おじさん、今年で36歳になるんだけれども   作:ジャーマンポテトin納豆

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他の作品で結構悩むことが多くなってきたこの頃。
息抜きにフリーダムで書いてやろうと思っての投稿。
連載になってはいるけれども続くかは分からない。

見切り発車、グダグダ、キャラ崩壊注意です。


おっさん、IS動かして監禁されちゃったよ。

「あれ?俺ってばやらかしちまった?」

 

呑気な声で話すこの男、佐々木洋介は今年で36歳。世間で言うサラリーマンをやっている。彼女無し。童貞です。

 

その男が触れている物、いや身に着けてしまった物と言った方が正しいか。

それはIS。正式名称 インフィニット・ストラトス。

英語で書けよと言われても分からんもんは分からん。勘弁して。

 

 

大天災と名高い篠ノ之束博士の手によって作り上げられた、『無限の成層圏』の名を持つ世界最強の兵器。そして同時に十全たる道具にすらなれなかった兵器。

元々は宇宙空間での作業用スーツとして開発されたものが今では兵器である。

 

兵器とは一部の特殊な物を除いてある程度訓練すればだれでも使えるように設計されているものである。しかしこれは一部の人間にしか扱えないと言う方に当てはまる。いや、当てはまってしまった。しかもより酷い形で。

 

 

女性にしか起動、操縦する事が出来ない。

 

 

そう、何故だか女性にしか扱えないのだ。

整備や開発と言う観点であれば男性でも問題なく携わる事が出来る。しかし書いてある通り、起動、操縦となるといくら何をしてもどうやっても起動すらできないのだ。

開発者も、

 

「いや~、どうしてだろうね?束さんさっぱり分かんないよ」

 

と言った形で世界中の研究者がその謎を突き止めようとするも謎が深まるばかり。そもそもIS自体が謎の塊なのだ。何だコアって。ブラックボックスもいい所。構成素材すら分からないし製作方法もウサギさんしか知らない。開発者たちはそんなんでISをいじっているのだ。

 

そしてそんな世の中でいきなり現れた男性操縦者である。

どうなるかは察していただきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やべぇな……俺トンデモねぇことしちまったぞ」

 

やぁやぁどうも佐々木です。今年で36歳になるがこんなおっさんにいきなり降って来た人生で最悪な状況がこれ。

 

俺ってばIS使えるらしい……

 

俺も混乱してるしなんだったら世界中が大混乱。

私、現在身柄保護という名の監禁中。

まぁーた面倒な事になってしまったものだがどうすりゃいいんだねこれ?

 

ふざけるのはこのぐらいにしてしっかりと状況を把握しよう。

まず、俺自身を簡単に言ってしまえば転生者という者である。

まぁチートなんて貰ってないし、容姿も極普通。脳みそは前世で勉強していたおかげか多少はマシ程度。身体に関しては身長177cmと至って普通。

書けるとすればちょっとした事情で武術が多少できる事ぐらい。

 

交友関係は何故だかブリュンヒルデ一家と大天災一家との謎の交友がある。

いや、交友関係が出来た原因は俺にあるんだけども。

 

 

 

そもそもの始まりが俺が19歳の時。この時既に社会人として働いていたんだけども俺が住んでいるボロアパートにまだどう見ても小学生な千冬が居たわけだ。しかも赤ん坊を連れていると来た。しばらく見ていたが親らしき人間は現れないしそもそも居るのかすら怪しい。どう考えたって訳アリもいい所のヤバい匂いがプンプンしている。しかしこりゃいかんだろと思い、と言うか普通だったら警察なり児童相談所に相談するがあんまし信用ならない奴らな訳だこれが。だからどうするか悩んだ挙句、近所という事もあってか世話を焼き始めた。

 

だって日に日に痩せていく千冬と遠目から見ても栄養状態が良いとは言えない一夏。それを見たら普通は助けますよ……

 

しかもこの時最悪な事にこのボロアパート、俺と千冬と一夏しか住んでいなかった。だから他の人間は気付きゃしないし気付く人間が俺しかいなかった。大家さんは滅多に顔出さないし。と言うか俺も会ったのは此処に入居するときに鍵を渡されたときだけだし。

 

そんな感じで余りにも酷くて助けたんだがな。

最初は敵意丸出しでおっかない事おっかない事。でも流石にあれは不味いから根気よく付き合っていく事1か月。まさかの千冬がぶっ倒れたのだ。そこで子供に欲情する趣味は無いから健康状態を素人ながら見させてもらったが、千冬も一夏も最悪だった。がりがりにやせ細っていたし、部屋には少なくとも千冬が食事をした痕跡は無い。俺が買って渡していた弁当は食べたのだろうが此処まで酷い状況とは思っていなかった。一夏に与えるための粉ミルクはあったがそれすらも残り少ない。

 

良く生きていたと思ったがそれも危うい状況。病院に行こうとしたが千冬は行きたくないの一点張りで困っていたが流石に素人ではどうしようもない。何とか説得して急いで近くにある御年75歳の爺さんがやっている診療所に二人を抱えて駆けこんだ。

この爺さんとは昔からの知り合いで良く世話になっていたのだ。年は取っているが腕は確かで平日の昼時になれば結構な人が診察に訪れる。

しかし今日は休日な為にやっていないが電話をしてなんとか見てもらう事になった。内科と小児科の医者だから見せてみて正解だった。

 

「なんじゃこりゃ……こんなひどい状態は見たことが無いぞ……」

 

二人を見た先生はそう言うと急いで栄養剤の点滴を行ってくれた。

 

親が恐らくいない事などの事情を説明すると泣きながら怒りながら聞いてそして診療代をタダにしてくれた。

そして二人が静かに寝ている横で二人の容態を説明してくれた。

 

 

 

 

 

「二人だがな、極度の栄養失調だな。此処まで酷いのは相当だぞ?お前さんが連れてこなけりゃ間違いなく死んでいただろうさ。疲労も相当な物だろう。今は栄養剤を点滴している。取り敢えず姉の方は少しづつ食事を摂れば問題ないが問題は下の子だな。赤ん坊と言うのもあって下手なことは出来ん。点滴と栄養価の高い栄養剤を経口投与してある程度回復するのを待つしかないな。幸いにも他に異常は見られんかったからその点に関しては安心せい」

 

「そうですか……」

 

「しっかしなんでわしの所に来た?でっかい病院に行きゃよかろう」

 

「それが、この状況ですから彼女たちの部屋に保険証を探すために入ったんです。ですがいくら探しても見つからなかったんです。この状態で大きい病院に行くとただでさえこの状態なのに余計にややこしくなると思いまして。それに姉の方が病院には絶対に行きたくないと言って聞かなかったんです。だから何とか説得して此処に」

 

「確かにそうだな。そもそも保険証が無いってのがおかしい。無くしたとかなら分かるがそうでないとなると……」

 

「はい。本人も話してくれませんし、1か月前ぐらいからどんどん痩せて行ったので弁当の差し入れを偶にしていたんですが、此処までとは……」

 

「そうか……でもその差し入れのお陰であの子たちは生きていると言ってもいいだろうな。それが無かったら間違いなく死んでいただろうよ」

 

 

 

 

二人でこれからどうするのかを話していると千冬が起きてきた。

そして少しの間周りを見ると、急に起き上がって点滴を抜いて帰ろうとしたのだ。止めようとして先生が立ちはだかると、フラフラとしながら

 

「周りに迷惑を掛けられない……お金を払う事が出来ないのにこんな事……」

 

と、弱弱しい声で言った。

そんな状態で良く言えたものだと思ったが流石にこのまま返すわけには行かないので落ち着かせて座らせて事情説明。

 

すると、千冬は泣き出してしまった。

その後は疲れたのか眠ってしまったので先生が再び点滴をしてそれが終わった後はどうしようもないので取り敢えず俺は家に帰った。

しかしどうも気になって落ち着かず再び診療所へ。

 

そして先生は、

 

「なんだ、戻って来たか。ま、お茶でも飲んで待っとれ。もう少しすれば目も覚める」

 

そう言ってお茶を出してくれると再び俺と一緒に二人の様子を見ていた。

改めてみると本当に酷い。

 

顔は痩せこけて、手足は異常なほど細い。

これで良く生きていたものだと改めて思う。そして一夏の方を見ればこっちも酷い有様。赤ちゃんとは思えない見た目をしておりどうして生きているのか分からないぐらいには酷い。

 

そして日を跨いで7時間ほど経った頃。千冬が目を覚ました。

少し顔を動かして周りを見ると俺が居ることに気が付いたのか小さな声を掛けて来る。

 

「あの、此処は何処ですか……?」

 

「此処はアパートの近所にある診療所だよ」

 

答える時も出来るだけ不安にならないように、怖がらせないように優しく接することを心掛けた。

何処に居るのか、どんな状況かを説明すると、

 

「良かった……ッ……!一夏が無事で本当に良かった……!」

 

一番最初に発した言葉はそれだった。

泣きながら顔を手で覆って。その時の俺は取り敢えず頭撫でといた。

今思い出しても本当に妹思いな姉だと思ったよ。

と言うか俺はこの時点で一夏の性別を知らなかったんだな。先生は知っていたようだけど。

どうも先程起きた時の記憶は無いらしく、こっちとしてはそんなに追い詰められていたのかと再認識させられた。

しかしその後に発した言葉は衝撃的だった。

 

「助けてくれてありがとうございます……でも病院……お金払えないです……」

 

この状況ですらその心配をするのだ。家計は追い詰められているなんてレベルじゃないんだろうな。

 

「それは気にしなくても大丈夫だよ。今はしっかり身体を休めて回復させること。それにだけ集中してくれればいいよ」

 

「でも……」

 

そう言ったのに尚も食い下がって来るからそれから20分ぐらいかけて説得した。

 

 

 

それからは先生とどうするのかを話し合って、ひとまず俺が面倒を見ることになった。

今日は日曜日だから明日は仕事がある。しかしこんなん放っておけないから有休を取って色々と調べたりした。

戸籍関連も調べたがどうやら戸籍自体が存在しないという事が分かった。

これならば保険証が無かったのも頷ける。

しかしこれはいよいよ面倒事になってきたと思ったよ。

なんせ戸籍が存在しないのは明らかに不自然だ。日本では出生後2週間以内だっけ?までに届けなければいけないのにそれが行われていないという事は可笑しいなんてレベルじゃない。

 

下手をすれば犯罪絡みもあり得るがそれを確かめる手段は警察に行くしかないが、そうしなくても大丈夫だった。先生の知り合いに伝手があるらしくそれを頼りに戸籍の方は何とかしてもらった。

 

その週は仕事をして再び土曜日。

診療所に行って千冬の様子を見に行くと、いくらか元気になっていた。

 

先生によるとあと1週間もすれば普通に生活しても大丈夫だそうだ。ただ一夏の方に関しては赤ちゃんだという事もあってかもうしばらくは気を付けなければいけないと言われてほっとしたのをよく覚えている。

 

 

 

 

1週間が過ぎて自宅に戻ると取り敢えず事情を聴いた。

 

なんでも親は暫く前にお金と置手紙を残してどこかに消えてしまったんだそうだ。それからは8歳の少女がなにか具体的な手段を取れる訳も無く残されたお金で何とか食いつないできたがそれすらも無くなった時に俺からの差し入れ、と言う流れらしい。

それでも残り少ないお金は全部一夏の粉ミルク代として使って自分は水道代も払えず光熱費も払えず、公園の水しか飲んでいないという事だった。

 

思わず泣いてしまったがそれは許してほしいね。

 

 

 

 

 

 

それからは二人の面倒を見ながら、と言う感じだ。

いやぁ、二人とも立派になって嬉しいね。千冬はブリュンヒルデになった。料理できんけど。

一夏の方は家事全般が大得意。炊事洗濯掃除裁縫なんでもござれ。特に料理は本当に上手でプロにも負けないぐらいの腕を持ってるし関係無いがめちゃくちゃ頭もいい。

よくもまぁこんなに立派に育ってくれたものだ。

こりゃ嫁に行くとき泣いちゃうね。

 

昔を思い出すのはこれぐらいにして今俺がどうするかを考えるとすっか。

 

今は馬鹿でかい高級ホテルに監禁されてる。

脱出は無理かなぁ……だってここ80階あるホテルの最上階なんだもん。飛び降りたらスプラッタ間違いなしよ?ドアのところにも黒服が立ってるし。

 

詰んだなこりゃ。

 

 

早々に脱出を諦めました。だってもう無理だとしか思えない。

やることも無くベッドの上でゴロゴロしながらテレビを見ればニュースで俺の何ともありふれた顔がずっと流れてる。

誰が楽しくて自分の顔が流されてるニュースを見なければならんのか。

俺はナルシストじゃありません。

 

するとドアの向こうから誰かがやって来る。

 

『失礼します』

 

そう言って入って来たのは千冬だった。

 

「お?どったの?急に来て」

 

呑気に聞くとそれまでのクールなお顔が怒った顔に。

 

「どうしたの?じゃないです!あなた何してるんですか!?いきなり連絡が来たと思ったらISを動かしたって言われて!」

 

「いや、それが俺にもさっぱりなのよ。ポカンとしてたらあれよあれよと今の状態に落ち着いた」

 

「なんでそんな呑気なんですか!?落ち着いたじゃないですよもう!……あぁもう!」

 

お怒りの様ですね。まぁ俺が原因なんだけども。

 

「今どんな状況か分かってます!?」

 

「そりゃ勿論分かってるよ?世界中のありとあらゆる国家、組織が俺の事を狙ってるって事とか、解剖しようとしている奴らとか女権団が色々やらかしそうな事とかそりゃもう盛りだくさんだな」

 

「はぁ……そう言えばそうでしたね。貴方は聡い人ですから分かっていますか……」

 

溜息をつきながらそう言う千冬。

 

「で、本当に何の用で来たんだ?全く見当もつかないんだけど」

 

「なんですか?家族の心配をしてはいけないと?」

 

「いや、そうじゃないけど、多分俺関係の事で色々迷惑かけたんじゃないの、と思って」

 

「確かに一夏を含めて大変でしたよ?でも今までの恩を考えればどうってことは無いですし」

 

そう言う千冬は何故か嬉しそうな顔をしていた。

なんでだろう?生まれてから女心なんざ分かった試しがない。

 

「それと、報告です」

 

「絶対そっちの方が重要でしょうよ。先に言いなさいって」

 

「いいんです。家族の方が大事ですし、この報告が無ければ会えなかったんですよ?」

 

「いやまぁそうなんだろうけども……」

 

「それじゃ決まったことを言います」

 

3日も経ってりゃそら色々と決まるでしょうよ。本人の意思をガン無視ってのがムカつくけど。

なんか嫌な予感しかしないのよね。生徒として放り込まれたらどうしよう。

 

「へーい」

 

「まず、佐々木さんにはIS学園に入学してもらいます」

 

「え?入学?マジで言ってんの?」

 

「本当ですよ。IS委員会で正式に決定しました」

 

「うわぁぁぁぁ!!!」

 

何となく予想してたけどこれは辛い……!

一年間留年しただけでも相当だって聞くがそれがいきなり35歳を生徒としてぶち込むなんざ正気の沙汰じゃねぇ!

 

「気持ちは分かります。でもISに関しては素人もいい所なんですからこの際しっかりと学べって事です」

 

「それにしてもさぁ!?今年で36になるおっさんを高校生としてぶち込む!?普通もっとやりようはあったでしょ!?教師としてとかさぁ!」

 

「そんなこと言われてもどうしようもないです」

 

そう言ってふっと笑うと悪魔が如き一言を吐いた。

 

「一夏と同学年ですね」

 

「ぐわぁぁぁぁ!!??やめろぉぉぉぉぉ!!!!」

 

もう何も言うな!言うんじゃねぇ!俺のライフはもうゼロよ!!

へこんでいるとそんなのお構いなしに話を続ける千冬。

 

「で、続きですが、取り敢えずIS学園に居ろって事で纏まったのでそれ以上はありません」

 

「はぁ……どうせどこの国に所属するかとかで揉めまくったんだろ?その結果がこれって事だ」

 

「流石ですね。よく分かっていらっしゃる。補足をしておくと在学している3年間の間にどうするのか具体的に決めるそうです。良かったですね、解剖まっしぐらじゃなくて」

 

「わーってるよ。と言いつつも千冬が守ってくれたんだろ?」

 

「っ!?……なんで分かったんですか……?」

 

「そりゃ分からない方がおかしいだろ。優しいからな、千冬は。口で悪態ついてても本当は内心真逆だろうがいっつも」

 

何年家族やってると思ってんだ。

育てた人間として言わせてもらえば此処まで感情表現豊かな奴はそうそう居ないと思うけどな。

直ぐに顔赤くしたり怒ったり泣いたり笑ったり。

 

そんでもってその顔を見てみればおやぁ?真っ赤ですなぁ。

 

「どうしました千冬さん?お顔が真っ赤でございますよ?」

 

「っ!うるさい!」

 

「へぶぁ!?」

 

少しからかっただけなのにビンタくらわされた。

 

「はぁ、おちょくるのは辞めてください」

 

「分かったよ……」

 

「ん……」

 

謝罪ついでに頭をわしゃわしゃと撫でると千冬は目を細めて嬉しそうにした。

 

 

 

 

「それでは私はまだやることがあるので帰ります」

 

「おう。気を付けてな」

 

「はい。それでは」

 

そう言って千冬は帰ってしまった。

また暇になってしまった。と思ったそばから次の来客が。

 

「おじさーん!」

 

「うべっ!?」

 

いきなり現れて抱き着いてきたのは大天災篠ノ之束。

こいつどっから現れた?急に出てきたぞまじで。

まぁそんな些細なことは置いておいて。今はもっと重要な事がある。

 

それは顔面に押し付けられるおっぱい!

 

流石束。その胸すらも大天災だった!

ちょっと顔を動かせば温かくて柔らかくて良い匂いのするおっぱいがむにょんむにょん。此処は極楽浄土か?

 

「あんっ!おじさんってばえっちなんだから~!」

 

わざとらしいけどエッロい声を出す。

辞めてね?これでも男だから性欲はありますよ?

 

「いや押し付けてんのは束でしょうよ。いいからそろそろ離してくんねぇかな?我慢できなくなっちゃう」

 

「え~?おじさんならぜんぜんウェルカムなんだけどな~」

 

「惜しいけど千冬に殺されたくないからパス」

 

本当に殺されかねんからね。一度付き合ってると疑われたときは捨てられるんじゃないかと思った千冬が殺しに来るぐらいだった。

あれはやばい。結局千冬の勘違いだから丸く収まったけども。いや、丸くじゃなかったけど。

 

「とか言いながらただヘタレなだけでしょ?」

 

「うるせぇ」

 

と言いながら離れる束。

ヘタレで悪かったな。

しっかしこいつ……またデカくなりやがったな。何喰ったらそんなに育つんです?

 

「んふふ、どうどう?前会った時よりもおっきくなったんだよ?」

 

こいつはなんで俺の考えを読めるんだろうか?

鈴辺りに見せたらとびかかって行きそうなものだが。

 

「うるせぇやい」

 

「ま、おじさんも男って事でしょ?」

 

「もとから男だよ。一緒に風呂入ったことあるでしょうが」

 

「え~?でもそれって私がまだ小学生の時だよね?もしかして欲情してた?」

 

「んな訳あるか。親父さんにぶっ殺されるしそもそも俺はボンキュッボンがタイプだからな」

 

「じゃぁ今の私だね!さぁばっちこい!」

 

「行かないって言ってるでしょ。で?用件は?なんかあったんじゃないのか?」

 

一応用件を聞いてみるがどうせないんだろうな。

束の行動原理なんざ分からないし。

 

「束さんの行動原理は家族かちーちゃんかいっちゃんかおじさんだよ?」

 

「だから人の思考を読むんじゃないっての」

 

「んー、でも来たのはおじさんに会いたかったからなんだよね」

 

「そらなんで?」

 

「だっていきなりIS動かすし理由を突き止めたくてっていうのと、本人は能天気で心配だったし。これでもおじさんの事を愛して長いからね!」

 

「まじか。成長したんだな束……今まではいきなり現れては嵐のごとく暴れまわっていたのに……おじさん泣きそうだぜ」

 

「酷い事言われてるけど許しちゃう!」

 

「あんがとさん」

 

こんなんだが束はやるときゃやる奴だ。実際その頭脳でISを基礎理論から一人で作り上げたのだ。

まぁ最初の資金に関しては俺が親父さん達に内緒で出してあげたけど。だって設計図や理論なんかが余りにも具体的すぎてこりゃ行けるんじゃね?と思った結果である。しっかりと危ない事はしないとか色々約束させたうえでの事だ。後悔はしてないが反省はした。後々親父さんにバレてしこたま怒られたんだけれども。

 

「で、結局束も俺の身柄を守るためにいろいろとやってくれたって訳か」

 

「うん。でもね?怒らないで聞いて欲しいんだけど……」

 

「別に怒りなんかしないよ」

 

そう言うと少し申し訳なさそうな顔で言った。

 

「その、ちーちゃんと一緒におじさんの事を守ったはいいんだけどね?それで元々ちーちゃんとの繋がりで色々あったんだけどそこに私まで加わっちゃったから余計におじさんの事を狙うやつらが増えちゃって……」

 

「Oh my god!!」

 

「なんでそんなにいい発音なの?まぁいいや。で、今のところは大丈夫なんだけど強硬手段に出て来る奴らも居るから気を付けてねって事なんだ。……その、ごめんなさい……」

 

「謝る必要なんてこれっぽっちも無い。俺の為にやってくれたんだろ?それで今は俺が生きている。これで十分。これからの事はこれから考えりゃいいさ」

 

「でも……」

 

それでもしょげている束。

しょうがねぇなぁ。見た目は巨乳美人だが中身はまだまだ子供だな。千冬も束も。

 

「あーあー気にしない気にしない。そんなに気にするんだったらこれからも俺の事を助けて欲しいんだけど」

 

「うぅ……おじさんがそれでいいならそれでいいけど、おじさんはもっと危機感を持つべきだと思います!」

 

「それに関しては千冬にも言われたが自分じゃ危機感は人一倍あるつもりなんだけど」

 

「うぅん!おじさんゆるゆるだよ?」

 

ゆるゆるなんて言わないで欲しいんだけど。変な気分になる。

 

「そうか……?」

 

「そうなんだよ?だからもうちょっと気を付けた方がいいと思うよ」

 

「分かりました。今後は気を付けます」

 

「よろしい。それと女心とかも気を付けた方がいいよ?じゃないとその内後ろから刺されるかもよ?」

 

「えっ。俺ってそんなやらかしてる?」

 

「やらかしまくりだよ」

 

「気を付けよ。刺されたくないし」

 

「うん。それじゃ用件も終わったから帰るね」

 

「あぁ。束も身体には気を付けろよ」

 

「うん。じゃあね」

 

そう言って再び何がどういう原理なのか全く分からんが消えてしまった。マジでどうなってんだあの娘は?

そんなことを考えてもこの脳みそは全く役に立たないから考える事を止めた。

 

さて、これから何するかな……

電話も出来んから一夏に無事を報告できないし箒とも連絡取れないし。

そもそも連絡手段が一つも無いんだった。

 

しょうがねぇ。寝るか!

てことで寝ました。はい。

 

 

 

 

 

 

起きたら朝でした。やべぇな。何もしないで4日目だよ?この調子じゃ会社は退職と言う名のクビだな。せめてもの救いは退職金が幾らか入る事か……

 

佐々木洋介、35歳にして無職になりました。しかも再就職先はまさかの高校生です。

 

こうして現実を見ては打ちひしがれながら入学までの時を過ごした俺でした。

 

 

 






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