穂乃果ハッピーバースデー!

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高坂穂乃果生誕祭2019 Ⅰ

今年もまた、今日がやってきた。真夏の記念日。毎年、この日を迎える為に生活していると言っても過言ではない。

──だが、今年の私は一味違う。何故なら、

「ついに来た……。秋葉原……!」

あの人が生まれ育った、そして伝説を残した秋葉原の街へ、ついにやってきたのだ。

天気は快晴。μ'sを知ってから、今日が晴れじゃない日はない。これもあの人の力なのかなと小さく笑う。

 

 

そんな私が秋葉原へ来た一番の目的は、

「──あった」

あの人の実家、老舗和菓子屋『穂むら』へ赴く事だった。

秋葉原の喧騒から離れた、昔ながらの街並みが残る一角にあるそのお店は、完全に周囲に溶け込んでいる。一度通り過ぎてしまった。

「…………」

一度大きく深呼吸をしてから、意を決してお店の扉を開ける。

「──いらっしゃいませ」

聞こえてきたのは、凛とした芯のある声。カウンターに立つ波打つ黒髪の女性は、どう見てもあの人ではない。

予想はしていたが、やはり誕生日当日に店番はしないのだろう。残念だが、仕方ない。名物だと言うほむまんをお土産に買えるだけ幸せだ。

そう思っていたのだが、

「もしや、穂乃果に用事でしたか?」

店員さんから驚愕の質問をぶつけられた。

驚きすぎて声を出せずにいると、それを肯定と受け取ったのか女性は、

「やはりそうでしたか。……しかし申し訳ありません。穂乃果はつい先ほど、外出してしまいまして……。帰りがいつになるかは、分かりません……」

店員さんが謝る事ではない。私の運とタイミングが悪かっただけだ。

ほむまんと、その他の和菓子をお土産に購入すると、穂むらを出た。

 

 

 

 

──とはいえ、少なからずショックはあったので傷を癒す為駅前のネカフェへ。調べた所──あった。μ'sのライブ映像。これを見て、少しでもテンションを上げよう。

──三人だけだった、『START:DASH!!』。六人に増えた、『これからのSomeday』。九人揃った初めての曲、『僕らのLIVE 君とのLIFE』。ラブライブへのアピールとして歌った、『Wonder zone』。第一回大会棄権となってしまった、『No brand girls』。九人で歌った、『START:DASH!!』。第二回大会の予選で披露した、「ユメノトビラ』。あの人含む二年生不在で臨んだファッションショーの、『Love wing bell』。ハロウィンライブで歌った、『Dancing stars on me!』。地区予選決勝の、私があの人を知ったキッカケの、『Snow halation』。ラブライブ決勝の勝負曲、『KiRa-KiRa-Sensation!』。優勝したその後に海外で披露した、『Angelic Angel』。スクールアイドルみんなの歌というコンセプトの、『SONNY DAY SONG』。本当のラストライブ、『僕たちはひとつの光』。

やはり、本当にどれも、素晴らしい曲ばかりだ。

 

 

 

 

ライブ映像に没頭していたら、いつの間にかお昼の時間だった。ネカフェのすぐ裏にラーメン屋があったので、そこでお昼に。

せっかくだから、ちょっと贅沢にトッピングを追加してみたり。……スタンプカードなんてあるのか。近所だったら作るのもアリだったのかもしれないな。

「──ありがとございやした〜!」

私と入れ違いにちょうど二人出て行った事で、お昼時でも待たずに席につけた。これはラッキー。

 

 

 

 

食後には、穂むらと同じくもう一つ訪れたかった場所へ。

急な石段を歩いて登る。……ここを駆け上がるのは、かなりキツい。スクールアイドルも大変なんだと痛感した。

──神田明神。μ'sが練習場所にして、幾度となくお参りしたであろう神社。ここに来たかったのだ。

「──お、ごゆっくりな〜」

ちょうど建物から出てきた美人な巫女さんに声をかけられ、慌てて会釈。

お参りのお願いは……どうしようかな?

 

 

 

 

神田明神でお参りを済ませた私は、早くも用事が終わってしまった。あの人には会えなかったし、かと言って一日のプランを練っていた訳でもない。

しかし、せっかく秋葉原の街まで来たのだ。このまま帰るのは勿体ない。少し、散歩をしてみる事に決めた。

あまりの暑さ故に水分補給と自販機で飲み物を買っていると、大通りの反対側を猛スピードで走っていく女性を見かけた。全速力で走る彼女はすぐに角を曲がって見えなくなったが、この気温の中でそうそうできる事ではない。私は唖然として見送った。

 

 

 

 

オタクの街と言われる秋葉原には、流石に専門ショップが多かった。それでも、その中にもあった服屋を覗いてみる。正直ファッションには疎いが、それでも少しはオシャレしたいと思うものだ。

……せめて私も、フリフリが似合えばなぁと思ってしまう。あの人は可愛い衣装も、カッコいい衣装も最高に似合っていた。……あの人は、本当に高校生だったのだろうか。だとしたら、天性の才能とカリスマ性じゃなかろうか。ますます好きになってしまう。

 

 

 

 

気がついたら、夕方になっていた。秋葉原の街は、いつの間にか時間が経っている。凄い街だ。

このまま帰るのも少し勿体なかったので、最後にカラオケへやって来た。

μ'sを知る前は、まず来る事のない場所だったのだけど。こんな所でも変化があるらしい。

そんなに長くいるつもりはないので、一時間半だけ予約して部屋へ入る。ひたすらμ'sの曲を歌う。

──ふと、隣の部屋の歌声が聞こえてきた。女性二人組みのようだった。遮音性が高いとはいえ、完全な防音にはできないらしい。

──そして驚いた。二人が歌っていたのも、μ'sの曲だったからだ。……しかも、相当上手だ。もしかしたら、プロの歌手かアイドルだったりするのかもしれない。……まさかね。

 

 

 

 

もうすっかり暗くなってしまった。

私は大きく伸びをすると、空を仰ぐ。あの人には会えなかったけど、とても充実した一日だった。こんなに楽しい日を過ごしたのは、いつ以来だろう。

──少し寂しいけど、そろそろ帰らなくては。また明日からの日常を、大切に生きていかなければ。

駅に向かう途中、ふと鼻腔がくすぐられた。

この匂いは……ビーフシチュー? でも、少し違う気もする。

……ああ、お腹が空いた。私も帰って、ご飯を食べよう。

スキップしそうになる足取りを、辛うじて押さえて私は歩く。

 

 

 

 

 

 

──高坂穂乃果さん、お誕生日おめでとうございます。

 

あなたが生まれた今日という日が、まるで自分の記念日みたいに嬉しいです。

 

あなたがいてくれるだけで、私は元気を貰えます。

 

いつかあなたに、面と向かって「おめでとう」と言える日が来ますように。


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