「──まぁ、そうなるよね」
ポッター家でジェームズは新聞を眺めながら呟く。ポスっと机の上に置かれた新聞には一面どころか全体に同じような内容が書かれていた。
──
日刊預言者新聞 特別号外
名前を言ってはいけないあの人の復活を魔法省が正式発表
かねてより一部の魔法使いの間で囁かれていた「闇の帝王の復活」の噂について、魔法省は本日、正式な調査結果を発表した。
魔法省によれば、1995年6月、
魔法省は全国の魔法使いに対し警戒を呼びかけるとともに、各部署の警備体制を大幅に強化すると発表した。
魔法大臣コーネリウス・ファッジは記者会見で次のように述べた。
『魔法省はこの事態を極めて重大な脅威と認識している。国民の安全を最優先とし、警戒レベルを最高水準まで引き上げる。混乱を避けるため、冷静な行動をお願いしたい』
また、魔法省は各地への警戒態勢を強化するとともに、闇の魔法使いに関する情報提供を広く呼びかけている。
魔法省は今後も調査を継続し、新たな情報が判明し次第、速やかに公表するとしている。
──
ジェームズの置いた新聞の見出しの中で、ファッジが動くのを周りも見た。
「おッッッせぇよ!」
開口一番に文句を言ったのはもちろんシリウスであった。彼は魔法省に割と振り回された経験が多いので顔から嫌悪が滲み出ている。
「でも……よくあれだけ信じなかった魔法省がたった1回の裁判で判決をひっくり返したわね?」
ヴォルデモート復活の目撃者の一人であるリリーが感心したように息を吐いた。
「まぁね。元々、ヴォルデモートの面を知ってる
ヴォルデモートは復活していないなど、良くもまぁ言い続けられたものだ。
魔法省の発言的に『復活していないと断言していたのではなく、確実な発言をしなければならなかったから発表が遅くなった』と抜かしている模様。
1ヶ月以上かかる事実確認とは、余程魔法省は慎重らしい。
「ジェーにかかればあんなノームみてぇな魔法大臣!さっさと御せるに決まってる!」
「僕は慎重な魔法大臣に対して、そっと背中を押しただけだよ」
ジェームズはにこりと微笑んだ。
「引きずり下ろしたのはミリー」
そんなそんな、自分は親切なだけで相手方にダメージを与えたのはコワルスキーってやつなんです。
悪い所を全て押し付けるような発言に皆が呆れた顔を見せた。
事情聴取──裁判になったが、それに呼ばれたのは本来ハリーであったところ、無理矢理ごねてミリ・コワルスキーを断頭に立たせた。
それは犠牲ではなく信頼であったのだが、結果的に上手く働いたようだ。
「おそらくハリー・ポッターであればこうは行かなかったであろう。あれはああ見えて言いたいことを丸め込まれやすい。特にこのように『大人』だらけの場所では萎縮して、ファッジにいいように使われたであろうな」
「僕の息子だけど」
「我輩の生徒である」
セブルスがもしファッジだったら簡単に丸め込めた。
その点アメリカ人もといコワルスキーは理不尽なことにはっきり『否!』と言える。地頭はいいのだが察する能力が低いため、体のいい言葉には誤魔化され騙される可能性が高いののだが。サポーターがいればハリーよりは戦えるだろう。
ファッジは美人でも可愛くも無いので。
「ていうか君はさっさと学校に戻りなよ。僕のハリーをちゃっちゃと守ってもらわないと困るんだけど」
「くたばれ」
「くた……っ!?君ほんとに教師!?」
もう子供達は既にホグワーツ特急に乗り込んだ後だ。つまり教師もホグワーツに向かわなければならないのだが、浮かれぽんちセブルス・スネイプ、リリー(とついでにジェームズ)に会いたいがためにギリギリまでポッター家に居座っていた。
教師には教師のやり方でホグワーツに辿り着くため、長ったらしく特急に乗らなくても出勤可能だ。
「それにしても、新学期に間に合って良かったな。ギリギリまで粘られたけど」
「もし公表されなかったら多分嘘つき扱いされただろうね。ミリーならともかくハリーには酷だよ」
「……まぁ、エミリーなら平気でしょうね」
ハリーの性格をわかっている元教師陣が頷く。
リリーはこの夏休みしか息子と過ごせていないためそこまで性格面を把握しているわけではない。だがコワルスキーに関しては理解を示した。
「でもギリギリでよかったよ。夏休みまで闇陣営が無言だったのは、『ヴォルデモートが復活した』と言っている少数派が魔法界で孤立することを望んでいたのだろうから。今、魔法界が同じ方向を向いたことから隠密な活動をする理由が無くなってしまった」
子供たちが一箇所に。しかもホグワーツにいるとなれば安心だ。
その点はいい方向に働いたとも言えよう。
「忙しくなるね」
「そうだね……。出方を待っていられる余裕は無いからね、ハリーのために全力を持って相手せねば」
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「やっともう学校だあああ」
「その叫び声の感情ってどういう感情なんだ?」
「早くホグワーツの天使たちに会いたいという気持ちとリリー達天使と離れなければならない絶望に苦しんでる歓喜と絶望の叫び」
「聞いて損した」
ロンが呆れた様子でいつものように顔を背けると、ガラガラと馬車がやったきた。相変わらず可愛いセストラルちゃんだこと!
コンパートメントを出て生徒たちの群れに加わると、ハグリッドのいつもの『イッチ年生』と言う叫び声ではなく別の声が聞こえてきた。
「1年生はこっちに並んで!」
「プランク先生!」
この間座談会でお話した以来だ。
「立派なセストラル!」
「ハグリッド先生のセストラルを借りました。幸いと言うべきか、私は見えますから。貴女も見えるんですね?」
「そうなの!人の死に様を見たことは無いんだけど……。うーん、我ながら死んでるから見えるのかな?それとも魔法生物の生き死にに関わっていたりするからかな?」
「なになに、なんの事?この子達ってなにか違うの?」
ハリーがセストラルを指さしながら首を傾げた。
「……えっ!ハリー見えるの!?」
「見えるけど」
「……一応、僕も見えるよ」
「ネビルも??」
子供たちが見えるだなんて、世も末。
「見えるとなんなの?イズみたいな魔法生物?」
「デミガイズとはちょっと分類的に違いますねぇ」
私の魔法生物を知っているからか、見える見えないの違いがあるってのは分かっている。でもこれはちょっと覚悟決めて教えなきゃかな。
「ハリー、ネビル。人の死を見た事はある?」
「………………かろうじて無いかな?」
「あー……僕もかろうじて」
「このセストラルって天馬は死を見たことがある人にしか見えないの。見えるってことは誰かが死んだ瞬間を見ちゃった経験があるのね」
ハリーとネビルは顔を見合せて首を捻った。どうやら死んだ瞬間を見た訳ではないらしい。まぁ私も見えてるし、謎よね。波長が合うのかしら。そうだ、天馬といえばボーバトンがアブラクサンを飼っているけど、あの金色も素敵だったなぁ。もちろんセストラルのつやつやな黒毛は最高にセクシーでかっこいいんだけどね。
「とりあえず乗り込みましょう。ジニー、一緒に乗る?」
「うん。あ、ハーマイオニー、ルーナも誘っていい?」
「もちろん。お友達?」
「そうなの」
ジニーとルーナとハーマイオニーの組み合わせ、見たすぎる。最高の組み合わせじゃない?
「ジニー、僕も紹介してもらっていい?」
「もちろんよハリー。変わった子なんだけど、ミリの好みなの」
ジニーが私の話題を出してくれたのとハリーも興味を持ってくれて嬉しいってことと混ざれなくて悲しい反面天使の密度が高くて最高に尊い空間になってる。控えめに言って世界創造だね。
「じゃあ僕らは別で馬車に乗ろう」
「ドラコと馬車が一緒だなんて前世で徳積んだわ」
「そうか、動物にしては快挙だったんじゃないか?」
「えへへ」
「そういえばロン、監督生に選ばれたんだってね」
「そうなんだ!あとハーマイオニーもだよ」
「──ハーマイオニーにはいの一番におめでとうを頭の先からつま先まで送ったわ」
「僕は……ハリーが選ばれるものだと思ってたけど」
ロンが肩をすくめる中、ドラコが口を挟んだ。
「僕はウィーズリーで妥当だと思うけどな」
「え!」
「考えても見ろ、ハリーはマグル生まれで魔法界のことをあまり知らない上に、家庭環境も大きく様変わりした。そんな状態で他人の面倒を見れるわけがない。監督生ってのは、魔法族からもマグル生まれからも模範となり、他人のために会話したり雑用をこなさなければならない小間使いのようなものだぞ?」
「ドラコの中の監督生像ってどうなっているんだよ……」
「それにロンには監督生の兄弟がいるだろ、魔法省勤めの先人に聞ける立場なんて、新しい監督生にピッタリだ。有効活用出来る」
「へ、へぇ?」
「それにロンは落ち目のウィーズリーだとは言え、魔法界の聖28一族。方やグレンジャーは学年ぶっちぎりの学力を持ったマグル生まれ。様々な生まれが集まりやすいグリフィンドールの監督生にピッタリだと思うがな」
ドラコの褒め言葉にだんだん顔を真っ赤にしていくロン。至極当然のことを言ってます、みたいなドラコの顔は相変わらず美しい。睫毛の一束が愛おしさを物語っているわ。
「まぁ僕には負けるがな」
「結局そこに持っていくんだ」
「当たり前だろ。君たちみたいな出来損ない共の相手もし、教養もあって慈悲深く、こんなマグル生まれでも話してやってる、聖蹟もよく気品溢れる僕が君たちより下に来るはずがないだろ。見てみろコワルスキーが頷きすぎて髪の毛がロングボトムに当たってる」
「痛いよミリ」
「ダメだぜドラコ、こいつはドラコに関して全肯定なんだからさ」
よく分かってるじゃない、ロン。
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新一年生に挨拶&天使ウォッチングをし、組み分けが終わり、相も変わらず可愛くないダンブルドアが年度始めの挨拶をし始めた。
毎年耳からクラーケンが生まれるんじゃないかってほど聞いているフィルチのありがたーい禁止事項を聞き流すと、新しい先生の話になった。
「グラブリー・プランク先生とアンブリッジ先生じゃ」
魔法生物飼育学でハグリッドの代わりにプランク先生。
DADAはドローレスだった。
ハグリッドが頭からいないのは初めてだなぁ。いつ戻ってくるんだろう?
「ェヘンェヘン」
ダンブルドアの挨拶を遮るようにドローレスが咳払いをして、自己紹介をし始めた。
「今年はドローレスかぁ。可愛い子が良かったな」
「……ミリ、知り合い?」
「この前私魔法省に呼ばれたじゃない?その時にファッジと一緒に居た人」
「なるほど、ミリの顔見知りね。あの方、魔法省の職員ってことはさぞかし優秀なんでしょうね……。それに事前に顔合わせしてたってことはその時にはもう闇の魔術に対する防衛術の教師になるって分かっていたのかもしれないわ。ダンブルドアはともかく魔法省側でね」
ハーマイオニーがなにかに納得をしたのかうんうん頷いている。その仕草で世界中を魅了するつもり?私はとっくに、出会った時からメロメロに魅了されているんだけどね!ドヤ!
「魔法省は若い魔法使いや魔女の教育は非常に重要であると、常にそう考えてきました。みなさんが持って生まれた稀なる才能は、慎重に教え導き、養って磨かなければ、ものになりません。魔法界独自の古来からの技を、後代に伝えていかなければ、永久に失われてしまいます。われらが祖先が集大成した魔法の知識の宝庫は、教育という気高い天職を持つものにより、守り、補い、磨かれていかねばなりません」
私がハーマイオニーの魅力に浸っていると、ドローレスは荘厳に何かを言っていた。
教員席に目を向けるとセブルスがめちゃくちゃ訝しげな顔でドローレスを見ている。かわちいね。ジェームズにはあるけどセブルスには白髪が無いからきっとセブルスはあんちくょうと違って心が若々しくて細胞が元気なのね。健康に関しては何も言えないけど。
「…なぜなら、変化には改善の変化もある一方、時満ちれば、判断の誤りと認められるような変化もあるからです。古き償習のいくつかは維持され、当然そうあるべきですが、陳化し、時代遅れとなったものは、放棄されるべきです。保持すべきは保持し、正すべきは正し、禁すべきやり方とわかったものは何であれ切り捨て、いざ、前進しようではありませんか。解放的で、効果的で、かつ責任ある新しい時代へ」
そういえばセブルスってばリリーとの再会が嬉しいのか夏休み中ちょくちょく来てたよね。不死鳥の騎士団の作戦会議とやらの後も、1泊したりこそしないものの夜中にフラフラやってきていつの間にか客室で眠ってたり。
まぁいつの間にか、と言っても今朝は3時22分で昨日は4時56分で一昨日は23時13分だったんだけどね。
「や、コワルスキー。闇の帝王が復活したって、お前も目撃したんだっけ?」
「そうなってるみたい。リリーが言ってるから間違いないわね。天使だもの。でもどうやらまだ信じてない人が多いみたいなの。闇陣営に頼んでちゃんと『復活しましたよ』って宣言してもらわなきゃ」
「お前は馬鹿か?」
グリフィンドールの1学年上の坊主が私を馬鹿にした。やーい5学年までの知識しか修めてないばーか。こちとら7学年までの知識があるんだぞ!天使の音読のお陰で!理解は至ってないけど。
「だから馬鹿ではないと思うの」
「その『だから』に対しての文脈が抜けてるがコワルスキーちゃんの悪い所だと思うんですよ」
「なんで可愛くない相手にいちいち説明しなければならないの?」
「これコワ(※これだからコワルスキーの略)」
私が口を開くのは常に天使のためでありたい。
大体私の脳内の言葉を全て口に出していたら日が暮れちゃうんだから、感謝して欲しいわ。
会話文だらけの物語が小説ではなく台本と呼ばれるように、私が全てを口に出したらコワルスキーでは無くなっちゃうじゃない。
「なぁハリー・ポッター、どう思う?」
「どうでもいいかなぁ」
「ハリーの目から呆れが伝わってきてとてもとても興奮しちゃって脇汗かいてきた。多分もうすぐ足の指から滝のような汗が出てくる」
「新手の魔法生物か?????」
「ちゅっ!!!!!!ハリーの全てに投げキッス☆」
「どうしよう今年のミリ、変態の方向性がちょっと違うかも」
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さて、今年度最初の『闇の魔術に対する防衛術の授業』が始まった。魔法省の人間はどう言った授業をするのだろうかと、どうかギルデロイのような教師でありませんようにと朝から皆が噂をしていた。
ギルデロイ元気かなぁ。今はルシーのところでフリーライターみたいな感じで色んな依頼をこなしているんだっけ?
原案はレポートデータは別の人間の名前でも筆者がギルデロイ・ロックハートとなっている本がまぁ多いこと。そろそろ小屋の本棚(ギルデロイ専用)がパンパンになりそうだわ。去年で92冊と新聞掲載365部と特別号52部。一昨年で28冊と新聞12部と論文5つ。本棚を慎重しなきゃ。
人間が出来る執筆速度じゃないのよね。何かしらの魔法でも使ってたりするのかな?今年はゆっくり過ごして欲しい……。私の本棚の為にも切実に。
魔法生物も増えてきたし、やっぱり少し小屋が手狭になってきたよなぁ。
かといって、空間自体充分余裕があるし。居住スペースというか人間のためのスペースというか。
そんなこんなと考えていると、教室にたどり着いた。11年間通い詰めたいつもの教室に入ると椅子や机が全て取り払われた状態になっていた。
「ェヘン。皆さんどうもごきげんよう。改めまして、わたくし、ドローレス・アンブリッジと申しますわ。皆様にはこれから闇の魔術に対する授業の方針をお話させていただきます」
教卓のあった場所でドローレスは挨拶をした。
「まず最初に言っておく事は、この授業に勝手な発想や独自の解釈は必要ありません。教科書も不要です。必要なのは、決められた手順を正確に守り、定められた知識を確実に身につけることです。授業は全員が同じ速度、同じ内容で進めます。私語や無断での発言、指示のない実技は認めません。質問は私が許可した場合のみ受け付けます。規律は皆さんを縛るためではなく、正しい学びへ導くためのものです。優秀な生徒とは、目立つ者ではなく、規則を忠実に守り、命令を正確に遂行できる者を指します。この教室では、個性より秩序、感情より規律、挑戦より正確さを重んじます。皆さんもその理念を理解し、模範的な生徒として振る舞ってくださることを期待しています」
甲高い声でドローレスが何かを言う度に、そこらかしこから嫌そうな声が聞こえてくる。
ドローレスはェヘンェヘンと咳払いをして続きを話し始めた。
「近年、魔法界を取り巻く情勢は決して穏やかとは言えません。不安を煽る噂や根拠のない情報が飛び交い、若い皆さんも落ち着かない日々を送っていることでしょう。だからこそ、ホグワーツには優秀で規律ある魔法使いを育てる責任があります。皆さんには今後、画一的かつ段階的な訓練を受けてもらいます。同じ判断基準を持ち、同じ手順で行動し、いかなる状況でも命令を正確に遂行できる者こそ、真に信頼される魔法使いだからです。卒業後に魔法省へ勤める方も少なくないでしょう。その時に求められるのは、英雄的な活躍ではなく、規則を理解し、組織の一員として冷静に職務を果たす能力です。そして、もし再び闇の帝王のような脅威が魔法界へ姿を現したとしても、混乱に流されず、命令系統に従い、日頃の訓練どおりに行動できる者だけが、人々を守る力となります。勇敢さとは、無謀な挑戦ではありません。規律を守り、鍛錬を積み、組織を信頼すること。その積み重ねこそが、魔法界の平和を支える礎となるのです。皆さんには、その礎となる人材へ成長していただくことを期待しています」
「……なんっっっも頭に入ってこない、どうしよう、頭のいい人のイギリス英語訛りも強くてほんとうに分からないかも」
「イギリス人でも理解できてないから安心しろよ」
ありがとうロン、貴方のお仲間発言で心から安心したわ。
「──要するに『イギリス魔法省からの効率的な教育指示として規律的な訓練の授業を行います』ということですよ。Ms.…いえ、コワルスキー議員」
「分かりやすい、ありがとうドローレス!」
「アンブリッジ先生です」
議員とか初めて言われちゃった。ルシーみたいで素敵ね。