仁川麻子の高校生活   作:ぷよん

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ということで、大変お待たせしました。リニューアル版一話です。
多分旧版と一番差が出ている部分になると思っています。


一章 出会い編
一話 転生


「……」

 

 とある一軒の住宅の一室。そこで一人の少女が目を覚ました。髪の短い日本人形みたいな、地味ながらもかわいらしいその少女は、もそもそと着替えながら登校の準備をし始めた。

 

「麻子ー、起きてるー?」

「大丈夫」

 

 母親に呼ばれた少女――仁川麻子は、母親にそう返事すると、いつも通りの手つきで登校の準備を始めた。外見が高校生にしてはかなり幼く見える以外、特に何の変哲もない少女だが、実はとんでもない秘密があった。その始まりはおおよそ十年前に遡る。

 

 

―――

 

 

 その十年前。『彼』は『別の世界線の未来』において、若くして突然静かにこの世を去った。世間的には特に名の知られている人物ではなく、せいぜい村人A程度の存在感でしかなかった彼であるが、ことその日本の『裏麻雀界』においては、彼を知らぬ者はいないというレベルには知られていた。

 

 彼は神出鬼没で悪魔じみた打ち方をすることで知られ、対局した者を精神的に丸裸にすることでも知られていた。そう、何を隠そう彼は『人鬼』、『傀』であったのだ。傀がこの世を去ったということは、裏麻雀界で瞬く間に広がり、激震を与えた。あの神か悪魔かの存在かのように思えた傀も人間であった……ということが衝撃だったのかどうかは定かではないが、ともかくそれほどまでに彼は影響を与えていたのである。

 

 しかし彼はその得ていた地位、財産には特に未練も何も無かった。どこぞの白髪の雀士の如く、そのようなものには興味が無かったのである。それよりも彼が求めていたのは、麻雀であった。それも、なるべく強い打ち手を。それしか生き方を知らない、という訳ではないものの、やはり彼のアイデンティティとも言えるものは麻雀であったのである。

 

 そんな、欲があるのか無いのかよくわからない彼に対し、ある神が興味を持った。金でも地位でも無く、麻雀を求める。そんな常人からはかけ離れたような、死んで魂だけになった彼に接触を図ったのである。

 

「――よ、お主の願い、叶えられないこともないぞ」

「……ふむ、続けてください」

 

 滅多に見せないような、純粋に興味を持った傀の表情。本来相手は人間であるにもかかわらず、まるで傀に値踏みされているかのような錯覚を覚えた神であったが、そこは流石の神。すぐに立て直すと、続けて口を開いた。

 

「お主がこれから行く先は、麻雀が世界的に広まって表に認められた世界。そこで様々な魑魅魍魎達と対局をすることになる。相手には退屈しないじゃろう」

「……」

 

 傀は無言であったが、表情からして続けてくれ、と言わんばかりであった。ここまでで、傀としてのこのような純粋な顔を見ることができたのは、生涯、そして死んでからも通してこの神しかいないかもしれない。手ごたえを感じた神は、更に続きを話し始めた。

 

「ちなみに行く先は長野県の、ある何でもない家庭じゃ。そこでお主はまず学生の雀士として打っていくこととなるじゃろう。お主の性格からして、最初から有名なところに行くよりも、その方がより楽しめると思うぞい」

「……わかりました、いいでしょう」

 

 どうせ死んだ身である。こうして新しい生を得られるだけでも貴重なのだ。細かい部分は聞かされていなかったのが、もとより傀はここで知ろうとも思っていなかった。そこの部分を知らなくとも、それはそれで面白そうであったからである。こうして、傀、もとい仁川麻子――後に『清澄の黒い魔王』と呼ばれる高校生最強雀士が誕生することとなった。

 

 

―――

 

 

 生を受けてからしばらく、麻子は麻雀を打たなかった。否、打てなかった。その理由は単純明快である。麻子は赤子であったのだ。

 さしもの麻雀の妖精といえど、赤子の状態で麻雀を打つことは流石に無理がある。いや、中身のことを考えればできなくもないのかもしれないが、そもそも麻子は前世から必要以上に目立つことはそれとなく避けてきた人物である。故に今はまだ動く時ではないと判断していた。

 それにどうも神の言っていた通り、この世界線は麻雀が明るい形でよく広まっており、何なら高校野球とかと同じような感覚で麻雀のインターミドルやインターハイも存在しているのだ。故に慌てて動く必要はない、と麻子は判断していた。

 

 

―――

 

 

 それから麻子は順調に進級、進学を進めた。勉強に関しては、知識が強くてニューゲームの状態であるため、全く障害にはならなかった。

 また、人間関係も決して悪くなく、数も多いとは言えないものの、小学校時点で既に友人を獲得していた。普段は物静かな麻子と気が合った文学少女、宮永咲と、その幼馴染である須賀京太郎の二人である。

 特に咲とは、お互いのおススメする本の貸し借りや、咲が麻子の家に遊びに行ったりするくらいには良い関係を築けていた。とはいえ、二人とも文学少女であるため、遊びに来た際はベッドに並んで腰かけ、ほとんど無言で本を読むのが恒例となっていたのだが、しかしそんな静かな時間が二人は好きだった。

 また、京太郎と三人でいる際は、二人で咲をからかったりするのもいつものことだった。その時は決まって咲が頬を膨らませて怒るものの、咲も決して嫌という訳ではなく、また麻子と京太郎も超えてはいけないラインを弁えているため、それで仲違いするようなこともなかった。要するに三人ともそれぞれが信頼で繋がっているのである。

 

 

―――

 

 

 時は流れて中学二年生の夏のある日。夏休みの宿題を早々に終わらせた麻子は、自室で寛ぎながらテレビを眺めていた。番組の内容は意外にも、麻雀のインターハイ、その全国大会である。

 前世が前世だけに、今頃その舞台で打っていてもおかしくなさそうな麻子が、何故自宅でインターハイの中継を見ているのか。それは、今ここで打ったとすれば、必要以上に目立ってしまうと考えたからであった。

 傀時代の功罪があまりにも大きすぎることから、つい飛躍した印象を持たれてしまいがちな麻子であるが、本人としては目立つのがそれほど好きではなかった。それは、傀時代の神出鬼没と言われたその振る舞いからも見て取れる。本当に目立つのが好きなら、それこそ自身の存在をこれでもかとアピールしながら蹂躙し続けていただろう。

 しかし実際には、結果的に有名にこそなったものの、自ら名を世間に轟かせようとしたことは皆無と言ってよかった。環境柄、出る杭は物理的に打たれるというのもあったが、何より本人がそれを望んでいなかったのだ。それでも裏麻雀界に名を馳せすぎることとなったのは、本人としては麻雀を打つための必要経費として諦めていただけである。

 

 さて、そんな麻子がお菓子を食べながらその試合を見ていた時、ある高校の打ち手が目に留まった。その打ち手は一年生ながら強敵犇めく激戦区である先鋒を任され、そして全国大会という重圧がかかる場でありながら化け物じみたスコアを叩き出していた。

 怒涛の連続和了と、それに伴う細波から津波へと変貌するような点数のカウントアップ。異能を持っていると確信できる強さを持ったその打ち手。ただ強いだけではとても再現できるものではない麻雀を打つ少女。その名は、宮永照であった。

 

『な、なんということでしょう! 白糸台高校宮永選手、先鋒戦でトビ終了を決めてしまいましたーっ!』

「……」

 

 麻子はすぐに、この宮永照という少女が咲の姉妹、あるいは親戚であると感じていた。それほど数が多い訳ではない宮永という苗字、そしてその容姿。髪の長さなど異なる部分も多かったものの、顔つきや髪の跳ね方等、細かい部分を見れば咲に似ているのは明らかであったからだ。

 だがここで、麻子は違和感を覚えた。この方知り合ってから、咲は今まで麻子に対し、自身に姉がいるという話を一切したことが無いのである。仮に照が姉だとすれば、咲のこの振る舞いは非常に奇妙である。何しろいないものとして扱っている、そこまではいかなくとも、少なくとも明確に避けているのである。

 

「……」

 

 麻子はこの状況が気になってはいたものの、しかし他人の家庭状況に首を突っ込む趣味は毛頭ないため、脳内であれこれ想像するに留めた。とはいえ、これにより咲への興味がより一層高まったのも事実であった。

 

 

―――

 

 

 また時は流れて中学三年生の秋。校内ではいよいよもうすぐ受験だなんだと大騒ぎになり、また勉強のしたしていないで顔色が七色に変わるような季節でもある。

 そんな中、麻子は担任の教師から、今後の進路についての呼び出しを受けていた。

 

「どうぞ、そこに座って、仁川さん」

「はい」

 

 担任の女性教師が、麻子を椅子に座るように促す。机の上には、麻子の成績表と麻子の希望する進路が書かれた用紙が置かれていた。

 

「さて、仁川さん、貴女は清澄高校に進学したいみたいだけど、どうしてかしら」

 

 教師は、自身の視線を成績表と麻子の間で何度も往復させながら、怪訝そうな表情を浮かべていた。それは決して麻子の成績が悪かったからではない。むしろ逆であった。

 

「こんなことを言うのもおかしいかもとは思うんだけど、麻子ちゃんならもっと上の学校でも余裕で進めると思うのよ。ウチは進学校ではないから、無理にしろとは言わないけどね。だから、もし大丈夫なら、清澄高校に進みたい理由を知りたいなって思ったの」

 

 教師の疑問は尤もであった。勉強系の成績は常に全て最高評価、家庭科や技術等の実技系強化もほとんどが良い成績である。唯一と言っていい弱点は、その子どもの日本人形くらいの小さな体躯からくる身体能力の低さ、それに伴う体育の成績だけだった。

 なお、その影響で周囲からの麻子の評価が、儚げな天才文学少女となっており、半ば神聖視されているのを麻子は知らない。咲ほどではないが、麻子も自分からはあまり他者と積極的にかかわろうとはしないため、本人が知らないというのは仕方がない話ではあった。

 閑話休題、そんな成績で進む先が、所謂普通の高校と言うのだから、教師からすれば、麻子の希望は宝の持ち腐れに見えても仕方がないことだろう。そしてそれは麻子自身も当然理解していた。

 

「理由、ですか。そうですね……私の親友が清澄高校に進むから、ですね」

 

 麻子の理由は実に単純であった。親友、すなわち咲と京太郎が清澄高校に進むと言ったからであった。尤も、その裏には様々な麻子の思惑が絡んではいたのだが、麻子がそれを表に出すようなことはしなかった。

 

「……成程、お友達が行くから貴女もそこに合わせるって訳ね」

「いけませんか」

「とんでもない。私はダメだなんて言わないわよ。仁川さんほどの人が、自分でそう判断して進もうとしてるんだもの。私は応援するわよ」

 

 教師は意外にも麻子のそれをすんなりと認めた。麻子としてもそれは意外だったようで、普段のすました顔が、僅かながら目を見開いた驚きの顔へと変わっていた。その違いが判るのは、それこそ親か咲か京太郎くらいしかいない程度ではあったが。

 

「ただ、何にせよ後悔だけはしないようにしてね。今更仁川さんに言うようなことじゃないとは思うけど。いや、逆に仁川さんほどの人だから、かしら。貴女は賢いから、あれこれ色々考えて、様々なことに気が付いたり予測が立てられたりすると思う。その時に、この選択は間違っていなかった、って胸を張れるようにしてほしいの」

「……ありがとうございます」

 

 随分と物分かりの良い先生だな、と麻子は感じた。そもそも前世での教師というものがどのような存在であったかなど、麻子はとうに忘れていたので、これが普通なのかどうかは全くわからなかったのだが、それでも生徒想いの先生だということは理解できていた。

 

「さ、それじゃ硬いお話はこのくらいにしましょうか。仁川さんを待っているお友達もいるみたいだし、ね」

 

 そう言って微笑んだ教師が見た視線の先には、咲と京太郎の、入口の陰から心配そうな表情で麻子を見ている姿があった。成績優秀な麻子が先生に呼び出されるなどという一大事を、笑って流せる方が少ないかもしれないので仕方がないとは言えるのだが。

 

 

―――

 

 

 更に時は流れ、冒頭である、無事に三人揃って清澄高校に入学した後の最初の初夏。ここでも麻子はクラスメートからやはり神聖視されていた。主に中学時代の評判が流れてきたことが大きい。麻子にとっては、それが悪い評判ではなかったのが救いだろう。

 

「おはよ、仁川さん、宮永さん、須賀くん」

「「おはようございます、会長」」

「おはようございます、竹井学生議会長」

「もう、わかってて言ってるでしょ」

 

 そう言い、笑いながら麻子の肩を軽く叩くのは、現清澄高校学生議会長、所謂生徒会長である竹井久だ。久は入学式で麻子のことを知ると、他の生徒の誰よりも早く麻子に接触した人物である。

 いの一番で接触した理由は、麻子の成績が特段に良かったから、というだけではない。そんな人物が、中学校では神聖視されていたという情報もどこからか仕入れていた久は、一体神様扱いされるような少女はどんな人間なのかというのが気になっていたのだ。要するに好奇心からである。

 そして軽く話していて、久は麻子のことを面白い人間だと感じていた。確かに自ら動くタイプではないのであまり知られていないが、麻子は話せばしっかり返してくれるし、冗談だって言う。それだけなら普通の面白い子とさして変わりはない。

 だが、そのかかわりの中で、久には不思議と惹かれるものがあった。但し久の中では、その理由がうまく言語化できていなかったのだが。言ってしまえば勘とか、あるいは一目惚れみたいなものだろう。

 

 その日の放課後。と言っても、この日は午前のみの授業のため、午後が丸空きになっていた。その長い放課後の時間を使い、麻子と咲の二人は学校近くの川のほとりに腰かけ、静かに本を読んでいた。この空気も、既にもう四、五年は続けているが、二人とも飽きることは無く楽しんでいた。

 

「「……」」

 

 麻雀ばかりが取り沙汰されていた麻子であったが、こういった時間も嫌いではない。傀時代のあまりの大暴れっぷりから、まるで孤高の人物と思われていた麻子だが、別段人付き合い自体はそう悪くない。ただ自分からかかわりにいくことは、麻雀を除いては基本的に無かったが。

 そういう意味では、麻子にも昔から人間らしい部分はきちんと存在していた。但し、麻雀の部分だけを切り取って見た場合に限っては、人間らしい部分が皆無に近いというのは事実としか言えなかったのだが、そのことを咲はまだ知らない。

 

「(……こういった、平穏な日々も悪くはないものですね)」

 

 誰に言うでもなく、麻子はそう思った。

 

 

―――

 

 

 お互いに読み始めてしばらく経った頃。ふと何気なしに咲が顔を上げ、つられて麻子も同じ方を向いた。

 

「(綺麗な人……)」

「(……)」

 

 その視線の先には、元々異性の麻子は勿論、同性の咲ですら思わず見惚れてしまう美少女が、川辺の少し遠くを歩いていた。学年色のスカーフを見るに、どうやら自分と同じ1年生であるようだった。

 

「(あれで同じ1年生かぁ……)」

「(……最近の子は発達が著しいのでしょうか)」

 

 素直に羨む咲に、ちょっとピントのずれた考えをする麻子。そんな二人に、更なる来訪者が現れた。

 

「咲~! 麻子~!」

 

 麻子のもう一人の親友、須賀京太郎であった。

 

「京ちゃん!」

「須賀さんですか」

「だから京太郎でいいってのに。まぁそれはいいや、学食行こうぜ!」

「えぇ……でも折角麻子ちゃんから貸してもらってる本だから読まないと……」

「学食でも読めますし、良いのでは? ただどうして学食へ?」

「いや、さ、今日のレディースランチがすっげぇ美味そうなんだよ! だからさ、お願い!」

「……」

「それだけのために食事に誘うって、どうなの……?」

 

 京太郎の必死の頼み込みに対し、咲は呆れ顔を浮かべていた。確かに咲からすればそれだけのこと、ではあろうが、京太郎からすれば男子禁制の、しかしありつければ約束された勝利の昼食がそこにあったのである。頭を下げるのも致し方ないと言えるだろう。

 ちなみに麻子は、そのレディースランチに少し興味を持っていた。この(体格上)幼い体となった麻子は、前世と比べても食欲が上がっていたのだ。

 勿論傀時代でもそういった欲求が無いことはなかったが、そういう時はタバコを吸うことで他の欲求も含めて抑え込んでいた。しかし未成年の体となった現在ではそれが通用しないし、麻子自身タバコが欲しいとも思わなかった。結果として出た先は食欲であった。不思議なことに、それなりの量を食べても、一向に麻子の体は縦にも横にも大きくならないのだが。

 

 

―――

 

 

「はい、レディースランチ」

 

 京太郎の代わりに食堂でレディースランチを頼んだ咲が、京太郎のいる机に戻り、慣れた様子で手に持っているランチセットを京太郎に渡した。それを見た麻子は、自身のレディースランチを運びつつ、咲の方を見ながら呟いた。

 

「やっぱりいいお嫁さんですね、宮永さんは」

「もう、だからただの幼馴染だってば! 嫁さん違うよ!」

「真っ向否定されると、それはそれでちょっと悲しい気分になるんだが……」

 

 すぐにムキになって否定する咲。こういった反応を見るのが楽しいから、麻子は咲いじりをやめることができないのだ。もっとも、今回は流れ弾が被弾した人物がいたようだが、本を正せばその人物が発端ではあるので因果応報とも言えるのかもしれない。大分理不尽ではあるが。

 

 三人が同じ机を囲み、咲は本を読みながら、残る二人がレディースランチを食べ終わるのを待っていた。その時、京太郎は不意に手元から携帯ゲーム機を取り出した。その音に反応した咲が端末を覗き込むと、そこには麻雀ゲームの画面が映されていた。

 

「京ちゃん、麻雀するんだ」

「まだ役もロクに知らないけどな! でも麻雀っておもしれーのな」

「私は麻雀嫌いだな……」

 

 僅かに顔を曇らせる咲。食べながらではあったが、それを見逃す麻子ではなかった。この反応は、明らかに麻雀で何か大きなことが起こったことを示していたし、麻子はそれをすぐに察した。そして麻子の脳内に再生されるのは、二年前、鮮烈な全国デビューを果たした白糸台高校のエース、宮永照の姿であった。

 だが、麻子はその話題をここで口にしようとはしなかった。二年前のあの時も、周囲がインターハイの闘牌で沸き立つ中、咲は一切その話題を口にしなかったのだ。その時は麻雀を全く知らないという可能性も僅かながらにあったが、今日のこの反応で無知という線も消えた。少なくとも打てなければ、その嫌いという言葉も出ないはずだからだ。

 

「え、何? 咲って麻雀できんの?」

「できるっちゃできるけど……家族麻雀でいつもお年玉巻き上げられてたからキライ……」

「……」

 

 咲の言葉を聞いた麻子は、こちらではまだ何もしていないにもかかわらず、思わず咲から目を逸らしてしまった。お年玉を巻き上げられる咲と、今まで自身が御無礼してきた相手の姿が重なってしまったのである。麻子が咲に何かをした訳ではないが、それでもこちらに来てから生まれた良心が痛んでしまうのも仕方がないのかもしれない。

 

「そ、そうか……それはすまん。ところで麻子は麻雀できんの?」

「……まぁ、一応は」

 

 本当は一応なんてものではないことなど、麻子は百も承知していたが、ここで今いらない事を言う必要もないと判断して適当に誤魔化した。その心情を知ってか知らずか、京太郎は一人で少しだけぶつぶつと呟くと……

 

「もひとつおまけに付き合ってくれるか? メンツが足りないんだ、麻雀部」

 

 そう二人に向かって言った。その相手が、後に『清澄の白い魔王』と『清澄の黒い魔王』と呼ばれる存在となることも知らずに。

 




という訳で、麻子さんに過去が一気に生えました。
いきなり女の子になって戸惑う麻子さんも
自分としては嫌いじゃなかったんですが、
遊びに行ったりするときにこの設定だと広がりが中々大変で……。
今後しばらくはそれなりのペースでリメイクしていく予定です。
世間はコロナで大分大変なことになっていますが、皆様もお気を付けください。
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