろ? 大学生だったよな?」

「うん、大学三年生の合法ロリなんだ」

「合法ロリだったのか!? つーか、この世界に実在したのか、合法ロリ!?」

「うちの一族には結構多いんだよね、何故か。奇妙に若作りというか、なんというか。単身赴任中の内の親父だって、ファミレスで酒類を頼めないって言ってたし」

「なんなのお前の一族!?」

 

 なんなのと言われても、ごく普通の田舎育ちの家族だよ。

 なんか、年に一度、親戚同士でよくわからない集まりがあるけど、一般家庭。

 

「…………ん」

 

 京子と話していると、いつの間にか、ぐいぐいと上着の裾を引かれる。

 どうやら、玲音が目当ての服を見つけたようだ。

 

「っと、おお、玲音。どれを買うか決めたのか! おお、どれどれー? んんんー? おかしいなぁ、これ、普段着じゃなくて、部屋着、もしくはパジャマに見えるんだけど? しかも、クマさんパジャマ。中学生でこれは、少し躊躇う感じのクマさんパジャマ」

「駄目、かな?」

「おっと、珍しく玲音が会話で俺に頼み込んでいる? 普段は面倒臭くて、一挙手一投足で、意思を伝えて来るのに。となると、ガチで欲しいパターンか、ううん」

 

 玲音は、あまり言葉を交わさない。

 会話を好まないというよりは、なんだろうか? 言葉にしなくていいことは、言葉にしないことが多い気がする。

 なので、大抵は言葉よりも態度や行動で示して、会話をすること自体稀なのだが……この通り、言葉が必要な時は、きっちりと口に出して頼み込んだりする。

 今回のパターンとしては、どうやらそのクマさんパジャマがとても気に入ったらしい。特に、獣耳の付いたフードタイプだったから、お気に入りだったのかもしれない。玲音は下着の柄も、クマさんパンツか、無地の奴を好んで選ぶもんなぁ。

 

「玲音」

「はい」

「クマさん、好きかい?」

「ん、好き、だと思う」

「ふっ、ならば良し!」

 

 その『好き』に免じて、今回は折れてやろうじゃないか。

 まー、普段着なら、俺の部屋に、無駄に姉の服が大量にあるし、大丈夫だろう。後で、メールを送って姉に事後承諾を取らねば、お盆の帰省中に殺されるかもしれないから、注意は必要だけど。大丈夫、なんとか、なるなる。

 誰かの『好き』を大切にしたいって、ケムリクサを視聴して学んだからね、俺。

 

「………………ありがとう、ハルユキ」

「おお? おお! どういたしまして」

 

 クマさんパジャマを購入し、買い物袋をそのまま玲音に手渡すと、玲音は中身の入ったそれをぎゅっと抱き締め、お礼を言ってくれた。

 そう、玲音が家に同居してから初めて、俺の名前を呼んでくれたのである。

 

「京子、京子! 名前っ! 玲音が俺の名前を呼んでくれた! こりゃあ、好感度アップした証拠ですよ! ギャルゲーだと、ぴろりろりんっ♪ って音が鳴るところ!」

「貴様がそういう言動をしなければ、そのまま好感度上がったままだったかもな? ほらみろ、玲音ちゃんの困惑しつつも、貴様の馬鹿さ加減を非難する視線を」

「玲音のジト目って可愛いよね、なんか癖になる」

「下がるんだ、玲音ちゃん! 性癖にされるぞ!」

 

 性癖にされるぞ、ってなんだよ、もう。

 でも、まぁ、あれだよね? 散々、俺の事を脅かしていた京子も、いつの間にか玲音と気軽に話できるようになっているみたいだし。

 なんだかんだ、都会は大変な事件が多いけど、こんな田舎まで異常事件が起きるなんて、そんなわけが――――

 

『ざ、ざざざざざっ―――迷子、の、お知らせ、をします。岩倉、玲音、さん。岩倉、玲音。さん。お父さんが、お待ちです。至急、お家まで戻ってきてください』

 

 そこで、急に俺の意識が不安定になった。

 買い物を終えて、これから帰ろうとしていた時、何故か、デパートの店内放送にノイズが流れたかと思うと、自分の耳元から、大音量のノイズが流れて、段々と意識が遠のいていく。

 

「ぐ、うぐぐぐぐ」

 

 土砂降りの雨音の如き、ノイズの大騒音。

 それは、ぐらりぐらりと俺の視界を揺らし、思わず、片膝を着かざるを得なくなる。奇妙な浮遊感が体を捕らえて、嫌な点滅が視界を遮り、やがて、きぃいいいん、という音と共に、俺の意識は途切れ――――――そうになったので、気合いで状態異常を吹き飛ばした。

 

「だらっしゃああああああい! 気合いがあれば、なんでもできる!」

「……えぇ」

「う、うげぇ、なんでも、は、できねぇよ、馬鹿」

 

 共に謎の現象に巻き込まれたであろう玲音や、京子も何故か俺にドン引きしている模様。

 いやいや、気合いを入れれば、多少の傷や病気ぐらいだったら治るだろ? え? 治らない? あっはっは、個人差だね!

 

「き、気持ち悪い……エレベーター内で強制スクワットされたような最低の気分だ……し、しかも、ここは?」

「うん、なんか変だねぇ、ここ。だって、明らかにイオンの店内じゃない」

 

 空は晴天。

 天井は無く、屋外。

 軽くあたりを見回すと、コンクリートジャングルという言葉を具現化したように、そびえ立つビルの数々。足元には、舗装された路面が。

 そして、何故か、道路や歩道内を無視するように、数多の電柱が乱立しており、それらが電線を辺りに張り巡らせていた。

まるで、空を閉すように。蜘蛛の巣のように。

 

「ここは、海に近い街。繋がっている場所。誰のココロにも存在する、場所」

「……玲音?」

 

 そして、首を傾げる俺の疑問に答えるように、玲音は淡々と答えを紡いだ。

 

「ここは、ワイヤード。愚者が作り上げた、虚像の街」

 

 淡々と、けれど、厳かに。

 神託を告げる巫女の如き言葉に、俺は思わず息を飲み、頷いた後。

 

「ごめん、よくわからないからもうちょっと分かり易く説明してくれ」

「…………」

 

 いまいち理解できなかったので、再度の説明を求めた。

 ほら、だって、具体的に説明してもらわないとわからないじゃんよ。

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