「夏だ!」
「ルルハワだ!」
「「サバフェスだー!」」
俺とジャンヌオルタの魂の叫びルルハワの透き通るような青い海に吸い込まれて行った。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
BBちゃんによって作られた常夏の地獄、ルルハワ。 脱出するにはサバフェスで同人誌を書くしかない! そういう訳で俺とマシュ、そして水着に着替えなぜか刀を二本腰に下げたオルタで同人誌を手探りで書くことになった。
オルタは「あの聖女には負けない!」と息巻いていたけど、マシュは勿論、俺も同人誌の知識なんて全くない。でもやるしかない。そうして手探りで始まった同人誌作りは想像以上に大変だった。ストーリーを考え、コマ割り、ネーム、清書。 途中、本題であったフォーリナーを巡る戦闘にも奮闘したりして、俺達の体力、精神力ともに限界を迎えていた。
締切前日。クオリティにこだわり過ぎてここ数日オルタは完徹で書いている。
「ねぇ……オルタ。 少し休んだら?」
「気遣いありがと、マスター。 でもいいわ、もう少し粘ってみる」
「……そうか。 なら、下に行って何か飲み物を取ってくるね」
「ええ、お願いするわ、マスター」
そう話す間もオルタは筆を休ませずに書いている。 鬼気迫ると表現しても差し支えない表情で、疲労で濁った瞳の奥底に、情熱の火を灯している。
俺はオルタの邪魔にならないように出来る限り静かに扉を閉めた。
オルタがカルデアに来てからだいぶ経ったけど、俺はまだオルタの本当の笑顔を見た事がない気がする。 俺の部屋に入り浸って漫画を読んでる時とかは笑うけど、そうじゃなくて……心の底からの笑顔を見た事が無い。 オルタの目線の先にはいつもジャンヌダルクがいる。 オルタは何を思っていたのだろう?
モードレッドに紅茶を入れてもらい、黒髭に貸してもらった部屋の前で控えめにノックする。 オルタが返事をしてから開ける。部屋に入ると、まるで写真のように部屋を出る前の光景が広がっていた。
「モードレッドが紅茶を入れてくれたよ。 少し休憩しよ?」
「ええ、そうね。そこに置いておいて頂戴」
そう言って原稿から目を上げようともしない。寝食を削ってまで己の情熱を形にせんとする精神。やはりサーヴァントに値する心を持っている。
「ねぇ……なんでオルタはこのフェスに参加しようとしたの?」
「いきなりね。……そうね、確かに最初はあの聖女に対抗するためだった。でもね、私達で一冊の本を作っている内に、壊すだけじゃなくて創る事の喜びを知ったのよ」
そう言ってオルタは立ち上がる。 疲れきってクマが出来ているが、やはり瞳の中には情熱の炎がメラメラと燃え盛っている。 俺はクスリと笑い、オルタの隣に座りペンを握る。
「なら、俺もオルタの初めての創作を手伝うよ」
「当然よ、地獄の底まで付き合ってもらうわ。 私のマスターちゃん?」
夜明けまで数時間。 俺達は無言で原稿に向き合った。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
翌朝、サバフェス開始一時間前に会場に着いた俺達はボロボロになりながらもイキイキしていたと思う。オルタの情熱が俺にも移ったみたいだ。
さぁ、開戦だ!