おじさん、今年で36歳になるんだけれども   作:ジャーマンポテトin納豆

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外国人ってどうして日本文化を勘違いしているのか?いや、勘違いにしても勘違いしすぎなんじゃないですかね?

 

 

イエァ!

今日もおじさん元気だぜっ!

 

それはそうとラウラちゃんとここ最近よく話すんだけどさ、もうものすっごい日本に関して勘違いをしてんのよ。

それもかなり深刻なレベルで。

 

いや、いくらなんでもあれは酷いよ?

しかも全部、漫画の知識なんだよなぁ……

 

日本には海賊なんていないし、一繋ぎの大秘宝も無い。何でも願いを叶えてくれるドラゴンなんて何処にもいないし、忍者がエネルギーボールをぶん投げたりしない。そもそも忍者なんていない。

世紀末でも無い。そもそも日本のどこに荒野があるってんだ。

いや、全部漫画の中にはあるけど。

どんな想像をすればその結論に至るのか不思議でしょうがない。常識的に考えてみ?そんなんがリアルだったらこの世界終わりでしょ。

 

宇宙人なお姫様含めたヒロインにラッキースケベをかましまくる高校生も居ないし、ヤクザの息子がハーレム学校生活なんてのも無い。

 

 

 

 

 

 

それらが全部違うと否定した時のラウラちゃんの顔よ。

もう面白くて面白くて大爆笑しちまった。

 

そして今も。

 

「ブハハハハ!!!」

 

「なっ!?笑うんじゃない!まさかこれも違うのか!?」

 

「いやいやいやいやいや!!だってよ……自分の気に入った相手を自分の嫁だとかなんだとかそれはねぇぜラウラちゃんよ!!」

 

「な、な、なん、だと……」

 

「そりゃ少女漫画とかの世界でならあれかもしれんけどよ」

 

今もどういう訳か、自分の気に入った相手を嫁に出来るとかなんとか言ったし。

いやそんなん有り得へんやろ。大昔の絶対王政かよ。

 

「まさか、宇宙戦艦も無いのか……!?」

 

「当たりめぇだろ。むしろ何故あると思った」

 

「うわぁぁぁ!!!」

 

頭を抱えて叫んでいるラウラちゃん。うん、宇宙戦艦も波〇砲も宇宙海賊も存在しねぇよ?そんなのがあったら今頃世界大戦に突入してるわ。いや、宇宙大戦か。

 

「……筋肉ムキムキな火星産ゴキブリは?」

 

「それも居ないな。束辺りに頼めば作ってくれるかもしれんけど」

 

「そんな……そんな……ササキは私の夢を壊して楽しいか!?」

 

「べっつにー?……ふっ……」

 

「ぬぅぅぅ!!」

 

火星産ゴキブリって。束なら頼んだらマジで作りかねんな。いや、そもそもあれどうやったら出来るんだ?

しっかし、ラウラさてはこいつオタクだな?

別に駄目じゃねぇけど幾ら何でも知識が偏りすぎだ。

 

鼻で笑ってやればポカポカと叩いてくるが痛くも痒くもない。

 

 

「そもそもどっからその情報を仕入れて来たん?漫画?」

 

「ん?いや、本国に居る私の部隊の副官だが」

 

「なるほど理解したわ」

 

「なにがだ?」

 

「いや、何でもねぇ」

 

良し分かったぞ。ラウラの世間知らずというか、そう言うのの元凶は多分その副官とやらだな。

そしてある事無い事吹き込んでいるのもそいつだ。

ラウラって真っ白なキャンバスみたいなもんだから教えられたらそれを全部信じちゃうんだよ。

だから多分俺が今ここで変なこと教えたら間違いなく簡単に騙される。

やんないけど。……やんないよ?もしかしたらやるかもしれないけど……

 

「もしかしてその人から俺がシスコンだって教えられた?」

 

「うむ、そうだぞ。教官が電話して、笑っている所を見て、それはどういうことなのか聞いたら〔日本に年の離れたお兄様が居ると聞いた事があります。その時の顔を聞いた限り、恐らく織斑教官はブラコン、で間違いないかと。そして織斑教官からの話を聞く限り、そのお兄様もシスコンだと思われます〕と言っていた」

 

「なんだその極論過ぎる解釈と説明は」

 

「ん?ブラコンは自分の兄弟が好きだという事なのだろう?そしてシスコンは姉妹の事が好きだという事だろう?事実ではないか」

 

「くっ……俺はこの純粋な目には勝てそうにないぜ……」

 

「む?何か違ったのか?」

 

「……いや、うん、それで合ってるよ。うん合ってる」

 

駄目だった……!

俺にはこの純粋な瞳で見つめて来るラウラを完全に否定しきれない!

 

「そうだろうそうだろう」

 

なんでそんなに自慢げなんだ。

言わないけどそれも間違ってるっちゃ間違ってるんだからな?

何時かちゃんと教えないと。

 

「あ、そう言えば他にも何か言っていたな」

 

「え?」

 

「小さな声で、禁断の愛だとかなんとか。禁断の愛とはなんだ?ササキ、教えてくれ」

 

「ラウラ、お前にはまだ早いぞ。その内知る事になるだろうからまだ知らなくていいんだ」

 

「む……そうなのか。ならば仕方が無い」

 

ラウラが隣でそう納得しているのを見ながら俺は一度その件の副官とやらを〆なければなるまい、と考えていた。

 

「しかし、海賊もニンジャもドラゴンも世紀末も火星産ゴキブリも、何も無いとは驚きだ……それでは私が物凄い覚悟をして来たのが馬鹿みたいではないか」

 

「なんだぁ?態々そんなもんの為に覚悟なんかしてたのか」

 

「当たり前だろう!?色んな能力を使う海賊だぞ?ニンジャだぞ?北斗七星の世紀末だぞ?寧ろなぜ日本人はこんな話を聞いて危機感を持たないのか不思議でしょうがない」

 

「いや、そりゃ日本が平和ボケしてるってのもあるんだろうけどさ」

 

 

 

 

「そもそもそれ全部漫画とかアニメの世界の話だから」

 

 

 

 

「ははは、ササキは冗談が上手いな」

 

「……」

 

「ははは、はは、は…………本当に?」

 

「うん」

 

いや、そんな信じられねぇ!ふざけるな!なんて目で見られても俺は何も言えないんだけど。文句は俺じゃなくて副官さんに直接言って欲しい。

 

「うそだーーーー!!!」

 

「あ、どっか行っちゃった」

 

なんか涙目になりながら何処かに走り去って行くラウラ。

おじさんは子供の夢を打ち砕いてしまったらしい。

 

 

……あとで謝っとこ。

 

 

あれ見た千冬とか一夏になんかお小言言われそう。

いや、セシリアと箒だな。あの二人はオカン染みて来てる気がするのは俺だけじゃないはず。

お前らは俺のかーちゃんかよ。止めてくれ、二人もかーちゃんいるとかおっかなくてしょうがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、それは別としてさっきから茂みの影から俺とラウラの話を聞いているシャルル・デュノア君に声を掛けてみるとしよう。

このまま後を付けられるのもおっかないしな。

 

「んで?そこでさっきから立ち聞きしているお嬢さん。俺になんか用かな?」

 

「っ!?……気が付いていたんですね?」

 

「そりゃぁモチのロンよ。おじさんを普通のおじさんと思わないこったな。で?俺に何の用かな?シャルル・デュノア君」

 

「………………その、えっと……」

 

何かを考えながら、苦しそうな顔をしている。

うん?調子でも悪いのか?いや、でも顔色にこれと言って問題は無いし。

 

「……少しだけ、お話しても良いですか……?」

 

「お話ぃ?少なくとも俺に何の話があるのか見当も付かねぇんだがなぁ」

 

「お願い、します……!」

 

「んー……」

 

正直な所、話を聞く義理も無ければ、話を聞いたところで俺に対してのメリットが無い。寧ろデメリットの方が大きいとさえ思う。

そもそも俺に聞いて欲しい話ってなんだ?俺に話をしてどうする?その話は聞いたところで俺に危害が加わらない物なのか?特に俺の周りの人間に影響は無いのか?

 

俺ぁ別に殴られようが何だろうが構わねぇけどよ、家族に手ぇ出されたら許さんぞ?

 

 

でもなー、考えてもどんな話なのか本気で全く予想が付かないんだよねぇ。

どうしたもんかね?俺から話す事を限定しとけば問題無さそうな気もするけど、おじさんだからなぁ……ヘマしそう。

 

まぁ聞く分には良いかもしんないね。どういう経緯で此処に男装なんかして送り込まれたのかとか情報を得ることも出来るかも。正直俺の事を話すっつっても正直テレビで流れてるのが殆どだからな。

 

あと公開してないとかってなると俺の生体データ位になるからな。口で教えられるもんじゃない。自分の遺伝子データを知ってる奴なんてこの世界に居るか?普通。

 

「ま、ええで。そんじゃお話すっか」

 

「え?良いんですか……?」

 

「お話したいって言ったのそっちでしょ。何?おじさんと話すのやっぱ嫌になった?」

 

「い、いえ、そう言う事じゃ……その、断られるかと思っていたので……」

 

……あー、こりゃ俺が女だと知っているのバレてんな。一応確認しておきたいからそんな感じのニュアンス含めて聞いてみるか。

 

「うん?どうしてそう思ったのさ?おじさん可愛い子とお話し出来るんだったら喜んでたぜ?」

 

「ほら、今も。私の事、気付いているんでしょう?だって男だと思っているのなら可愛い子、だなんて言う筈がないじゃないですか」

 

やっぱし。

ま、それとなく避けてたりしたからなぁ……気が付かないはずがないね。

 

「……まぁ、な。で?何時から俺が君の事を気が付いてるって分かった?」

 

「転校初日に気を使われたのを感じてもしかしたら、と思って。それからは態度で。確信に至ったのが一週間前」

 

「ふーん」

 

初っ端からか……まぁ気が付かれて当然か。

出来る限り気が付かれない様に、とは思っていたけど察しの良い人間なら気が付いて当然か。

 

「佐々木さん、なんで私の事、分かったんですか……?」

 

「あ?あー、どう見ても男じゃねぇしな。骨格から始まって仕草、言動なんか全部が」

 

「……そうですか」

 

「仕草とか言動だけならもしかしたら分からなかったかもしれんけど、一番の決め手は骨格だな。なんかしらのスーツかで無理矢理作ってる感が半端じゃない。一応これでも知識はある程度あるんでね」

 

「知ってます。篠ノ之流、ですよね?」

 

「お?なんで知ってんの?教えた事あったっけ?」

 

「いえ、その、調査報告書で読んだので……」

 

「なんじゃそりゃ、もうそんなもんが出回ってんのか」

 

「各国は佐々木さんの情報収集に躍起になってますから。何処の国も持っていると思いますよ?」

 

何処の国も、か。

なんだか嫌な気分なもんだが面と向かって言う訳にも行くまい。適当にお道化るか。

 

「なにそれ俺めっちゃ有名人じゃん」

 

「アハハ、そうですね。多分世界で一番有名だと思いますよ」

 

「嫌なもんだね。……で?俺に話ってなんだ?人前じゃ無理な事か?」

 

「……はい」

 

「用件はなんなんだ?俺とサシで話し合うなんざ相当リスクだろうに」

 

「それは分かってます。織斑先生も私の事気が付いているのは知っていますから。多分、学園側も。流石に先生全員が知っているのかどうかは分からないですけど」

 

ま、変装はあれだとしても流石に送り込まれるだけあってちゃんと状況を理解している。それで何故俺なのかがよく分からない。

 

「そこまで理解しててなんで俺なのさ。俺じゃなくても千冬なり学園に直接はなせばいいだろ」

 

「それじゃダメなんです。佐々木さんに直接じゃないと、可能性が無いんです」

 

「可能性?って事は話というよりかお願いって事か」

 

「……そうです」

 

「ふーん?そんじゃ言ってみ?」

 

「…………佐々木さんの、遺伝子を下さい」

 

ホワッツ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はっ!?

ちょっと待った何が起こった?まさか気を失っていたというのか……!?

 

俺としたことが、抜かった!

 

でもしょうがないと思うんだよね。

 

そんないきなり面と向かって遺伝子下さいなんて言われるなんて人生でそう経験できることじゃない。

まぁ俺は経験しちゃったけどね!

 

 

 

……この年になってから初めての事経験しすぎじゃない?

すっげ、俺って何者?

 

「そんな事言われても良いですよ、なんて答えられると思うか?」

 

「無茶なのは承知なんです……!お願いします……!」

 

必死に頭を下げて来るデュノア君。

いやさ、俺も鬼じゃねぇからあれだけどよ、了承するわけには行かないんだなこれが。

 

「すまんね、残念ながらそのお願いを聞いてやることは出来ない」

 

「ッ!お願いします……お願いします……何でもします。私に出来る事ならなんでもするから……」

 

この物言い、自分の事を貶める発言だって分かって言ってんのか?

俺はそうじゃないけど、世の中悪い奴は沢山居るんだ。そんな言葉を言ったら人生終わりだ。

おい、おじさんがチキンなだけとか言うなよ。

 

「おい、嬢ちゃん」

 

「っ!?」

 

俺の声音が低くなったのを感じてびくりと肩を震わせる。

もうどうせだ。嬢ちゃん呼びでもいいだろ。俺らしかいないんだし。

 

「いいか?軽々しく何でもするなんて言っちゃいけねぇぜ?」

 

「でも、そうでもしないと……」

 

「あ?そうでもしないと、なんだ?」

 

「ごめんなさいっ!!」

 

「うおっ……なんだ?急に走って行って」

 

何を思ったのか、デュノアは何処かに走り去ってしまった。

ま、俺が首を突っ込んでも良い問題じゃないのは確かだな。

 

 

しっかし、頭で知っていても分かっていてもあんな顔をする子供がこの世界に溢れている事に驚きだ。

 

そして目の前に居た子供一人にも手を貸してやれない俺に嫌気がさす。

俺はただの一般人。ちょっと歳食ってISが使えるだけのなんにも出来ねぇ情けない大人だ。

 

もやもやするな……

 

 

 

 

 

 

なんかなー、と思いながら頭をボリボリ掻きながら部屋に戻った。

 

 

 

 

「うぅ……ひっぐ……」

 

「よしよし。お兄ちゃん酷いねー」

 

「うん……ぐす……」

 

寮に戻ったら一夏が泣いているラウラをあやして、それを見た俺が傍に居たセシリアと箒に取っ捕まり、正座させられ鈴に睨まれているという状況になった。

 

「なにこれどんな状況?」

 

思わずそんな事を言っちゃっても仕方が無いと思うんだ。

 

「どんな状況?じゃありませんわ小父様。心当たりがあるのではなくて?」

 

「心当たり……あっ」

 

「どうやら思い至ったようですわね?」

 

そこにはニッコリと惚れ惚れするような笑顔を浮かべてるセシリアが。

これでおっかない雰囲気じゃなくて目が笑ってたら最高だったんだがなぁ。

 

 

 

 

「そもそも!こんな小さな子供の夢をいきなりぶち壊しますか!?」

 

「いや、小さい子ってお前ら同い年……」

 

「何か仰いまして?」

 

「イエ、ナンデモナイデス」

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん、幾ら何でもあれは無いよ……」

 

「事実を言っただけなんだけど……」

 

「あのね?優しい嘘って知ってる?」

 

 

 

 

 

「子供泣かすとか最っ低」

 

「……返す言葉もございません」

 

 

 

 

「洋介兄さん、見下げたクズですね」

 

「……すいませんでしたぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

おじさんは滅茶苦茶怒られたのでした。

本当の事を教えただけなのに。

 

解せぬ。

 

 

 






皆に蔑まれながらのお説教……


流石に気分が高揚します。

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