24歳独身女騎士副隊長。   作:西次

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 前の話の反動もあって、なるべく頭の悪い話にしたかったのです。

 色々とはっちゃけているかもしれませんが、ご容赦ください。




王女様に目を付けられるお話

 モリーは今日もお仕事です。お仕事で接待してました。やっと一区切りついたけど、割と疲れます。他国のお客さんなら、なおさらね。

 

 諜報の方は一段落して、私が現場に出る機会も限られてきたけど、自分で渡りをつけた相手に対しては、責任を持つのが道理と言うもの。

 いくらかは部下に任せてやれたんだけど、どうしても私でないと駄目な案件は、引き続き担当することになったよ。具体的には、ソクオチの二人とか。

 

 こっちが逆に心配になるくらい、情報を抜いちゃってるんだけど。あの二人に危機感とかあるんだろうか。ないよね、きっと。

 都合がいいから助言なんて出来ないけど、ソクオチ王国の未来が心配です。私は仕事をこなしているだけであって、不幸になる人を増やしたいわけじゃないんだ……。あの子たち可愛いし、ひどい目にあってほしくはないよ。

 色々と都合よく動かしちゃうけど、許してほしい。願わくば、彼女らの上司が賢明でありますように。

 ――でも話を聞く限りは望み薄かな。最悪切り捨てるけど、他国の人だから仕方ないよね。今すぐ許せよ。

 

 ……情報を集める限り、ソクオチ王国はダメな方向に突っ走っているようで、どうにもキナ臭くてなー。裏を取って、確度の高い情報を整理した今だからこそ、ちょっと不安になってくる。

 訓練の規模と回数が、明らかに侵攻を意図しているように見えて仕方がない。これまで滅多にやらなかったらしい遠征の訓練が、連日行われているんだから。現場から苦情があがるのは当然だけど――そうした不満を抑え込ませてでも、やらなきゃならない理由があるわけだね。

 

 付け加えると、国境に兵糧を集積させているとか、商人からの買い付けの項目が露骨に増えてるとか。私たちはこれから行動しますよーって、ほとんど吐いているようなもんじゃないか。

 ザラ隊長が見たら、軍需物資の管理について講義をぶちかますところだよ。あからさまな動きは陽動に使え、買い付け先は時期を区切りつつ分散させろ、価格を高騰させるなとか一か所に集めるなとか、とにかく変化を気づかせるヘマは犯すな――ってね。悪い例があると、講義にも熱が入るってものだ。

 

 ぶっちゃけた話。ソクオチがいつ行動を起こしても不思議はないんだが、多少なりとも常識的な指揮官なら、兵の調練に今しばらくの時間をかけるだろう。鍛えた後の休息も考慮して……もう二、三か月は時間があると見るべきか。

 ――仮に連中が奇襲戦争を仕掛けるとして、どこが候補なのか。今は、その辺りを把握するのに時間をかけているところ。とりあえず、ウチに来た場合に備えておこうということで、上層部の意見は共通しているらしいよ?

 

 だから、書類仕事一つとっても真剣に目を通し、情報を精査、検討して――。机に座って考えるばかりでなく、部下の話を聞いたり実際に現場に出たりで、割と忙しい日々を送っています。まる。

 

 ……自分に対して語り掛けるとか割と末期だけど、いつものことと言えば、いつものことだね。精神的なうるおいが無ければ、本当に続けられない仕事だと思います。

 ――もっとも、今はそのうるおいを求めて、わざわざ遠出をしてきているのだが。

 

「……女騎士って大変なんですね。私はハーレム嬢で良かったです。国防を担うとか、重圧も凄いんでしょう。気苦労、お察ししますよ」

「お気遣い、ありがとうございます。これでも騎士としての自分は結構好きなので、後悔はありません。重圧はありますが、これくらいならむしろ張り合いも出てくると言うものです」

 

 ソクオチに後れを取るつもりはないしね。それより、きれいな女の子と話すと心がうるおう感じがして、癒される。乾いた精神が救われるようだよ……! 嬢に貢ぐ男の気持ちがわかりそうだ……。

 

 ――さて、遠出をしてきた、といっても。ここは国境付近の、手ごろな料亭の一室である。機密の保持を目的とした、その手の話に理解のある場所だから、他国との接点を作るのには最適と言える。……機密費の支出は厳格なんで、本当に部屋を借りるくらいで、歓待できないのが残念な所かな。軽食をポケットマネーで奢るくらいがせいぜいだよ。

 遠慮のない話をするには、いい機会なんだけどねー。でもハーレム嬢と顔を突き合わせて話をするなんて、緊張して仕方がない。

 いや各国の赤裸々な情報を抱えたハーレム組織とか、情報網として非常に重要で、協力し合いたいって思うのも当然だよ。今回顔を突き合わせているのも、そうした仕事の内だし。

 でも色気があるから、接しててツラいの。ムラムラするのを抑えながら仕事するのってキツゥイ。

 

「まあ、それはそれとして。――クミンさんは、今の仕事が自分に向いていると、そう思っておられるのでしょうか?」

「ええ、まあ。別に卑下するつもりはありませんよ。ハーレム勤めも、慣れれば悪くはないものです」

 

 話している彼女――クミンさんは、ハーレム嬢としてのキャリアを積んで、そこそこ長いと言う。

 ハーレム派遣組織、『天使と小悪魔の真偽の愛』構成員の一人であり、今や他国に嫁いだシルビア王女にとっては、新たな腹心でもある。その彼女に接触したのは、当然相応の理由あってのことだ。協力を求めたり求められたりする関係を、こちらとしては今後も望みたいところだからね。

 この点、身も蓋もなく言えば、シルビア王女の影響が大きい。出身国との共存共栄を図るのは嫁いだ姫の義務だから、こうした仕事もその一環なんだろう。そうでなくては、そもそも人員をよこそうとは思わない。

 

 現状、彼女が掌握したハーレム組織から、こちら側にも情報を流してくれることになっている。もちろん、こういうのは双方向で利用し合うものだから、一方的な話にはならない。ゼニアルゼにも利益を還元しなくては、不義理になってしまう。

 この関係を端的に言えば、ゼニアルゼとクロノワークが、蜜月の時期にあることを示しているわけだ。本来、他国のハーレムの内情なんて知り得ないのが当然。そこを曲げて協力してくれるのだから、まったくありがたい話じゃないか。

 かの姫様にとって、我々はまだ身内として見ていてくれているらしい。そうであればこそ、情報交換の会合も開けようと言うもの。話は色事に限定せず、割と突っ込んだところまで話してくれるので、こちらとしては大助かりだ。

 

「お互い、遠慮なくアレコレを聞きましたが。――とりあえず、シルビア王女は今後の軍事行動を見据えて行動していると見て、間違いないのでしょうか?」

「軍事は詳しくないので、その辺りはわかりませんね。ハーレム経由の情報をあからさまに活用するのは、しばらく控えるらしいですけど。……ああ、近々そちらの国の教官を招聘して、女騎士団を鍛えるようなことは言ってました」

 

 ゼニアルゼ王国の女騎士は、戦力的に不安が残るものであるらしく、シルビア王女はそこを改善しようと動いているという。

 ――戦力の増強は、国家の事業と言って差し支えないし、それだけで軍事行動を示唆するものではないが。同時に大きな土木工事も予定しているとあらば、物騒な考えが表れてくるのも、致し方ないと思うの。

 

「それから、ゼニアルゼとクロノワークをつなげるトンネル工事については、予算の見積もりを行っているところですね。――色々とギリギリですけど、私から伝えるように言われた件は以上で全てです。実際に工事が行われるのは、もう少し先のことになると思いますが」

「それだけでも、充分な情報ですよ。……シルビア様の意図が透けて見えますね。ああ、これ以上は余計なことに巻き込みませんから、クミン様は安心してください」

 

 ハーレム嬢に、危険な橋を渡らせるようなことはしないよ。余計なことまでは伝えず、ここらで切り上げるべきところ。

 ……しかし、トンネル工事が完了すれば、両国の交通がスムーズになる。それが意味するところを考えると、どうにも頭が痛くなる。

 

 地球の歴史においても、古くは秦の章邯が甬道(城壁付きの輸送専用道路)を築かせ、戦争の主導権を握った例がある。そして彼は中華最強の武将、項羽に敗れるまでは無敵を誇っていたのだ。

 

 物資と兵力の補充がスムーズになるということは、それだけ重要なことだ。この実例を見るに、土木工事と軍事行動は密接にかかわっていると見ていい。

 シルビア王女は軍事的才能にあふれていると聞くし、彼女はそれらの利点を当然のように理解しているのだろう。トンネル工事は両国の関係を密接にする。良い意味でも、悪い意味でも。

 これは本格的に、ソクオチにロックオンされたかもしれないね。めんどくせぇ。

 

「おおよその事情は理解しました。ウチからもそれなりに人員を出せますから、トンネルの完成は、比較的短時間で済むかもしれません。――すると、時間的な余裕はあまりないと見るべきでしょうか」

「……あの、それ。私が聞いていていい話ですか? ハーレムに帰ってもいいですかね」

「まあまあ、ちょっと話しましょう。事務的なやり取りだけでは、寂しいじゃないですか。――私としては、せっかくの機会です。ハーレムという異世界にいらっしゃるクミン様と、今しばらく会話を楽しみたいと思います」

 

 クミン嬢は外見も整っているし、日常的に男に見られているからか、しぐさもいちいち丁寧だ。

 女同士だからと言って、油断するところも全くない。これはおそらく、ハーレム内での暗闘も影響しているのだろう。洗練された振る舞いが板についていて、緩める雰囲気がまるで感じられなかった。

 

 いやまったく、若くして酸いも甘いも嚙み分けた女性とは、長くいいお付き合いをしたいものです。アラサーにはアラサーの良さがあるけど、こういうのもね。彼女も数年したら、いい具合に熟成すると思うんだ。

 たぶん、私よりちょっと年下ってくらいかな。……27~29歳って、アラサーギリギリの雰囲気がまた良いのよ。クミン嬢がそれくらいの歳になったら、また違った色気が出てくるだろう。将来が楽しみだ。

 

「よろしければ、どうです? 今ならワインもつけますよ」

「追加で、ここから先は別料金ってことで、いいですか? それなら、喜んで付き合います」

 

 店員を呼んで、彼女のためにワインを注文してから、無言でチップを渡す。途端にクミン嬢は媚びるような笑顔を見せた。

 いいねー、わかってる。お金が続く限りはいい仕事相手になりますよって、明確に応えてくれる辺り、彼女はやり手だ。おかげで、こちらが笑顔で好待遇しても不自然にはならない状況が出来た。

 お金を貢ぐくらいは簡単なことだし、可能な限り接近して、クミン嬢の心に食い込みたいところだね。

 

「せっかくなので、この機会に聞きますね。……実際のハーレム内では、相手にする男は一人で済みますが、だからこその苦労もあるでしょう。ゼニアルゼの王子様は床上手との伝聞ですが、本当でしょうか?」

「まあ、経験豊富なだけありますね。結構いいですよ。――私が比較できる対象はそこまで多くないですから、参考になるかはわかりませんが」

 

 注文したワインを嗜みながら、クミン嬢は答えた。香りを楽しむしぐさといい、飲み下す際の喉の動きといい、いちいち色っぽくてかなわないよ。本当。

 

「いえいえ、貴重なお話ですよ。クミンさんは、もともと風俗嬢だったんですか? 女の私から見ても、一つ一つの動作が非常に洗練されていると思うのですが」

「ええ、まあ。そこそこの経験をしてから、ハーレム入りって感じですかね。処女でハーレム入りって例もあるにはありますけど、慣れていた方が都合がいいってこともありますから。私はそっちの方ですね」

 

 ほーん。ゼニアルゼの風俗業界について、多少は知れた気がする。流石は各国を股にかけるハーレム派遣組織、その手のノウハウは充分ってことか。色事の手管も、実践した経験があるのとないのとでは大違いなんだろうね。

 天使と小悪魔の真偽の愛。名が示すとおり闇が深そうな組織だ。愛に真偽を問わないなら、いかなる要望にも応えてくれるのだろう。それこそ天使と悪魔、いずれの意味合いにおいても。

 

「なるほど。ハーレム構成員としての苦労と風俗嬢としての苦労とは、やはり別物ですか」

 

 私、童貞の上に処女なんで、その辺りはまったくわかんないけど。

 風俗店とかすごく興味あるけど、慣れないから躊躇っちゃうよね。そもそも私の場合、レズでもいける人でないと無理だし、店の方も困るんじゃないかな。――男娼? 野郎はパスで。

 

「一人に集中するから競争も激しくなるし、寵愛の奪い合いなんてのも、そこそこ激しかったりしますね。正妻である姫様との関係の強さが、そのままハーレム内での地位に直結しますから、人間関係に気を使うんです。……風俗店で働く場合は、また別の類の苦労ですね。本当にいろんな人が来ますからね。お金を出してくれるなら、相手を選べない場合もあります。ひどい客に当たっても、表面上は嫌がるそぶりを見せられないっていうのは、結構きついですよ」

 

 色々話を聞いていくと、やっぱりそれなりに溜め込むところがあるんだろうなって、察してしまうよ。うん、本当に苦労したんだね。

 

 紳士の皆は、風俗店に行くときはちゃんと身だしなみを整えよう。髭剃り爪切り歯磨きは当然として、体もちゃんと洗ってから行くんだよ。何? ソープに行く時はいいじゃないかって?

 バカモーン! 風呂とソープは別腹じゃろがい。そもそも汚れた身体に接しなきゃいけない相手を思えよ。汗と油にまみれた男臭い奴とか、仕事をする相手としては、それだけで『うわぁ』ってなるよね? 洗ってあげる側も大変なのだ。

 嬢を気遣うなら、事前に身だしなみを整えるのが作法ってものじゃないか。だから風俗を楽しむ時は準備を整えようね。おねにーさんとの約束だ!

 

 ……私風俗とか行ったことないけど。全部今聞いた話だけど。うん、私やっぱり疲れてるね。色々と酷いことを考えてしまう。

 でも私自身、風俗店に行く勇気とか無いから、利用する人々にはエチケットは守ってほしいと思うんだ。心の中でも、叫びたくなるくらいに。

 

 ともあれ共感と共に相槌を打ちつつ、興味を引くように話を聞いていく。聞いてほしいことと、聞いてほしくないこと。その辺りをしぐさや口調で判断しつつ、慎重に。

 そうやって続けていくと、クミン嬢も彼女なりにストレスを吐き出すように、思うところを述べてくれた。

 

「……王族のハーレムで思いましたけど、王様とか王子様とかも、真面目に仕事するなら大変なんですね。うちの王子は怠け者ですけど、立派にやっている人もいるみたいで、ご苦労様だなぁって思います」

「個々の事情はあるでしょうが、真面目に務めるなら王族は大変でしょう。王とは玉座に縛られた奴隷である、なんて言葉もあるくらいですから」

 

 話の流れで、身内のことについても言及する。クミン嬢にとっては、王子様も姫も身近な存在だ。

 気遣わねば首が飛ぶこともあり得るが、見えないところで言う分には目をつむられることも多く、ちょっとした話題に出すくらいは許されているらしい。寛容さは美徳って、はっきりわかんだね。

 

「怠け者と言われましたが、シルビア様の相手をなさっているのですから、そちらの王子様も仕事はそれで十分という気がしますね。あの姫様の精神的なケアが出来ているなら、それだけで国が回せるのでは?」

「……一概に否定できませんね。おっかないし、有能ですから、あの方は。速攻で粛清やらかした時はどうなるかと思いました――っと、これはオフレコで」

 

 ここまで話してくれるということは、彼女自身のストレスの大きさも関係しているのだろう。風俗って肉体労働だし、ハーレム内なら職場と自宅は一体になっているようなもの。

 愚痴を吐き出そうにも、周りには競争相手が多いとなれば――難しいかもしれない。私みたいに何を言っても聞いてくれる存在は、感情をぶつけるには最適というわけかな?

 

「わかっていますよ。せっかくお金を払ってまで付き合ってもらってるんですから、貴女に不利になることは致しません。騎士の名誉にかけて、そこは約束させていただきますよ」

「信じますよ? ……信じさせてくださいね。裏切ったらひどいんですからね、ほんと」

 

 いや本当、あのシルビア姫を恐れるのは賢明な判断だと思う。怖いから、ポロっと愚痴が出ても仕方がないよね。わかるよ。私、伝聞でしかあの人知らないけどね!

 だから、裏切ったりはしないよ。――こんなイイ子を、不幸にしたくはないから。

 

「どうぞ、信じてください。可愛い女の子には弱いんです。私」

「あっ。……そういう人も、いますよね。私の趣味ではありませんが、逆に信用しやすくなりましたよ」

 

 理解を示してくれたようで何よりです。――笑顔を崩していないということは、嫌悪を見せるほど退いてはいないということかな。

 レズと言われればそうかもしれないけど、私としては男の感覚のままなんだよね。だから、自分としては自然に振る舞っているつもりで、後ろめたさはないよ。体と精神は、案外統一されないものらしい。

 

「私らハーレムの人員は、個人個人で事情もあったりしますので。微妙な話題は、避けるのが無難なんですよね。私はそういうのないですけど、気にする人は気にしますから」

「ああ、わかります。私たち女騎士も、個々の事情は色々あります。不名誉な家の出とか、本人の責任のない所で、どうしようもない不幸を受けてしまった子とか。実力はあるのに公に取り立てにくい人を、特殊部隊で引き受けることも偶にありますから」

 

 ここまでは共通の、似たような話題。あとはもう少し、踏み込んでいきたい。

 クミン嬢の存在は割と大きなものであると思うので、ちょっとした伝手として持っておきたいかな。だから好意は買えるだけ買っておこう。

 だって彼女、ゼニアルゼの王子様にとってもお気に入りで、あのシルビア王女からも、それなりの信頼を受けているんだぜ? 話を聞くだけでも、それがわかる。当人はいまいち理解していない風だが――私には背景まで見えてきそうだよ。

 

 他国の工作員たる私に、こうして接触させている。その意味するところは何か。

 接触させても染まらない程度には、自己が強いということ。そして、自らの組織に忠を誓うくらいには、誠実であると認められているのだ。そうでなくては、私のような人間とは会わせないだろう。

 そうそう。私事になるけど、なんだか最近、急に悪名が広がった気がするんだ。そんなに変わったことをやっているつもりはないんだけど。悪名が身内の中だけにとどまっていて、よその国にまでは伝わっていないのが救いかな。

 

 まあ、今は私のことはいいので、聞き役に回る。ちょくちょく話を聞いてみると、クミン嬢も苦労はしているらしい。今の地位を維持するだけでも、大変なんだね。ハーレム内の序列って、曖昧なままには出来ないことだし、王子の機嫌を取る以外にも仕事はあるんだろう。お察しします。

 

「なるほど。色々なことが分かった気がしますね。興味深い話を提供いただき、ありがとうございます」

「料金を取った後で悪いんですが、大した話がないなら、もう終わりにしてもいいですか?」

「――ああ、すいません。無作法でしたか? 何かしらお気に障ったなら、詫びさせていただきます」

「いえ、そうでなくて。――急用を思い出しました。この続きは、またの機会にと言うことで」

 

 苦しい言い訳だが、ここは受け入れるのが男の器量と言うものだろう。

 ……私がそう言っても空しいだけだから、口には出さないよ。せめて、快く送り出そうと思う。

 

「では、また。――次に会うときは、クミン様に何かしらの土産を持参します。不躾な願いかもしれませんが、お許しくださいますか?」

「貴方がそうしたいなら、どうぞ。……失礼しますね」

 

 クミン嬢は、早々と去っていった。去り際の礼を省略したのは、それなりに気を許していますよ、というポーズかな?

 でもハーレム嬢の相手をしたことはないし、風俗の経験もないから、その手のプロ相手はどうもわからない。考えたくはないが、単純に嫌われた可能性すらある。

 身体に現れる『嫌い』のサインを徹底的に消して、表面を完璧に取り繕ってくる手合いは、苦手なタイプだ。個人的に友達になれるならいいけど、ビジネスパートナーには選びたくない。

 

 自分の色に染まってくれない相手は、手駒にしにくくて困る。……ああ、本当に。彼女の信頼を受けるには、どうしたらいいのだろう。

 出来るならば、シルビア王女への牽制として、彼女の心は握っておきたい。かのお方は、すでに他国のものとなっている。今は身内だが、将来はわからないから。

 

 まずありえないと思っていても、ゼニアルゼがクロノワークを従属させる未来とて、ありえないとは言えぬ。その時に備える手立ては、いくらあっても足りないくらいだと、私は思う。

 それはおそらく、ザラ隊長も同じだろう。この辺りは、確信していますよ。心配性ですからね、貴女も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クミンは、自らの感情を言葉にできずにいた。先ほどまで接していた女騎士が、可笑しいくらいに好ましく見え始めている。そうした傾向を感じ取れたからこそ、早期の撤退を選択したのだが。

 

――別に、嫌いなタイプではないですね。それに、噂ほどひどい人でもないと思います。

 

 モリーの活躍については、聞き及んでいる。戦場での戦い方については、特に印象的なものがあった。実際に会って話す限りでは、そんなに激しい戦闘を繰り返してきた相手とは思えなかったが、だからこそ手練れと言えるのかもしれぬ。

 シルビア王女が『要警戒対象。話した内容について、どう反応したか。詳細を報告するように』と言い含めるくらいであるから、相当なやり手なのだろう。

 

――まったくそんな風に見えなかったから、話が盛り上がってしまったけど。あの王女が見誤るとも思えないし、話が過ぎる前に切り上げたのは、我ながら良い判断でした。

 

 モリーは、もともとシルビア王女の派閥からは見えないところにいたらしく、探れる範囲での情報が少ない。これ以上を求めるなら懐に飛び込むべきで、クミンを接触させたのは現場で情報を収集するためでもあったのだろう。

 だから、クミンとしては顔を見て話をするまで、相当気を張っていたのだ。だというのに、実際に話してみれば、案外悪くない時間を過ごせたように思う。

 

――しかし、それが彼女の手口と思えば、警戒も止む無しかもしれませんね。

 

 早々に退いたのは、モリーに対して好意を抱き始めていたことを自覚したからだ。好意があらわれてくると、言わなくていいことまで口にしてしまうことも、ままある。

 さしたる義理があるわけでもなく、事前の情報もなかった相手だ。そうした人物と、少し接しただけで好きになれるほど、クミンという女子はチョロいタイプではない。

 なのに好意を勝ち取ってしまうならば、それは『相応の術策』を弄されていると見て間違いなかった。やり手の遊び人や、狡猾な詐欺師がそうであるように、連中は赤の他人から好かれる術を心得ている。

 

 たとえば、語り口調。たとえば、目に見えるしぐさ。声の調子や受け答えだけでも、気持ちをくすぐる様に言葉を尽くせば、良い気分になりやすい。そこに安心を与える態度を加えれば、どうしても好感を引き出されてしまう。

 モリーがそうした手合いである可能性を鑑みれば、早期の撤退は賢明な判断だったはずだ。

 

――隙あらば心に入り込もうとする。だからモリーとやらは厄介だと、今だからこそ言えますね。シルビア王女が警戒するのも、わかる気がします。

 

 いかに報告すべきか、クミンは少し悩む。彼女は女たらしでした、という実感を率直に述べるのは、いささか主観が入り過ぎている。

 単純に、話した内容や聞いている際のしぐさ、語り口に表情の変化など。明確に見て取れた部分だけを、簡潔に知らせた方がいいのではないか。そうすれば、自分の偏見や感情などを抜きに、正確な情報だけを伝えられるだろう。

 

 そう思って、必要な事だけをクミンは帰還後、シルビア王女に報告する。

 一つ一つに言及したから短い内容にまとめきれず、結構な時間を要したが、シルビア王女は黙って最後まで聞いていた。聞き終わると、気だるげな表情で欠伸をしてから、ためらいがちに口を開く。

 

「ここで判断するのは早計じゃが。……しくじった、かもしれんのう。いささか、こちらを見せ過ぎたか」

 

 どういう意味か――と、すぐさま問わなかった己の自制心を、クミンは褒めてやりたくなった。

 好奇心がうずくのを感じたが、シルビア王女に意見できる立場ではない。なので、伝えることを伝えたなら、そのまま通常の業務に戻ってよいはずである――のだが。

 

「――ふむ。せっかくの機会じゃ。お前の方から、モリーと会って感じたことを聞かせてほしい。事実だけではなく、実際に接したお前が何を受け止め、何を思ったか。感情的な部分を、ぜひとも聞かせてほしいものよ」

 

 だが、今回はシルビアの方が引き留めた。それも、驚くような理由で。

 

「ありのままでよい。あえて言葉を飾らず、率直に語れ」

「命令とあらば申し上げますが、私の雑感がそれほど重要な事でしょうか?」

「おうとも。重要も重要、最重要とさえ言って良いかもしれぬ。だから、さあ。赤裸々に述べるがいいぞ」

 

 気だるげな表情は、すでに微笑に変わっている。面白がっているのは明白だが、どちらも今さら稚拙な情事に羞恥を抱くような、初心な生娘ではない。クミンは淡々と、己の感ずるところを述べた。

 

「ほほう。それはなかなか、モリーとやら。結構なタラシであるようじゃの」

「具体的にどう、とまでは言いにくい所ですが。何かしらの、好意を得る手管を修めているような感じがしました」

 

 ふわっとした感想だが、クミンにはそうとしか言えない。彼女が何かしらの心理学を収めていれば、明確に答えることもできたであろうが――。

 残念ながら、この世界には未だ心理学の概念すら生まれていない。さらに言うならば、元男の女がいかにして女性を口説くかについて、クミンはあまりに無知であった。

 

「まあ、それはよい。……問題は、こちらの情報を的確に分析しておること。そやつの反応を聞いた感じでは、おそらくこちらの意図はほぼ完璧に伝わったと見て良いな」

「――問題、なのでしょうか? 意図を伝えるために、私を派遣させたのでは?」

「それはそうだが、どこまで読み取れるかを探る意味合いもあった。読んだ上で、どう返してくるか。そこが気になっていたのじゃが……そうよな。ザラが副官に用いるくらいじゃ。有能で当然と言うべきか。しかし、なんとも心を見透かされた感じがして、気持ちが悪いのう」

 

 シルビア王女が、眉を顰めるほどの展開になるとは、クミンも予想していなかった。

 粛清の際も朗らかに笑っていた彼女が、たった一人の女騎士を注視している。それがクミンの目からは、まったくの無害に見える相手であったからこそ、なおさら不可解であった。

 

「まあ、今は良い。こちらの人員をザラと直接接触させるとなれば、人の目を避けるのは難しかろうが。――その副官に情報を渡すくらいならば、どうにか秘密裏にやれよう。その場を整えてやるくらいは、こちらでしてやろうではないか」

「では、次回の会合の際にでも」

「ああ、モリーには『天使と小悪魔の真偽の愛』の年間パスポートを渡してやれ。これで管轄の風俗店なら、一年間入り放題よ。ま、宿泊は別料金じゃが」

 

 会合を待たずにこちらから送りつけてやろう、とシルビア王女は言った。いたずらっぽく、笑いながら。

 シルビア王女は、このハーレム組織の実権を握っている。パスポートを渡すくらいは、容易いことであった。

 

「多少の意趣返しには、なろうて。有能な者には、その有能さに合わせて手管を変えるものよ。……しかし今重要なのは、遠い未来より身近な将来についてじゃな。正式な手順を踏んで伝えるには、不都合なこともある。融通の利く方法で伝手を手繰れるなら、その方が良かろう」

「……はぁ。それでよろしいとおっしゃられるなら、私としては何も。――次の機会にも、私がモリーと接するのですか?」

「おお! それが良いかな。……嫌ではあるまい? いやもちろん、次の機会があればじゃが」

 

 口角をあげた、深い笑みでシルビアはクミンを見た。確信を持っている反応であり、実際にクミンも悪い気はしていない。

 わずかな徴候から、本心を見抜く。そうした聡明さを持っている王女に、彼女は苦手意識を感じていた。

 

「命令とあらば、否やはございません」

「可愛くないのう。男に媚びるのは上手いのだから、そいつの前ではきちんと猫をかぶるのだぞ」

 

 感じたからと言って、反抗できるものでもなかったが。しかし、ただ意のままに動くというのも、しゃくであった。だから次にモリーと会うときは、もっと不愛想に接してやろうと決意する。

 

「ちゃんと取り繕って、感情を誤魔化しながら接してやった方が、付き合いやすい手合いであろうからな。下手に本心なぞ見せると、食いつかれよう。――これは勘働きに過ぎぬが、自信があるぞ」

「……どうでしょうか。そこまで不誠実な人とは思えません。そもそも私はレズではありませんし、普通に対応すれば問題ないでしょう」

「わらわとて伝聞に過ぎぬが、それでもわかることもあるのでな。……往々にして、直感が本質を貫くこともある」

 

 シルビア王女の言葉は、天才らしく説明不足でふわっとした論理であった。

 凡人たるクミンにとっては理解の及ばぬ範囲であるから、聞き流すしかない。

 

「ま、わからぬならよい。適当にして居れよ。――わらわとしては、面倒くさい女子をあえて好むような、スキモノの気配が感じられて仕方がないのでな」

「……さようでございますか。私にはいまいち、わからないところですが」

「――ふふん。わらわにとって不利益の生じぬ部分であれば、モリーとやらに譲歩するのもやぶさかではない。……そうよな。それがよい。『今決めた』、クミン。其方はモリーの前では、思うがままに振る舞うが良い。わらわはそれを許そう」

 

 勝手に納得して、シルビア王女は言い放った。クミンにとっては訳の分からぬ展開だが、言われたことは理解する。

 

「思うがままでいい、とおっしゃられるなら、その通りに致しますが」

「不安に思うことはない。――ふむ、ふむ。そうか。予想通りなら、これは……うむ。やはり、モリーとやらの情報も、別口から集める必要があるな」

 

 シルビア王女は、もう自身の思考に没入していた。嗜好と言ってよいほど、かの尊き方は飛躍する様な思考を好む。

 それがまた、たびたび真実を見抜くものだから、傍から見ている側としても制止できない。どれほど胡散臭く、気味が悪く見えても、指摘することすらはばかられる。

 この部分に目をつむって無視できるあたり、彼女の夫たる王子様は、ある意味傑物ではなかろうかとクミンは思うのだ。

 

「――ああ、もう行ってよいぞ。ご苦労であった」

「はい。では、失礼します」

「しばらくは安らうが良い。一週間の休暇を与える。――モリーと接触しやすいよう、クロノワーク王国の、都にある店舗に配属させてやる。休暇明けにすぐ移動させるから、準備は整えておくようにな。名目上は、実技講習の講師として派遣させよう」

 

 明確に、ハーレムを離れよ、と言われた。実質追放処分ともいえる、理不尽な異動であるが――そうした理不尽を自然に強要するのが、王族と言うものだ。

 そしてクミンに、拒否する権利はない。シルビア王女の権限は強く、これに逆らうほどの気概を、彼女は持てなかった。

 

「……わかりました。そのようにします」

 

 クミンは礼法に従って、一礼してから退室した。だいぶ慣れたつもりであったが、シルビア王女はやはり貴種の中の貴種であった。

 どこかしら、威厳がある。そして、下々の物の運命を握って動かすことに、ためらいがない。そのように生まれつき、教育を受けているのだと、実感した。

 モリーと接するのが嫌な訳ではないけれど。結果的に強制させられるのだから、因果をモリーに求めて、責めたり甘えたりする口実はあるわけだ。

 

「……会いたいような、会いたくないような」

 

 複雑な感情が、クミンの中で生まれ始めていた。それはシルビア王女をきっかけとしたものであったとしても、大本はモリーと接したところにある。

 結局のところ、モリーは罪な女である、ということ。元男であることを鑑みれば、罪な男――という方が正しいのかもしれないが。

 

 しかし現実として、彼女は女である。ならばやはり罪は重いというべきで、女を夢中にさせる女と言うものは、どこまでも罪深いというべき。

 クミン嬢がその毒牙にかかると思えば、そう表現する以外に、言葉がないではないか――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰った後、ザラ隊長には洗いざらい証言しました。報告の義務があるのは確かなんだけど、その、ね。

 まさか相手がハーレム嬢だったとは思わなかったようで、ちょっとその点を追及されました。

 

「お前は無自覚に女を口説くからな。やらかしてないか不安なんだ」

「ひどい言い方をなさいますね。私はそこまでの節操なしではありませんよ」

「どうだか。……メイルの奴は、すっかりお前にご執心だぞ。この数日、お前に会えなくて寂しいとぼやいていた」

 

 ええー? ほんとにござるかー?

 いや、事実なら今夜にでも我が家にご招待を……と思ったけど、暇もなければ一戸建ても所有していない私には叶わぬことだった。

 ローンを組んででも、買った方がいいのかな。でもなー。結婚相手というか、生涯を共にする伴侶も見つけないうちから、箱だけを用意するのも滑稽じゃないかなって思うし。やっぱり後回しにしようかと思います。

 

「ありがたい話ですが、今は仕事中ですので」

「そうだな。クミン嬢を無事口説けたようで何よりだ。仕事だと思えば、手籠めにするのにも罪悪感を感じなくていいだろう。私から制止することはないから、好きにすればいい」

「……どういう意味でしょう。貴方からどう思われているか、不安になりましたが」

「どうも何も、そのままだ。好きにすればいい。私はどうとも思わんよ。ハーレム嬢などに嫉妬するほど、私は狭量ではないつもりだ」

 

 理解できない。むしろ、理解するな。してしまえば、引き返せんぞ――と、本能が叫ぶ。

 そうした感覚には従うようにしている私としては、ザラ隊長の言葉の裏まで探ることは出来ぬ。

 ゆえに聞き流したが、これはこれでいいのかなって気持ちになるよ。地雷を踏みたくはないから、ザラ隊長の意図については探りたく思う。

 

「嫉妬とは、どういう意味でしょうか」

「失言だったな。忘れろ」

「ご命令とあれば、そのように」

「――忘れろ。これは命令だ」

 

 ずるいよね、ザラ隊長ってば。そんな風に言われたら、こちらだって追及できないじゃないか。

 

「はい。……それで、仕事の話を続けても?」

「続けろ。もとより、お前にはそれ以外のことは期待していない」

 

 ザラ隊長の顔は、微妙に緩んでいる。それが微笑みであるとわかるのは、私くらいのものだろう。

 実際には上機嫌の言葉なんだって、私にはわかっているよ。理由はわかんないけど。

 

「報告したとおり、シルビア王女は軍事的な意図をもって動いています。少なくとも短期的には、軍事行動を起こすでしょう」

「意外と冒険的な思考の持ち主だったんだな、あの人。――あちらの騎士の水準からすると、荷が勝ちすぎる気がするんだが」

「その為の、教官の派遣でしょう。あの方なら、無理をさせてでも仕上げてくれる。……賭けには違いないですが、まだしも分が良い方だと思いますよ」

「派遣を断るのは――無理だな。これは外交、政治の分野だ。文官の管轄に首を突っ込めば、後でどんな嫌がらせが飛んでくるかわからん」

 

 諜報も外交のうちと言えるのだが、どうもクロノワーク王国では明文化されてないらしい。この辺りの微妙な区分けは、私にはわかりにくいのだが、部分的に把握は出来ている。

 

 例えば、私が外国の誰かから情報を抜く。――これは諜報。なので軍の分野。

 私が非公式に外国の要人と会い、情報交換をする。――これも諜報。なので軍の分野。

 しかし、私が外国の要人をおおやけに接待したり、公式の場で会合を行うことは出来ない。それは外交官の仕事であり、官吏の役割だ。

 もし外国の要人と問題を起こせば、その時点で外交上の失点になる。だから、どこかで一線を引くことが必要なのはわかるが……。

 

 その辺りの話は難しくてなー。政治的な機微を理解しろとか言われても困る。だから、『やるな』と言われたことはしないってことで、今まで折り合いをつけてるわけだね。

 

「軍事的な懸念を、外交官殿にお伝えしては?」

「で、その外交官殿の伝手で王様に助言させるわけか。『シルビア王女が、またやらかそうとしているかもしれません。ご注意ください』って?」

 

 教官を派遣するだけの、些細な案件と言えばそれまでだ。しかし外交に関わるため、これに断りの返事を入れるなら、王の権限で正式な声明を発表せねばならない。

 断る理由をでっちあげるのも、面倒くさい気がする。まさか『うちの娘から不穏な気配がするので、協力できません』なんて言えるわけがない。

 そもそも役人の視点から見れば、こんな些事でいちいち王様の仕事を増やしたくないだろう。よくよく考えれば問題だらけだった。

 

「――こんな話を持っていけば、不興を買うのは確定だな。手のかかる娘がやっとこさ嫁いで、上手い具合に子供も出来た。王様は今、機嫌が良いところなんだ。わざわざ冷や水をかけにいく奴がいるかよ」

「……それは確かに、そうですね」

 

 要するに、シルビア王女は相も変わらず絶好調。止める手立てはありません――というわけだ。

 

「それを確認したところで、本来の仕事に戻ろうか。――そろそろ忙しさも殺人的になってきたし、人員の補充も考えてほしいものだが」

「予算が下りないんですよね。……もともと潤沢ではないのですから、無理は言えませんが」

 

 余計なお話はこれまでにして、日常業務へと復帰する。今日は午前中は執務室で書類仕事。午後からは訓練に参加して、終わったら夜の街で諜報合戦だ。

 

 ……ここ数日はまともに休めていない。メイル隊長と飲んだ日が最後だったかなぁ。その日も普通に仕事はあったし、次の日も休日じゃなかったけど、夜の間はしっかり休めたからセーフ。

 

 本当、うちの女騎士って激務が平常なんだと、改めて思いました。まる。

 

 

 





 取り急ぎ投稿しましたので、粗があるかもしれません。問題があれば、どうぞお気軽にご指摘ください。

 出来たらすぐに投稿したくなるのは、私の悪い癖ですね。ともあれ、楽しんでいただけたなら幸いです。

 次回もたぶん、シルビア王女がらみの話になると思います。ノリと勢いで書くのが基本なので、内容の質については、保証できないのが難点ですが。

 よろしければ、また見てくださると嬉しいです。では、また。次の投稿で、お会いしましょう。


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