岩倉玲音と俺の夏休み。それとペルソナぁ!!!   作:げげるげ

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スマブラ大会が行われて、夕食はバーベキューかカレーになることが多い。
なお、女子が居ないパターンしか経験できていない。


第8話 夏休みのお泊りはテンションが上がる

 ごつん、という固い衝撃が後頭部に走って、俺は目を覚ました。

 

「いててて……ええと、ここは?」

 

 俺はワンチャン、目が覚めた時に誰か膝枕してくれないかなー? という期待を裏切られたがっかり感を胸に秘めつつ、周囲を見渡す。

 …………どうやらここは、どこかのマンションの一室みたいだ。カーテンが閉め切られているので薄暗いが、綺麗に掃除されたフローリングの床に、ベッドや本棚、学習机といった家具が辺りにあるのが見られる。

 間違っても、俺たちがワイヤードという異空間に入り込んでしまった時に居た、イオンの店内ではない。

 

「うぐぐぐ……手が、手がぁ」

 

 俺が状況を把握していると、少し離れた場所から、呻き声が聞こえて来た。

 移動して確認してみると、どうやら、マンションのキッチン付近で京子が右手を抑えて蹲っている様子。

 ふむ、無事かどうかはさておき、京子も一緒にこの場所へ転送されてしまったらしい。

 

「もぐもぐ、もぐもぐ」

 

 なお、玲音はキッチンの棚と冷蔵庫を勝手に漁り、シリアルと如何にも高そうな牛乳を勝手に頂戴して、無表情で食事をとっている。

 ふふ、相変わらずマイペースな奴だぜ、玲音は。でも、だからこそ、頼もしい。

 

「玲音」

「もぐもぐもぐ……ん、なに?」

「ここはワイヤード? それとも、現実?」

「街の一部は、貴方が壊してしまったでしょう?」

「なるほど、つまり、現実か……ふっ、すまないな、皆。俺の覚醒した力が、あまりにも強すぎたせいで、迷惑をかけた」

「どや顔で言っても、謝意を感じねぇんだよ、ああん!?」

「…………むー」

 

 俺は左手で投擲された、京子のスマホを軽やかに受け取り、玲音から投げつけられた角砂糖の一つを華麗に口で受け取る。あめぇ。

 

「ともあれ、あのよくわからない空間からの脱出は成功したわけだ。ふぅ、九死に一生を得たな、やれやれだぜ」

「スタンド能力みたいな力を得たからって、急にジョジョ作品の主人公を気取ってんじゃねーよ、馬鹿。テメェなんざ、『バカテス』とか、『ぐらんぶる』の主人公がお似合いだ」

「割とストレートに馬鹿と言いおって。ならばせめて、川上作品の主人公になりたい」

「お前は全裸になったら、普通に逮捕されるし、銀髪巨乳の自動人形も嫁にならない」

「ちぇー。欲しいなぁ、主人公補正」

 

 美少女に囲まれて、いちゃいちゃしてーなぁ、と呟きながら、俺は手早く京子の右手を見る。ふむふむ、軽い打撲だな。この程度なら、放置しても問題ないけど、一応、冷やしておくか。ええと、救急箱、救急箱は……ん、あったあった。

 

「なぁ、晴幸。その、な? 手当をしてくれるのは、正直、有難い。殴った私を手当てするなんざ、本当にお前って奴は底抜けのお人好しだと思う」

「親友が傷ついていたら、出来る限りのことをするが俺だぜ」

「だ、誰が親友か! じゃ、なくて、その! もっと大切なことがあるというか、お前はその状態でよくもまぁ、ずっと自然な会話を出来るなぁ、というか」

「…………んん?」

「…………さっきからずっと、お前の背中に負ぶさっている、お子様は一体、誰だ?」

 

 指摘されて、俺はようやく自覚する。

 そういえば、ずっと倒れていた時から、何かぐんにょりと脱力した女の子を小脇に抱えていたなぁ、と。しかも、ついさっき、京子の右手を治療するために邪魔だから、背中に負ぶさるように位置を調整したんだった。なんかこう、無意識化でこれを手放したら危ないと思っていた所為か、ついつい、自然にあるものとして取り扱ってしまっていたぜ。

 

「ふむ」

 

 俺は背負っていた少女をフローリングの床に降ろして、改めて姿を確認する。

 小柄な背丈。幼さの残る容姿。大体、小学校高学年ぐらいの年齢だろうか? 黒髪を短く切りそろえた、おかっぱ風の髪形に、よく言えば上品、悪く言えば地味な色合いのワンピース姿の少女が、そこに居た。

 そして、少なくとも、俺はその顔や格好に見覚えが無いはずなのに、なぜか、奇妙な既視感を覚えてしまっている。

 

「ふむむ」

 

 俺はこの既視感の正体を推理する。

 まず、背負っていた時や、下ろした時に意図せずお尻を触ってしまった時に感じた、右手の疼き。次に、俺がワイヤード内で気絶する際、どのようなポジションに居たのか。

 …………大体の予想は付いている。

 けれど、こいつの正体を確定させるのには、足りない。最後の一つ、何か、何か言い逃れが出来ないような物証があれば――――そうか!

 

「見えたっ! これが、答えだ!!」

 

 俺は意識が無く、フローリングで寝かされている年下の少女。その少女が着ているワンピースの、スカート部分を大胆に捲り上げた。スカートを巡り上げた先に合ったのは、年齢相応と呼ぶには少し幼い、クマさん柄のパンツ。

 

「京子……こいつは、ワイヤード内で遭遇した、ゴスロリ少女だ」

 

 そう、ワイヤード内で、ゴスロリスカートの下から見えた物と完全に同じ物だった。

 

「そうか、死ね」

「うぶぅ!」

 

 冷静かつ、迅速な行動によって真実に辿り着いた俺。

 されど、真実の対価は安い物ではない。

 どうやら、俺の行動が気に入らなかった京子は、負傷した右手ではなく、なおかつ、ツッコミの威力を落とさないために、右足を動かした。運動不足、だが、ツッコミの際は尋常ならざる力が働く京子のミドルキックにより、俺は痛烈な打撃を脇腹に食らい、そのまま倒れ込む。

 

「あっ」

「やべっ」

 

 そう、俺の顔面がスカートのはだけた少女の腹部に直行し、結果――――

 

「みょんっ!!?」

 

 意識を失った小学生にするには、あまりにもマニアックかつ、変態的なアクションで、少女を起こしてしまったのだった。

 

 

●●●

 

 

「た、助けて、助けて……殺さないで……殺さないで……食べないで……」

「食べないよっ!(甲高い奇声)」

「みゃぁあああああああああ!!」

 

 推定、ゴスロリ少女の心は完全に折れてしまっていた。

 無理もない。老け顔かつ、黙っていると割と怖い説があるこの俺が、いきなり腹部に顔をうずめていたら、それりゃあ、怖いだろう。俺だって怖い。ならば、幼い少女であるこの子も、さぞかし怖かったことだろう。

 なので、もう二度と抵抗されたために、軽く威嚇の意味を込めて少女の腹部で「すぅううううううううっ! ぶぼぉおおおおおおおっ!」と深呼吸した結果、少女は泣き出してしまったのである。

 

「ひぃ、ひぃっ……せ、せめて普通に殺してぇ……」

「お、おい、やりすぎじゃねーのか? 晴幸。もうすっかり、私の後ろに隠れて、びくびく怯えているじゃねーか」

「でも、尋問の結果、認めたじゃん。自分が『ガルーダ』。あの時、俺たちを殺そうとした張本人だって。んでもって、恐らく、ワイヤードで死ぬと、現実でも死ぬと思うんだよね。多分、ほら自殺者とかになったりして。そこら辺、玲音はどう思う?」

「…………」

「ほら、『まぁ、大体当たりかも?』みたいな表情を返してきたぁー。やっぱり、そうなんだ」

「お前それ、降水確率80%は雨と言っても過言じゃない、みたいな断定の仕方だぞ」

「概ね間違ってないだろ?」

「そうだけどさぁ!」

 

 京子は優しく、甘い。

 俺の事を底抜けのお人好しと言っているが、俺から言わせれば、京子の方が甘ったるく、優しい人間だ。

 恐らく、そのことを自覚しているからこそ、普段は強気な態度と毒舌で、人を近寄らせないようにしているのだろう。多分、無意識なる防衛本能として。

 だけど、京子は一度関わってしまった相手だと、この通り、躊躇ってしまう。例え、自分を殺そうとしていた相手でも、外見が弱々しい小学生ならば、同情してしまうのだ。

 …………正直、このまま放置しても問題ないのだ。

 ワイヤードや、ノイズ人間などの諸々な事情を、この子にわざわざ尋ねなくとも、こちらには玲音が居る。玲音は気まぐれで、完全にこちらの味方とは言わないが、それでも、取引には誠実に応じてくれる存在だ。こちらが、それなりのリターンを提示すれば、きちんと説明してくれる。

 

「京子、お前はそいつを庇うのか? お前を殺そうとした奴を」

「ああ、庇うね。庇って何がわりぃ。私とお前も、玲音も死ななかった! だから、間違えて、取り返しがつくなら、私はどうにかしてやりたい」

 

 だが、どうにも、駄目だね。

 親友にそう願われれば、俺としては断るわけにはいかないじゃないか。

 

「…………しょーがないなぁ、京子は」

 

 俺はジョジョの主人公のように、「やれやれだぜ」と呟くと、京子へ笑いかける。

 

「んじゃあ、どうにかしてみようか! さしあたって、今日の宿が無いので、このマンションの家主であろう、この少女の両親を説得するところから始めないとね!」

「え? あ、そ、そうなのか? ここ!?」

「はっはっは、多分、力任せにワイヤードの一部をぶっ壊したから、俺たちが居た場所よりも、ガルーダちゃんの居た場所に引っ張られたんじゃない? それに、さりげなくダイニングにあった写真立てで、この子も含めた家族三人の集合写真を確認したし」

「目ざといなぁ、おい」

 

 けらけらと笑いながら、俺は京子の後ろで怯えている少女に向けて、尋ねる。

 心持ち、怖そうな顔になる様に頑張ってから、問う。

 

「もちろん、君も協力してくれるだろう? なぁ、ガルーダちゃん?」

「…………は、はひぃ」

 

 すると、少女は涙をぼろぼろと流し、鼻水をずるずる垂らしながら頷いた。

 あれ? えっと、そこまで怖いですか? 俺。

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