おじさん、今年で36歳になるんだけれども   作:ジャーマンポテトin納豆

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サブタイ通り。
季節外れなんて言葉は受け付けません。だって可愛いに季節なんて関係ないのだからッ!



閑話その2 海に行く。

 

 

 

 

唐突ですが今日は海に行きます!

うん、意味が分からないって顔してるね君ぃ。そんな君に何故海に行く事になったのか教えてあげよう。

 

事の発端は一週間ほど前。

 

 

 

 

 

 

その日は休日で仕事が休み。

基本、家事全般は俺の仕事となっている。でも、ここ最近どこで覚えて来たのか掃除と洗濯を千冬が度々やってくれるようになったのだ。

料理もやってくれようとしたのだが悲しいかな、どうやら千冬は料理のセンスと言うか、そう言う物が完全にマイナスに振り切れているらしく、本人は諦めて他の事をやってくれるようになった。

 

千冬の料理を食べた、あの時の一夏の顔はすさまじかった。何とも形容しがたい顔で、絞り出すような声で、

 

「ちふゆねぇのごはん……まずい……!」

 

と言ったのだ。あの時は千冬には申し訳ないが一夏の顔が面白すぎて爆笑してしまった。

 

そして拗ねてしまった千冬のご機嫌取りに必死になったりとまぁ大変だった。

と言っても一緒に寝ると言うお願いを聞いたらあっさり機嫌を直して鼻歌まで歌い出したので

 

(我が妹ながらチョロい)

 

なんて思ってしまったのは口が裂けても言えない。

そんなことを言ったらまた機嫌が悪くなってしまうだろう。まぁ一緒に寝て欲しいとかそんな感じでまたあっさりと機嫌を直すんだろうが。

 

 

 

 

そんなわけで、洗濯とかは早めに終わらせてのんびりとしていると一夏が言った。

 

「おにいちゃん、わたしうみにいきたい」

 

という一夏からの突然のお願いが炸裂。

一夏を抱き上げて椅子に座りながら話を聞く。

うーん、唐突なのは何時も通りなんだがまさか海に行きたいなんてお願いが出て来るとは。これはお兄ちゃんも予想外です。

 

「どったの急に」

 

「えっとね、きのうテレビでみたの」

 

「あー、テレビで海を見たら行きたくなっちゃったって訳か」

 

「うん」

 

確かに昨日一夏がテレビを見つめる目はとっても熱かった。

そっかー、海に行きたいかー。でも確かに海に連れてってやったことないもんな。

そうやって話していると、千冬がやって来る。

 

「一夏、お兄ちゃんはお仕事で疲れてるんだからわがまま言っちゃだめだぞ」

 

「ちふゆねぇは、うみにいきたくないの?」

 

「それとは話が別だ。疲れてるお兄ちゃんをもっと疲れさせるのはいやだからな」

 

「千冬、そんなこと気にしなくていいんだぜ?お兄ちゃんは元気いっぱいだからな。本当は海に行きたいんだろ?本当の事言って欲しいんだけどなー」

 

そう言って随分と成長した千冬を手招きして膝の上に乗せる。

そう言えばもう小学校高学年なんだから驚きだ。身長も随分と伸びたし。

そろそろ反抗期かなぁ……

あ、悲しくなってきた。千冬に近寄るな、なんて言われた瞬間に人生に絶望するしかない。

 

それにしても千冬は俺と触れることを嫌がらない。それどころかむしろ向こうから寄って来る。学校とかで他のお父さんお母さん方の話を聞くと、そりゃもう反抗期だそうだ。男女問わず。

それに比べて千冬は反抗期どころか、俺と喧嘩したことすらない。いや、俺が一方的に悪くて怒られた事は何度もあるんだけど。

小学生に怒られる社会人の図。情けないやら恥ずかしいやら絵面が不味いやらで大変だ。

 

 

「う……海に行きたいです……!」

 

「よっしゃ!そんじゃ決まりだな!流石に今日はもう行けないから行くとしたら来週だな。来週から俺も夏休みだし」

 

今は世間一般で言う所の夏休みというやつだ。

まぁ学生にとってはだが。俺は今週の金曜日までお仕事です。

 

「ほんと?おにいちゃんうみにつれてってくれるの?」

 

「おうよ。一夏と千冬のお願いを断るわけねぇだろ?」

 

「やったー!ありがとうおにいちゃん!」

 

「お兄ちゃん、ありがとう」

 

二人が嬉しそうに笑うのを見てこっちも思わずニッコリ。

 

 

あぁ、我が家の妹達は天使なんやな……

 

 

 

 

 

 

と、そんなことがあったのが一週間前。

それで箒や束にも話して自慢したらしく、二人も付いてくる事に。うん、全然かまへんで。

 

「おにいちゃん!」

 

篠ノ之神社、束と箒の家に迎えに行くとワンピースを着た箒が俺に向かって駆け寄って来る。

 

「おー、おはよう箒!」

 

「おはよう!」

 

駆け寄って来たのを抱き上げる。

今日も元気一杯、天真爛漫と言った言葉がよく似合う元気な女の子。それに続いてやって来るのは篠ノ之家長女束。天才少女なんて言葉がピッタリな子だ。

まぁちょっとテンション高めで行動も突飛なんだけど、今でも十分美人と言われれば誰もが頷く容姿をしている。

 

「おにーいちゃん!おはよう!」

 

「うん、おはよう束」

 

「あー!なんか箒ちゃんと対応の差を感じるー!」

 

「えー……そんじゃこんな感じ?」

 

「やってみてやってみて!」

 

「おはよう束!今日も最高に可愛いね!」

 

「いやー!そんなことあるんだけどー!照れちゃうなー!」

 

「ひゅーひゅー!よっ、世界一の美少女束!」

 

「もー!そんなに褒めてもハグしかしてあげないんだからー!ギュー!」

 

と言いながら俺の後ろに回り込んで飛びついてくる。そしてギュー!なんて言いながら頬をスリスリしてくるのが恒例。

このままでもいいんだけどそうすると海に行く時間がどんどん遅くなっちゃうし、千冬の機嫌が悪くなったりするので切り上げて、車に乗るのを促す。

 

「はいこれで終わり。ほら車に乗った乗った」

 

「はーい」

 

すると服の裾を誰かに引っ張られる。

見ると車に乗せるために下ろした箒だった。

 

「ん?なんかあったか?」

 

「おねえちゃんにかわいいっていったのにわたしにはいってくれなかった!」

 

あー、そういうことね。束に可愛いって言ったんだから私にも言って欲しいと。

そんなほっぺを膨らませても可愛いだけで全く怖くないぞ箒。でもここでご機嫌を取っておかないと後々大変なことになりそうだからな。まぁでも箒って結構物で釣れたりするからこのまま膨れっ面の箒を眺めてるのもいいんだけど。

 

箒の前でしゃがんで頭を撫でながら、

 

「箒、今日も可愛いぞ!」

 

「うん!」

 

満面の笑みでにっこりと笑って嬉しそうにする。

すると、

 

「わたしもかわいいっていってくれたおれいにギュー!ってしてあげる!」

 

「ほんとに?」

 

「ほんとだよ!」

 

「そりゃ嬉しいね。そんじゃお願いしてもいいかな?」

 

「うん!ギュー!」

 

「ギュー」

 

なんて束の真似をして俺に抱き付いてくる。

あぁもう本当にかわいいなぁもう!

 

 

 

 

 

「ふふ、本当に仲が良いわね」

 

「あ、おはようございます」

 

声を掛けてきたのは束と箒のお母さん、華さん。年齢不詳。

この人、マジで二人も子供産んでるとは思えないぐらいに若々しく美人さん。

多分二十代で余裕で通じる人だ。

 

あらあらうふふ、って感じの和風美人で近所じゃその見た目と、見た目からは想像がつかないような怪力と薙刀の腕で有名人。まぁこの神社自体が全国的に有名なんだが。

夏祭りの時に神楽舞をやっているし。そのやっている人がとんでもない美人だって事でテレビの取材が来ることも。

 

余談だが俺が華さんの事を奥さんとかそう言う感じで呼ぼうとしたらなんか変な感じがすると言われてしまった。

娘達が兄と慕っているのだからお母さんと呼んでもいいのよ?なんて言って来たが流石に遠慮した。

 

 

そんな感じの華さんだが、千冬の剣道関連やらなんやら、その他諸々の事でしょっちゅう世話になっているのだ。

今日も俺達の見送りと言った所だろうか。

 

「今日は二人の事、宜しくお願いしますね」

 

「はい。それにしても急に申し訳ありません」

 

「あら、いいんですよ。束と箒もお兄ちゃんと一緒に遊べるって大喜びでしたから。あの様子を見れば簡単に想像できると思いますが」

 

と談笑しているとそこに現れたのは篠ノ之道場師範、篠ノ之神社神主とかもう色んな肩書を持っている、束と箒の父親、篠ノ之柳韻。

俺は師範って呼んでるけど。

温厚で優しく、何時もニコニコと優しい笑みを浮かべているイケメンさん。

ただ剣道とかの指導となると人が変わったように厳しくなる。

俺も篠ノ之流無手ノ型を教わった時に味わったから本当におっかなかったぜぇ……

 

まぁ仕事の事情で辞めざるを得なくなったんだけど時折顔を出している。

会うのは三か月ぶりぐらいか?殆ど束と箒がアパートに来てるからね。あんまし機会が無いんだよね。

 

でもさぁ、改めて見ると篠ノ之一家どうなってんだ。美男美女率100%とか。どんな魔法だよ。

因みに我が家は75%。何でかって?俺が居るからだよチクショウ。65%ぐらいの間違いじゃないかって?うるせぇ。少しぐらい希望を持ってもいいだろ。

 

 

「洋介君、久しぶりだね」

 

「お久しぶりです、師範」

 

「うん、元気そうで何よりだよ」

 

この人もこの人でよく我が家の事を気にかけてくれている。

本当に頭が上がらない。

 

「……うん、教えた事の反復練習もしっかりとしているようだし、何よりも健康そうで良かったよ」

 

「はは、貴重な事を教えて貰って、そのことを無下にするような事は出来ませんから」

 

「君は相変わらずだねぇ」

 

「おにいちゃん!早く行こうよー!」

 

おぉっと、束からお呼びが掛かっちまったぜ。

 

「すまないね、引き留めて」

 

「いえ。それでは行ってきます」

 

「あぁ。四人とも、しっかりと楽しんでおいで」

 

「「「「はーい」」」」

 

「それでは」

 

「うん、娘達を頼んだよ」

 

そう言って二人に見送られながら車に乗り込んでエンジンをかけて出発する。

因みに車はレンタカーです。流石にちびっ子四人を連れて電車とバスはキツイ。

 

「おーし、ちゃんとシートベルトしたかー?」

 

「したよ!」

 

「箒ちゃん!シートベルトしないと海に行けなくなっちゃうよ?」

 

「えー、なんでー」

 

おうおうやってるやってる。

なんだかんだ言いながら四人ともちゃんとシートベルトをしたのを確認してから車を発進させる。

 

「ねーねーお兄ちゃん」

 

「んー?」

 

「今日は何処まで行くの?」

 

なんて束にどこまで行くのか聞かれたりしながらも俺は車を運転していく。

山越え谷超え、何てことは無く五人でワイワイ騒ぎながら(主に興奮した箒とそれを抑えようとした束によって)の道中。

 

それから一時間程後に海水浴場に到着。

駐車場には予想してはいたがやはり数多くの子連れの家族や、友人同士、恋人同士で来ている他のお客さん達が。

 

あー、こりゃ一夏と箒が間違いなくはしゃいで迷子になるやつだな。

気を付けねば。

 

「着いたぞー。さっさと着替えて海行くぞー」

 

「「「「はーい」」」」

 

そう言うと四人は更衣室に向かって歩き出した。

さてと、俺も着替えるとするか。つっても車の中でなんだけどね。だって態々更衣室に行く必要無いし。まぁ千冬と束が居るから問題無いだろ。

 

さっさと着替えて四人を待つ。

暫くすると着替えた四人が戻って来た。

 

千冬はビキニタイプの白色の水着。束はめっちゃフリッフリのピンクのやつで一夏と箒はワンピースタイプの色違いの水着。一夏が水色で箒が赤色。

名前はよく分からんけど多分会ってるはず。

 

「お待たせお兄ちゃん。それじゃ行こう」

 

「おう。行くか」

 

そう言って行こうとすると、早速箒が走り出す。

 

「うみー!」

 

「待て待て待て」

 

追いかけて箒を捕まえると、離した瞬間に再び走り出しそうだったのでそのまま抱き上げて行く事にした。

こんな人混みの中で何時も通りに箒を放ったらどうなるか……迷子になるなんて必然だし。

そこらの子供よりも遥かに元気なもんだから、しょっちゅう神社の敷地の中を縦横無尽に駆け回るなんて当たり前。しかも敷地には山も含まれているのに、だ。

それに毎回一夏と一緒に行くもんだからもう大変だ。帰ってくれば何故か蜘蛛の巣を頭に引っ付けていたり、泥だらけなんて当たり前。

箒は楽しそうに笑っているのに一夏は大号泣なんてしょっちゅう。

 

二人共この年にして絆創膏と大親友になっているのだから凄いやら怖いやら。なのに大きな怪我をしないのだから不思議でしょうがない。将来どうなってしまうんだろうか。楽しみやら恐ろしいやら。

そんな箒を一人で行動させたら、と思うとゾッとする。勝手知ったる篠ノ之神社の敷地内ならばいいが此処はそうじゃない。

 

そんなことを考えながら再び海に行こうとすると、海パンを引っ張られる感触が。

振り向いてみると一夏だった。

 

「どうした?」

 

「わたしもだっこー」

 

「おっしゃ任せろ」

 

「おにいちゃんちからもちー!」

 

「だろー?」

 

「お兄ちゃん、代わりに荷物持とうか?」

 

「ん?あぁ、大丈夫だって。レディにそんな事させられねぇって」

 

「えー?レディだなんてお兄ちゃんは嬉しいこと言ってくれるねー」

 

一夏を抱き上げて歩いていると肩に荷物を掛けて、両手にちびっ子を支えている俺を心配した千冬と束が荷物だけでも持ってくれると言って来た。有難いのだがそうなると一夏と箒を一回降ろさなきゃいけないからね。それにまだまだこのぐらいの重さなら問題ナッシング。

 

「ほら、行くぞ。早く行かないとシート引く場所が無くなっちまう。なんかもう手遅れな感じがしなくもないけど」

 

「えー?お兄ちゃんなら何とでもしてくれるでしょ?」

 

「無理に決まってんでしょ。束は俺の事をスーパーマンか何かと勘違いしてない?」

 

「私の中じゃどんなヒーローよりもお兄ちゃんが一番のヒーローだもーん!」

 

鼻歌を歌いながらスキップをして歩く束。

 

「そうですかい。あぁ、箒暴れないでお願いだから」

 

「はやくうみはいりたい!」

 

海に入りたくて暴れる箒。

この、こいつ本当に元気だな!

 

「あー、わかったわかった。肩車してあげるからちょっと大人しくしてお願いだから」

 

「かたぐるま!?やったー!」

 

「ほら、しっかり掴まっとけー」

 

「おにいちゃん、わたしもー」

 

箒を見て自分も、とせがんでくる一夏。

だろうと思ったよ。でもいくらお兄ちゃんとは言え流石に二人を肩車は無理があるからね。

 

「帰りは一夏の事を肩車してあげっから、今は我慢してな」

 

「うー……わかった。やくそくだよ?」

 

「おうよ。なら指切りげんまんしとかないとな」

 

「うん。ゆびきりげんまんかたぐるましてくれなかったらはりせんぼんのーます!ゆびきった!」

 

「よし、これでいいな。そんじゃ行こう」

 

漸く出発。箒を落ちないように抑えながら砂浜に向かう。

うおー、久々だ海に来たの。しっかし滅茶苦茶混んでんな。パラソルとか海の家で借りようと思ってたけどもしかしたら借りれねぇかもな。

取り敢えず砂浜に降りてシートを広げられそうな所を探す。

お、あそこなんか良さそうだ。

 

「よっしゃ、そんじゃシート引くから手伝ってなー」

 

「お兄ちゃん、こっちを持っておく」

 

「お、あんがと千冬。あ、箒の奴今にも海に飛び出しそうだな。束、悪いんだけど一夏と箒の事見ててくれ。流石にこの人の人数で勝手にさせるのはマジで不味い」

 

「りょーかい!箒ちゃん、いっちゃん、お姉ちゃんと手繋いでようねー」

 

「えー?わたしうみにいきたい!」

 

「お兄ちゃんが後で連れてってくれるからそれまで待っててね?もしかしたらいい事あるかもよ?」

 

「おい束、変な事吹き込むなって。後々大変だろうが」

 

「ごめんなさーい」

 

「ったく……」

 

シートを引いてその上に荷物を置く。

これで風が吹いても飛ばされたりはしないだろ。まぁ今日は風は無いようなもんだし心配しなくても大丈夫だと思うけど。

そんじゃ海の家にパラソル借りに行ってくっか。

 

「ちょっとパラソル借りに行ってくるからここで待っててな。戻って来てパラソルぶっ立てたら海入ろう」

 

そう言って千冬と束に一夏と箒を任せて海の家に借りに行く。

幸いな事に一番近い所で借りられたため直ぐに戻る事が出来た。

ついでに浮き輪を二つ借りてきた。どうせ沖の方までつれてってくれと言うに違いない。そんな時に浮き輪が無いと俺の背中とかに乗っかってくる未来が簡単に想像できる。流石に海の中は勘弁してくれ。

 

 

 

「よし、パラソルも立てたからな。そんじゃ海入るか!」

 

「やったー!」

 

浮き輪を持って俺が言った瞬間に走り出す箒。

うん、知ってた。取り敢えず勝手にどっかに行かないように追いかけてとっ捕まえる。

 

「勝手に行くなって。ったく」

 

「そーだよー箒ちゃん。迷子になったりー、溺れちゃったりするかもよー?」

 

「えー?わたしまいごにならないよ?それにちゃんとおよげるもん」

 

束が軽く脅すもそれすらも意に返さず。

てか体力も筋力も無いんだから流されたら一発アウトだろうが。束か千冬が傍に居れば大丈夫だろうけど子の二人もまだ子供だからね。無理があるだろうよ。

 

「はい、皆さんお約束です!お兄ちゃんが一緒じゃないと海に入ってはいけません!特に箒!一番心配です!」

 

「だいじょうぶだもん。ちゃんとやくそくまもれるもん!」

 

「じゃぁ約束破ったらお仕置きな。はいけってーい」

 

「千冬と束はまぁ、深いとこに行き過ぎなきゃ行ってきても良いぞ」

 

「「はーい」」

 

「んじゃ入るぞー」

 

そんな感じで入水!

あー、ちょっと冷たいかも?でもあっついから問題無し。

チビ二人は浮き輪で大はしゃぎ。

 

浮き輪から手を離して潜ったりしている。

すると一夏と箒は俺の手を引いて、

 

「おにいちゃんあそぼうよ!」

 

「分かった分かった。あんまし引っ張らないでくれ」

 

と言って来る。

あっちの方まで連れてって、次はあっち、次はそっち。

そんな具合で浮き輪に掴まった二人の指示によって右へ左へ泳がされる。

 

はしゃいでいる箒はもうすっごい。あっちへこっちへと泳ぎ回り、一夏や俺を連れ回す始末。千冬と束は競争だとか言って泳ぎまくってる。事前に昼飯時には帰って来いと言っておいて正解だった。

あの様子じゃ二人共思いっきりはしゃいでるから夢中になったら暫くどころか一日中帰って来なさそうだし。

 

「おにいちゃん、わたしうきわのうえにたってみたい!」

 

「ん?いやどういう事?」

 

箒がまた訳の分からんことを言い始めたぞ。

浮き輪の上に立って見たい?あれか?忍者みたいなことしたいって事?

 

「あー、そりゃいいんだけど難しくない?」

 

「だいじょうぶ!おにいちゃんがつかんでくれればおちないよ!」

 

「うん、まぁやってみるか」

 

何がどうしてその考えに至ったのか分からないけどもやりたいってんならやらせてみるか。墜ちても地面じゃないから衝撃は無いし溺れたりしなきゃ大丈夫だろ。

 

「おっしゃ、浮き輪掴んでてやっから乗ってみ」

 

「うん!」

 

うんしょよいしょと必死になって浮き輪の上に立つために登ろうとしているが液体の上でバランスを取ることがどれほど難しいのかなんて箒は知る由も無いんだろう。波も穏やかとは言えあるし。

でもこんな光景を見ていて一番幸せだと思っているのは俺なんだろう。

何時かはこうやって海に一緒に行けることも無くなって来るのだろうし。

 

浮き輪を抑えて見守っている間も必死になって登ろうとしているがひっくり返って落ちたり、頭から前のめりに海に突っ込んだりと、中々上手く行かないどころか多分乗れないんじゃないかと思いながらも飽きるまでやらせる。

言っても止まらないのだ。思う存分やらせた方が良いに決まってる。

 

 

 

 

 

 

それから暫く、浮き輪の上に立つ事が出来なくて若干拗ねている箒。

その隣では一夏がどこで拾ったのか海藻で遊んでいる。

 

「そろそろ一旦上がって昼飯にすっか。腹減ったぜ」

 

「ごはん?」

 

「おう、お昼ご飯だ。何が食いたい?」

 

「おにぎり!」

 

「うどん!」

 

二人は口々に食べたいものを言っていく。

俺は、たこ焼きとかかなぁ。

 

そう思いながら浮葉を引いてシートの所まで戻ると既に千冬と束が居た。

 

「あ!やっと帰って来た!」

 

「お兄ちゃん、随分と遅かったな」

 

「すまんすまん」

 

「もう一時だぞ?お腹空いたから早く何か買いに行こう」

 

「まじか。随分と待たせちゃって悪いな」

 

と言ったことで四人を連れて海の家に向かう。

あー、腹減った。なんでこんなに俺は疲れているのに一夏と箒はあんなに元気なんだよ。おかしくない?

 

子供の体力はすげぇな……置いてかれちまうぜ。

 

「おーし、食いたいもんなんだー」

 

「ラーメン」

 

「私はカレー!」

 

「うどんー!」

 

「おにぎり!」

 

千冬がラーメン束がカレー、箒はうどんで一夏がおにぎり。

んで俺は、たこ焼きとラーメンにするか。

 

「注文おねがいしまーす!」

 

「はーい!」

 

結構混んでいるにも拘らず早めに注文で来た。

まぁ一夏のおにぎりは焼きおにぎりになったけど、焼いたか焼いてないかの違いだからね。本人は焼きおにぎりで良いってさ。

 

「お待たせしましたー!」

 

そう言って注文した物が運ばれてくる。

何故か海に入った後に食べる物ってのは異常に美味しく感じるのだから不思議だ。束に質問すりゃ答えは返って来そうなんだけど。そこまで気になるわけじゃないからいいや。今は美味いもん食えるってだけで十分。

 

「んじゃ食うか」

 

「「「「いただきます」」」」

 

「はい召し上がれ。っても俺が作ったんじゃねぇんだけど」

 

よほど腹が減ってたのか四人とも一斉に食べ始める。

そんじゃ俺も食うか。

 

「いただきます」

 

 

 

 

 

それから昼飯を食べ終わって暫く休んでから再び遊び始めた。と言っても休めと言っているのに砂遊びをし始める箒と一夏。それからも海に入りたい、魚捕まえたいなどもう大騒ぎ。

それに付き合ってあっちへこっちへ振り回されて千冬も束も俺も、流石に疲れたからちょっと休憩とパラソルの下で一休みしたのだが、これが大間違いだった。

 

うっかり気持ちよく寝ていると誰かに揺り動かされる感覚がする。しかも結構強く。何事かと思いながら目を開けてみるとそこに居たのは束だった。

 

しかし何時も通りの表情では無く、焦っていることが十分に分かる表情だった。

 

「どうした?そんなに慌てて」

 

「箒ちゃんといっちゃんが居ないの!」

 

「……はぁ!?」

 

その束の言い放った言葉の意味が一瞬意味が分からなかったがその意味が分かった瞬間に思わず大声を上げてしまったのは仕方が無い。

 

「どういう事だ!?」

 

「分かんない!お兄ちゃんと一緒に居るのかと思ってたら居なくて、何処か近くで遊んでいるのかなって思って探したけど居なくて、それで何処にもいないから探し回ってたんだけど見つからなくて……」

 

焦っているのがありありと分かる表情や言動。

それもそうだろう。自分の妹がどっかに行ったら普通は焦る。俺も焦っているが俺よりも不安なのは千冬と束なのだ。

 

「ライフセーバーの人にはこの事言ったか?」

 

「今ちーちゃんが行ってる」

 

「そっか。ありがとう。偉いな、ちゃんと俺を起こしてライフセーバーの人に報告しに行って」

 

安心させるように、わしゃわしゃっと頭を撫でてやる。

 

「大丈夫だ。見つかるからそんな不安そうな顔すんなって」

 

「うん……」

 

「よっしゃそんじゃ探すぞ。何処まで探した?」

 

「この辺とあの監視塔からあの監視塔までの間は探したよ。もしかしたら見落としがあるかもしれないけど……」

 

「うん、そしたら一回千冬と合流しよう。多分ライフセーバーの人も探してくれてるはずだからその方がいいだろ」

 

「うん」

 

「そんじゃ行くか」

 

そう言って千冬が報告しに行ったと言う監視塔の方まで走る。流石に束も精神的な物もあってか疲れているらしく、抱きかかえて走った。

 

 

 

 

「すいません!」

 

「お兄ちゃん!」

 

「千冬!」

 

本部の方に案内されるとそこには千冬が居た。

そしてそこに居た係員の人が俺と千冬のやり取りを見て言った。

 

「あぁ、保護者の方ですか?」

 

「えぇ、そうです」

 

「それは良かった。それではこちらにどうぞ」

 

「すいません」

 

「それで、今ですが係員に連絡して海水浴場全体を探しています。念の為千冬ちゃん達が探してくれた所も探していますが見つかっていません」

 

状況を説明してくれるがやはりまだ見つかっていないそうだ。

そもそもこの人混みの中なのだ。そう簡単に見つかる訳も無い。寧ろ見つけにくいんじゃないだろうか?同じような背格好をしている子供なんて幾らでも居る。

 

「そうですか……」

 

「まだ探せていない場所もあります。ただ結構範囲が広いので時間が掛かるかもしれません。海の方も探していますがそちらでも見つかってはいません」

 

「分かりました。ありがとうございます。その、自分も捜索に参加させていただいても宜しいですか?」

 

「え?参加ですか?うーん……」

 

「お願いします!」

 

「二次災害の恐れもあるのでここで待っていて貰いたいんですが……」

 

「お願いします!」

 

居てもたっても居られず、捜索に参加させてもらえないかお願いしたのだが渋る係員さん。それもそうだろう。二次災害の恐れもある。

 

「……海岸線に沿ってならまぁいいでしょう。こちらで発見した場合は放送でお知らせします。もしそちらで発見したのならば近くの係員に言ってください」

 

「分かりました。ありがとうございます!」

 

なんとか参加させてもらえることになった。

 

「それじゃ探してくるから、二人は此処で待っててな」

 

「私達も……!……いや、分かった。お兄ちゃん、二人の事頼んだぞ」

 

「おう。任せとけ」

 

また不安そうな顔をしている千冬と束。

安心するかどうかは知らないけど、頭を撫でる。チョロいと思うかもしれないがうちの妹達はこれで何とかなる。

 

「よし、それじゃ行って来るわ」

 

そう言って探しに出る。

 

 

 

 

暫く探したが、本当に何処にもいない。

 

「マジで何処に行ったんだあいつら……こんだけ探してんのに見つかんないとかおかしいだろ」

 

ふとそう言ったが、そもそも海岸に居ないんだったら他のとこに居るんじゃね?

そもそも二人が大人しく砂遊びをするか?って言う話になって来る訳で。

 

……まさか海に入ったんじゃないだろうな?

 

いや、でも有り得るぞ。一夏だけならいざ知らずあの腕白坊主箒が一緒なのだ。今までの行動を考えると砂遊びよりも海で遊んでるって言う方がしっくりくる。

 

マジか。そしたら取り敢えず高い監視塔かなんかにお邪魔させてもらって双眼鏡かなんかで探せば見つかるかもしれん……いやでもこの人混みだし双眼鏡だと範囲が限られるから近距離だと効果薄いんじゃね?まぁいいや。取り敢えず協力してもらおう。

 

 

「すいません、今迷子になってる二人の保護者なんですが……」

 

「あぁ、どうかされましたか?」

 

「もしかしたら、海に入って遊んでるかもしれないんですけど、その為に双眼鏡をお貸し頂ければと思いまして」

 

「そういう事ですか。分かりました。少々お待ちください」

 

そう言って双眼鏡を取り出して渡してくれる。

うーん、やっぱり作業効率悪いな。近距離だと大した範囲を捜索できない。

そもそもこの海岸近くで泳いでいたらとっくに見つかっているはずだし。

 

……まさか沖の方に行ったんじゃないだろうな?

いや、だとしたらこんだけ探しているのに見つからないのも頷ける。

 

 

 

そう思い双眼鏡を沖の方へ向けて再び探し始めた。

 

「!居た!!」

 

アイツらやっぱり海に入って遊んでいやがったのか!

しかもだいぶ流されてるじゃねぇか!?

 

大慌てで監視員の人に報告する。しかし流石にこんなことは想定外なのかあんな場所までそう簡単にはいける訳も無く。

 

するとなんとボートがあるのでそれで助けに行きましょうという事になった。

それで助けに向かったのだが、もう二人は大泣きで手が付けられない程だった。

顔を鼻水やら涙やらでドロドロにして俺に縋り付いて離れない。

 

「こ”わ”か”っ”だよ”ぉ”ぉ”ぉ”!!!!」

 

「お”に”い”ち”ゃ”ぁ”ぁ”ん”!!!」

 

「あー分かった分かった。よしよし、怖かったな」

 

「「う”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ””!!!」」

 

暫くの間二人をあやしていたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は変わってちびっ子二人組。

 

その頃、自分達が探されているなんて露程も知らない二人は兄との約束をすっかり忘れて海で遊んでいた。

一夏は危ないから止めておこうと言っていたのだが、遊びたい盛り、やんちゃ、腕白、と知り合い全員からそんな感じで受け止められている箒を一夏一人で止められるはずも無く。

 

最初は砂浜の近くで遊んでいたのだがそのうち段々と楽しくなってきた二人はどんどん沖に流されていることに気が付く様子は全く無い。

 

漸く一夏が流されて沖に向かっている事に気が付き箒に相談するが箒は、

 

「ねぇほうき」

 

「なに?」

 

「すなはまがすっごくとおいよ?」

 

「だいじょうぶだよ!およいでかえれるきょりだからだいじょうぶ!」

 

なんて箒は言う。

まぁでも山に行ったりしてもちゃんと帰れてるから大丈夫かな。

なんて箒の言葉を信じたのが大間違い。その後も二人できゃっきゃと遊んでいたのだがふともう一度浜の方を見てみると先程見た時よりも遥か遠くに居たのだから。

 

「ほうき!すなはまがあんなにとおいよ!?」

 

「え?ほんとだ……どうしよう」

 

ここに来て漸く不味い状況なのが理解できた箒は、流石に遊ぶ事を止めて一夏と共に浜に向かって泳ぎ始める。しかしどれだけ泳いでもたどり着けず、体力を消耗していくばかり。

 

そして二人は感じた。もはや自力で浜辺へ戻れる距離では無いのだと。

幸いな事に二人は浮き輪で浮いている為に早々にどうにかなってしまうという訳ではないが、それも時間の問題だろう。

 

「どうしよう……」

 

「だいじょぶだよ!おにいちゃんがきてくれるもん!」

 

二人は段々と不安が募り涙目になって行く。

このまま死んでしまうんじゃないか。そう考えるとどんどん涙目になってしまう。終いには二人して大泣き。

何よりも二人が辛かったのは家族にもう会えないのではないかという事。

 

父も母も姉も兄もお爺ちゃんも。

 

会えなくなるのは嫌だと大泣きしながらこういう時は何時も助けてくれる兄の事を泣き叫びながら呼ぶ。

 

そうすればもしかしたら何時もの様に困ったように笑いながら助けに来てくれると思って。そう信じて泣きながら兄を呼ぶ。

 

 

そこにどこか聞き覚えのある声が。

しかも段々と近づいてくるではないか。そっちの方を見るとボートに乗ってこちらに向かってくる兄。

 

 

そこからは安心したやらまた兄に会えたやらで再び大号泣。

その後は無事二人揃って助けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

探してくれた係員やライフセーバーの人にお礼を言って周り、それからどうするかとなったがあんなことがあってから流石にこのまま遊ぶのもなぁ……という事で三十分程後にシートやらパラソルやらを撤収して帰り支度。

 

 

着替えるためにシャワーを浴びようとしたのだが一夏と箒は俺から離れようとせず、ぴったりと抱き着いてくる。

 

「おにいちゃんといっしょがいい!」

 

「いやーだー!」

 

流石にこれには俺も千冬も束も苦笑いするしかなく。

 

「箒ちゃん、お姉ちゃんと一緒は嫌?」

 

「いや!おにいちゃんがいい!」

 

「グハッ!?……お兄ちゃん、この恨みは消えることは無いだろう……」

 

「何言ってんだ。それよりも説得手伝ってくれ……」

 

「ほら一夏、お姉ちゃんと一緒にシャワー浴びに行こう?」

 

「やー!」

 

千冬が優しい声で一夏に言うも俺の腕に引っ付いて断固拒否。

これにはさすがの千冬でも手の打ちようがない。

 

「よっしゃ、しょうがないから二人共一緒にシャワー浴びるか!」

 

「ほんと!?」

 

「ほんとほんと。どうする?」

 

「「いく!」」

 

今回ばかりはこっちが折れてもいいだろう。

千冬と束はそれぞれ呆れたような、でも嬉しそうな目で俺を見て来る。

 

「という訳で一夏と箒は俺に任せて千冬と束はゆっくりシャワー浴びて来い」

 

「分かった」

 

「お兄ちゃんってばやっぱり私達に対して甘々だよねー」

 

「うっせ。ほら、早く行け」

 

「はーい」

 

そう言って二人を見送ってから俺達もシャワー室に向かう。

幸いな事に時間が早かったからか空いていて助かった。これが混んでいたりしたら大変だった。

 

 

 

帰りの車の中で四人とも遊び疲れたのか寝てしまっていた。

まぁ一夏と箒は完全に泣き疲れてって言うのもあるんだろうが。

あ、一夏と箒は後でお説教だな。

 

まぁ俺も目を離してしまったのも原因なのだが。それとこれとは別問題だ。約束を破っているのだからしっかりとお灸をすえてやらねばなるまい。

 

多分俺も師範と華さんに怒られるんだろうけど、自分の事をこの年にもなって怒ってくれる人が居ると言うのは幸せなもんだ。

 

 

 

 

「只今帰りましたー」

 

そう言って師範の家の扉を開く。

すると奥から華さんが出迎えてくれた。

 

「お帰りなさい。海はどうでしたか?」

 

ニッコリと笑いながらそう聞いてくる。

 

「楽しかったですよ?水温も冷たくなかったですし」

 

「そうですか。それは良かった。お風呂を沸かしてありますから皆でどうぞ」

 

「有難く頂きます」

 

「えー?さっきしゃわーあびたよ?」

 

「あれは流しただけだからちゃんと風呂で体洗ったりしなきゃダメなの。ほら、行くぞー」

 

「はーい」

 

その後は俺を含めて五人で風呂に入った。

今更ながら千冬と束は俺と一緒で嫌じゃなかったのだろうか?そう思って聞いてみると、

 

「全然嫌じゃないぞ?寧ろもっとこういう機会が増えて欲しいな」

 

「私も同意見だよ?ただでさえ一緒に住んでないんだからこういう機会は貴重だしね!」

 

好意的でびっくりしました。

 

その後は晩飯を食べ終わった後に今日の事を報告。

案の定俺は師範と華さんに、一夏と箒は俺と師範、華さんの三人にしっかりと怒られることになりましたとさ。

 

 

 

 

「そうだ、今日は泊まって行きなさい」

 

「え?でも良いんですか?」

 

「勿論だとも。用意はしてあるから好きにしていいよ」

 

その日は師範と華さんのご厚意で泊まることになった。

俺は一人で寝るもんだと思っていたのだが何故か五人分の布団が引かれていて驚いたがまぁいいや。

 

という事で久しぶりに俺と千冬、一夏、束、箒の五人で寝ることになった。

 

しかし一夏と箒は疲れていて布団に入ってすぐに寝入ってしまった。

 

「お兄ちゃん、今日はお疲れ様」

 

「ん?あー、ホントになぁ……今日は一段と疲れたよ……」

 

「ふふ」

 

「二人も今日はありがとうな。それとすまなかったな、俺が目を離したからあんなことになっちまって」

 

「えー?そんなことは無いと思うけどなー。でーもー、申し訳ないと思うんだったらお願い一個聞いてくれると嬉しいなー?」

 

「はぁ……束、お前と言うやつは……」

 

束は何故か俺に何かをねだろうとして千冬はそんな束に呆れるという見慣れた光景が出来ていた。

まぁ実際今日は迷惑かけたからそれぐらいなら別にいいんだけどさ。

 

「しょーがねーなー。ほら、何がお望みだか言ってみな。叶えてあげちゃうかもだぜ?」

 

「ほんと!?それじゃ今日は一緒の布団で寝よう!」

 

「おう、良いぞ。ほら」

 

もう皆で疲れてるから早めに寝ようって事で布団に入っていたからそのぐらいのお願いならお安い御用だ。

 

「わはー!」

 

「暴れんなって」

 

「はーい!んふふふ」

 

嬉しそうに笑う束。だが何故か千冬は段々と機嫌が悪くなる。

 

「どうした千冬?」

 

「お兄ちゃん、私にも一つだけお願いをさせてもらおう」

 

「えぇ……お前さっき束に文句言ってたやんけ……」

 

「なんだ、束は良くて私はダメなのか?そうか、悲しいな……」

 

こいつ、何処で涙目になるなんて技を覚えてきやがった。

まぁ断る気は無かったんだけど。

 

「別に構わねぇよ。ほら、何がお望みだ?」

 

「む、その言い方だと私が悪いみたいになってしまうがまぁいい。私も一緒に寝る」

 

「あぁはいどうぞ」

 

なんか何時も俺の布団に勝手に潜り込んでるのにそれでいいのかと思いながらも俺は布団に招き入れる。

 

「んー……」

 

「ほら、いい子は寝る時間だ」

 

「ん」

 

それからは気が付いたら皆寝てしまった。

 

 

今日も一日騒がしくも楽しかった。色々あったけど皆無事でよかった。

 

 

 




思ったよりも長くなった。
本編よりも圧倒的に長いってどういう事や?

え?ロリな皆が可愛いから?そうか、それならば仕方が無いな。


それと一夏と箒の助け方なんですけど、流石に幼児二人を抱えて浜まで泳ぐのはおじさん的にもキツそうって事でボートでの登場にしました。

おい、文字数どういう事だ。本編の二倍書いてるやんけ。これを本編でやりやがれやマジで。

何て思っても感想に書いたりしないでね。

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